Interview

どんな困難にも打ち勝ってみんなと一緒に演劇をしたい。梅津瑞樹&前山剛久があなたの孤独を癒す舞台「BIRTH」、まもなく開演!

どんな困難にも打ち勝ってみんなと一緒に演劇をしたい。梅津瑞樹&前山剛久があなたの孤独を癒す舞台「BIRTH」、まもなく開演!

シライケイタが代表を務める劇団温泉ドラゴンが、足掛け5年にわたって上演し、2015年に韓国の密陽演劇祭で戯曲賞を受賞、国内外から高い評価を得た「BIRTH」が、10月10日(土)より21日(水)まで、よみうり大手町ホールにて上演される。
読売演劇大賞で優秀演出家賞を受賞した千葉哲也が演出を手がける本作のキャストは、ダイゴ役に梅津瑞樹、前山剛久。ユウジ役に杉江大志、玉城裕規。マモル役に後藤 大、佐藤祐吾。オザワ役に陳内 将、北園 涼、章平と、今をときめく実力派の若手俳優が揃う。
今回は、詐欺の片棒を担ぐことになるダイゴを演じるダブルキャストの梅津瑞樹と前山剛久にインタビュー。今作のことから、これからの演劇の未来について熱い想いを語ってもらった。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 石川浩章


今作は男くさくて、泥くさい作品

シライケイタさんが代表を務める劇団温泉ドラゴンの財産演目「BIRTH」にご出演が決まりました。

梅津瑞樹 温泉ドラゴンさんの今作には触れたことがなかったのですが、演出が千葉哲也さんと聞いて感慨深いものがあって。千葉さんには、僕が所属している、虚構の劇団番外公演 虚構の旅団vol.3「青春の門~放浪篇~」(2016)で演出をつけていただいたことがあったので、再びご一緒できるのが嬉しかったです。

前山剛久 僕は脚本を読んで「なるほど」と納得して、4人芝居という濃密なお芝居であり、コロナ禍の今の状況にぴったりのテーマの作品だと思いました。出演が決まって嬉しかったです。

BIRTH 梅津瑞樹 WHAT's IN? tokyoインタビュー

梅津瑞樹

脚本の印象を伺わせてください。

前山 男くさくて、泥くさい作品ですね(笑)。今作のような戯曲に触れたことがなかったので、僕にとって挑戦だと思いました。

梅津 僕が演じるダイゴというキャラクターは、親がいない設定です。僕自身は両親が健在なので、どうしたらダイゴのような環境に置かれた役を誠実に演じられるのか、初読のときは戸惑ってしまって。それでも、稽古が始まって3週間ほど経つと、ダイゴのつらい現状に寄り添うことができるようになって、さらに理解を深めようと稽古を続けています。

BIRTH 前山剛久 WHAT's IN? tokyoインタビュー

前山剛久

ここまでの稽古はいかがですか。

前山 みんなで意見を出し合って、ぶつかり合いながら、楽しく稽古をしています。とはいえ、とてもリアルなお芝居なので、コロナのことに気をつけながら演技をするのはなかなか大変です。今作では演技のことだけでなく、これまで稽古場で経験したことのない苦労もみんなで分かち合いながら稽古をしています。

梅津 僕と前ちゃんさん(前山剛久)はダブルキャストで、お互いが他のチームのお芝居を見るんですけど、自分の持っていないお芝居を前ちゃんさんたちのチームから感じて羨ましいと思ってしまいますね。前ちゃんさんがダイゴを演じているのを見ていると「すごいな」と(笑)。

前山 (笑)。それは逆も然りだね。僕も梅ちゃん(梅津瑞樹)のお芝居を見て納得させられるから。お互い刺激し合っている稽古場だよね。

梅津 いい意味で緊張感があります。

公式Twitterを拝見すると、稽古場の雰囲気の良さが伝わります。

前山 雰囲気はいいですね。演出の千葉(哲也)さんが優しいので、必然的にみんなにこやかになる座組みだと思います。

梅津 この座組みは自分の役だけでなくて、各々の役について話し合う機会が多いので、親密な空気が流れやすい稽古場だと思います。

いろいろな読み方を許容してくれるダイゴとは?

