Interview

Lucky Kilimanjaro こんな状況だからこそ続けるリリース。その思いと、「夜とシンセサイザー」に込めた彼ららしさを、ボーカルの熊木幸丸に訊く

Lucky Kilimanjaro こんな状況だからこそ続けるリリース。その思いと、「夜とシンセサイザー」に込めた彼ららしさを、ボーカルの熊木幸丸に訊く

“世界中の毎日を踊らせる”をテーマに掲げた6人編成のエレクトロポップ・バンド、Lucky Kilimanjaro。彼らのテーマ、バンドとしての姿勢や志は、このコロナ禍においても全くブレていない。2020年3月にメジャー1stアルバム『!magination』をリリースし、ワンマンツアーが開催されるはずだった5月にはデジタルシングル「光はわたしのなか」を緊急配信。7月には2週連続でサマーシングル「エモめの夏」「太陽」をリリーし、10月21日にはたった3ヵ月という短いタームで、ニューシングル「夜とシンセサイザー」をリリースした。精力的なリリースを続ける彼らは楽曲を通してリスナーに何を伝えたいのか。全曲のソングライティングを務めるボーカルの熊木幸丸に話を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 持田薫


曲を作るのが本当に楽しくて、ずっとやってしまうんです

Lucky Kilimanjaro 熊木幸丸 WHAT's IN? tokyoインタビュー

とても精力的に新曲をリリースをしてますよね。

そうですね。ただ、精力的にリリースしようと思っているわけではなく、曲ができたから出そうっていう感じですね。ライブがなくなってしまった状況もあって、曲作りをするタイミングが増えて。曲を作るのが本当に楽しくて、ずっとやってしまうんです。「じゃあ、どんどん出していこう」と。

リリースを少し振り返りたいと思うんですが、まず、ツアーが延期になってしまった5月に緊急配信という形で、新曲「光はわたしのなか」がリリースされました。

5月のツアーが4月の頭に正式に延期になるって決まり、世間的にもどうなるか良く分からない状況になってしまった中で、急遽、スタッフの皆さんにお願いして、速いペースで書いた曲ですね。

この状況の中で曲を出すことが意義というか、僕らがやらなくちゃいけないことなんだって感じてました

孤独や絶望を感じながらも、それでも<今だから踊り歌うわ>って歌ってますよね。ダンスはやめないんだっていう。<憧れのリキッドルームはおあずけ>っていう歌詞もありますけど、ライブができなくなっても、その姿勢がブレなかったっていうことですよね。

当然、僕らも不安だったり、何が起きるかわからない恐怖みたいなものはありましたけど、僕はこの状況の中で曲を出すことが意義というか、僕らがやらなくちゃいけないことなんだって感じてました。Lucky Kilimanjaroには「世界中の毎日をおどらせる」というコンセプトがありますが、それは、身体的なものだけじゃなくて、気持ちがおどったり、前向きになれる気分も含めて、おどるという言葉で表現していて。それはどの曲にも入れようと思っているんですけど、「光はわたしのなか」の“踊る”はより意味性が強いです。こういう状況だけど、なんとか日々を楽しんだり、ちょっとでも光を見つけて行こうという思いを込めています。

反響も大きかったですよね。「元気が出ました」とか、たくさんの声が寄せられて。

そうですね。「こういう状況下で出してくれて嬉しいです」と言ってくれる方もいて、僕らもこれを求めていたのかもしれないと思いました。お客さんと「新しい曲いいよね」って言い合いたかったというか。それに、お客さんの声が、逆に僕の中の光にもなって、ライブはできないけど、曲を出していこうという気持ちになりました。

7月には2週連続で夏シングル「エモめの夏」と「太陽」がリリースされています。

特に感染症がどういう状態だからとかじゃなく、夏は夏らしく楽しみたいなと思って。こういう状況だからこそ、いつも通りの夏を感じたいなと思ったし、自分たちのちゃんとした夏の曲を出せてよかったと思っています。

「エモめの夏」は恋の初期衝動を描いたダンスミュージックになってます。

夏のトキメキだったり、儚い感じをそのまま曲に落とし込もうと思って書いた、とてもシンプルな曲ですね。

「光はわたしのなか」には<来たる夏を想うよ>というフレーズがありました。

それは意識して書いてましたね。当時は、まだ夏はどうなるかはわかってなかったけど、夏にはまだ何かあるかもしれないっていう意味では繋げてますね。

3月にリリースしたメジャー1stアルバム『!magination』収録曲の中には「春はもうすぐそこ」というタイトル曲がありましたが、結局、2020年は春も夏も来なくて……。

振り返れば切ないけど、この夏にこの曲を楽しんでもらえたことは良かったかなって思ってます。やっぱり、こういう状況だからこそ新曲を出すのがポップスを書く音楽家としての務めなんだという意識がありましたね。

続く「太陽」はどんなイメージで作りましたか?

