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混乱の時代を生きたマフィア達のダーティーなドラマがエモい。『マフィア コンプリート・エディション』プレイレビュー第2弾

混乱の時代を生きたマフィア達のダーティーなドラマがエモい。『マフィア コンプリート・エディション』プレイレビュー第2弾

2KとHangar 13が、2020年9月25日(金)に『マフィア コンプリート・エディション』(以下、『マフィア』)を発売した。

全世界で累計1,890万本の販売実績を誇る『マフィア』シリーズの原点『マフィア(Mafia: The City of Lost Heaven)』をリメイクした本作は、評価の高い物語を、新たなグラフィックスエンジン・システム・BGMなど、様々な調整を加えて蘇らせた一本だ。

本稿では、そんなPlayStation 4版をプレイレビューの第2弾を掲載。前回の記事では、物語の冒頭やゲームの基本的な流れについてお伝えしたが、今回はシナリオ部分を中心に、ネタバレは極力回避しつつ本作最大の魅力を語っていきたい。なお、筆者は『マフィア』シリーズは本作で初プレイ。ファンの皆様には「初見だからこその感想」をお楽しみいただくよう、ご容赦願いたい。

文 / 二城利月


1920~1930年代のアメリカが生み出す闇の中でトミーは生きる

早速だが、ここから『マフィア』のシナリオとその魅力について長々と語っていきたい。それというのも、本作において、この部分こそが語らねば面白味が伝わらない、最も重要な要素だからだ。前回もご紹介した通り、『マフィア』の背景は、1930年代のアメリカ・シカゴの街をイメージした架空の都市“ロスト・ヘヴン”。実は、この1930年代というところが、本作を楽しむうえで掘り下げておきたい最初の部分だ。

マフィア コンプリート・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲ロスト・ヘヴンの街並み。現代と過去のアメリカが混ざったような雰囲気だ

舞台となる1930年のアメリカは、その10年前、第一次世界大戦終焉後となる1920年代に、社会・政治的な混乱の中で大きな転換期を迎えた国である。1920年前期のアメリカは、社会的、芸術的に世界から頭一つ出る形で発展と進化を遂げ、ジャズ・ミュージックの流行、フラッパーと呼ばれた新世代の女性達の登場などで、大量消費とマスメディア時代が幕を開けた。

それは、後世に残る文化を多く開花させ、今でも“ジャズ・エイジ”という名で親しまれている時代。最近でわかりやすく例えるなら、ハリー・ポッターシリーズの最新作『ファンタスティック・ビースト』の舞台だと言えば想像がつく人も多いかもしれない。『クトゥルフ神話』の名前を聞いたことがある人も珍しくないと思うが、同作も1920年代のアメリカ作家・ハワード・フィリップス・ラヴクラフトによるホラー小説が原点となっている。ファッションや芸術など、あらゆる面から見て、当時の文化は根強く後々の時代に大きな影響を与えることとなっているのだ。

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▲1920年という時代で遠くに高層ビルがそびえ立つ文明的な街並み

一方で、そんな繁栄の時代は長く続かず、1929年に発生したウォール街の株価大暴落により華やかなジャズ・エイジの時代は瞬く間に終了。これを引き金に世界恐慌の時代へ急転直下し、世界的に多くの人間の人生を狂わせた1930年代……つまり、本作『マフィア』の舞台となる時代に突入していく。

その背景を意識して主人公・トミーを見てみると、繁栄の1920年代を一般人として過ごした彼も、30年代に社会が多くのストレスを抱え、理不尽に揉まれ、マフィアに堕ちていったことが伺える。

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▲高架鉄道を利用する人々の雰囲気はどこか影がある

大混乱の時代を生きた当時の人々には大変恐縮ではあるが、今を生きる我々にとっては、そんな時代背景だからこそゲームがドラマティックかつ刺激的に映るもの。オープニングで1930年代の街並みが描写されるのだが「ふおぉぉぉ」と溜息をついてしまうくらいにエモーショナルだし、急成長の中で発展した街、道を走るクラシックカー、どこかくたびれた印象を感じさせる人々。そんな世界から一部が切り取られ、とあるバーで静かに始まるマフィアと刑事の取引……。うーん。渋い。誰かウイスキー持ってきて。

そんな感じで、この『マフィア』は、混乱の1930年代という時代を、マフィアの視点で渋く、エモく楽しんでいく作品なのだ。少なくとも、車を乗り回し、好き放題銃器をぶっぱなし、気に入らないやつらをとりあえず叩きのめすみたいなゲームではない。

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▲トミーに語り掛ける刑事のセリフにも“マフィアになった仕方がないなにかがあった”というニュアンスが含まれており、ここにも時代がにじみ出ている

