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2020年仕様のドット絵&バトルシステムのRPG! ぶっ飛び設定がクセになる『オレンジブラッド』プレイレビュー

2020年仕様のドット絵&バトルシステムのRPG! ぶっ飛び設定がクセになる『オレンジブラッド』プレイレビュー

2019年開催の東京ゲームショウやビットサミット7に出展され、2020年1月にはPC(Steam)版が配信となったRPG『オレンジブラッド』。スーパーファミコンが全盛だった1990年代を彷彿とさせる精緻なドット絵に、ハードで殺伐とした世界観、ランダム生成されるユニークな銃や装備を駆使して戦う戦闘パートなどで話題を集めた作品が、ついにPlayStation 4、Nintendo Switch、Xbox Oneなど家庭用ハードでも遊べるようになった。そこで今回はPS4版を用いたプレイレビューをお届けする。

文 / マンモス丸谷


ハードな設定&ドット絵マジックで魅せる世界観

『オレンジブラッド』でまず目を引くのは、やはりドット絵で描かれた雰囲気のあるグラフィックだろう。本作の舞台となる“我々の知る歴史とは異なる過程をたどった”という199×年の沖縄に浮かぶ人工島、ニュー・コザの描きこみがインパクト十分なのはもちろん、プレイヤーが操作するパーティー、Vanilla、Machiko、Yazawa、Jackieら4人のキャラクターたちが頻繁に見せる演技(アニメーション)も秀逸。このグラフィックだけでもう1990年代のRPGが好きな人には刺さるはずだ。

オレンジブラッド WHAT's IN? tokyoレビュー

▲架空の199×年が舞台の本作。沖縄に浮かぶ人工島、ニュー・コザは“我々の知る歴史”と照らし合わせると香港の九龍城のような猥雑な雰囲気。しかしクルマやバイクは宙に浮いて移動しており、(一部の)科学技術は現実の2020年を凌駕している描写がなされている

オレンジブラッド WHAT's IN? tokyoレビュー
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▲ニュー・コザは昼、夕方、夜で大きく色調が変わるのも印象的

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▲パーティーメンバーは街中にあるイスに座ったり風呂に入らせると、四者四様の細かい“芝居”を見せる

かわいくデフォルメされたドット絵のキャラクターが活き活きと動く本作だが、ストーリーや世界観などはかなり物騒というか、ハードボイルドなテイストだ。ニュー・コザは日本や中国、ロシアといった、さまざまな国のその筋の人たちが“それぞれシノギ”を展開している地域であり、そこで活動する本作の主人公、Vanillaも一筋縄ではいかない経歴の持ち主。彼女は刑務所からの釈放、犯罪記録の抹消などの報酬を条件に、CIAからの仕事を請け負ったトラブルバスター。本作は彼女が受けた仕事、ニュー・コザの地下エリアを探索することで進んでいき、その道中でヒップホップのスキルでパーティーにバフをかけるDJのMachiko、女子高生ライクなファッションで日本刀を振り回すYazawa、チャイニーズマフィアのJackieといった面々を仲間にしていく。

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▲主人公のVanilla(写真右)とMachiko(写真左)。ふたりが合流して(強制負けイベントでロシアンマフィアにボコボコにされたのち)Machikoの兄が運営していたクラブ、シャングリラを取り戻すところから本編はスタートする

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▲仲間から「快楽殺人者」と評されるYazawaは日本刀を使った全体攻撃スキルが非常に強力。Vanillaたちとは“白いパン粉”で利害関係が一致して意気投合する

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▲チャイニーズマフィアの一員としてレストランを取り仕切りつつ、組織内での下克上を図るJackie。中国拳法を使ったカウンター攻撃が得意

見た目はかわいいが中身はトガりまくった4人が、軽妙なトークでそれとなく本作の世界観を匂わせつつ、ストーリーも進行させていくテキストや、場所によって音の聴こえ方が変わる(クラブの内で流れているBGMはトイレやバックヤードに入ると音が籠る)音まわりの表現など、隅々まで細かい演出が行き渡っているのも本作の魅力。惜しむらくは質の高い映像、音、テキストによる世界観作りが見事なゆえに、メインシナリオが短め(6~8時間でゲームクリアー)な点だけは余計に残念に感じてしまった点ではある。価格(税込み2,000円)を考えると、本作の絵と音、話だけでも十分に元を取らせてもらったな……と思えるクオリティなのでむしろオトクなのだが、もっとこの世界観に浸りたい気持ちはあった。

