Interview

ロイ-RöE- 新作「少女B*」。エッジの効いたMV、刺激的なフレーズが紡がれた作品を生み出す彼女の、プロフィールとクリエイティビティを探る。

ロイ-RöE- 新作「少女B*」。エッジの効いたMV、刺激的なフレーズが紡がれた作品を生み出す彼女の、プロフィールとクリエイティビティを探る。

2018年10月に1stデジタルEP「ウカ*」でメジャーデビュー。ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』のオープニングテーマ「VIOLATION*」、映画『羊とオオカミの恋と殺人』主題歌「癒えないキスをして*」などによって知名度を確実上げているロイ-RöE-。今年の夏にはTikTokでの連続61曲カバー企画「#61Filter」を行い、「チャイナアドバイス」(原曲/相対性理論)の投稿動画総再生数が1億回を突破するなど大きな話題を集めた。
優れた創造性を発揮し続ける彼女はこの夏、新プロジェクト「Atelier RöE」を始動。デモ楽曲の制作、エンジニア/共同アレンジャーの選定、ジャケット写真、MV制作まで、すべてのプロセスをロイ-RöE-自身が手がけるプロジェクトだ。第1弾楽曲「少女B*」はThe Anticipation Illicit Tsuboiとの共同アレンジによるヒップホップ・テイストのナンバー。イラストレーターのJARRYをフィーチャーしたエッジの効いたMVの映像も話題を集めている。
「少女B*」「チャイナアドバイス」による2曲入りデジタルシングルを軸に、彼女のクリエイティビティについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之


自分が発信するのは音楽だけじゃなくて。服もそうだし、絵を描くのも好きだから、それを全部見せられる場所はどこだろう?と思ったら、TiKToKがちょうど良くて

まずはTikTokでの連続61曲カバー企画について聞かせてください。なんで61曲だったんですか?

ロイ-RöE-だから61曲かなと思って(笑)。毎日アップすれば、ちょうど2ヵ月分ですからね。実際にやってみると、あまりにも大変で死ぬかと思いました(笑)。自粛期間中に作っていたんですけど、もともと私は家にいるときのほうが仕事という感じなので、そこはぜんぜん変わらなかったですね。

TiKToKを使ったのはどういう理由だったんでしょう?

自分が発信するのは音楽だけじゃなくて。服もそうだし、絵を描くのも好きだから、それを全部見せられる場所はどこだろう?と思ったら、TiKToKがちょうど良くて。オリジナル曲を61曲アップするのはさすがに厳しいし、自分が影響された楽曲から30秒だけフレーズを選んでカバーしようと。だいぶ恥ずかしいですけどね、丸裸になってるみたいで(笑)。

YouTubeの関連動画やサブスクのおすすめで聴くことが多いから、いつの時代の曲なのかもわからないんだけど(笑)

「銀河鉄道999」「渚のシンドバッド」「異邦人」など、懐かしい楽曲が中心ですね。

はい。私は「懐かしい」と思って聴いてるわけではなくて。リアルタイムで聴いていたのはORANGE RANGEやkyleeさんの「CRAZY FOR YOU」なんですけど、それ以外は、自分で曲を作り始めてから教科書みたいに聴いていた曲が多いんです。学生の頃地元ではヒップホップを聴くことが多かったんですよ、私。バンドの音楽も全然知らなかったんだけど、東京に来たら、BUMP OF CHICKENやRADWIMPSがすごい人気で。それからですね、いろんな音楽を聴き始めたのは。YouTubeの関連動画やサブスクのおすすめで聴くことが多いから、いつの時代の曲なのかもわからないんだけど(笑)。

「チャイナアドバイス」(相対性理論)も影響を受けた曲?

大好きですね。「チャイナアドバイス」の原曲はかわいくて明るいサウンドなのに、切なさや悲しさが滲み出ていて、そこにエロスを感じます。真部(脩一)さんの歌詞もすごく良くて。男の人が女性目線で書いた歌詞はたくさんあるけど、真部さんの歌詞は「どうして女の気持ちがわかるん?」って。恋バナとかしてみたいです(笑)。アレンジもいいですよね。ちょっとリバーブがかかったギター、いかついベース、かわいいウィスパーボイスが混ざっていて、寝る前に聴くのにちょうどよくて。私はウィスパーが似合わないから、カバーするときは胸を張って歌いました。

リアレンジに関しては?