善人のトミーはマフィアとして生きていく

ちなみに、後々にマフィアとなる主人公・トミーは、非常に善人である。「マフィアなのに善人?」と疑問に思うかもしれないが、間違いなく彼は善人だ。

タクシードライバーであった彼は、ポーリーとサムを助けたことをきっかけにしてマフィアのドン・サリエリから“協力関係”を持ちかけられ、マフィアの道を歩んでいくこととなる。ただし、それは結果的にであり、最初こそ謝礼でもらった大金に驚きはしたものの、「興味はなかった」「犯罪者の仲間になるなんてごめんだ」と一蹴しており、ここは彼の人柄が出ているワンシーンだ。

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▲最初こそトミーは普通の一般人だった

一方で、その事件をきっかけに彼の中の常識に変化が生じたのは事実。翌日、彼の退屈で平凡な日常を描くタクシードライバーのお仕事をプレイヤーも体験できるモードに突入するのだが、老婆には「タバコを辞めろ」とクレームをつけられ、お忙しいビジネスマンには馬鹿にされた挙句に急かされる。そして、急いでスピードを出しまくり、ほかの車に衝突すると警察を呼ばれて即逮捕&ゲームオーバーになった。なんて世の中は不公平で理不尽なのか。

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▲リアルにコントローラーを投げそうになった

そんな鬱憤溜まる生活の中、コーヒーブレイクで一息ついていたトミー。しかし、前日にポーリーとサムを助けたことで敵対するマフィア達に目をつけられ、お返しとして襲撃されてしまうのだから堪ったものではない。これにはトミーもストレスが大爆発だ。

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▲理不尽

結果、ポーリーとサムのボス・サリエリに助けを求めるだけで終わらず「施し(迷惑料)はいりません。奴らに仕返しを」と自ら報復を提案。この行動でさらにサリエリに気に入られてしまったトミー。マフィアの仲間入りを勧められ、吹っ切れたトミー本人も望んで裏の世界へと歩みを進めていった。

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▲トミー、キレる

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▲トミー、報復する

そして、もう一度思い出して欲しいのが、舞台は世界恐慌の真っただ中ということだ。多くの人が貧困にあえぎ、職を失い、路上に迷っていた時代。お先真っ暗な中で、トミーも必死に生きていた。そこに突如として落ちてきた大金持ちの未来と、理不尽からの脱却への片道切符である。これを掴まずにいられるような人間がどれだけいるだろうか?

そう、これは超人のトミーが始める特別な物語などではなく、たまたま、ポーリーとサムが事故った場所に立っていた一般人がトミーだったから始まった物語なのだ。さらに言うと、本作に登場するマフィアのほとんどは、トミーと変わらずに普通の人である。彼を引き込んだポーリーとサムも例外ではなく、人並みの悩みを抱え、社会に翻弄されながら生きていることがシナリオを進めるとわかってくる。

ただの悪党ではないマフィアという存在

さらに、トミーを仲間に引き入れた際にサリエリが話す“信念”には注目したい。

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まず、敷地内で卑猥な言葉を使うな。言葉なんてものは無数にあるが、やたらと「ファック」なんて言いたがる奴は、馬鹿か怠け者だ。次に、うちは麻薬は扱わない。この界隈に麻薬中毒者なんぞいらん。最後に、サツと揉め事をおこすな。賄賂で操れる奴はそれほどいない。法を犯せば追われるぞ。わかったか? by.ドン・サリエリ

このシーンは、本作のマフィアという存在を描く重要な部分だ。マフィアという存在は“無法者・犯罪集団”の象徴的な存在だが、その中でサリエリは一本筋が通っている。もちろん、暴力で物事を解決したり、みかじめ料を徴収したり、密造酒の取引をしたりと、その行動は褒められたものではない。しかし、彼らには彼らのルールがあり、道理があった。

ゆえに、根は善人であるトミーは、ファミリーの一員になっても「マフィアだから好き放題犯罪する」というシーンが無く、組織にすんなりと馴染んでいった。もちろん、マフィアとして犯罪行為に手を染めてはいくが、彼は一貫して弱い者が暴力にあうのを嫌い、敵であっても命乞いをする人に手を下すのに躊躇い、罪のない人を苦しめた時には苦悩し、愛する者を守るためには行動するといった、とても人間らしい一面を垣間見せていく。そういった心の描写が、ほかの登場人物にも多く見られ、すべては自分、家族、そして“ファミリー”のために行動しているのだとわかる。

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▲例え敵でも情をかけてしまうトミー

特に、トミーがマフィアのファミリーになるきっかけを作った、ポーリーとサム。この3人の義兄弟的な関係性は、本作のドラマを彩るキーだ。駆け出しのトミーを立派なマフィアに育て上げるところから始まり、仕事仲間としてお互いを助け合い、プライベートではふざけあい、ひとたび銃撃戦が始まれば背を預け命を賭ける。その姿は友人・仕事仲間・家族などと一括りすることはできないほどに濃く、複雑な関係性だ。そして、それを仕切るボス・サリエリと、参謀であり、みんなのお爺ちゃん的存在のフランク。彼らの関係は“ファミリー”という言葉以外には例えられない存在に感じるのだ。

