Interview

竹内アンナ 自粛期間中にあらためて向き合った自分の「好き」をアップデイトしたE.P シリーズ『at FOUR』

竹内アンナ 自粛期間中にあらためて向き合った自分の「好き」をアップデイトしたE.P シリーズ『at FOUR』

今年の3月に1stアルバム『MATOUSIC』をリリースした竹内アンナが、E.Pシリーズ第4弾『at FOUR』をリリース。次世代シンガー・ソングライターとして、ポップかつ今日的な音楽性の高い曲で注目を集めてきた彼女。ライブ活動こそコロナの影響でままならなかったが、溢れんばかりの創作意欲にさらに磨きをかけて制作した新作は、アップデイトを続ける彼女の今が詰まっている。J-WAVEのキャンペーンソングとしてオンエア中の「Love Your Love」、Mamas Gun のAndy Platts とのコラボレーションが実現した「Striking Gold」、ライブで好評の弾き語りナンバーやリミックスなど、今まで以上にバラエティに富んだ5曲を収録。自粛期間中にあらためて向き合った音楽と心境の変化を22歳になった竹内アンナに訊く。

取材・文 / 佐野郷子 撮影 / 沼田 学


すべてが体験したことのない時間だったSTAY HOME期間の「心の支え」

3月に1stアルバムをリリースした後のコロナ禍でアンナさんはどのように過ごしていましたか?

アルバムのリリース後に予定されていたライブは中止になり、ツアーも延期……。4月からの大学の授業はオンラインに切り替わり、Zoomで講義を受けていましたが、すべてが体験したことのない時間でした。自粛のSTAY HOME期間中には、バンドのメンバーと自宅で録った映像を配信したり、ファンの方から写真を募って「RIDE ON WEEKEND」のスペシャル・ムービーを制作したり、この期間にしかできないことを私なりにチャレンジしてみました。でも、もう半年経っちゃったんですよね。

今までは音楽活動と大学を並行しながら、東京と京都を往復する多忙な生活を続けてきたわけですもんね。

そうなんです。だから体がなまらないように筋トレをしていたし、家の近所を人がいない時間に走ったりしていました。元々割とインドア派ではあるんだけど、こんなにずっと家にいたこともなかったので。

「RIDE ON WEEKEND」がドラマの主題歌になった『WOWOWオリジナルドラマ 有村架純の撮休』が放映されたのもちょうど自粛期間中でしたね。外出ができない時期にドラマで描かれた何気ない日常とアンナさんの爽やかな歌声はとても印象に残りました。

私も毎週、楽しみにしていました。ホントに素敵なドラマに関わらせていただけて嬉しかったし、STAY HOMEでお家にいて曜日の感覚がなくなっていたので、ドラマが放映される金曜日が待ち遠しくて、心の支えになっていました。

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その期間で気づきや変化はありましたか?

外に出かけられなくなって、今までの自分のインプットは、人と会うことが大部分を占めていたんだなと気がついたんです。普通にお仕事をしていた時は、聴く音楽や観るものも自分なりに厳選していたつもりだったんですけど、膨大な時間ができて、今まで積極的に手を出していなかった音楽やアニメやマンガにも興味が出てきました。以前から『鬼滅の刃』は大好きでずっと読んでいたんですけど、LINEで私が「鬼滅」のスタンプをプロデューサーの名村(武)さんに送り続けていたら、「何か悔しい!」ってわざわざスタンプを買って送ってくるようになったりして(笑)。

2018年にメジャー・デビューして、ようやく1st アルバムをリリースしたタイミングでのコロナでライブが難しくなってしまったことの影響は?

デビュー以降、少しずつ積み重ねてきて、アルバムを引っ提げてのツアーだったので、ライブができなくなったのは残念でしたが、「I My Me Myself」がJ-WAVEの「TOKIO HOT 100」で2位になったり、アルバムを出したことで色々な方から好いリアクションをいただいて、それがとても励みになりました。ライブが中止になっても落ち込まずに、せっかく時間ができたんだから、今、できることをやる時間にしようとポジティブに考えるように心がけていました。

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「Love Your Love」に込めた自分の「好き」を信じる気持ち。

E.P シリーズ第4弾になる『at FOUR』の制作はどのようにスタートしたんですか?

コロナとは関係なく、秋くらいにE.Pを出したいと考えていたので、お家で曲作りはしていたんです。今までは対面でプリプロしながら進めていたんですが、今回は基本的にデータでのやり取りだったので試行錯誤はありましたけど。「Love Your Love」は、J-WAVEのキャンペーンソングの話をいただいて書き下ろした曲なんですが、『at FOUR』の曲は自粛期間中に自分が感じたことが詰まっていますね。その頃は誰もが先が見えなくて、思うどおりにいかないことや気が滅入ることが多かったと思うんですが、曲作りの指針として救いのあるものにしたいという思いがより強くなってきて、こういう時だからこそ気持ちが晴れるような曲を書きたいというテーマはありました。

「Love Your Love」では、〈信じた「好き」はちゃんと本物だから 大丈夫〉というリリックにそれが表れていますね。

不要不急が叫ばれた時、音楽って衣食住と比べると優先順位が低くなってしまうので、私が信じてやってきた音楽は必要とされているんだろうか? と考えたことがあって。でも、自分の「好き」を否定したくない、嫌いになんかなれないじゃないですか? それは音楽に限らず、人だったり、仕事だったり、趣味も生き甲斐になっていたりしますよね。そんな自分にとっての「好き」を大事にしてほしいなと思って書いた歌詞なんです。

音楽界は今もライブが厳しい状況が続いていますが、そこで前を向くにためには、あらためて自分の「好き」を確認することが必要だった?

