Interview

YENMA 多国籍で無国籍な聴き応え。4人の個性が独自のサウンドを生み出す話題のバンド。初の全国流通盤でもある1stアルバムについて訊く。

YENMA 多国籍で無国籍な聴き応え。4人の個性が独自のサウンドを生み出す話題のバンド。初の全国流通盤でもある1stアルバムについて訊く。

『閃光ライオット』ファイナリストまで残りながら、一度解散して2018年に再結成した男女混声バンド、YENMA(エンマ)。以前はCharles名義でバンド活動していたが、今回初の全国流通盤となる1stアルバム『Piñata』(ピニャータ)発売の2カ月前に現バンド名に改名したという。メンバー4人中3人が英語を話せることもあり、日本のカルチャーを背負って、中国、台湾など海外展開も視野に入れているそうだ。
音楽的には男女編成を活かしたヴォーカル/コーラスが耳に付き、メンバーの多彩なバック・グラウンドを奔放かつ濃厚に反映させたアレンジ/サウンドが非常に面白い。また、フロントマンである池田 光の昭和歌謡調の独特な歌声を軸に、楽しさも切なさも全部ひっくるめた表情豊かなポップ・ソングは一度聴けばクセになってしまう。松岡モトキ、ヒダカトオル(THE STARBEMS/GALLOW)の2名をプロデューサーに迎えた今作について、メンバー4人に話を聞いた。

取材・文 / 荒金良介


ジャンルの枠に縛られたくないので、いろんな要素を入れたいなと。多国籍・無国籍な曲もあるので、まずその意志は一つ出せていると思います(池田)

もともと『閃光ライオット 2014』に応募するために結成したバンドだそうですね?

池田 光 そうですね。僕が高校時代にスイスに留学していて、武尊がアメリカに留学していたんですけど、そのときの留学団体で知り合いました。そこで唯一バンドをやっていた2人で、しかもレッチリとか好きなバンドも同じだから盛り上がったんですよ。それで帰国後に一緒にスタジオに入ろうと。

山本武尊 レッチリを2人でカバーしてね(笑)。

池田 麻美子とは予備校で一緒でした。そのときは予備校内の共通の友達から、バンドをやっている子がいるよとお互い聞いていただけで。

渡邉麻美子 そんな中たまたま私が出たライブに光が観に来ていて、そこで友達になりました。それで、大学に上がったタイミングで、光が私と武尊にバンドやろうよって。

音楽性は今とはまた違ったんですか?

池田 3ピースだったので、ACIDMANや、麻美子はGO!GO!7188が好きだったので、そういうテイストでかっこいいロック・バンドをやりたいなと。

『閃光ライオット 2014』のファイナリストまで残ったものの、一度解散して、18年に再びバンドを組む流れですよね?

池田 はい。各々の身の回りのタイミングもあって、またバンドをやらない?って。

渡邉 違うバンドを辞めたときだったので、またバンドをやれる!って。

池田 それで新たに新曲を作る中で、バンドのサウンドとしてもう一つ楽器が欲しくて、3人とも鍵盤がいいねって。

(深澤は)アレンジ面でもアイデアを出してくれるし、知識もすごくあるから(山本)

そこで深澤さんが加入するんですね。

深澤希実 私は大学時代にジャズをやっていたんですが、光と共通の友達がいて、ライブをやったときに光が観に来てくれていて。

池田 とにかく楽しそうに弾く姿が印象的だったんですよ。それで鍵盤を探すとなったときにバンドに入ってくれ!って希実に声をかけました。

深澤 3人がやっていたバンドに加入するのは躊躇したけど、光が半分怒り気味で「大丈夫だよ!」と言ってくれて。実際にスタジオに入ったら、一瞬で仲良くなりました。

この4人で音を合わせたときは現在に通じるサウンドでした?

池田 そうですね。鍵盤が入ると、こんなに違うんだって。

山本 (深澤は)アレンジ面でもアイデアを出してくれるし、知識もすごくあるから。

池田 アップデートした音楽をやりたかったので、希実の加入は大きかったです。

メンバーのバック・グラウンドがバラバラなので、それを活かさないとやる意味がないなと(池田)

現4人編成で音楽的に一番変化した部分というと?