フェスでみんなと踊る曲を書きたいなと思って作りました。日本で小さい頃から生活してると、どうしてもお祭りが自分たちのDNAにあるって感じるんです。だから、日本のお祭りをLucky Kilimanjaroのサウンドでやりたいなと思って。

“さあ、踊らにゃ損! 踊れや! ほいやっさ!”という掛け声とともに盆踊りのビートも組み込まれてますよね。

すごく合うなって思いました。よく、新機軸だと言われたんですけど、僕の中ではそんな気持ちはなかったし、これまでの延長でしかなくて。自分の中でジャンル分けは大事にしてないんです。サウンドとノリが合えばくっつけちゃう。この曲もトライバルなビートと日本のお祭りが自然な感じで混ぜる事ができたし、コンセプトが決まってからは早かったです。歌詞は、こんな天気の中でも自分の中の太陽を求めていこうということを歌っていますが、よく、「コロナを意識したんですか?」って聞かれるんですけど、たまたまですね(笑)。

太陽にもコロナがあるから。

ま、そういう意味合いに聞こえて、それで救いになったらいいなと思ったし、「太陽」の方がよりこの夏らしい曲だったのかなって思いますね。あんまり考えないで済むというか、踊って掛け声を出すしかないっていう空気を感じてもらえたらいいなって思ってます。

カオスな感じになってるのを1回救いたいというか、そこを持ち上げたいなという感覚があって書いた曲です

Lucky Kilimanjaro 熊木幸丸 WHAT's IN? tokyoインタビュー

3月のフルアルバム、5月の配信シングル、7月のシングル2枚に続いて、10月にはニューシングル「夜とシンセサイザー」がリリースされます。

日々、状況が変わり続ける中で、沢山の人がすごく迷っていてカオスな感じになってるのを1回救いたいというか、そこを持ち上げたいなという感覚があって書いた曲です。僕自身もその一人で、ライブができなくなったり、本来の自分たちの活動とは全く違う感覚でやっていて、何が正しいのかもわからないけど、その中でできることをやりたいし、どんどん挑戦していきたいと思ってる。そういう自分の感覚や体験も含めて書いてます。

立ち止まって茫然自失としてる感じではないですよね。すごく前向きな姿勢になってる。

そうですね。でも、それも曲ができたから言えるなって思っていて。この曲を書いたときは、「今、何を言うのがいいんだろうか」とか、「Lucky Kilimanjaroらしさとは何だろうか」とか、変なところで立ち止まったり、迷ったりもしてて。制作時は余裕もなく、自分とずっと向き合う作業でした。

自分と向き合う中で気づいたことはありますか。

自分が正しいと思っていたこととか、普通だと思っていたことがどんどん変わっていって。音楽の作り方とか、世の中の見方とか。もう何が正解なのか、全然わからなくなっちゃたなって思って、そういう部分での迷いはありました。歌詞を書いていても、今までは自分の答えを1回提案してみるっていうスタイルが多かったんですけど、今回は、できるだけ自分の答えを整理しないで伝えようと思って。こういう状況だと、それぞれの答えがあるんだなって改めて思ったし、自分で答えを選んでもらえるような歌詞を書かないといけないなと思ったんです。だから、できるだけ自分の提案はなしにしようって。課題解決型じゃなくて、課題があるけど大丈夫だよっていう曲にしようと思ったので。そこのトンマナというかニュアンスはすごい考えてました。

僕はこうして曲を出して、何かを後押しできるかもしれないけど、みんなの悩みに対して答えは出せないなって思った

リスナーとの<せめて話を聞くよ>という距離感ですよね。

そうですね。今の段階だと僕にはそれしかできないなって思って。それは、自分の人生の経験不足もあるし、僕には解決し得ない問題もたくさんあるから。僕はこうして曲を出して、何かを後押しできるかもしれないけど、みんなの悩みに対して答えは出せないなって思った。今は、その立ち位置をキープするしかできないなって思いました。

その中でも<共に踊る>というメッセージを届けてます。ここはブレないですね。

そうですね。そこは変わらない。ずっと続いているLucky Kilimanjaroの味だし、しつこいって言われるくらいまで言いたいって思ってます(笑)。踊るってずっと言い続けたら、みんな「もうわかったよ。踊るよ」っていうかもしれないし、今まで踊ってなかったけど、いつの間にか踊ってるなってなるかもしれない。だから、メジャーデビュー以降は特に、いやでも入れようって思ってますね(笑)。

(笑)細かいところですけど、<強い歌 贈るよ>と、“送る”ではなく“贈る”にしたのは?