なるべく原曲に引っ張られないようにしたんですけど、思った以上にいい感じになりました。投稿後だんだんジワジワと楽曲使用数が伸びていって、そこからはバーッと広がっていきました。「フル尺で配信してほしい」という声もたくさんもらったので、急遽フル尺を制作しました。

なるほど。ロイ-RöE-さんにとってTiKToKの魅力ってどんなところですか?

インスタやTwitterはフォローしている人以外の情報が入りづらいけど、TiKToKはどんどんユーザーが興味のありそうな動画を“おすすめ”してくれるんですよね。たとえば猫の動画をチェックしたら、動物関連の投稿動画が出てくるんです。だいたい冒頭2秒くらいで最後までその動画を見るかどうかを決める人が多いみたいだから、自分自身投稿する動画も最初が勝負だなと思ってました。音楽もそうで、イントロがない曲も増えてるじゃないですか。

イントロがなかったり、すぐにサビが来たり。曲の尺も2分くらいが多いですよね、特に洋楽は。

そうそう。昔の歌謡曲はイントロも凝っていて、そこも好きなんですけどね。

「ロイ-RöE-はこういう人です、という曲にしたい」という意識はありました

では、新曲「少女B*」について。「AKINAがAなら わたしは少女B」というフレーズがめちゃくちゃキャッチ—ですが、どんなイメージで作り始めた楽曲なんですか?

「ロイ-RöE-はこういう人です、という曲にしたい」という意識はありました。いままでは“ばっちりメイク”みたいな曲が多かったんですけど、「少女B*」はスッピンです。「スッピンでジャージ着て、エアフォース履いて、ドンキに行く」みたいな(笑)。それくらいラフなんだけど、すごく気に入ってます。GEISHA GIRLS(ダウンタウンによるラップユニット。坂本龍一、TOWA TEIなどが参加)のイメージもありますね。オールドスクールの感じで、よく聴くと怖いことを歌ってて。「少女B*」の歌詞、だいぶ行儀悪いですからね(笑)。

「うるせえなパンピー 寝てろよ野蛮人」っていう。これもロイ-RöE-さんの素ですか…?

私、こんなんですよ(笑)。着ている服によっても変わるんですけどーーフワッとした服を着たらかわいくなるし、ビシッとしたドレスを着たら、そういう感じになるしーー自粛期間中はずっとウチにおったから、こんな曲になりました(笑)。たぶんリスナーの人たちも刺激を欲していると思うんですよ、最近。

優しさや切なさを歌った曲が多いですからね。

そうですよね。でも、そればっかりじゃないですからね、人は。私の学生時代も、強気な性格の人も多かったし。ジャージで電車に乗って、ドンキ行って、それが普通だと思ってたから。……あれ、私の周りだけ?(笑)

学生時代はヤンキーカルチャーが身近にあった?

私の地元(福岡県北九州市)、私の周りには多かったかもしれないです(笑)。男の子はみんなリーゼントだし、成人式もみんなが目立とうとして。「俺がいちばん、私がいちばん」「もっともっと」っていう。でもその感じがすごい好きだったんですよね。

東京に来て、カルチャーギャップを感じませんでした?

めちゃくちゃ感じました。東京の人達ってなんかスマートに見えていて、それに比べて「私は何も知らない」って怖くなることがありました。

アートやファッションも世間にケンカ売ってるような作品が好きだし、そういう魂を持った人に惹かれるので

同時にアートやファッション、映像への興味を持っているのがロイ-RöE-さんの個性ですよね。

両方好きですけど、根本は結構同じだったりするんです。アートやファッションも世間にケンカ売ってるような作品が好きだし、そういう魂を持った人に惹かれるので。「少女B*」には、そういう感じも出ていると思いますね。地元の友達が聴いたら、「変わっとらんね」って言うんじゃないかな。逆に「癒えないキスをして*」とかは、「何?かわい子ぶっちゃって」って思われてるかも(笑)。

