LIVE SHUTTLE  vol. 421

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ゆず  “素”になればなるほど底力を発揮するふたりのパフォーマンスとは? 開催中でもある、5週連続のオンラインライブの初日「DAY1:出発点」を振り返る。

ゆず  “素”になればなるほど底力を発揮するふたりのパフォーマンスとは? 開催中でもある、5週連続のオンラインライブの初日「DAY1:出発点」を振り返る。

全5公演によるゆずのオンラインツアー『YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN』の初日、「DAY1:出発点」を観た。音楽・歌を中心に据えつつも、エンターテインメントとしての創意工夫を忘れない彼らゆえ、無観客というハンデをむしろ“可能性”へ転化してくれることを期待しつつ、PCの前に座った。

いよいよ開演。カウント・ダウンの数字が現われ、ワクワクが増幅する。定刻に、リーダー北川とサブリーダー岩沢が現われ、今日の会場を紹介する。それは横浜文化体育館(通称“文体”)だ。二人は舞台ではなく、体育館の床の中央あたりへ移動する。ここから演奏する段取りのようだ。

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「文化体育館といえばこの曲、いってみよう!」。北川の掛け声とともに演奏されたのは「大バカ者」だった。1998年の12月。二人が「ゆず初の体育館ツアー“幸(せ)拍(手)歌合戦”」でここのステ−ジを踏んだ時、オープニングだったのがこの曲である(実はこの日も、途中のクイズ・コーナーの時、まさに1998年当時の映像が流されたのだった)。

ゆずをオンライン・ライブは観るのは初めてだったが、画面越しの北川と岩沢は、まさに虚飾なくリアルな佇まいだ。通常のステージというのは、各種ライトが空間をデザインし、その中にアーティストが位置するわけだが、今回はまさにガランとした“明るい体育館の中で二人が歌っている”という“素”の状態に近いものなのである。しかし、“素”になればなるほど底力を発揮するのが彼らなのであった。

早くも涙腺がじゅわーんとしてきた「手紙」では、後半の手紙を読むところでライブの趣旨にも触れる。「境界線」は、岩沢の描写力ある歌がしみてきて、実にいいパフォーマンスだ。その岩沢の歌を北川が対旋律で合わせるアンサンブルの部分でも、音楽的な研ぎ澄まされ方がハンパない。気取らない気さくな二人だが、音楽的に守るべき部分はきっちりプロフェッショナルなのである。そもそも彼らの歌唱は、一般的に言う「ハモる」良さも存分にあるが、この作品のように対旋律の工夫が魅力的なものも多いのだ。

「いつか」ライブ映像より

さて、ここまでは画面上、“素”の魅力と書いたが、これは伏線でもあったと知れたのが「いつか」の時であった。場内は暗転し、二人の姿がサイドからの照明で彫りの深いものとして浮かび上がる。観ていたこちらには、それまでと違う集中力の質が宿った。上空からは、雪がちらほら…。やがて本降りになっていく。雪がキラリと劇画的に輝いたりして、これがAR演出であることが明かされる。

さて、なにしろ貸し切り状態のこの日。実はこの横浜文化体育館、惜しくもまもなく取り壊され、別の施設へ生まれ変わるのだが、館内を移動しつつ、オリンピック含めた建物の歴史、さらに今現在の様子なども中継してくれた。そして、次はなんと客席へと移動し、そこからのパフォーマンスを披露したのだ。

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これぞ無観客を逆手にとった新鮮なアイデアだろう。曲はかつてこの会場でお客さんと盛り上がった「連呼」だ。客席を左右に赤チーム・青チームに分けて、サビを輪唱してもらった思い出の曲。その当時のステージ映像もたっぷり流れた。それが終わり二人の生の映像となる。見ると北川とは反対側のスタンドに岩沢が移動し、ゆず史上、おそらく最長ディスタンスによる演奏が始まった。でも離れていても、リーダー・サブリーダーは一心同体だ。息のあったパフォ−マンスを披露するのだった。

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ゆずの二人は基本はギターのデュオだが、曲によっては極上の“リズム・セクション”を体のなかに持っているんだと感じられるのは「傍観者」のような作品を聴いた時だろう。「ジャニス」における、恋愛のヒリヒリするほど日常感も、深く心に刻まれた。