この曲をみんなの曲にしてほしいなと思って。やっぱり、答えを出すのはみなさん自身だからこそ、みんなの曲なんだよってこと。例えば、残業を頑張ってる人に缶コーヒーをあげるのと一緒で、そういう感覚で書いた曲なので、この言葉が一番いいのかなって思って書きました。プレゼントするから、みんなのものにしてほしいと思います。

みんなが迷ってたり、よくないスパイラルに陥っているのが夜として、そこを蹴り飛ばせるシンセのサウンドをイメージして

Lucky Kilimanjaro 熊木幸丸 WHAT's IN? tokyoインタビュー

タイトルにはどんな意味を込めましたか。

もともとパワフルなシンセのサウンドを思いついていたので、そのシンセのサウンドを感情的な表現に重ねたいなと思って。みんなが迷っていたり、よくないスパイラルに陥っているのが夜として、そこを蹴り飛ばせるシンセのサウンドをイメージして、「夜とシンセサイザー」がいいな、と。“シンセサイザー”という単語も、僕ららしくていいなと思って。

「夜とラッキー・キリマンジャロ」っていうことですよね。

そうですね。それでもよかったですね(笑)。

なんかやる気になるなっていう曲になったと思ってます

(笑)それは冗談だとしても、そのくらいバンドとしての強い決意も感じるんですよね。いろんなモヤモヤを吹き飛ばしてくれるような勢いというか、カタルシスがあって。

みんなが動く原動力としての強さは欲しいなと思ってました。それは、自分の迷いに対してもそうで、特に何を言われたわけじゃないけど、なんかやる気になるなっていう曲になったと思ってます。あと、メンバーも、バンドでライブ用に音を作っていく過程で、みんなパワフルに入れ込んできて(笑)。僕が作る時点ではあまりドラムのフィルとかは入れてないんですけど、ガンガン入れてきたんですね。これはエモい曲だし、かっこいい曲だから、ちゃんとサウンドにパワーを入れ込もうという意図がちゃんと伝わっていたし、アップグレードできたなって思います。

9月24日の恵比寿リキッドルームで披露したんですよね。

はい。やっぱりライブで見せたときに本領を発揮する曲だなと思いました。今後もライブでやりたいですね。ただ、ライブの後半にやったんですけど、あんまり覚えてないくらいハイになって、やってたときのことはちゃんと覚えてないんです(笑)。

(笑)観客をフルで入れられる状態ではなかったですが、憧れのリキッドはどうでした?

バンドをやっていて一番楽しかったかもしれないです。8月に渋谷クラブクアトロで配信限定ライブをやったとはいえ、お客さんがいるワンマンライブは去年の11月以来、10ヵ月ぶりで。やっぱりお客さんと一緒に空気を作っていけるのが楽しいなと改めて感じました。すごく力も入ったんですけど、声が出せない分、みんなの動きやバイブスが伝わってきたし、ほんとに楽しい空間だったんです。こういう状況で、様子見ながらではありますけど、どんどん元に戻していきたいなと思います。

この曲は本当に生で音圧を感じたいなって思ってます。ちなみに、熊木さんご自身としては、「光はわたしのなか」と「夜とシンセサイザー」ではどんな違いを感じてますか。

「光はわたしのなか」は全然先が見えてなくて、何をするかもわからないけど、とりあえず曲を出そうと迷いの中で出していたんです。「夜とシンセサイザー」は、迷いの中でもちゃんと自分の中の答えは出し切れたんじゃないかなと。

先の見えない不安というのは払拭はされてはないですよね。

そうですね。来年どうなるかはまだ全然わかってないし、僕らも何ができるかを模索しながらですけど、「夜とシンセサイザー」の方がパワフルに伝えようとしてます。「光はわたしのなか」は、どちらかというと「1回落ち着こう」「1回自分の平安を取り戻そう」としてる。もやもやしていたカオスを沈めようとしてるんですね。「夜とシンセサイザー」はカオスの中でも自分の意思を選ぼうっていう思いから、「夜とシンセサイザー」の方が力強くなってるし、こういう時期にいろいろ考えた結果が出てるなって感じますね。

(MVは)悩み続ける自分と、進もうとしている自分

Lucky Kilimanjaro 熊木幸丸 WHAT's IN? tokyoインタビュー

MVでは実態と影が同時に描かれてますね。

そうですね。悩み続ける自分と、進もうとしている自分。2つの自分がいるんだけど、どっちかということでもなくて、常に両面を表現してると思うんです。影も自分で演じたので大変だったんですけど、迷いや寂しさと、強さの両面がちゃんと出ている、かっこいいMVを作っていただけたなと思います。 

そして、もう1曲。カップリングには、DISH//に熊木さんが提供した「SAUNA SONG」のセルフカバーが収録されてます。

もともとは北村匠海くんと直接お話をさせていただいたときに、彼はサウナが好きで、「みんな整っちゃえばいいんだって思ってる」って話してくれたのが、面白いな彼はと思ったんです(笑)。そのとき、「みんなの心にできたトゲトゲを少しでも和らげられたらいいなと思っている」とも言っていて、じゃあ、サウナをモチーフにして描けばいいなと思って書いた楽曲ですね。

ちなみに熊木さんはサウナは?

