世代じゃないけど観てみたい!名作アニメ“初見”レビュー  vol. 3

Review

ラストシーンだけは知ってたけど…2020年のアニメファンが観た『銀河鉄道999』 メーテルと鉄郎、その別れの意味を本気で考える

ラストシーンだけは知ってたけど…2020年のアニメファンが観た『銀河鉄道999』 メーテルと鉄郎、その別れの意味を本気で考える

「世代じゃないアニメ」観てみない? 往年の名作&最新の名作を、これまで触れる機会のなかった“若者世代&おじさん世代”がそれぞれ観た初見の感想をご紹介。今回のお題は、松本零士原作によるSFアニメの金字塔『銀河鉄道999(スリーナイン)』!

体を機械化させることにより、人間が寿命を数百年まで延ばした未来の地球。誰もが機械の体をもらえるという星を目指す少年・星野鉄郎が、謎の美女メーテルとともに銀河超特急999号へ乗り込み旅をする……1978年スタートのTVアニメシリーズ(全113話)に始まり、これまでに3作の劇場版が制作された国民的ヒット作です。中でも今回の最注目は劇場版第1作! こちらは、TVアニメがまだまだ放送中の1979年夏公開にもかかわらず、物語のラストまでを先行して描いたことで当時大きな話題を呼んだ作品でした。結果、同年公開の邦画1位という驚異的な興行成績を収め、アニメの枠を超え高く評価を受ける一作でもあります。

今回は、名作アニメ映画としての『銀河鉄道999』劇場版第1作とともに、作品の世界観・基本設定を知るための教科書としてTVシリーズの序盤1クールぶんを若者世代が初視聴。書き手は、アニメとゲームを主戦場に執筆している20代ライターながら、これまで松本零士原作のアニメを観る機会がなかったという「聖☆あべさん」です。

構成 / WHAT’s IN? tokyo編集部


40年以上前に描かれたキャラクターがここまで魅力的だったとは……

TVアニメでは『ポケットモンスター』や『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』(いずれも日本では1997年から放送)などに親しんだ幼少期、そして小学校高学年のときに『スクールランブル』(2004年~)や『ネギま!?』(2006年~)を観始めたことでオタクのエリート街道まっしぐら。以降、大人になったいまでも放送中のアニメはほとんどチェックしている。そんな自分がフォローできていなかった昭和以前の名作アニメとして、当コラムの担当編集者から推薦された作品が『銀河鉄道999』だった。

事前に知っていた情報は“銀河超特急999号”という蒸気機関車が宇宙を旅すること(旅の目的は知らない)、ラストシーンで鉄郎という少年と金髪美女のメーテルがキスをして別れるということ。なぜラストだけ知っているのかというと、テレビ番組でたびたび“名作アニメBEST100”みたいな特集が組まれることがあった。そこでよく『銀河鉄道999』のラストシーンが名場面として取り上げられていたからだ。

世界観や、鉄郎とメーテルの目的もほぼ知らない状態のままの初視聴。ただ『インターステラー』や『彼方のアストラ』『星を継ぐもの』など、目的達成のために惑星を巡るSF作品は好みだったので、そんな自分に合うタイプの作品なのではないかという予感はあった。今回はAmazonプライム・ビデオを利用して、『銀河鉄道999』TVアニメシリーズおよび劇場版第1作を観ることに。

かれこれ40年以上も前の作品ということから、正直、観る前には「絵柄などの古臭さから途中でリタイアしてしまわないか」という思いもあった。というのも、自分がリアルタイムで楽しんで観ていた00年代アニメのキャラクターですら、いま振り返ってみると古臭いと感じることがあるからだ(最新の絵柄に目が慣れてしまったとも言える)。キャラクターの絵柄は、時代のときどきでトレンドが移り変わっていくものなので、古くなっていくのは仕方のないことなのだが……。