Tsuboiさんのトラックはそれこそケンカを売ってる感じがあるし(笑)、男のエロスもあるから、「少女B*」にピッタリだなって

「少女B*」は、デモ制作、アレンジャーの選定、MVのディレクションなど、すべてをロイ-RöE-さんが取り仕切る“Atelier RöE”プロジェクトの第1弾でもあって。アレンジには、The Anticipation Illicit Tsuboiが参加しています。

オールドスクールの雰囲気にしたかったんですけど、自分でそういう感じのアレンジをやったことがなくて、誰かと一緒にやったほうがいいなと思って。そう考えたときにキエるマキュウ(BUDDHA BRANDのCQとMAKI THE MAGIC、ILLICIT TSUBOIのユニット)も好きだし、ぜひTsuboiさんにお願いしたかったんですよね。Tsuboiさんのトラックはそれこそケンカを売ってる感じがあるし(笑)、男のエロスもあるから、「少女B*」にピッタリだなって。「好きなので一緒にやってください」ってメールしたんですけど、緊張した—(笑)。

レコーディングはどうでした?

私が作ったデモをもとにしてレコ—ディングしたんですけど、カッコ良くトリートメントしてくれて、Tsuboiさん独特の迫りくるようなビートも入れてもらって。カッコ良さのボリュームが増して、すごく良かったです。「独学でここまでデモが作れるって、すごいね」って言われたのも嬉しかったですね。憧れの人にいきなりそんなこと言われて、ぜんぜん反応できなくて(笑)。あの日に戻って、ちゃんと「ありがとうございます」って言いたい……。

知識が付いてきて、「このコードの後は、このコードだな」ってわかってきたら、ありきたりなモノしかできないと思ってて

(笑)トラックメイクは完全に独学なんですよね?

そうですね。実際に耳で聴いて、「いいやん!」「ダメやん!」って遊びながらやってるから、めちゃくちゃ時間がかかるんですよ。暇つぶしというか(笑)、遊びながらやってる感じですね、アレンジは。理論的なことはわかってないんですけど、Tsuboiさんに「その方がいいよ。俺もわかってないから」って言われて、ホッとしました(笑)。知識が付いてきて、「このコードの後は、このコードだな」ってわかってきたら、ありきたりなモノしかできないと思ってて。その概念を消して、いつも新しいものを探すようにしてますね。

「少女B*」のMVを作ることになったとき、JARRYさんのイラストのエロさが欲しいと思って

MVのイラストを手がけたJARRYさんとも、ロイ-RöE-さんが直接やり取りしたそうですね。

TiKToKにアップされてるイラストを見てるときに、JARRYさんの作品を発見して。動画1本だけだったんですけど、「めっちゃカッコいいな」ってチェックしてたんですよ。「少女B*」のMVを作ることになったとき、JARRYさんのイラストのエロさが欲しいと思って。エロはいくつあってもいいし(笑)、ぜひ一緒にやりたいと思って、DMして。イラストの素材を送ってもらって、編集は自分でやりました。「キル・ビル」のイメージもあったから、ジャージ着て刀を振り回してるシーンをオマージュしたり。

中森明菜からタランティーノまで(笑)。

自分が好きなものしか入れてないですね。アレンジもMVも予想以上にカッコ良くなって。「やっぱり間違ってなかった」って自信が付きました。

制作プロセスを発信することを決めた理由は、「自分で作ってないんじゃない?」って思われることが多いからなんですよ

制作のプロセスをSNSで発信していたのも話題を集めていました。

スッピンみたいな曲だから、それくらいラフな感じでいいのかなと。制作プロセスを発信することを決めた理由は、「自分で作ってないんじゃない?」って思われることが多いからなんですよ。カバー動画をアップしてたときも、「アレンジは誰がやってるんですか?」「絵を描いてるのは誰?」って聞かれたり。自分でやってることが伝わらないジレンマもあったし、「ちゃんと自分で作ってます!」って伝えたくて。オシャレでもなんでもないんですけどね、作ってるときの姿は。トイレやお風呂で歌詞を書いたりしてるし(笑)、生活の一部なので。コロナ禍でできることも制限されていたので、ネットを介してファンのみんなと一緒に作品を作っている感覚を持たせたいというのもありました。

制作のプロセスを共有することで、作品に影響はあった?