北村匠海くんはサウナがすごく好きで行ってるんですけど、僕は、そんなに行かないですね。でも、この曲を書く前に行って、そのときの感情も大事にとっておいて曲にしてます。

サウナに行ってもらうのもいいけど、サウナみたいな曲にしたかったんですね。みんなの心が滑らかになってほしいっていう思いを曲に入れてます

それはどんな感情ですか。

サウナって、マインドフルネスじゃないですけど、自分と向き合う作業だなって思っていて、自分の悩みを熱の中で解きほぐす、そういう感覚が好きで、みんな行ってるんだなって思ったんです。もちろん、普通にサウナを楽しんでる人もいると思うけど、僕が毎朝、ラジオ体操とストレッチしてる感覚と近いんだなって思って。ちょっと軽くなる感じというか、毎日の中で散らかった感情だったり、ごちゃごちゃになった部分を解きほぐすっていう、そういう感覚を曲で味わってほしいなと。サウナに行ってもらうのもいいけど、サウナみたいな曲にしたかったんですね。みんなの心が滑らかになってほしいっていう思いを曲に入れてます。

バンドとしてはどんなアレンジを考えてました?

歌詞と歌のリズムは全然変えてなくて。DISH//は軽快で力強いサウンドなので、僕らはもっと、スムーズというか、優しさを大事にしようと思って、テンポも落としてますし、サウンドも1回、止めたりしてる。それぞれのキャラクターに合わせてるので、「今日はサウナだ!」っていうときはDISH//、「どうしようかな、サウナ行こうかな?」っていう時は僕らの「SAUNA SONG」を聴いてもらえたらと思います。

2曲揃って、バンドとしてはどんな1枚になりましたか。

今までとは違う力強さがバンドとして表現できたし、いい変化をしてるなと思います。自分のソングライティング、サウンドも、歌詞のメッセージ、僕たちらしさを追求しながらも、全てがアルバムとは違う形で表現できてるなと思うし、まだまだ変わっていけるバンドなんだなと確信したシングルになりました。

どっちかというと嫌な年だったけど、最後くらい、いい忘年会として僕らのライブを使ってほしい

12月11日には恵比寿ガーデンホールでのワンマンライブも決定してます。

2020年は、誰にとってもわけのわからない、不思議な年だったと思うんですよ。オリンピックがあるはずだったのに延期になって、音楽人はライブがなくなってしまった。どっちかというと嫌な年だったけど、最後くらい、いい忘年会として僕らのライブを使ってほしいです。僕らはしっかりとしたショーを用意するので、皆さんにはほんとに忘年会気分で踊りに来てほしいですね。

その他のLucky Kilimanjaroの作品はこちらへ。

ライブ情報

「Lucky Kilimanjaro Presents TOUR “2020 Dancers FINAL”」

2020年12月11日(金)東京都・恵比寿ガーデンホール
OPEN 18:00 / START 19:00
詳細はオフィシャルサイトで。

Lucky Kilimanjaro

Vo.熊木幸丸を中心に、同じ大学の軽音サークルの仲間同士で結成され、2014年、東京を拠点にバンド活動開始。
“世界中の毎日をおどらせる”をテーマに掲げた6人編成によるエレクトロポップ・バンド。
スタイリッシュなシンセサウンドを軸に、多幸感溢れるそのライブパフォーマンスは唯一無二の存在感を放つ。
2018年11月に1st.EP「HUG」にてメジャーデビュー。その後、2019年6月「風になる」、7月「HOUSE」、8月「Do Do Do」、9月「初恋」と4ヶ月連続でシングルをリリース、更に10月には2nd EP「FRESH」を立て続けにリリースすると、楽曲の良さが評判を呼び全国のTV、AM/FM局にて56番組のパワープレイ・番組テーマを獲得。「FRESH」はオリコン2019年10月度FMパワープレイランキング1位を獲得。同年8月にはROCK IN JAPAN FES.への初出演も果たし、フェスファンからも熱い視線を浴び更なる注目を集める。
2019年11月、バンド自身初となるワンマンライブ「FRESH」@渋谷WWWは、4ヶ月前に即完状態。
2020年3月にはメジャーでは初のフルアルバム『!magination』のリリースを発表。また同時に5月には恵比寿リキッドルームを皮切りに東名阪のワンマンツアーを発表。

オフィシャルサイト
http://luckykilimanjaro.net