そうですね。自分が信じた「好き」という気持ちは自分にしか分からないものだから。今、私の大学の友だちは就活中で、まさに自分と向き合っているところだと思うんです。私は自分の「好き」を見つけて、こうしてお仕事ができているのは幸せだし、この期間に音楽の力を信じて前向きに活動されていたミュージシャンの方にもパワーをもらいました。

「Love Your Love」は、ドラムに岡本啓佑(黒猫チェルシー)、ベースにナガイケジョー(SCOOBIE DO)、キーボードに渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)、ギターに初参加の永井聖一という強力な布陣によるバンドサウンドになりました。

レコーディング・スタジオにミュージシャンが集まって録るのは久しぶりで、永井さんにはエレキギターのアレンジもお願いして、皆で一緒に音を鳴らすのは、思っていた以上に楽しかったです。一人で弾き語りするのも好きなんですけど、しばらくバンドで演奏できなかったので、いつもより楽しさを実感したというか。ストリングスやスチールパンも入った盛り盛りのサウンドも聴きどころです。

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イギリスのバンド、Mamas Gunのフロントマンとの共作の経緯

「Striking gold」は、イギリスのR&Bバンド Mamas Gun のフロントマン、Andy Platts との共作ですが、このコラボレーションが実現したのは?

去年の9月にビルボードライブにMamas Gunのライブを観に行ったんです。終演後のサイン会と撮影会に私も並んで参加して、それをインスタにアップしたのをAndyの関係者の方が見て、声をかけてくれたのがきっかけでした。Mamas Gunの一ファンだったので、まさかそんな運びになるとは思わなかったんですけど、Andyはアニメの『キャロル&チューズデイ』にも楽曲提供したり、ソングライターとしても活躍しているんです。

ポップでメロディアスな中に少し憂いがあって、ロマンチックな曲になりましたね。共作はどのように?

最初にこちらから数曲デモを送って、それを元にAndyが作ったデモに私が少しメロを足したりコードを変えたりしました。やっぱりイギリスの風を感じるというか、コードの使い方とか転調など自分からは出てこないアイデアがありました。私から言葉としてはMamas Gunのアルバムの好きな曲を伝えたくらいだったんですが、メッチャ好きなタイプの曲が上がってきたのは嬉しかった。録音物としては初めての男性コーラスも新鮮でしたね。「Striking gold」は、直訳すると「金を掘り当てる」という意味なんですが、それを運命の人に出会う歌詞にしてみました。

共作のやり取りは英語とメールで?

そうです。Andyインスタでも繋がっていたので「素敵な曲をありがとう」と伝えました。そういう風に海外のミュージシャンとも直接、気軽にコンタクトをとれるのは今の時代ならではですよね。共作もデータのやり取りでできるようになったし、機会があれば、また誰かとコラボできればと思うし、世界中のミュージシャンと繋がれるようになった時代の可能性も探っていきたいです。

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E.Pシリーズで更新される竹内アンナの音楽の幅広さと意外な一面

4つ打ちの「+imagination」も新境地ですね。

ちょうどハウスにハマっていた時に作った曲なんです。Disclosureの最新アルバム(『Energy』)もハウスっぽかったし、そこから関連アーティストを辿って聴いているうちに気がついたらハマっちゃって。歌詞に関しては自粛期間中に感じた「想像力」の必要性がテーマになっていますね。

そのきっかけになったことは?

あの頃は、外出したくてもできないから、私もネットで洋服やマンガを買ったりしていたんですが、医療従事者の方々はお家にいたくても働きに行かなくてはならないし、ネット通販も梱包する人や配達する人がいて成り立っている。そうして私たちの生活を支えてくれる人たちがいることを忘れてはいけないし、少し「想像力」を働かせてみれば見えてくることってたくさんあると思ったんです。

歌詞の中では〈目の前の答えが全てではない〉とも言っていますね。

物事には反対側や裏もあるし、自分と立場や意見が違ってもスルーしないで考えてみることも時には必要なんじゃないかって。コロナで色々なニュースや情報が溢れていた時に感じた疑問も歌詞には入っていますね。これは時間を置いたら薄れてしまうと思ったので、今回のE.Pに収録したかったんです。今の自分の世代だからこそ感じることは、その都度曲に落とし込めていけたらと思いますね。

アンナさんにしては珍しく強いワードも並びますが、韻の踏み方にはヒップホップの影響もある?