池田 ここ2年間はひらすら探求していたので、正直に言うと、音楽性は定まってませんでした。その中で自分たちの土台が固まってきて・・・ジャンルに一切縛られずにやろうと。というのも、メンバーのバック・グラウンドがバラバラなので、それを活かさないとやる意味がないなと。

山本 メタルも好きだけど、レゲエ、スカとか大学時代はその辺の音楽をプレイしていたので、Jポップにも混ぜやすかったんですよ。

池田 武尊は引き出しも多いから、フィルとかもすごく面白くて。

深澤 あまりいないタイプだなって。ドラムらしいドラムというか、それが気持ち良くて。

山本 ゆらゆら帝国、54-71も好きでした。

深澤 私は小さい頃からクラシック・ピアノを習ってたんですけど、ジャズ・ピアノを独学で初めて、音楽大学ではジャズを専攻してたんですよ。ただ、ジャズも好きだけど、R&B、ブラック・ミュージックをやるバンドも組んでて、そっちの方が楽しいなと。日本のロックも好きで、BUMP OF CHICKEN、YUKIさん、椎名林檎さんも好きで、歌ものを耳コピするのも好きでした。

渡邉 私も元々はクラシック・ピアノをやっていたのですが、その一方でGO!GO!7188にハマりだしました。今のベース・プレイもアッコさんの影響は大きいと思っています。ほかにTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT、Syrup16g、東京事変、筋肉少女帯、大学時代はソウル、R&Bも聴いてました。

池田 僕は雑多に聴いてたんですよ。洋楽が多くて、BON JOVI、Eminem、Ne-Yo、Bruno Mars、Maroon 5、X JAPAN、GLAYも聴き漁って。ただ、ルーツと言えば、父親のカーステレオから流れていた昭和歌謡ですね。ユーミン(松任谷由実)、尾崎豊さんとか昭和歌謡の独特な哀愁が体に染み付いてます。メロディを作るときには歌謡感が出てくるから、そこは僕がルーツとして持っているところだと思います。

今作を聴いても、メロディはいい意味で既聴感のある懐かしさが出てますよね。皆さん幅広いジャンルの音楽を聴いてますが、YENMAの楽曲自体にはとっ散らかった印象はなくて。そこは池田さんの歌声の魅力が大きいのかなと。一度聴いたら忘れない、独特な声質ですね。

池田 ああ、ヴォーカル冥利に尽きる言葉です。

深澤 光が曲を作って、光が歌えば、それがYENMAになる自信があるので。好きにアレンジしてもグチャグチャにならないのは、ヴォーカリストの軸が立っているからブレないのかなと。

渡邉 光の歌声で自動的にYENMAらしさが醸し出されるから。

男女混合もわりと珍しいバンド編成ですよね。今作も女性コーラスを存分に活かした楽曲が多く収録されてます。

池田 僕はキーが高い方なので、女性コーラスと馴染みが良くて。男女2:2の編成は絶対いいなと思って。武尊も歌えるから、この4人で歌えるというのも魅力になると思います。

ツイン・ヴォーカルに初めてチャレンジしたんですよ。狙ってやったところはあるんですけど、今のシーンにツイン・ヴォーカルのバンドは少ないから、やるしかないでしょって(池田)

なるほど。今作はYENMA名義として初の1stアルバムになりますが、具体的にはどんなアルバム像がありました?

池田 ジャンルの枠に縛られたくないので、いろんな要素を入れたいなと。多国籍・無国籍な曲もあるので、まずその意志は一つ出せていると思います。あとは「Blue Monday」ですかね。ツイン・ヴォーカルに初めてチャレンジしたんですよ。狙ってやったところはあるんですけど、今のシーンにツイン・ヴォーカルのバンドは少ないから、やるしかないでしょって。コロナ中にYouTubeにもリモート・バージョンをアップしたんですけど、お客さんの反応も思った以上に良かったんですよ。だから、YENMAとしてツイン・ヴォーカルはこれからガンガンやっていきたいなと。

深澤 この曲はCharles時代にはなかった大人っぽさ、切なさもあるので。光がデモを送ってくれたときに、これは新しい曲だなって。曲がYENMAの個性を引っ張ってくれたと思います。

小悪魔感は女性あるあるかなって。男の女々しさと女性の狡さをリアルに表現できて絡めることができたなと(深澤)

この曲の歌詞がまた切なくて・・・。

深澤 最初は光が全部の歌詞を書いてきてくれて、光からこの歌詞はこういう女性だからと話してもらってから、私が歌うパートは自分で書きました。

池田 とことんリアルにしたくて。女性の持つ狡さをうまく引き出してもらえたなと(笑)。バイバイと言ってるけど、完全に関係性を切りたくないみたいな。

深澤 小悪魔感は女性あるあるかなって。男の女々しさと女性の狡さをリアルに表現できて絡めることができたなと。

池田 綺麗事じゃなく、恋愛のリアルな部分を追求したので、そこは2人でディスカッションしました。

アウトロに4人のガヤを入れているところは、素の部分が出てると思います(渡邉)

「Blue Monday」みたいな曲がある一方で、「シャンデリア」のようにアッパーに振り切った楽曲があるのもYENMAの強味です。この曲はMVにもなってますが、バンドの名刺的な曲ですか?

