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黒羽麻璃央が人生で最も大切にしていること。恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』を経て獲得する俳優としての新たな視点

黒羽麻璃央が人生で最も大切にしていること。恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』を経て獲得する俳優としての新たな視点

2018年に初演された《恋を読む》シリーズの第1弾『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』、そして半年をまたずの再演、翌年のシリーズ第2弾『逃げるは恥だが役に立つ』、いずれも大ヒットに終わったのは記憶に新しい。
その《恋を読む》シリーズの第3弾『秒速5センチメートル』が、10月21日(水)から10月25日(日)までヒューリックホール東京にて上演される。今作はアニメーション監督・新海 誠の話題作を原作に、初演から引き続き、脚本・演出に三浦直之(ロロ)ら新進気鋭の若手クリエイティブ陣と、様々な分野で活躍するトップランナーが集結し、朗読劇として届ける。
WHAT’s IN? tokyoでは初演から様々な出演者にインタビューをして多角的に《恋を読む》シリーズを眺めてきた。今作では、シリーズ第1弾の初演、再演に出演している黒羽麻璃央に話を聞き、今シリーズの魅力、そして“黒羽麻璃央”の俳優人生に触れることができた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


《恋を読む》シリーズに再び参加できることを嬉しく思って

多くの世代に絶大な人気を誇るアニメーション監督・新海 誠さんの『秒速5センチメートル』の朗読劇の出演が決まりました。

《恋を読む》シリーズは、今作で3回目の出演になります。初演と再演の『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2018、2019。以下「ぼく明日」)は、演じていて心地よくて、非常に有意義な時間を過ごすことができました。このシリーズに再び参加できることを嬉しく思っています。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

原作のアニメーションをご覧になった感想はいかがですか。

観終わると、言葉にできない何かが心に引っかかっているのを感じるんです。世の中には、『秒速5センチメートル』で描かれるような人間の心のすれ違いでもどかしい想いを抱くことがたくさんありますよね。決してスッキリする作品ではないから、僕たちのいる現実の世界と同じようで、それがとても心地よくて。実らない恋をして、やるせない気持ちが募っていくだけなのに、それでいて、最後の美しい終わり方が、観客の救いになっていることが大きな感動を生むと思います。

新海監督作品の魅力はどんなところにありますか。

ディテールがリアルですよね。無駄なカットが一切ないし、町並みにしろ、部屋の机の上にある細々とした“モノ”、洗濯機といった電化製品も、すべてが僕たちの身近にあるように感じられる。だからこそ、あの世界の中に浸って、思わずキャラクターに感情移入してしまう。僕たちが生きている世界で、どこかで見たことのある景色が写真のように表現されている描写力が、新海監督の素晴らしさだと思います。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

主人公の“遠野貴樹”を演じることの魔力

新海作品のファンだとお伺いしたのですが、今作に出演するにあたって黒羽さんなりに楽しみにしていることはありますか。

楽しみでもあり、つらいと思ってもいるのですが、主人公の“遠野貴樹”を演じることです。演じているとかなり心が“キツく”なる役なので、メンタルを強く保とうと思います。ずっと悩んでモヤモヤしている男の子で、その報われなさがお客様の心に響くはずなので、演じていてつらくなることがあるかもしれませんが、しっかりと“貴樹”を演じたいです。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

先ほどもおっしゃったように、黒羽さんは「ぼく明日」にも出演されています。《恋を読む》シリーズの面白さはどこにありますか。

「ぼく明日」に関していえば、心が“キュン”とするシーンの連続で、僕が演じた“高寿”と、初演でご一緒した戸松 遥さん、再演の山崎紘菜さんが演じた“愛美”の関係性が心の底から愛おしかった。デートをして会話を交わす何気ないやりとりが、忘れることができなくて(笑)。戸松さんも山崎さんも、僕のお芝居に臨機応変に対応してリアクションしてくださったので、演じることも楽しかったんです。お客様は僕らがそうやってお芝居を楽しんでいる姿を感じ取って喜んでくださったというか。《恋を読む》シリーズには、劇場にいるすべての人が楽しめる要素がありますね。今回に関しては、“胸キュン”とも違う、大人のビターな恋愛というか(笑)、スウィートではないところが魅力だと思います。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