と、多少の不安は抱いていたものの、それは杞憂であった。とにかく観ていて感じたのが、女性キャラクターが魅力的ということだ。メーテルのミステリアスさも惹かれるし、女海賊エメラルダスも、顔に傷があるという最近ではあまり見かけないデザインでグッときた。また、身体がクリスタルガラス製のクレアや、一部が機械化したリューズなど独特な女性キャラクターが次々登場する。いまでこそ筆者は『モンスター娘のいる日常』などの作品で設定が特殊な女性キャラに見慣れているが……40年前当時の子供たちはこれを観て性癖がおかしな方向にいかなかっただろうかと心配になるぐらい。それらを含め、総じてキャラクターは魅力的で、やや不安視していた絵柄についてもまったく気にならなかった。

逆に、絵柄以外に気になったところを強いて挙げるならば、誘拐されたメーテルを助けに行くときも物怖じせずに一人で堂々と立ち向かっていくし、早い段階で銃撃戦もこなせるという星野鉄郎の万能ぶり。そこに思わず「異世界転生してきたのかよ!」とツッコミを入れたくなったことぐらいだろうか(笑)。

「生身の身体か、機械の身体か」登場人物を通じ考えさせられる世界観

『銀河鉄道999』TVアニメ版の印象がヒューマンドラマだとするならば、劇場版第1作は冒険活劇といったところ。ここからは要点を後者に絞って感想を伝えていきたい。

冒頭を観ていくと、鉄郎がなぜ旅をするのか明らかになる。彼には「母親を殺害した機械伯爵への復讐」と、「生身の身体をタダで機械に変えてくれる惑星へ行く」という二つの目的があったのだ。作品の世界において、寿命を延ばせる機械の身体を手に入れることはなによりの幸福とされており、上流階級の人間はみな身体を機械に変えている。寿命を延ばす程度なら金持ちの特権としてはごく普通だと感じるが、ただ鉄郎の住む星には“機械化した人間は、生身の人間になにをしても許される”という決まりがあった。だから鉄郎も社会的強者になろうと、機械の身体を求めていたのだろう。ルールに縛られ、生きかたすら選べない。そして、上流階級の人間以外はまともに生きる資格すら与えられない世界はなんとも惨い。

機械になったから幸せなのかというと、そうでもないことは作中のキャラクターたちから見えてくる。たとえば、クレアは母親の身勝手な考えで生身の人間からクリスタルガラス製の機械の身体を変えられてしまっている。そのことを嘆いた彼女は生身の身体に戻るための金銭を手に入れるべく、銀河超特急999号でウェイトレスとしてアルバイトしているのだという。また、リューズは愛する機械伯爵の意のままに身体を機械化させられていた。最期は機械伯爵の命令に背いて、時間城とともに朽ち果てる。クレアやリューズを見ていると、「機械の身体になんてならずに、いままで通り暮らせるだけで幸せだったのに……」という想いが痛いほど伝わってくる。

チンピラに絡まれていた鉄郎を、宇宙海賊のキャプテン・ハーロックが助けるワンシーンも印象的だった。鉄郎を助け出したあと、ハーロックは「親父、ミルクをくれ。一杯やれよ」と言いながらチンピラにミルクを飲ませるのだが、チンピラは「ミルクは身体が錆びるから勘弁してくれ……」と返す。なんの変哲もない会話だが、このやり取りで機械化した人間の不自由さが理解できる。食事は制限され、夢を見ることもできず、全身が機械ならば性欲もない。人間としての三大欲求をすべて捨ててまでも、寿命を延ばして生き永らえる必要があるのかとも感じ取った。今後、現実が本作のような世界になったとしたら、生身と機械どちらの身体を選択するだろうか……非常に悩ましいところだ。

鉄郎もまた、複雑な境遇の機械化した人間たちに触れ合い、そして機械伯爵を打ち倒すことで成長していく。最初は身体を機械にするのが人生を豊かにする最善手だと思い込んでいたが、次第にその考えに疑念を抱くことに。そうして最終的に機械の身体をタダでくれるという惑星を破壊するまでに至る。人間誰しも、地位や名誉が簡単に手に入るとしたら必死でつかみ取りたくなるものだが、鉄郎は機械人間になることを強く否定したのだ。あまりの成長っぷりに「鉄郎、男前になったな……」と感慨にふけってしまっていた。

