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もし義経が女の子だったら!? 戦いの中で育まれる愛に悶える『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~』レビュー

もし義経が女の子だったら!? 戦いの中で育まれる愛に悶える『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~』レビュー

オトメイトから9月17日に発売された『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~』は「義経が女だったら」がテーマの新作乙女ゲームです。歴史上の人物で女性説があるのは上杉謙信が有名ですが、義経は女性説がないにも関わらず「もし女だったら」のifストーリーが数多く存在します。本作はそのうちの一つですが、単に義経を女性にしただけでなく本作ならではのアレンジが加えられ、歴史もののゲームとして見ても乙女ゲームとして見ても楽しめます。本稿では歴史ファンタジーならではのifをラブロマンスで彩った本作についてレビューしていきます。

文 / みかめゆきよみ


「刺さる」属性が揃った殿方たち

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲本作の主人公である義経(遮那王)。凛とした表情は男女問わず惹きつけられる魅力を備えています

そもそもなぜ義経は創作ファンタジーの中で女性になることが多いのでしょうか? その理由は彼が持つ主人公としての魅力、とりわけ「主従関係」がポイントではないかと思うのです。義経は鞍馬山に預けられ稚児として育てられました。武士としての教育を施されたわけではありませんし、頼朝のように絶対的な権限を持っているわけでもありません。それでも義経には多くの従者がいます。彼らは義経のカリスマ性に惹きつけられ、命を預け、彼に殉じていくのです。ブロマンスとして見ても十分に魅力的ですが、もし義経が女の子だったらと考えると……もっと美味しいではないですか!!

改めて考えると義経って奇跡のようなバランスでできた人物だなぁと思います。そりゃあ女性にもしたくなりますよね!

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲源氏の御曹司という立場ゆえに担ぎ上げられてしまう。生まれに翻弄される義経

本作の義経は「男」であろうとする強い女の子。でも源氏に生まれたがために源氏再興を目指す者から担ぎ上げられてしまいます。ただでさえ運命に翻弄される立場にありながら、さらに女であることを隠し通さねばならず、つらい立場に立たされています。女であることがバレたら政治的利用されかねません。秘密を抱え、苦悩を抱え、それでも決して女々しく悩むのではなく、仲間と共に前へ進もうとする。そんな義経の姿も実に魅力的。この子にだったらみんな従いたくなります!

守られるだけの女の子像から一つ先をいく、今時の女の子像が描かれています。もしかしたら本当に義経は女の子だったのかも?と思えるほどです。

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

そんな魅力的な主人公に負けず劣らず、魅力的な攻略対象の殿方たち。個人的に高評価なのは弁慶がしっかり弁慶らしくあるところ。攻略対象が全員線の細いイケメンになりがちな乙女ゲーム界において、屈強で髭要素のある弁慶は大変貴重! 個人的な趣味ではありますが、義経と弁慶は体格差がなければ始まりません! 小さいほうが大きいほうを従える。このギャップこそが2人の魅力なのです。ありがとう、『ビルシャナ戦姫』。

髭にときめいてしまいましたが、その他の攻略対象キャラクターもそれぞれの魅力が詰まっていて、さらに史実的な要素もしっかりと組み込まれています。

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春玄は義経の幼なじみで、義経が女ということも最初から知っています。秘密を共有し合う仲、よいではないですか。しかも父親の代からの主従関係、素晴らしい。稚児の水干姿もたまらない!

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

源頼朝は言わずと知れた義経の兄。長いあいだ、流人として苦労を重ねて育ったせいか、孤独を募らせ冷酷な性格に。義経と面会しても感情を表に出しません。そんな彼が何を思っているのか、分からないからこそ彼の心情に触れたいと思ってしまいます。

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平知盛は、義経と敵対関係にありながら何故か義経と同じ能力を持つ謎の人物。貴族の雅さを持っていますが、武勇に優れた一面も。しかし平家の行く末には無関心で破滅願望もあり、ほっとけない人物です。彼との恋愛は開けてはいけない禁断の扉を開けてしまいそうでゾクゾクします。

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

平教経は平清盛の甥で知盛のいとこ。貴族化していく平家の中で侍らしい振る舞いを心がけています。同い年の義経とはライバル関係です。一見若くてやんちゃな雰囲気ですが、侍の誇りをもって行動していてとても真面目。そのギャップがなんともキュートです。

上記5人が恋愛・悲恋EDを迎えられる人物ですが、サブキャラクター4人ともifエンドを迎えることができます。彼らもメインキャラクターに負けず劣らずいいキャラしてます!

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

平重衡は知盛の弟。兄同様に貴族の雅さがあるものの、嗜虐的で残忍。歯向かう相手には容赦なく、狂気をはらんだ人物です。兄同様の特殊な能力を持っていますが、その使い方は苛烈です。彼に囚われたら何が起こるかわからない、そんな恐怖と期待を感じさせてくれる相手です。

本作では平知盛・重衡兄弟との因縁が描かれます。自分に執着する敵のイケメン兄弟、シチュエーション的に最高です。

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

兄弟なら佐藤兄弟も負けてはいません。佐藤継信は武に優れ、藤原秀衡の命により遮那王に仕え、生涯その身を捧げることを誓います。見た目通り柔らかい物腰ですが、その実腹黒い一面も。よいお兄ちゃんタイプ。

佐藤忠信は佐藤継信の弟。兄同様すぐれた侍ですが、やや先走る傾向があります。戦場では勇猛果敢。明るくてさっぱりしたムードメーカー的存在です。難しい立場の義経に代わり心情を吐露してくれるありがたい存在です。ふたりとも義経に対する忠誠心もバッチリ!