私も初演から劇場で拝見しているのですが、お客様がみんな泣いていたのが印象的で。あまり見たことのない劇空間でしたが、そのときの劇場の雰囲気は覚えていますか。

僕は演出の三浦(直之)さんの、天井を星に見立てた演出がとにかく印象に残っています。“高寿”と“愛美”の関係のようで、儚くて綺麗でしたね。

朗読劇で大切なのは、台詞を噛まないこと

朗読劇で意識されていることはありますか。

最も大切なのは、台詞を噛まないことですね(笑)。

あはは。

簡単なことのように見えるのですが、それが朗読劇のすべてだと思っていて。脚本を手にして読んでいる違いがあるとはいえ、根本はお芝居ですから、朗読劇はストレートプレイ、ミュージカルといった舞台と同じだと思います。朗読劇だからこうしなければいけないというルールはないので、どんな舞台にせよ、純粋に役を生きてひとつひとつの台詞を大切にしたいです。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

恋をする役を演じるうえで大切にされていることはありますか。

難しい質問ですね(笑)。

というと?

俳優は、役を演じていれば自然と恋人になる相手に恋をしてしまうと思うんです。なので、意識して気をつけることはなくて。演じることで相手を好きになってしまうので、告白のシーンなんてワクワクして(笑)。もちろん、役として演じているのですが、役の様々な気持ちをお客様も含めてみんなで共有することが恋の物語では面白いと思っているので、つねに自分も胸が“キュン”とすることを心がけています。

演じていて泣いてしまった「ぼく明日」

脚本・演出のロロの三浦さんとは再びタッグを組みます。三浦さんの印象を伺わせてください。

とてつもなくいい人で(笑)、丁寧に演出してくださって、またご一緒できることが楽しみです。「ぼく明日」は、SFの要素があって、“高寿”と“愛美”の生きている時間軸がズレていくので、それを理解するのが難しい作品でしたが、わかりやすく説明してくださったんです。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

演出も切なかったです。

素敵な演出をされますよね。印象的なセットを使って、ふたりの距離が少しずつ近づいて、また離れていく、心憎い演出が素晴らしかった。結末は知っているはずなのに、徐々にふたりの心が離れていくシーンになると、演じていて泣いてしまったほどで(笑)。

(笑)。「ぼく明日」は二人芝居でしたが、今回は5人で、5組のチームになりますね。

演じる人数にこだわりはないのですが、今作もいくつかのチームに分かれているので、僕らなりのチームを作ることを心がけたいです。ほかのチームを見すぎてしまうと、異なった解釈が生まれて、お芝居に無理が生まれてしまうかもしれない。僕ら5人だけにしかできない、『秒速5センチメートル』が作れたら嬉しいですね。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

自粛期間中に刺激を受けた映画『アナと雪の女王2』

先日、配信ではありますが、朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』&『俺とおまえの夏の陣』を拝見したのですが、コロナの状況で大変な時期でも黒羽さんは素晴らしいお芝居をしているように見えました。

ありがとうございます。自粛期間中にアニメーション映画『アナと雪の女王2』(2019)を観たんです。あるキャラクターの「どうにもならないことが起きたら、どうにかなることだけをすればいい」といった台詞が僕の心に刺さって刺激を受けました。たしかに、今はどうにもならない状況だけど、それを嘆くよりも、やれることだけをやろうという気持ちになって。今の僕にできることをしようとプラスに考えるようになりました。

なるほど。『アナと雪の女王2』を観なければ考え方が違っていたかもしれない。

自分の存在価値がないのではないかとさえ考えることもあって。俳優は、必要としてくれる人がいないと何もできないと痛感しました。舞台であれば、お客様がいないと成立しないという当たり前のことを理解させられましたね。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

そのなかで、俳優として心がけていたことはありましたか。

とにかく、僕自身がどうあるべきか、いろいろな映像作品を観て、多くのことを学びました。素晴らしい作品を観ながら、自分を見つめ直してみると、ふと、こういった状況があったからこそ、演劇界に限らず、芸能界のグラウンドが整備されたような感覚になったんです。みんなが同じスタートラインに立ったような不思議な気持ちでした。もう一回、みんな横並びでスタートを切れるフェアな状態になったというか。

とすると、そのような状況のなかでどんなスタートを考えていましたか。

まったく無理なスタートをしない(笑)。

あはは。結論はそうなるんですね。

本当にそれが大切だと思います。出遅れてしまっても、そのぶんを取り戻そうとしなくていい。考える時間はたくさんあるわけですし、俳優としてやらなければいけないことが明確になったから、そこに向かって進めばいいので、ほかの方に合わせる必要はないかな、と。僕自身の未来のシミュレーションはたくさんしてきたし、自分が心から何を好きなのか真摯に向き合う時間を確保できた。そうすると、30歳という壁が少しずつ見え始めてきて。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

