発掘!インディーゲーム総研  vol. 26

Review

シスターと魔女の戦いの物語『Minoria(ミノリア)』ゴシックと爽快アクションの気持ちいい調和

シスターと魔女の戦いの物語『Minoria(ミノリア)』ゴシックと爽快アクションの気持ちいい調和

『Minoria(ミノリア)』は、耽美で退廃的な世界を舞台にした横スクロールの2Dアクションゲーム。制作は、クオリティの高い美術と歯ごたえのあるアクション性で好評を博した『Momodora:月下のレクイエム』(以下、『Momodora』)の開発スタジオ、Bombserviceです。ヨーロピアンなダークファンタジーを思わせる世界設定は両者共通ですが、キャラクターがドット絵で描かれた『Momodora』に対して『Minoria(ミノリア)』はセルシェーディングを駆使し、滑らかに動くキャラクターが表現されています。トレーラームービーではスムーズで気持ちのいい動きだけでなく、可愛らしく魅力的なキャラクターデザインも見ることができます。ムービーではゲームの持つ雰囲気やキャラクターの魅力だけでなく、サクサクと展開するアクションも確認できるでしょう。本稿では高い完成度と面白さに迫ります。

文 / 内藤ハサミ


高難度でも遊びやすいゲームデザイン

主人公のシスター・セミヤ(セミリア)は、相棒のシスター・フランとともに教会(聖職庁)に盾突く異端者を“魔女”として粛正するため、戦いのなかへと身を投じます。彼女らの行く手に立ちふさがる魔女を倒していくのが本作の目的です。実際にプレイアブルキャラクターとして操作するのはセミヤで、フランはイベントシーンに登場したり、プレイ中に助言などをしたりするサポート役となります。こういう作品の主人公は異端者側であることが多いようなイメージだったのですが、横暴な教会に従わない者を闇に葬る側が主人公という設定にダークヒーロー的な面白さを感じます。セミヤとフランはなぜ教会のために戦うのか? それは作中で明らかになります。教会のシスターと異端者の戦いという宗教色を感じるモチーフながら、実際には剣戟と魔法のアグレッシブなアクションの印象が強いので、印象よりも間口が広い作品ではないでしょうか。

Minoria WHAT's IN? tokyoレビュー

▲無口なセミヤはほぼ喋らないので、他キャラとの会話はほとんどフランが行います

本作は俗に“メトロイドヴァニア系”と呼ばれるサイドビュー探索型のアクションゲームです。入り組んだマップを探索し、拾ったアイテムを使い、敵を倒し、ギミックを解除するなどで新たな道を切り開き進んでいきます。同ジャンルのファンにはなじみ深い手触りでしょう。わかりやすいシステムなので、今までこのタイプのゲームを遊んだことがなくても理解しやすいはずです。

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▲未知のマップを探索し、新たな進路を見つけていく流れが楽しい

ゲーム難度ですが、前半はやや高めと感じるかもしれません。HPが設定されているため、攻撃を1回受けるだけで直ちにゲームオーバーになるわけではないものの敵から受けるダメージ量が多いので、闇雲に突っ込み武器を振るうだけで進めていくことは厳しいです。特にボス戦はレベルを上げて少々のダメージを覚悟して突き進むパワープレイだと、早々に無理が出てくるでしょう。敵の攻撃パターンを見極めて動くことと、攻撃を受け流したりかわすパリィからのカウンター攻撃を活用することが有効です。筆者は敵の攻撃に合わせタイミングよくボタンを押して攻撃をはじくパリィの操作が得意でないので、クリアまでにパリィを使って切り抜けたシーンは十数回程度でした。使わなくてもなんとかなる程度には攻略の自由度があり、決められた緻密な操作ができないと遊べないわけではないのが嬉しいところです。それに防御しながら敵の隙を狙ってダメージを叩き込むというだけでなく、プレイヤー側から積極的に攻勢をかけていけるので爽快感のあるプレイを味わえます。

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▲パリィ重視と公式では説明がありましたが、戦いのスタイルをそれなりに自分で作ることができるバランスがいいですね