鉄郎がメーテルを引き留めなかった理由が今ならわかる

物語を観終えるまではとにかくメーテルに釘付けだった。鉄郎とメーテルは銀河超特急999号でともに旅をすることになるが、彼女はその目的を一切明かさない。ただ、鉄郎を利用することが目的なら親身になって接する必要もないし、愛情を振りまく理由もない。彼女の行動を見ていると、悪意があるとは到底思えなかった。だが、メーテルはなんのために鉄郎と一緒にいるだろうか? そう考えているうちに、彼女のミステリアスさに次第と惹かれていった。

やがて999号が終着駅の惑星に到着するとメーテルの目的や素性が明らかになるが、ここからは驚くべき種明かしの連発。(詳細なネタバレの言及までは避けるが)頭のなかで散らばっていたパズルのピースが徐々に組みあがっていく。なかなか真相が語られなかったものだから気になって仕方がなかったが、最後の最後にこれまでの伏線が回収されたことに大満足だ。そして鉄郎がいよいよメーテルに別れを告げるクライマックスへ。

かつて、このラストシーンをテレビ番組の特集で観た当時、どうして鉄郎はメーテルのことを引き留めないのだろうかと不思議で仕方がなかったのだが、映画をすべて観終わったあとだと、その理由がありありと伝わってくる。鉄郎はこれまでの出会いから「生身の人間でいることが一番の幸福である」と確信し、メーテルが続ける旅を止めてはならないのだと考えたのだろう。鉄郎の悲壮の決意は素晴らしく、同時に正しい選択だとも感じた。

主人公にとって最善の選択が、ヒロインに対しては呪縛に変わってしまうという展開としては、後に『天気の子』や『なないろリンカネーション』(2014年発売の成人向けアドベンチャーゲーム/一部ルート)といった作品もある。なにが正解でなにが不正解かは蓋を開けてみるまで分からないが、きっと鉄郎の選んだ道は間違っていないのだと思いたい。

(文 / 聖☆あべさん)

TVアニメ『銀河鉄道999』

動画配信サービス各社にて配信中

【スタッフ】
原作:松本零士
企画:横山賢二、別所孝治、小湊洋市
製作担当:佐伯雅久
脚本:山浦弘靖、藤川桂介、吉田喜昭
チーフディレクター:西沢信孝
演出:明比正行、湯山邦彦、坂田ゆう、他
キャラクターデザイン:荒木伸吾、湖川滋
美術設定:浦田又治
音楽:青木望
指揮:中谷勝昭
演奏:コロムビアシンフォニックオーケストラ
オープニング曲:『銀河鉄道999』(歌 ささきいさお、杉並児童合唱団)
エンディング曲:『青い地球』(歌 ささきいさお、杉並児童合唱団)

【キャスト】
星野鉄郎:野沢雅子
メーテル:池田昌子
車掌:肝付兼太
ナレーター:高木均

劇場版『銀河鉄道999』

動画配信サービス各社にて配信中

【スタッフ】
企画・原作・構成:松本零士
製作総指揮:今田智憲
製作担当:横井三郎
企画:有賀健・高見義雄
脚本:石森史郎
監修:市川崑
監督:りんたろう
作画監督:小松原一男
美術:椋尾篁・窪田忠雄
作画監督補佐:角田紘一
美術補佐:山川昇
音楽:青木望
主題歌:『THE GALAXY EXPRESS 999』『TAKING OFF』(歌・演奏 ゴダイゴ)

【キャスト】
星野鉄郎:野沢雅子
メーテル:池田昌子
クレア:麻上洋子
車掌:肝付兼太
キャプテン・ハーロック:井上真樹夫
クイーン・エメラルダス:田島令子
大山トチロー:富山敬
リューズ: 小原乃梨子
機械伯爵:柴田秀勝
シャドー:藤田渉子
酒場の主人:槐柳二
鉄郎の母:坪井章子
ドクター・パン:納谷悟朗

©松本零士・東映アニメーション

オフィシャルサイト(東映アニメ―ション)

vol.2
vol.3