おふたりが演じるダイゴの印象を聞かせてください。

前山 ひと言でいえば……とてもおバカですよね(笑)。

梅津 わかります(笑)。

前山 それでも、圧倒的にいいヤツなんです。しかも、千葉さんと稽古をしていくと、どういった見方にも見えてしまう。演じれば演じるほど、真面目かもしれないし、やっぱり、おバカかもしれないと思えてくる。いろいろな読み方を許容してくれる役というか。

梅津 どのようにでも演じられるんです。どういうベクトルで演じても、ダイゴとして成立してしまう。ダイゴは常日頃何も考えてないし、他人に騙されやすいかもしれない。でも、実際は……となると、演じることが難しいですね。彼の人間性に壁を感じることが多いので、それを乗り越えるまでに時間をかけながら稽古をしています。

BIRTH 梅津瑞樹 WHAT's IN? tokyoインタビュー

そんなダイゴを演じるうえで意識されていることはありますか。

前山 ほかの登場人物に自分の気持ちを正直にぶつけるし、愛情を持っている役だと思うので、どんな状態でも相手に気を遣うことを意識して、彼の気の遣い様を大切にしています。

梅津 ダイゴは何かが欠けていて、普通ではない状態で生きている。彼の置かれている状況を掴みたくて、稽古で探り探りしながら今に至っています。他者とのコミュニケーションが上手にとれない人物で……なんというか、言葉にするのが難しい人物ですね(笑)。

前山 (笑)。難しいよね。

梅津 それを逆手にとって、何者にも括られず、ひと言では説明できない人物像にしたいと思っています。ダイゴに限ったわけじゃなくて、今作の登場人物はみんな何かが欠けていて、ひと括りには説明できないキャラクターなんです。

梅津さんと前山さんは同じ役を演じられるわけですが、役へのアプローチは違いますか。

前山 かなり違います(笑)。真逆といってもよくて。梅ちゃんのお芝居を見ていると、「そんな演じ方があったのか」と感心します。だからといって、僕と梅ちゃんの演技、どちらが正しいわけではないので、千葉さんが僕らのアプローチを踏襲して演出してくださるのでありがたいです。

梅津 役へのアプローチが少しでも違うと、まったく違う役になってしまう。前ちゃんさんのお芝居の一部分をマネしようとすると、舞台のすべてが変わってしまうほどで。ダブルキャストとはいえ、マネができないことが今回の面白さに繋がると思います。

“目的”と“障害”を意識することが大切

ちなみに、どんな役でも、役を演じる際に意識されていることはありますか。

前山 僕の場合は、どういういきさつで、演じる役がどんな感情にいたるのか、物語の中でどんなフラストレーションを溜めているのか意識しています。とある舞台で演出家さんから「役はみんな困っている。困っていないとお芝居にならない」と聞いたことがあって。

梅津 なるほど。僕の劇団の主宰の鴻上尚史さんがおっしゃる“目的”と“障害”を意識することが大切だという考えですね。

前山 そう。その考え方が僕の中でしっくりきて、役がどんなストレスを溜めているのか、それをどのようにスッキリさせたいのか、具体的な解決策に向けて悩み続けることを、どの役でも考えるようにしています。

梅津 前ちゃんさんの発想はすごく理解できます。僕の場合は、端的に嘘をつかないことですね。演じている瞬間に感じたリアルな感情をお芝居にフィードバックさせようとしています。

BIRTH 前山剛久 WHAT's IN? tokyoインタビュー

演出の千葉哲也さんの印象を伺わせてください。

前山 いろんな側面のある方です。「こうしよう」とおっしゃっていた部分を「やっぱりこっちにしよう」と素直におっしゃるんです。突き詰めていくと、僕がいるチームと梅ちゃんがいるチームにつける演出が真逆の部分もあったりする(笑)。千葉さんは演出家でもありますが、俳優でプレイヤーだから、今を生きている演出家というか。

梅津 稽古場では実際にご自分でお芝居をして見せてくださって、それがとても上手で、悔しくなったりもする(笑)。プレイヤーならではの演出をされていると思います。

千葉さんから演出を受けると印象が変わってくる、と。そんな千葉さんからかけられた言葉で響いたものはありますか?