たしかに、あと数年で30歳になりますね。

こういった状況にならなくても考えてはいたのですが、今のうちに種まきをしないといけないと思ったんです。僕の歳は、俳優として難しい年齢だと思っていて、若い役だけを演じ続けるのも違うだろうし、だからといって実年齢やそれより上の役を演じればいいというわけでもない。ちょっとした狭間の中で、どうやってサバイブしていくのか考えながら、想像力を膨らませていくには、自分の時間を大切にすることが必要だと思って。これからの人生経験で大人の男性としての渋みを出せるように、いろいろな経験を積んで、お芝居に繋げることができれば嬉しいです。

恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』 黒羽麻璃央 WHAT's IN? tokyoインタビュー

自分自身に対しての見方がクリアーになってきたというか。

そうだと思います。やっぱり、フラットな状態でいることですね。車でいえば、つねにニュートラルでいたい。そうすれば、いろいろなお芝居ができるし、どんなことにも挑戦できるんだって。そう思うのは、確固たる自分がないからだと思うし、それが僕の強みでもあって。日によって、体調によって、気温によって、僕の性格も変わるから、流れのままにいることが居心地いいし、大切にしたいと思っています。

みんなと作り上げる『秒速5センチメートル』を綺麗に終わらせるために

それでは、最後に見どころをお願いいたします。

お客様を前にしての久々の舞台です。早く劇場の空気を皆さんと吸いながら、お芝居をしたいと思っています。演じることができる4公演……僕たちのチームが一番多い!(笑)、ありがたいことに千秋楽も任せていただいているので、みんなと作り上げる『秒速5センチメートル』を綺麗に終わらせますので、劇場に足を運んでいただければ嬉しいです。

スタイリスト / 小渕竜哉
ヘアメイク / Ayane(Lomalia)
衣装 / MR.OLIVE(WALK IN CLOSET代官山)


【募集終了】抽選で1名様に黒羽麻璃央さんの直筆サイン入りチェキをプレゼント!

黒羽麻璃央さん直筆サイン入りチェキ
応募期間

※募集期間は終了致しました。

10月9日(金)~10月16日(金)23:59


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恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』

2020年10月21日(水)〜10月25日(日)ヒューリックホール東京

<チケット一般発売>
2020年10月10日(土)AM10:00〜

原作:新海 誠
脚本・演出:三浦直之(ロロ)

出演(公演日順)
入野自由×桜井玲香×田村芽実
海宝直人×妃海 風×山崎紘菜
前山剛久×鬼頭明里×尾崎由香
梶 裕貴×福原 遥×佐倉綾音
黒羽麻璃央×内田真礼×生駒里奈

全日程出演
篠崎大悟(ロロ)、森本 華(ロロ)

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@koiwoyomu_stage)

黒羽麻璃央(くろば・まりお)

1993年7月6日生まれ、宮城県出身。2012年にミュージカル『テニスの王子様』(菊丸英二 役)で俳優デビュー。近年の主な出演作品には【舞台】ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、舞台『黒子のバスケ』シリーズ、朗読劇『私の頭の中の消しゴム』、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』【映画】『アヤメくんののんびり肉食日誌』、『耳を腐らせるほどの愛』、『いなくなれ、群青』、『恐怖人形』【テレビドラマ】『広告会社、男子寮のおかずくん』、『向かいのバズる家族』、『コーヒー&バニラ』、『テレビ演劇 サクセス荘』、『寝ないの?小山内三兄弟』シリーズ、『LIFE!presents 忍べ!右左エ門~THE SKY ATTACK~』、『LINEの答えあわせ~男と女の勘違い~』、『恋はつづくよどこまでも』、『SUITS/スーツ2』などがある。

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@m_kuroba)
オフィシャルBlog

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<過去の《恋を読む》シリーズのインタビュー>

恋を読む『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2018)

鈴木拡樹インタビュー
鈴木拡樹が言葉で紡ぐ“恋”は未知だからこそ楽しい──恋を読む『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

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三浦宏規インタビュー
三浦宏規が“初”朗読劇への意気込みを“心”から語る、渾身のインタビュー──恋を読む『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

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2018.06.26

恋を読む『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2019)

荒牧慶彦インタビュー
荒牧慶彦が役者として大切にしている存在とは? 恋を読む『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』開幕直前!

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木村達成が、“恋”の手ほどき。恋を読む『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の再演まもなく!

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恋を読むvol.2『逃げるは恥だが役に立つ』(2019)

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