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▲キャラクターたちの会話でそれとなく『オレンジブラッド』内の世界情勢や歴史背景など、世界観が垣間見えてくるのも魅力的

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▲メインシナリオをクリアーしたあともゲームプレイは可能。終わらせきっていないサイドミッションや、メインシナリオ終了後にしか出現しない強敵とも戦える

ハクスラ要素と独特なバランスが生み出す
新感覚のコマンド選択式バトル

1990年代のJRPGを意識しつつもブラッシュアップされているのは、グラフィックや演出面だけではない。プレイ時間の大半を占める敵との戦闘も、ターン制のコマンドバトルというJRPGの基本は押さえつつも、本作ならではの味つけがなされている。

本作にはGuns(銃)、Kicks(靴)、Gear(ヘルメットや防弾ベスト)という3種の装備品が存在し、これらはフィールドに点在するクレート(宝箱)からランダム生成される。そのためどのような装備をゲットできるかは運任せ。得られた銃のタイプ(アサルトライフル、サブマシンガン、ショットガン、対物ライフル。種類によって攻撃回数と範囲が異なる)と攻撃力によって使い勝手が変わるのはもちろん、特殊効果や攻撃(防御)属性で戦い方が大きく変わる。ちなみに筆者が拾ったものの中でユニークだなと思った装備品をいくつか挙げてみると……。

・ダメージは期待できないが運がいいとボスも即死させられるショットガン
・7の倍数のターン時に攻撃力が777%アップするアサルトライフル
・攻撃力は大幅アップするが操作不能になるサブマシンガン
・入手時の所持金が多いほど防御力が上がるKicks
・リロードすると敵に狙われやすくなるが回避率や特定武器の攻撃力が上がるGears

などが印象に残っており、ニュー・コザの地下、Tire探索のお供として役立ってくれた。

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▲銃は基礎攻撃力だけでなく、AP(弾数。リロードで回復可)、攻撃回数、攻撃属性の有無も性能に大きく関わってくる。KicksやGearも防御力、回避率に加えて追加効果(属性防御、防御力以外のステータスが変動するか否か、リロード時の効果など)を見て選ぶことが重要だ

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▲本作では行動順を決める敏捷のステータスがかなり重要。敏捷の数値を高める装備品と相手の動きを止められるショック(電撃)属性やクリオ(凍結)属性を組み合わせると、(ザコ相手なら)1ターンで瞬殺することも簡単

ピーキーな性能の装備が入手しやすいという特徴に加えて、本作の戦闘に大きな影響を与えているのが固有スキルの存在だ。これが非常に強力なうえ、フィールドで遭遇する敵に対して、接触する前に〇ボタンを押して弾丸をヒットさせておくと、スキル使用に必要なSPが50溜まった状態で戦闘がスタート。ここでYazawaやVanillaの敏捷が敵より高くてそこそこ攻撃力の高い銃やGearを装備しているとなおよし。Yazawaの刀による全体攻撃「紫電一閃」や、通常攻撃より強力な8回連続攻撃をくり出すVanillaのスキル「デッド・アイ」で敵をほぼ壊滅状態に追いやれる。そのためフィールドに徘徊している敵と戦う際は(敵の耐久力が上がるメインシナリオ終盤~クリアー後の探索を除けば)、エンカウント前の射撃をミスらない限り、Vanillaたちが負ける可能性は限りなく低い。そのためTireを巡ってよりよい武器を回収したり、ザコ敵に苦戦してストーリーが進まない……といった面でストレスを感じることはない作りになっている。

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▲本作の戦闘はフィールドを徘徊するエネミーシルエットに接触することで発生する。触れられる前に銃で撃っておくとSPが溜まった状態でバトルがスタートし、優位な状態で戦いを進められる

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▲集団戦ではとにかくYazawaの紫電一閃が強い。入手した装備の攻撃力しだいだが、終盤(Jackie加入直前あたり)まではほとんどYazawaの刀だけでザコは制圧できる

しかしこれがボス戦をはじめとした強制戦闘(SPが0の状態でスタートするバトル)となると、話は変わってくる。本作のボスは1対で複数回攻撃してくるのは当たり前で、HPの自動回復や各種ステータスにバフをかけるスキルなどを頻繁に使ってくる。そんな中~長期戦で脚光を浴びるようになるのは、ザコ戦だと目立ちづらいMachikoやJackieの固有スキルや、クレートやショップで入手できるインスタントスキルの存在だ。