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「DAY1:出発点」ということで、初期の作品が多く選ばれていたセットリストだった。それらに共通することはなんだろう…。ひとつには、当時のゆずは、北川個人も岩沢個人も、世の中に対して居場所探しをしていたということだろう。その後、どんどん歌の世界観も歌づくりの方法論も広げていった彼らだが、それと較べて初期の作品は、目の前の景色こそ限られてはいたが、その分、熱く、濃い感情に彩られていたのではなかろうか。

「夏色」ライブ映像より

このオンラインツアーにおいて、唯一、毎回演奏すると公言されていたのが、次の曲、「夏色」だ。この曲は……、さすがに……、無観客でどうやるんだろうと注目したのだが、ここで非常に威力を発揮したのが「歓声くん1号」なるボタン式疑似歓声マシーンであった(このマシンの存在は、ライブ冒頭で説明済みだった)。北川がそれを駆使し、あたかも目の前に、大観衆がいるかのように「夏色」を満喫し切ってみせたのだ。「歓声くん1号」だけではなく、ここでは便宜上“合いの手くん1号”とでも呼ぶべきSEも、やがて彼らに加勢していた(北川がボタンを押すまでもなく演出として加えられていた)。“ソレソレソレソレ”に対しては“ブンタイブンタイブンタイブンタイ”というこの日ならではのコール&レスポンス。さらにゆず関連のARのイラストや、選ばれた24名のファンのピグも参加し、盛り上げた。まさに豪華絢爛に画面を飾った。恒例の“もう一回!”コールでは、画面の向こうに更なる熱い歓声を促すかのような音量ピーク・メーターも現われた。それらのアイデアが効いて、見事に「夏色」は、オンラインライブでも「夏色」らしさを出し切ったのだった。

「ユーモラス」ライブ映像より

この日は貸し切り状態でのパフォーマンスだったが、ふと気づけば、肝心なところでまだ演奏していない。そう。舞台だ。最後は二人がそこへと移動する。2020年は、誰もが非日常の苦悩と向き合わざるを得なかったが、北川がこんなことを話し始める。「僕らが言うまでもなく、みんないっぱい大変な想いをしてきたと思います。でもきっと僕たちは、みんなは、越えていける。時に真面目に、時には楽しく、ちょっとふざけながらも、一緒にみんなで越えていけたらいいなと、そんな想いを込めて、この曲をお届けします」。その曲とは「ユーモラス」。まさにこの選曲、この曲に込められた柔軟なメッセージこそが彼ららしかった。

「公私混同」ライブ映像より

最後は出来たての新曲「公私混同」を。出来たてゆえに画面に歌詞なども出て親切であった。いつものコンサートと違うのは、最後の別れの言葉が「また来週会えるのを楽しみにしてます」であることだった。歌い終わった二人はステ−ジから手を振り、カメラが遠ざかっていく。最後の最後、リーダーの北川は、その場に倒れ込み大の字になった。

文 / 小貫信昭 撮影 / 太田好治

ゆずオンラインツアー『YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN』
DAY 1 出発点

<セットリスト>

1.大バカ者
2.手紙
3.始発列車
4.境界線
5.いつか
6.雨と泪
7.連呼
8.傍観者
9.気になる木
10.ジャニス
11.夏色
12.ユーモラス
13.公私混同

ゆずオンラインツアー<YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN>DAY1:出発点 ダイジェスト映像

ゆずオンラインツアー 『YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN』
9月27日「DAY1:出発点」 21:00〜
10月4日「DAY2:思春期」 21:00〜
10月11日「DAY3:新天地」 21:00〜
10月18日「DAY4:青写真」 21:00〜
10月25日「DAY5:未来図」 21:00〜

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■DAY1セットリストで作成したストリーミングのプレイリストはこちら!

※詳細はオフィシャルサイトで!

DVD & Blu-ray『YUZU ALL TIME BEST LIVE AGAIN 1997-2007 / 2008-2020』特設サイト
https://yuzu-official.com/pages/again

ゆず

北川悠仁、岩沢厚治により結成。1997年、1st Mini Album『ゆずの素』でCDデビュー。以降、万人を引きつけるキャッチーなメロディーと独特なハーモニー、共感性の高い歌詞が評判を呼び、『夏色』『栄光の架橋』『虹』などヒット曲を多数世に送り出す。ドラマタイアップ曲となる新曲『公私混同』が配信中。9月16日には、初となる“ライブ映像ベスト”『YUZU ALL TIME BEST LIVE AGAIN 1997-2007』『YUZU ALL TIME BEST LIVE AGAIN 2008-2020』を2作品同時リリース。

オフィシャルサイト
https://yuzu-official.com

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