MVに料理してる場面を入れたくて、「何を作ってほしい?」って募ったり、フォロワーのみんなからもアイデアもらって作品作りできたのは新鮮でした。オムライスを作ったんですけど、ぜんぜん美味しくなかった(笑)。料理、どうやったら上手になるんやろう?

(笑)。この後の楽曲も、“スッピン”というか、素の表情を表現する方向になりそうですか?

あ、そういうわけではないですね。曲を作るときは、まず映像が浮かんでくるんです。女の子が主人公なのは一貫してるんですけど、その子がどういう性格で、どんな言葉遣いで、恋人がいるのかいないかーーというところか歌詞やアレンジを決めていくんですよ。女の子のタイプによって曲のテイストも変わるので、「こういう方向性で」とか「こんなジャンルで」みたいなことは決めてなくて。やってみたいサウンドはありますけどね。最近はエスニックっぽい感じだったり、中国、アメリカ、ドイツ、ロシアあたりの民族音楽が好きで。そういう音楽を自分でも作ってみたいなって。

「ここは任せます」って言いたくないし、すべてに関わりたいんですよね

ロイ-RöE-さんのクリエイティブ、さらに活性化していきそうですね。

そういう環境を作ってもらえてるので、そこに助けられてます。曲を作るだけでなく、絵を描いたり、衣装にもしっかり関わらせてもらって。「ここは任せます」って言いたくないし、すべてに関わりたいんですよね。少しでも好きじゃない要素が入ってたら、お金を払って曲を聴いてくれる人に対して失礼だと思うんです。ちゃんと胸を張って「これは自分の作品です」と言うためには、やっぱり自分でやらないと。私のめんどくさい話を聞いてくれる周りのみなさんには感謝ですね。

すべてのクリエイティブに関わるのって、単純に大変じゃないですか? ちゃんと寝てます?

大丈夫です(笑)。『M-1チャンピオン』の話なんですけど(笑)、チャンピオンになると、いきなり忙しくなるじゃないですか。私、霜降り明星が好きで。『M-1』で優勝した後、めちゃくちゃ忙しくなったんですけど、それでもどこかに余裕や自信が感じられて、それがすごくカッコいいなと。私もそうありたいんですよね。自分で選んだ職業だし、思い切りがんばろうって思ってます。

ラジオに向かって「わかるー!」とか言ってます(笑)

素晴らしいです。ちなみに息抜きの時間は何をやってるんですか?

お笑いの方のラジオですね。いま聴いてるのは、霜降り明星さん、中川家さん、ダイアンさんのラジオ。ずっと家にいて、ほとんど人と喋らないから、ラジオに向かって「わかるー!」とか言ってます(笑)。

その他のロイ-RöE-の作品はこちらへ。

ロイ-RöE-

頭から離れないメロディーと個性的な歌詞を紡ぎ出すシンガーソングライター。
中学卒業後から独学で作曲を開始。
2018年10月、1st Digital EP「ウカ*」をリリース、ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEよりデビューを果たす。
さらに、2019年4月スタートのフジテレビ系ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』のオープニングテーマに抜擢。同年5月に1st Digital Single「VIOLATION*」としてリリースし、MVは130万回再生を突破。さらに同年11月にリリースした2nd Digital Single「癒えないキスをして*」は映画『羊とオオカミの恋と殺人』主題歌に抜擢。2020年2月にはDigital Cover Single「ラムのラブソング」はYouTubeでのMV再生数が90万回を超えている上、続けてTikTokにて「チャイナアドバイス」を投稿後楽曲使用数4万回越え、楽曲使用動画の総再生数は合計で1億を超え、YouTubeでのカバー動画は2週間で100万再生越えと次々と、新時代ならではの楽曲ヒットを生んでおり、その斬新な発想とクリエイティブ、独自の声質から中毒性を生むアーティスト。

オフィシャルサイト
https://roeworld.com