池田 Charles時代の曲なんですけど、YENMAの新しい時代にも引っ張っていきたい要素なんですよ。

深澤 アレンジは結構好き勝手にやって、お祭り騒ぎみたいな曲になっているんですけど。YENMAになっても、やりたいことをやる姿勢は変わらないから。

池田 2番のAメロでレゲエになったりするんです(笑)。武尊が爆発してますからね。

山本 そこはまかせてもらって。

池田 ほんとにアレンジのときからイキイキしてました。

山本 エンジニアさんもダブが好きだったので、ダブ風のリバーブをかけてくれたり面白かったです。

池田 メンバー仲が良いので、それが詰まっている曲でもありますね。

渡邉 アウトロに4人のガヤを入れているところは、素の部分が出てると思います。

池田 MVもメンバーで脚本を考えたんですよ。4人でお芝居するような感覚でやりました。バンドの仲の良さをサウンドにもパッケージしたい気持ちがありました。

アニメーション風のMVも完全に振り切った内容ですね。中途半端にやらないぞ、という強い意志が伝わってきました。

池田 振り切りました(笑)。

深澤 やるならとことんバカになろうと。かわいいだけじゃなく、色味もサイケぽかったり。「ジャンデリア」の歌詞もぶっ飛んでて、前向き過ぎて主人公が怖いんですよ。そもそも恋する女性すら、存在しないんじゃないかと思うくらい。

池田 おいおい、やめろ。そんなことない(笑)。

深澤 そのぶっ飛び感はMVにも反映できたんじゃないかと。

「ぐるぐるグルーヴ」って歌われたときは、何だこれはって(笑)(深澤)

<シャンデリアに乗ってやってきた>、<ぐるぐるぐるぐるぐるぐる ぐるぐるグルーヴ>の歌詞は強烈なパンチラインになってます。

池田 ギターで弾き語りしながら作ることが多いんですが、「シャンデリアに乗ってやってきた」というフレーズが最初に降りてきて。異様に語呂が良かったので、その1フレーズから広げたら楽しくなって。

渡邉 よく広げられたよね(笑)。

深澤 スタジオで聴いたときも、めっちゃキャッチーでいい曲じゃん!って。「ぐるぐるグルーヴ」って歌われたときは、何だこれはって(笑)。これ以上ないでしょって。

池田 最初メンバーに聴かせたときに少し心配はありましたけどね。

深澤 ほんとにこれでいいの?という話し合いはありました(笑)。

池田 でも僕は変えたくなくて。やっぱり音楽でキャッチーなものをやりたいから。それで「ぐるぐるグルーヴ」が生まれました(笑)。

ダサイかもしれないけど、耳に引っ掻き傷を残す音楽をやりたい?

池田 そうですね。耳にガッと残ることを大事にしています。歌詞とサウンドでどんどん毒を出していきたくて。

「Cavalry」は深澤さんのルーツが出たジャズっぽい展開が面白かったです。

深澤 光からこの曲はヘンなことをしたいと言われて。Cマイナーでモードっぽい雰囲気を出しつつ、ドラムも結構遊んでいるし、私のソロも自由にやりました。ソロ部分は決めこまないで、レコーディング中に一発で取ろうと考えていて。その一発感が出ていると思います。歌詞もアレンジに合うように付けてくれて、ジャズっぽいパートの歌詞の流れにも感動しました。

今作はプロデューサーに松岡モトキさんとヒダカトオルさんの両名を迎えてます。そこで学んだところも大きかったのでしょうか?

深澤 「Blue Monday」に関しては松岡さんが歌詞をまず考えて、それからアレンジをするという歌詞重視の方で。歌を軸に考えてくださるので、光のヴォーカルはすごく変わったと思います。

池田 歌心を大事にする方なので、理想像に剥けてどうアプローチすればいいのかを考えてくれて。松岡さんとやることで、ヴォーカリストとして一皮も二皮も成長できたと思います。

深澤 この歌詞にこのコーラスはいらないよね?とアドバイスもくれたりとても勉強になりましたね。

渡邉 ここはハモるパートじゃないよね?など色々と教えてもらえました。

湘南感というか、イメージを足してくれたので曲調が垢抜けたなと(山本)

ヒダカさんとのやり取りはどうでした?