前山 今日の稽古で千葉さんが「前ちゃんの好きに演じていいんだ」とおっしゃってくださって。「好きに演じていい」という言葉はなかなか言ってもらえないのでとても嬉しかったです。

梅津 僕が印象に残っているのは、「お客様に託してもいい」という言葉です。今作はすんなり飲み込めないというか、解釈が難しい物語です。でも、僕らがわかりやすくして解決してしまったお芝居にすると、演劇として成立しなくなってしまう。ある部分では解釈をお客様に委ねる必要があって。演者がいろいろな感情を抱きながら演じることを肯定してくださっていると思います。

ここまでの稽古を踏まえて、おふたりが感じる今作の大切な点はありますか。

前山 「親とは? 子供とは?」と考えさせる家族のお話です。僕はご覧になる方が、今だからこそ、親のありがたみを再確認してくださったら嬉しいと思っています。男くさいお芝居ではあるかもしれませんが、伝えたいことはとてもピュアでまっすぐな作品だと思います。

梅津 前ちゃんさんが物語のことを言ってくださったので……僕はいい年をした大人たちが、鼻水や汗を垂らしながら必死に演じる。それだけで面白いと思うんです。なぜなら、前ちゃんさんが普段だったらまったく想像もできないお芝居をするので(笑)。

前山 そこに期待する?(笑)

お互いの演技が勉強になる

(笑)。おふたり、お互いの印象を伺わせてください。

前山 梅ちゃんとは舞台「刀剣乱舞」を含めて3回ほど共演していますが、ダブルキャストは初めてで、今回の座組みで初めて気づいたというか……天然だと思った(笑)。

梅津 あはは。

前山 今回の共演にしてようやく気づいたよ(笑)。

梅津 やっとじゃないですか!(笑)

前山 (笑)。それが梅ちゃんの良さだと思うし、いつもフワフワして柔らかい印象があったけど、今回はその想いが強くなったな。梅ちゃんの演技を見ていると、役の捉え方や千葉さんの演出をそんなふうに解釈していたのかという驚きがあるし、勉強になります(笑)。

梅津 いやいや(笑)。前ちゃんさんのお芝居を見ていると僕自身の演技も変わっていくほどで、こちらこそ勉強させていただいています(笑)。

前山 ほんと?(笑)

梅津 前ちゃんさんのお芝居を見て「チクショー!」と思ったりすることもあって(笑)。ダブルキャストならではの楽しさを味わっています。

BIRTH 梅津瑞樹 前山剛久 WHAT's IN? tokyoインタビュー

先ほど、稽古場のことを伺いましたが、やはりコロナの影響で演劇をするというのは厳しいことだなと感じます。

前山 そうですね。たしかに僕らもつらいことは多いですが、なによりお客様が大変ですよね。気軽に劇場に足を運ぶことさえままならない。そういう意味で、舞台はつらい立場にあることを感じます。先日、舞台「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」Rule the Stage-track.2-(2020)でお芝居をしたときもフェイスシールドをつけて演じたし。舞台がどうあるべきか再確認させられる時間だと思っていて。今、演劇は試されていて、新しく生まれ変わる時期だと思うんです。

梅津 僕も先日の科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶(“綺伝 いくさ世の徒花”に取消線入る)でもフェイスシールドをつけてソーシャルディスタンスを守りながら演じて、全公演終わってもなんだか安心できなくて。約2週間経って感染者の報告がなかったことで、初めて終わったという感覚になりました。コロナ禍で生まれた“配信演劇”もそうだし、僕たち俳優がどう立ち回っていけばいいのか考えるようになって。これまでにはない新しい表現方法を目指す期間だと思っています。

俳優としてのご自身の見方も変わった。

前山 変わりましたね。コロナの状況下で舞台を観ることさえ難しくなって、俳優って弱い存在だと思い知らされたというか。僕らは、板の上に立つための舞台がなければ始まらないし、応援してくださる方もいないと成り立たない職業です。じゃあ、それらを踏まえて、どんなパフォーマンスをしてお客様を楽しませていくのか。もう一度、俳優という存在を考えないといけないと思ったし、僕たち自身も試されている気がします。

梅津 俳優として、なぜ演劇に固執しているのかを考えるようになりました。舞台は一度きりのライブで、なぜ映像やリモート演劇だけでは俳優として満足できないのか、考えさせられました。“配信演劇”にすれば、お客様や僕たちだって安心できる部分が多くなるかもしれない。なのに劇場で、ライブで演じたくなる。生でしか味わえない感覚を誰しもが忘れられないものだし、それを知っているから舞台に立とうとする。これだけ長い間演劇の歴史が紡がれてきて、今だに残っている文化だからこそ、これからも続けていきたいと思うようになりました。

