全集中!『鬼滅の刃』特集  vol. 2

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ここまで広がるとは予想していなかった─子ども向け玩具に到達した『鬼滅の刃』の世界。徹底取材『DX日輪刀』ができるまで

ここまで広がるとは予想していなかった─子ども向け玩具に到達した『鬼滅の刃』の世界。徹底取材『DX日輪刀』ができるまで

TVアニメ『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)の武器「日輪刀」を再現した、初の音声搭載なりきり玩具、『鬼滅の刃 DX日輪刀』(価格:税込6,380 円/以下『DX日輪刀』)がバンダイより10月31日(土)に発売されます。「全集中、水の呼吸!」というセリフから始まる音声の数々は、アニメで炭治郎を演じている声優・花江夏樹さんが本商品のために録りおろした音源をたっぷりと収録。さらに劇中の名シーンも再現できる、刀身の付け替えに対応した3つのモードとともに、作品の世界観に合わせ炭治郎になりきって遊ぶことができます。

この『DX日輪刀』の特徴のひとつとして注目されるのが「対象年齢:6歳以上」という点で、小学生の子どもたちをメインターゲットに据えた商品となったこと。アニメとしては深夜枠で放送された『鬼滅の刃』、その放送終了後の人気とファン層の広がりを強く感じさせるおもちゃになりました。「仮面ライダー」や「プリキュア」シリーズなど、数ある子ども向けなりきり玩具で知られるバンダイが、『鬼滅の刃』の人気拡大をどのように見ていたのか、そして『DX日輪刀』に秘められたこだわりの仕様の数々とは? 開発者の声とともにレポートします。

取材・文 / 柳 雄大


「水の呼吸」「ヒノカミ神楽」の両方がこの一本で楽しめる

『DX日輪刀』は、全長約58cmという迫力あるサイズ、炭治郎が使う「水の呼吸」と、炎舞う「ヒノカミ神楽」というそれぞれの型(技)にあわせた2種類のエフェクトを用意した刀身、そして劇中に登場する50種類の音声収録という3点が仕様上のセールスポイントになっています。

(動画:バンダイによる商品紹介PV)

遊び方としては、「水の呼吸」の刀身を取り付けて遊ぶ“水の呼吸モード”、「ヒノカミ神楽」の刀身を取り付けて遊ぶ“ヒノカミ神楽モード”のほかに、刀身を外し柄(つか)の部分のみを振って遊べる“アクションモード”を加えた3つのモードを用意。このうち「水の呼吸」の型は10種類あり、ボタンを押すごとに下記のセリフと効果音が楽しめます。

「水の呼吸モード」(及び「アクションモード」)に収録されている音声

全集中 水の呼吸 壱ノ型 水面斬り(みなもぎり)
全集中 水の呼吸 弐ノ型 水車(みずぐるま)
全集中 水の呼吸 参ノ型 流流舞い(りゅうりゅうまい)
全集中 水の呼吸 肆ノ型 打ち潮(うちしお)
全集中 水の呼吸 伍ノ型 干天の慈雨(かんてんのじう)
全集中 水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦(ねじれうず)
全集中 水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き(しずくはもんづき)
全集中 水の呼吸 捌ノ型 滝壷(たきつぼ)
全集中 水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫・乱(すいりゅうしぶき・らん)
全集中 水の呼吸 拾ノ型 生生流転(せいせいるてん)

「子ども向けの日輪刀」はどのタイミングで生まれたのか?

『DX日輪刀』のセット内容。「水の呼吸」「ヒノカミ神楽」2種類の刀身が付属しています。

今回はこの『DX日輪刀』を手がけた、バンダイ トイ事業カンパニー カテゴリーデザイン部の開発担当者に詳しい話を聞くことに。商品開発はこれまでキャラクター玩具、幼児向け玩具を手がけてきたスタッフによるものだということで、まず気になったのが、同社の子ども向け玩具チームが『鬼滅の刃』を注目するようになったきっかけとそのタイミングでした。

「だいたい去年(2019年)の冬ぐらい、TVアニメの放送が終わってからですね。アニメがやっている最中は、どちらかというと大人向けのフィギュアなどがすごく売れていて。それが放送終了後、ファンの裾野がちょっと広がってきたなと。近所の子どもたちが「水面斬り!」とか言いながらちゃんばらごっこしているのを見かけたんです。なのでまずはデータというより“肌感”として、大人からお子さんたちの層にも(人気が)移ってきたな……と感じたところから分析を始めました。そうしたらやっぱり、データ上でも層が広がっていることがわかって」