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▲ボスあつかいの敵はほぼ必ずといっていいほど1ターン中に複数回行動し、行動1回あたりの攻撃回数も多い。そのためパーティー人数が少ないほど確実に勝つための算段が立てづらい。メインシナリオで対峙するボスはともかく、サイドミッションで出現するボス級の敵は、4人そろってから戦うのがオススメ

まずMachikoだが、彼女は本作において貴重なHPを回復させるスキルを持つサポートタイプのキャラクター。スキル「トランジション」を使用することで、通常時はターンの最初にかかるSP自動回復を、HP自動回復に変更できる。しかもトランジションは毎ターンの最初にMachikoの行動消費なしで切り替えられるため、通常時は対ザコ戦と同様にSPを溜め、ピンチになったらHP自動回復に切り替えるという使いわけが可能(というか使いわけないとボス戦を乗り切るのは困難)。さらにSP消費は激しいものの、味方のHPを完全回復させるスキル、ゲットーブラスターも持っており、HPの回復手段が乏しい本作での長期戦においては頼りになる存在だ。

Jackieは攻防一体のカウンター攻撃「十歩一殺」と自身にターゲットを集中させるタウントの組み合わせが強力。ふたつのスキルを一度に使うと、パーティー全体をランダムで狙う攻撃以外はすべてJackieに集中。しかしJackieは十歩一殺の効果で攻撃を確実に回避できるうえ、攻撃した相手にカウンターで高威力の単発攻撃を叩き込める。SP消費に見合ったダメージを与えつつ、パーティーの生存力も高められるタンク役として活躍できるのだ。

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▲戦闘中にまとまったHPを回復できるのはパーティーでMachikoのみ。とはいえゲットーブラスターは消費SPが多いため、トランジションによるHPorSP自動回復をいかに有効に使っていくかがボス戦では重要

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▲Jackieの十歩一殺とタウントの組み合わせは、ダメージ以上にボスの攻撃を1ターンやり過ごせるという点がありがたい。ザコ敵の耐久力が上がる終盤では、YazawaやVanillaが殺し損ねた敵にトドメを刺す手段としても重宝する

ボス戦はMachiko、Jackieの防御、回復系のスキルに、インスタントスキルのフェイクアウト(敵の強化状態を解除)、リカバリー(味方の弱体状態を解除)を使ってしのぎつつ、SPが溜まったら集団戦でもボス戦でも役立つVanillaのデッドアイでまとまったダメージを与えていくのが、“ピーキーな装備に頼らない場合の”王道パターン。手持ちの装備によってはもっと楽に気持ちよく勝てるケースもあり、例えばクリオ属性つきで性能の高い銃Aと、弾を命中させるとクリオ耐性を下げる銃Bがあった場合、銃Bを敏捷の高いキャラクターに持たせて攻撃→Aで攻撃して凍結させる……といったような“ハメ”も狙える。こういった装備によって戦いの幅が広がるのも、本作の大きな魅力といえるだろう。

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▲本作はボスあつかいの敵にも属性攻撃の効果が通りやすいため、クリオやショックでの足止め、ファイアー属性での追加ダメージを積極的に狙っていきたい

パッと見こそドット絵ゲーム全盛期のオールドゲーマーだけを狙い撃ちにした懐古主義的なゲームだが、開発スタッフの意図が隅々にまで行き渡った演出、ギャングスタな世界観と美少女キャラクターの融合、ハクスラ要素とターン制RPGを融合させたバトルなど、このゲームでしか味わえない要素が満載の『オレンジブラッド』。既存のRPGとは違った刺激を体感したいというゲーマーには、世代を問わずオススメしたい1本……なのだが、筆者が本作をプレイしていた時期(10月上旬~中旬)はゲームプレイ中に何度かフリーズしてしまい、セーブポイントからやり直しせざるを得ないことが何度かあった。しかしこういった不具合は、メーカーのPLAYISMも認識しており、10月下旬から行なわれる随時アップデートで改善される模様。これからプレイする人、プレイ中だったけど不具合により中断していた人は、PLAYISM公式Twitterを確認してほしい。


■タイトル:オレンジブラッド(Orangeblood)
■発売元:PLAYISM
■開発元:Grayfax software
■対応ハード:PC(Steam)、PlayStation 4、Xbox One、Nintendo Switch
■ジャンル:RPG
■対象年齢:17歳以上対象
■発売日:発売中(PC版2020年1月14日発売、家庭用ゲーム機版 2020年10月1日発売)
■価格:1,999円(税込)


『オレンジブラッド』オフィシャルサイト

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