これは言葉をかなり詰め込んだし、ヒップホップもよく聴いていたので、そうですね、色んな影響がミックスされた曲になりましたね。トラックも歌詞も私の今までの曲の中では尖った方の曲ですけど、毎回、E.P シリーズでは「竹内アンナにはこんな一面があったんだ」というところを更新していきたいんです。

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11月にようやく実現するアルバム『MATOUSIC』ツアー。

攻めの曲から一転、アンナさん自身の弾き語りによる「Sunny day」でホッとするファンもいそうですね。

『at FOUR』は5曲なんですけど、けっこう触れ幅が広いので、原点を忘れないという意味でも温かい気持ちになれる弾き語りの1曲を入れました。「Sunny day」は私が高校生の頃に書いた旧い曲なんですが、ライブでも何度か披露していたんです。今の自分だと使わない言葉使いや英語が少し照れ臭いんだけど、それがむしろ新鮮だったりするんですよね。

そういう意味では『at FOUR』は、17歳の頃から今に至る変化と成長を凝縮しているような内容になったのでは?

そうですね。デビューしてからは新しい音楽を教えてもらったり、サブスクで知らない音楽を掘ったりインプットする楽しみが増えて、それを自分の音楽としてアウトプットしたいという意欲が強くなってきたんです。私の世代は、ホントにサブスク様様なんですけど(笑)、CDを通して聴くあの感覚も忘れちゃいけないと思って。サブスクだと最初の15秒だけ聴いて飛ばしてしまったりするけど、その中にもしかしたら好きになっていたはずの曲があるかもしれないので、作品はなるべく通して聴きたいし、私のCDもそういう風に聴いてほしいなと。

「I My Me Myself」のリミックスも、このE.Pでしか聴けないですしね。

今までのE.Pシリーズは4曲のうち1曲はカヴァーを収録していたんですが、今回は渡辺シュンスケさんのユニット、Schroeder-Headzにリミックスをお願いしました。今年は「竹内アンナ & Schroeder-Headz」でライブの予定があったんですが、それもすべて中止になり、シュンスケさんが温めていた「I My Me Myself」のライブアレンジがすごくカッコよかったので、収録したかったんです。

ジャズ/フュージョンを彷彿させる斬新かつテクニカルなリミックスですね。それこそクラブでかかってもよさそうな。

ですよね。とは言っても、まだ残念ながらクラブ・デビューできていないんですけど(笑)。この状況ではいつになったら行けるのやら……?

11月にはアルバム『MATOUSIC』のツアーもいよいよ開催されます。

やっとお客さんを入れたライブを開催できることになりそうです。配信ライブも色んな可能性はあるし、今後も続けていくと思いますが、やっぱり生でお客さんと同じ空気を共有したい。まだ一度もライブで披露していないアルバムの曲やE.P 『at FOUR』の曲も歌いたいし、たぶん、誰よりも私自身がいちばんライブを楽しみにしています。

その他の竹内アンナの作品はこちらへ。

ライブ情報

1st ALBUM Release Tour『MATOUSIC』
※諸般の事情に鑑み、全公演バンド編成からソロ編成での実施とさせていただくこととなりました。

11月11日(水) 愛知・名古屋 SPADE BOX  (5月16日振替公演)
11月12日(木) 大阪・梅田 TRAD (5月23日振替公演)
11月16日(月) 東京・渋谷 CLUB QUATTRO (5月17日振替公演)

竹内アンナ

1998年4月25日、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。京都在住。幼少より親の影響で70年代や80年代の音楽に触れ、中学1年生でギターを弾き始める。アコースティック・ギターにスラッピングを取り入れたプレイスタイルと、透明感のある歌声が各所話題になり、2018年3月アメリカ・テキサス州オースティンで行われた大型フェス「SXSW 2018」に19歳で出演。帰国後、「alright」を地元関西のCDショップ限定でリリース。デビュー前にも関わらず表題曲「alright」が全国のラジオ局で大プッシュされる。同年、8月にE.P『at ONE』でメジャー・デビュー。収録曲「ALRHGIT」のは全国22ヶ所のパワープレイを獲得。2019年1月には2nd E.P『at TWO』、6月には『at THREE』をリリース。2020年2月には崎山蒼志がエレキギターで参加した「I My Me My Self」を発表し、2020年3月18日に待望の1st アルバム『MATOUSIC』をリリース。収録曲「RIDE ON WEEKEND」はWOWOWオリジナルドラマ「有村架純の撮休」主題歌としても話題に。デビュー2周年の8月8日には『MATOUSIC』をアナログ化して初のレコード作品をリリース。10月7日には自身4枚目となるE.P作品『at FOUR』を発売。常に洗練されたサウンドと従来のイメージに捕らわれないアプローチで、ソロ・アーティストとしての開進を続けている。

オフィシャルサイト
http://takeuchianna.com/