Interview

極限の家族愛を描く映画『望み』でキーパーソンを演じる岡田健史が明かす、両親から与えてもらった愛情、言葉、気づき。「ふたりのもとに生まれてよかった」

極限の家族愛を描く映画『望み』でキーパーソンを演じる岡田健史が明かす、両親から与えてもらった愛情、言葉、気づき。「ふたりのもとに生まれてよかった」

ブックレビューサイト「ブクログ」で驚異の読者満足度100%を記録した、累計発行部数20万部超えの雫井脩介のベストセラー小説『望み』が、エンターテインメントの旗手・堤 幸彦監督の手によって映画化された。

一級建築士の石川一登(堤 真一)とフリー校正者の妻・貴代美(石田ゆり子)は、息子の規士(岡田健史)、娘の雅(清原果耶)とともに一登がデザインを手がけた高級邸宅で暮らしていた。しかし、そんな誰もがうらやむ幸せな家族の日常は一変。規士が無断外泊をした夜に同級生が殺害される事件が起き、マスコミの容赦ない追求を受けることとなる。息子の無実を望む一登と、犯人であっても生きていてほしいと望む貴代美。最後に家族がたどり着いた答え、愛する息子の本当の「望み」とは──。

今回は、物語において重要な役割を担う規士を演じた岡田健史にインタビュー。本作や役への思いとともに、自身の「家族」についても語ってもらった。

取材・文 / 上條真由美 撮影 / 斎藤大嗣


社会性をなくすことで反抗期を表現。クランクイン前に「アイデアが降りてきた」。

望み 岡田健史 WHAT's IN? tokyoインタビュー

原作を読まれたそうですね。どんな感想を抱きましたか?

一読してすぐにファンになりました。男女の違い。父と母の違い。そのふたつの大きな柱で最後までこんなにも読者を魅了し、翻弄する作品があるんだと、驚きと喜びがこみ上げてきました。また、そんな作品のキーパーソンである規士役のオファーをいただけたことがとても嬉しく、「ぜひやらせてもらいたい!」と思いました。

初めて堤組に参加されてみていかがでした?

堤組はスタッフの皆さん一人ひとりが自分のやるべきことを明確にした上で業務を遂行されているんです。その上には各部門をまとめるチーフ、そして全体を見ている監督がいるわけですが、あれだけ人数が多いのにしっかり統制が取れていて。素晴らしい環境をつくっていただけたからこそ、僕は規士をどう表現するかということだけに集中し、のびのびと演じることができました。

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本作では登場シーンやセリフがかなり少ないですよね。これまで出演されてきた映画やドラマとは作品への関わり方が違うと思いますが、役づくりではどんなことを意識しましたか?

”社会性をなくすこと”を意識しました。例えば、冒頭の家族4人で食卓を囲んでいるシーンで、父親から話しかけられても返事をしなかったり。別に無視をしているつもりはないし、ちゃんと話も聞いているのですが、何も反応を示さない。規士の行く末が加害者であろうと被害者であろうと、死に近いというか……危険性を感じたので、それを社会性をなくすことで表現したかったんです。

役の方向性について堤監督とは何か話しました?

監督からは衣装合わせのときに「反抗期を存分に出してほしいと」と言われました。ただ、最初に本を読んだとき、僕は規士が反抗期だとは思わなかったんです。監督に言われて初めて「あ、反抗期なのか」って理解して。実際に演じるときにも、反抗期ということはあまり意識せずとも、社会性をなくせば反抗期に見えるだろうと思っていました。

社会性をなくすというのも堤監督の演出だったのでしょうか?

反応をなくす、社会性をなくすというアイデアは、監督にお会いする前から考えていたことで、かっこよく言うと(笑)”降りてきた”ものです。監督とお話しして、その方向性が間違いではなかったと確信できました。撮影中はほとんど演出を受けていないのですが、それは監督と僕の考えが噛み合っていたからだと思っています。

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今、「反抗期」という言葉が出ましたが、岡田さん自身に反抗期はありましたか?

なかったです。怒られたときは「僕が悪いです、ごめんなさい」と謝っていたし、両親が言うことに対して「間違っている」「ふざけんな」みたいなのもありませんでした。唯一、両親とぶつかったのは、僕が「芸能界に入りたい」と言ったとき。18歳だし、選択肢が一気に広がる年齢になった今、これまでのように甘えていてはいけないという思いもあり、「自分が選んだ道を進ませてほしい」と伝えました。小さい頃から僕を子ども扱いせず、ひとりの人間として育ててくれた両親にはすごく感謝しています。ふたりのもとに生まれてよかった! と心の底から思いますね。

「両親のもとに生まれてよかった」と言い切れるのは素敵ですね!

幸せなことですよね。僕の家は周りと比べて厳格なほうだったと思うんです。お小遣いは少なかったし、高校生になっても携帯を持たせてもらえなかったし。当時は「300円しかなくて恥ずかしい」とか「自分だけ時代遅れみたい」と思ったりもしました。でも、今考えるとそれってたいしたことではないんですよね。お金が少ない人がダメなわけでも、携帯を持っている人がいいわけでもないじゃないですか。両親はそのことを大人になった僕に気づかせるために与えなかったのかなって。あのときの両親の姿を思い返すと、そんな気がするんです。

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規士は父親からの言葉が未来へ向かう力となりましたが、岡田さんはお父さんからの言葉で心に残っているものはありますか?