一緒に演劇を支えてくれたら嬉しい

それでは、最後に見どころをお願いいたします。

前山 舞台は皆さんと支え合うことで出来上がるので、みんなで協力して作品を作り上げたいです。大変な状況だと思いますが、観に来てくださればとてもありがたいですし、それは僕らの力になって、僕らもさらに良いお芝居ができると思っています。皆さんで協力して素晴らしい舞台を作りましょう。

梅津 今作は、何かが欠けてしまった人間が寄り添う物語です。それは、家族や誰かへの“愛”だったりしますが、僕らもどこかしら欠けている弱い存在だと思うんです。何かを失って不安定な感覚は誰しもが抱く普遍的な感情だと教えてくれます。ご来場が難しい方も配信がありますし、一緒に演劇を支えてくれたら嬉しいです。

「BIRTH」

2020年10月10日(土)~10月21日(水)よみうり大手町ホール

<ライブ配信決定!>
配信公演:
●10月10日(土)13:00公演/18:00公演
[アーカイブ視聴期間]2020年10月17日(土)23:59まで
●10月21日(水)12:30公演/16:30公演
[アーカイブ視聴期間]2020年10月28日(水)23:59まで
※生配信終了後から1週間、視聴チケットの購入・アーカイブ視聴が可能。
詳細はこちらをご覧ください

【STORY】
取調室。一人の男が警官から尋問を受けている。男は事件の真相を語り始める……。
出所したばかりのユウジは昔の経験を活かして、ある『商売』を始めることを思いつく。
裏社会の商売を助ける仕事をしているオザワの元を訪れ、必要な場所や道具を手に入れたユウジは
昔の仲間であったダイゴと、ダイゴの友人であるマモル、オザワと共に『商売』を始めることに。
それぞれの事情を抱えた男たちの選んだ仕事、それは「オレオレ詐欺」。
愛を求め、運命に翻弄される四人の男の物語。

脚本:シライケイタ
演出:千葉哲也

出演:
ダイゴ:梅津瑞樹・前山剛久
ユウジ:杉江大志・玉城裕規
マモル:後藤 大・佐藤祐吾
オザワ:陳内 将・北園 涼・章平

おかあさん(声の出演):松永玲子

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@parcostage)

©シライケイタ/ BIRTH製作委員会

梅津瑞樹(うめつ・みずき)

1992年12月8日生まれ、千葉県出身。「虚構の劇団」所属。主な出演作品に、「デルフィニア戦記~動乱の序章~」(ナジェック 役)、舞台『刀剣乱舞』シリーズ(山姥切長義 役)、【舞台】東映ムビ×ステ『GOZEN-狂乱の剣-』(土御門月暗役)、ミラクル☆ステ―ジ『サンリオ男子』~ハーモニーの魔法~(梅崎慎矢 役)、極上文學 第14弾『桜の森の満開の下』~孤独~、舞台『27 -7ORDER-』(カート 役)などがある。10月23日(金)には梅津瑞樹1st写真集『その丸木舟の行く先』が発売される。

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前山剛久(まえやま・たかひさ)

1991年2月7日生まれ、大阪府出身。2011年テレビ『仮面ライダーウィザード』(ソラ/グレムリン 役)ドラマデビュー以降、舞台『刀剣乱舞』シリーズ(鶯丸 役)、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』シリーズ(天祥院英智 役)をはじめ、数々の話題作に出演。近年の主な出演作品には【舞台】『GOZEN─狂乱の剣─』、Reading♥stage『百合と薔薇』、舞台『銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠』、舞台『機動戦士ガンダム00 -破壊による再生-』、『妖怪アパートの幽雅な日常』、『戦国ナイトブラッド』、『PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1―犯罪係数―』、舞台『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage-track.2-【映画】『GOZEN─純恋の剣─』、『一礼して、キス』【ドラマ】『御茶ノ水ロック』などがある。出演待機作に、恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』(10月22日出演)、舞台『No.9-不滅の旋律-』(2020年12月13日~2021年1月7日上演)がある。

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