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▲血を超えた絆で結ばれるファミリー達

そんな理念を持ち、絆を持つ“サリエリ・ファミリー”の中で、立派なマフィアに成り上がっていくトミー。しかし、ゲームの冒頭は「トミーが“ファミリー”の悪事を告白する」ところから始まるわけで、どこかで歯車が狂ってしまうのだ。それが、1930年という混乱の時代の中で刻々と変化していく社会にも理由があったのだと思うし、人の心が移り変わり、お互いの関係が少しずつ、歪に変わっていった結末なのだろう。そんな物語こそが本作一番の見どころであり、トミーというひとりのマフィアの始まりから終わりを見届けるのが、この『マフィア』というゲームなのだ。

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▲どんなに絆を深めても、これはトミーの裏切りの物語なのである

シナリオが終わっても堪能できるロスト・ヘヴン

さて、そんなシナリオも楽しめるほかにも、本作にはいくつかのやりこみ要素があり、この中に1930年代のロスト・ヘヴンを満喫できるモードがある。それが、リメイクのために追加収録された「フリーライド」モード。シナリオに関係なく、自由にロスト・ヘヴンの街を探索できるモードで、アジトで衣装や武器などをカスタマイズができる。シナリオ本編では訪れなかった様々なロケーションを堪能できるので、ゲームクリア後にのんびりマップを探索するのにもってこいだろう。

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▲心行くまで街をドライブできる

車両の収集も本作の醍醐味。一度乗った車はアジトの車庫に登録され、車体色や内装色をカスタマイズして乗り回せる。クラシックカー好きにはたまらない要素だろう。

そして、コレクション要素として、大衆雑誌、コミックス、タバコカード、はがきといったアイテムがマップには配置されている。これらはシナリオ中はもちろん、フリーライドで集めることができる。シナリオを堪能した後には、これらの収集に精を出すのもアリだ。

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▲クラシックカーの収集

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▲コレクション要素

ゲーム部分の粗が目立つがシナリオは一見の価値あり

1930年代のマフィア達の姿を描き、多くの評価を得た『マフィア』。筆者は原作を未プレイ、かつ当時のマフィアが本作のような暮らしをして、考えて、生きていたのかを知る術はない。ゆえに、原作発売当時に『マフィア』が評価されたものが、リメイク版である本作でしっかりと再現されているのかは正直わからない。しかしながら、本作は現代のゲームに劣らないシナリオのクオリティと、1930年代のアメリカやマフィアというテーマをドラマや映画と張り合えるレベルで細かく描写し、プレイヤーが存分に楽しめると感じた。

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▲マフィアとして生きた彼の瞳に、どんな景色が映ったのか

正しく評価すると、銃撃戦が理不尽な難易度だったり、ゲームの進行が単調だったり、操作性に癖がありプレイ中に操作ミスを誘発するといったことも多く、現代のゲームとしてはイマイチな部分も多い。人によって賛否が分かれるだろう。しかし、シナリオや世界観に関しては引き込まれるのは間違いなく、これを最新のグラフィックで楽しめたことが素晴らしい点であった。オールドアメリカな世界観、ダーティーなドラマ、そしてマフィアにピンッときた方は、ぜひプレイしてトミーの生き様を見ていただきたい。

フォトギャラリー

■タイトル:マフィア コンプリート・エディション
■ジャンル:クライムアクション・アドベンチャー
■プラットフォーム:PlayStation®4、Xbox One、PC(Steam、Epic Games)
■発売日:発売中(2020年9月25日)
■価格:4,500円+税
■対象年齢:18歳以上(CERO Z)
■発売元:2K
■開発元:Hangar13
■プレイ人数:1人

※発売中の『マフィア トリロジーパック』(6,800円+税)を購入すると、『マフィア コンプリート・エディション』に加え、『マフィアII コンプリート・エディション』、『マフィアIII コンプリート・エディション』の全3作を完全版としてプレイ可能。この3作は単体での購入も可能で、『マフィアII コンプリート・エディション』と『マフィアIII コンプリート・エディション』には、それぞれボーナス追加コンテンツが収録され、『マフィアII コンプリート・エディション』は、デジタル版とパッケージ版のいずれも完全にリマスターされた4K対応映像で楽しめる。

『マフィア』公式ウェブサイト
https://mafiagame.com/ja-JP/

『マフィア』公式Twitter(英語)
https://twitter.com/mafiagame

2K Japan公式Twitter(日本語での最新情報はこちらをご覧ください)
https://twitter.com/2K_Japan

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