「俺たちがした以上のことをお前の子どもたちにしてあげなさい。それが俺たちへの最大の恩返しだ」と言われたときは、「かっこいいな!」ってシビレましたね(笑)。あとは「無理はしてもいいけど無茶はするな」「絶対に手を抜くな、常に全力であれ」とよく言われていました。やることをやったなら失敗してもいいし、それが成功したらラッキーだと。その言葉のおかげで今でも努力を惜しまないでいられるのかなと思います。僕は幼少期から勉強にしても、運動にしても、運にしてもわりと打率が高い子どもだったんです(笑)。その成功体験があるから、努力すれば報われるじゃないですけど、逆に努力をしないほうが怖いですね。

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若い世代が自分を重ね、「家族」について考えるきっかけになったら

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共演者の方についてもお聞きしたいのですが、まずは堤 真一さんの印象を教えてください。

大きな岩のように”でん”としている印象です。周りに流されずにどっしりと構え、重厚な存在感を放っている。岩のように存在し、岩のような声を響かせている堤さんが僕は好きです。堤さんの声ってすごくセクシーだと思いません?(笑)

低く響くような素敵な声ですよね! 石田ゆり子さん、清原果耶さんの印象はいかがですか?

石田さんは、ただひたすら母性を感じました。実家を離れて今年で6年目になるので、どこかで母性を求めているのかもしれません(笑)。でも、僕のその欲求や渇望は規士を演じる上で十分に生きました。僕は勝手に石田さんのことを「母ちゃん」って思っています(笑)。

僕もそうなのですが……、果耶ちゃんは、「自分の意志をしっかり伝えられる」人ですね。「まだ高校生だよね?」と言ってしまうくらい、現場での質問内容もしっかりしていて。今後の出演作のラインナップを見て皆さまも納得がいくはずですが、光るものがありましたし、逸材だなと思いました。本作で果耶ちゃんと出会えて本当によかったです。

映画の中で特に印象に残っているシーンはありますか?

サッカーのシーンが大変でした。僕、サッカーがめちゃくちゃ苦手なんですよ……。クランクインがサッカーのシーンだったのでドキドキでした。

そうだったんですか! 野球のイメージが強かったので、「サッカーも上手なんだ」と思いながら観ていたのですが。

現役の高校サッカー部の子たちがうまく見えるように協力してくれました。本当に感謝ですね。自分でも「上出来!」って思いましたもん。あれ以上は無理です(笑)。

息子の無実(=被害者)を信じたい父、息子に生きていてほしい(=加害者)と願う母の”望み”は、どちらも間違っていないし、どちらにも共感できるのですが、岡田さん自身はこれまでの人生で2つの思いの間で揺れたような経験はありますか?

う~ん(しばらく考えて)、ないですかね。

お仕事のスケジュールがかぶったり……とか。

そもそも、今は演じたことのない人物や人生が圧倒的に多いので断る理由がないんですよね。それに、僕はいつも最終的に自分の直感を信じるんです。でも即決タイプではないので、大事なことを決めるときはすごく悩みますが。いつかは「選ぶ」ということが必要な時期が来るのかなぁ。

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今もお忙しいと思うので、すぐに来ると思います! それでは最後に、本作への思いを聞かせてください。

ぜひ若い世代に子どもたちの目線になって観てほしいです。例えば規士のような人生を歩んだら、親はこう思うのか、こういう行動をとるのかと。規士や雅に感情移入することが、「家族」について考えるきっかけになったらいいなと思います。

世の中の状況が大きく変わり、誰しもが「家族」とはどういう存在なのかを考える時間が増え、あらためて家族のありがたみ、家族の大切さを感じたと思うんですね。僕はこの時代に『望み』という家族の物語を出す意味があると思っています。映画を通して、「どんな時代が来ようとも最終的に帰るところは家族なんだ」と伝えられたら。そして、少しでもこの世の中の救いになればうれしいです。

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岡田健史

1999年、福岡県生まれ。ドラマ『中学聖日記』(TBS/18)で俳優デビュー。その後すぐに、ドラマ『博多弁の女の子はかわいいと思いませんか?』『フォローされたら終わり』で主演に抜擢。今年は、ドラマ『MIU404』(TBS)など4本のドラマ出演に加え、映画『弥生、三月-君を愛した30年-』でスクリーンデビュー。今後、出演作『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』(11月13日公開)、『新解釈・三國志』(12月11日公開)が控えるほか、2021年の大河ドラマ『青天を衝け』への出演も決定している。

オフィシャルサイト
https://www.spicepower.jp/kenshi/

オフィシャルinstagram
@kenshi_okada_official

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映画『望み』

10月9日(金)より全国公開

出演:堤 真一 石田ゆり子 岡田健史 清原果耶 加藤雅也 市毛良枝 松田翔太 竜 雷太

監督:堤 幸彦
原作:雫井脩介「望み」(角川文庫刊)
脚本:奥寺佐渡子
音楽:山内達哉
主題歌:森山直太朗「落日」(UNIVERSAL MUSIC)
配給:KADOKAWA

オフィシャルサイト
nozomi-movie.jp

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