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

佐々木高綱は頼朝に仕え、頼朝が旗揚げをしたのちには頼朝と義経の家臣として剣を振るいます。若さゆえの物怖じしない無邪気な態度が特徴。この無邪気さで迫られたらドキドキしてしまいます。もちろん戦いにおいては頼れる存在。かわいい弟分といったところでしょうか。

というわけで計9人のキャラクターが見事に立っていてチョイスが絶妙です。主従、幼なじみ、身内、ライバル……刺さる属性がバッチリ揃っています。

筆者は歴史好きゆえに初見プレイでは本作の「義経」が辿る運命が気になりましたが、殿方の性格を知るにつれ、どんな恋愛が待っているのか、どんな恋愛ストーリーが待っているのかが俄然気になりました!

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

恋愛ルートの要となる「愛キャッチ」。選択肢のあとに表示され、意中の殿方の親密度がアップしたか否かが確認できます。メニュー画面の「情報」で誰との相性が高いかも随時チェック可能。個人的にありがたかったのは「道導-みちしるべ-」。物語の進行状況を確認でき、既に読んだ物語であれば自由に戻ることができます。別ルートを探る際に役に立ちました。

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲愛の花開く! 性別を偽っている義経との関係がどう変化していくのかが注目ポイントです

臨場感たっぷりの演出で恋愛を盛り上げる!

五条大橋で弁慶と戦うシーン、鵯越の逆落としなどの義経の名場面を取り入れつつも、本作のキーとなる「義経の性別の秘密」、また、義経と一部の人物に与えられた「力」が独自のストーリーを形成し、古今東西語られ尽くした源平合戦の予定調和を崩してハラハラドキドキを提供してくれます。

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲義経と弁慶の出会いのシーン。五条大橋。緊張感漂うシーンが見事に再現されています

戦いのシーンはキャラクターの立ち絵もよく動き、剣戟をしているような臨場感があります。乙女ゲームでは主人公がセリフ枠の部分にのみ表示されるケースが多く、本作のように画面に主人公が出てしまうと没入感が半減するのでは?と思いましたが、基本は戦いの場面のみなので恋愛パートに邪魔することはありません。義経が男言葉で話すため普通に読み進めると男の子と錯覚してしまうところですが、このように画面に現れると体格の差もわかり、むしろ没入感が増します。

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲共闘シーンは2人の関係あってこそ!

それをさらに際立たせるBGMもGOOD! 時代物だからといって和物の楽器にこだわらず、シーンを盛り上げるような楽器とメロディが刻まれています。本作は戦いの中で育まれる愛情が重要になるので、戦いのシーンに重きを置いている点にとても好感が持てます。

考証をしっかりしつつ、取っつきやすさにも配慮

おおまかな流れは史実を踏襲しており、かなりしっかり考証されているシナリオです。言葉遣いも歴史もののそれで、ファンタジーでありながらもガチな歴史ものの恋愛を描く気概を感じます。そのため、歴史が苦手な人にとっては少し難しい言葉が多く感じるかも。院政やクーデターなど当時の政情もガッツリ絡んでくるので、専門用語に差し込まれる「字典(言葉の解説)」はとても役に立つでしょう。

……なんてこれだけ読むと難しそうなイメージになってしまいますが、とりあえず「最終的に平家が西に追いやられて滅びる」という史実を頭に入れておけば、基本的な流れに則った恋愛エンドからifストーリーまで、十分に堪能できると思います。

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲字典はメニューから振り返ることも可能です。復習は大事! なにせ平家だけでもこんなにいますし……

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ WHAT's IN? tokyoレビュー

義経側からの視点だけでなく、平家側の動きは「一方その頃」的な感じで描かれるためとても分かりやすいです。

歴史ものとして作られている一方で、上記のように取っつきやすくなるような配慮も見られ、ビジュアルで気になったユーザーにも優しい仕様だと感じました。シリアスだけでなく、ギャグパートも合間合間に差し込まれ、ほのぼのする場面も。飽きさせない工夫も見られます。

源平合戦のおおまかな流れを知っている人には独自解釈が面白く、知らない人にはエンタメとして知識が蓄えられる。歴史ものじゃなければ体感できない恋愛がそこにはありました。主人公が源氏だからつい源氏側に肩入れしたくなりますが、滅びの道をゆく平家一門も悲恋フラグビンビンでつい肩入れしたくなるに違いありません。

主従関係、因縁の関係……さまざまな関係が恋愛に結びつき、どんなエンドを迎えるか、ぜひその目で確かめてみてください。


■タイトル:ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~
■発売元:アイディアファクトリー
■対応ハード:Nintendo Switch
■ジャンル:恋愛アドベンチャーゲーム
■対象年齢:17歳以上対象
■発売日:発売中(2020年9月17日)
■価格:
通常版 6,500円(税別)
限定版 8,500円(税別)
ダウンロード版 6,500円(税別)


『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~』オフィシャルサイト

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