しかし、子ども向けのなりきり玩具といえば、一般的にTV番組の放送時期にあわせて商品化されることが多いジャンル。『DX日輪刀』の場合はTVアニメシリーズ終了から1年後の商品化というちょっと珍しいケースになります。

「確かに、弊社では“番組に合わせて一緒に作り上げていく”というやり方を得意としています。ただ『鬼滅の刃』の場合、アニメが始まった時点でここまでお子さんにも人気が広がるとは予想ができなくて……(笑)。子どもたちにも下りてきたな、と感じたときには、もう10月の映画(『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』)の公開が決まっていたので、それまでに人気がもっと広がって大きなピークが来る、そこに合わせて商品化をしましょう、という流れでタイミングが見えてきました」

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』10月16日(金)より全国公開

深夜帯アニメ作品からの商品化といえば、バンダイナムコグループでハイターゲット向けのフィギュアやプラモデルを扱うBANDAI SPIRITSによる「PROPLICA」も有名。事実、『鬼滅の刃』の日輪刀も、よりリアルな造形の商品が同ブランドから来年2月に発売されることが判明しています。そんな中、『DX日輪刀』の子ども向けとしての商品化はチャレンジだったのか、もはや必然だったのでしょうか。

「今となっては大きく盛り上がっていますけど、企画した当初の時点では、やっぱりチャレンジだったんじゃないでしょうか。これは個人的な意見ですが、『鬼滅の刃』については(配信などの)色んなチャンネルで観られるようにした戦略がすごく上手だったと思います。深夜アニメ発ではあるんですけど、僕自身もAmazonプライム・ビデオで観ましたし……もちろん作品がすばらしいというのが前提ですが、こういった戦略が子どもたちにまで人気が拡大した一つの要因ではないかと」

こうした称賛を受ける、アニメの作品サイド(集英社・アニプレックス・ufotable)が、今回の商品化をどのようなリアクションで受け入れたのかも気になるところでした。

「この商品の企画を始めた頃は、『鬼滅の刃』の(子ども向けの)おもちゃとしての商品化はまだなかったので、一度お伺いをしに行ったんですよ。そうしたら、製作委員会さんからも「ぜひ」と言っていただけまして、10月の劇場版公開のタイミングで……ということで意見が合致したんです」

「6歳以上」の設定ゆえに─(拾ノ型)“生生流転”だけ出し続ける遊びも可能に!

かくして商品化が決まった『DX日輪刀』。しかし「仮面ライダー」や「プリキュア」シリーズなど、バンダイの子ども向けなりきり玩具は「対象年齢:3歳以上」であることがほとんど。そこよりは3コ上となる「対象年齢:6歳以上」とした設定にはどんな意図があったのでしょうか。

「お客様のデータ分析から、コアとなるターゲットは小学校の低学年~中学年のお子さんというのが見えてきて。その子たちに喜ばれるものをつくろうというところから、対象年齢を6歳以上としました。僕らのルールとして、仮に対象年齢が3歳以上なら、基準となる3歳の子が遊べる大きさや仕様、遊び方にしないといけないんですよね。だから小学生が楽しめるものとなると、やっぱり6~7歳の子にとって楽しく遊べる、魅力的に見えるということを基準にして仕様を設定しています」

「水の呼吸」の刀身装着時のサイズは全長約58cm。

対象年齢が定まってくると、いよいよ商品としてのこだわりも見えてきます。

「サイズには特にこだわったんですよ、できるだけ大きくしたくて。小学生低学年~中学年ぐらいの子たちって、商品が幼いものに見えちゃうと恥ずかしくて持てない、という面があって。だからできるだけ……本物の刀に近づけるのは難しくても、できるだけ大きくしてあげたいなと」

おもちゃに入っている音声のプログラムなども、対象年齢に合わせてやや複雑な仕様が実現できたそう。

「例えば……ボタンを押すごとに次の型(技)の音が鳴るんですけど、音が鳴っている途中、もしくは鳴り終わってから5秒以内にもう一度押すと、“全集中、水の呼吸!”のセリフをスキップして“〇ノ型”から鳴ることで型を連続で出しているイメージで遊べます。さらにボタンは長押しすることで、同じ型ばっかり出すこともできるんですよ。例えば(拾ノ型)生生流転(せいせいるてん)をずっと出したい……というとき、ボタンを長押しすれば、その後はボタンを押す度に生生流転だけを連続で出せるようになります。3歳以下のお子さんだと少し難しい遊びですが、ターゲットである小学生のお子さんであれば楽しんでいただけると考え入れました。このように、できるだけ世界観を楽しんでもらおうと思って仕様を工夫しています」

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