池田 ヒダカさんは、とにかく奇抜なアイデアが多くて。新発見だらけでした。

深澤 「茜色のワンピース」のサビは全然違ったんですよ。ヒダカさんが今っぽくというか、華やかにしてくれた。

山本 湘南感というか、イメージを足してくれたので曲調が垢抜けたなと。

ヒダカさんが「歌謡っぽさを最大限に引き出しちゃおう!」と言ってくれたので、一周回って新しく感じるのかなと(池田)

「茜色のワンピース」はボサノバっぽいテイストもありますよね。

山本 もともとボサノバっぽい雰囲気があったけど、サビは4つ打ちにしたんですよ。

深澤 イントロがボサノバで始まるのはヒダカさんのアイデアで、Bメロも海っぽいというか、サザンぽさが出ているから。昭和歌謡っぽさをより引き出してくれて、古いのに新しい感じが出ていると思います。

池田 ヒダカさんが「歌謡っぽさを最大限に引き出しちゃおう!」と言ってくれたので、一周回って新しく感じるのかなと。今、なかなかそういう音楽はないと思うので、そこで面白い仕上がりになったと思います。

深澤 個人的にこの曲の光の歌い方が好きで。ちょっと精神年齢が低い男の子みたいな。商店街でチャリで走ってる姿が思い浮かぶんですよ。だから、ほかの曲と聴き比べてほしいですね。

バラード調の「あなたに花束を」も哀愁が漂ったいい曲ですね。

池田 実はCharles時代からある曲で、個人的にも大切にしてる曲なんです。松岡さんとタッグを組んで作れたことが大きくて。歌を立たせることが難しかったです。

深澤 Charlesの頃と比べても歌い方も全然違うから。コーラスやアレンジも変わりましたからね。

渡邉 松岡さんが何を歌いたいのかを重視で考えてくれたから。

池田 一番は歌とピアノだけで、僕ら的にアレンジも思い切ったんですよ。結果的にこれが一番歌が立つから。

誰もが、いままで経験したことがある感情にヒットする内容になったと思います(渡邉)

<馬鹿にするなよ>といきなりキレる歌詞もポイントですね。この曲に限らず、リアルな切なさや、後悔の気持ちを綴った内容が多いのもYENMAの特徴です。

池田 何歳になっても恥ずかしげもなく、そういうことを歌いたくて。特に「あなたに花束を」は後悔とかも忘れずにいたいから、そういう気持ちを曲にしました。後悔までのプロセスというか、自分の一つひとつの判断があって、後悔に繋がるわけじゃないですか。いろんな恋愛を経たから、今の自分がいるわけで、辛いことがあっても、それを消し去っちゃダメだと思うんですよ。辛いこともダメだったことも背負って生きていきたいから。僕の書くラブ・ソングはそういうものが多いかもしれない。ただ、歌詞は救いがあるように書いてます。もの悲しさと救いのある出口を組み合わることが自分の中でしっくり来るんですよね。

渡邉 「Blue Monday」、「あなたに花束を」は現実味のある表現が多いけど、「ユートピア」では「上海ピーポー」みたいな歌詞もありますからね(笑)。全曲、誰もが、いままで経験したことがある感情に全曲ヒットする内容になったと思います。

ライブ情報

YENMA 1st LIVE “Piñata”
12月10日 渋谷WWW
YENMA /GUEST:SAKANAMON

YENMA

池田 光(Vocal, Guitar)、深澤希実(Keyboards, Vocal)、渡邉麻美子(Bass, Chorus)、山本武尊(Drums, Chorus)からなる男女混声4人組バンド。
2013年に「Charles」結成。2014年『閃光ライオット』ファイナルで入場制限がかかるなど結成当初からその高い音楽性が注目を集めたが一度解散し、2018年に再結成。
深澤希実が新たに加わり4人体制で活動を再開し、4か月連続で自主企画ライブを立て続けにSOLD OUTさせる。2020年にライブ会場限定CD「西へ行こうよe.p.」をリリース。
2020年8月、バンド名をYENMA(読み方:えんま)に改名し、初の全国流通盤「Piñata」(読み方:ぴにゃーた)を10月7日にリリース。

オフィシャルサイト
https://www.yenma.jp