セミヤの持てる武器は数種類あり、攻撃のアクションパターンが変化します。弧を描く武器アクションの数々はとてもカッコよく、アクションの華麗さに浸ることができます。物理攻撃力を上げる武器はほとんどないですが、攻撃力0.25倍の効果を付与するという変わったものがあります。難度を調節してやり込みたいプレイヤーに向く武器ですね。ちなみにセミヤの攻撃力やHPは、レベルアップで上昇します。勝てない敵がいたらまずはモブを倒してレベルアップをすると、パワーを底上げできるでしょう。

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▲武器によって変わる美しいアクション。攻撃するたび、その華麗さに見とれます

防具はありませんがレベルアップでHPをアップさせることができるため、デメリットは感じませんでした。防具の概念を入れず、よりアクションに集中できるシンプルなシステムは本作にとっていい作用をしていると感じます。武器のほかに戦いを助ける装備として“お香”があります。装備するとお香の種類に応じた魔法が使えるようになるというもので、武器同様に戦いには欠かせません。攻撃魔法や回復魔法などプレイヤーが使用することで効果を発揮するアクティブ効果のお香のほかに、取得経験値が増える、攻撃を受けたときのノックバックを無効にするなどセミヤにバフ(強化および有利な効果)が付くパッシブ効果のお香が存在します。アクティブ効果のお香は同時に3つ、パッシブ効果のお香は2つ付けることができます。

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▲約40種類ほどあるお香の名前は、効果を表すもの、植物の名前が付けられているものなどさまざまです

アクティブ効果のお香にはそれぞれ使用回数が設定されています。ゲーム中はいつでもメニュー画面を開くことができ、その間はポーズがかかるので戦闘中に適したお香を付け替えることも可能です。ボス戦などではお香を使い切ったあと、まだ使っていないものに替えることを繰り返しながら戦う作戦も用いました。

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▲最も使ったのは、体力を回復する効果の“回復のお香”です。このお香だけは、同じものを手に入れるたびに使用回数が増えていきます

お香での魔法攻撃は攻撃範囲が変わること、敵の属性によって効果の差が違うことだけであまり変わり映えしないという印象を初めは持っていましたが、お香ごとの特性がわかってくると考えが変わりました。たとえば一定時間絶え間なく上空から剣が降り注ぎダメージを与える剣の雨のお香は、浴びせた敵の種類によって断続的に硬直が発生します。これを利用すれば、しばらくの間ダメージを受けずに攻撃をし続けることができるのです。お香の効能を中心に置いた作戦を立てるのもまた楽しいので、最初はピンとこない効果であってもまずはひととおり触ってみると、行き詰まった攻略に活路が見いだせるかもしれません。

ミスマッチな魅力を結びつけるストーリーの力

本作の魅力は完成度の高いアクションにもありますが、プレイまえに強い印象を残すのは可愛らしいビジュアルと対照的であるシリアスな世界設定でしょう。セミヤは教会に心から仕えているわけではありません。教会の異端審問官に母親を魔女と疑われて殺され、母の罪を償うため修道女にされてしまった女性です。フランも同じく故郷を異端審問官に焼かれています。身内の仇に与するしかないという辛い境遇からふたりの心の距離は縮まっていくのですが、彼女らのように教会によって人生を狂わされてしまった女性たちが反旗を翻し、“魔女”としてセミヤとフランに立ちはだかるのです。

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▲魔女と違った勢力も存在します。彼らの目的は……?

出てくるキャラクターはほぼ女性です。バディであるセミヤとフランだけでなく、異端者側の敵キャラクターについても彼女らの強い愛情や心の繋がりがさりげなく描かれています。女性同士の結束や心の繋がりを描く作品に惹かれる筆者にとっては、非常に好みの内容でした。

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▲アニメ調のタッチで描かれたキャラクターと、ゴシックホラーな雰囲気を感じる背景の取り合わせが面白い

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▲シスターとして成すべきことに疑問を持ちながらも突き進むしかないセミヤとフラン。こんなイベントシーンも……

ほっこりする可愛らしさと神秘的な美しさの同居するグラフィックが、この世界の独特な魅力の一端を担っていることは間違いありません。そして、それらの要素を最大限に活かし結び付けているのが本作のストーリーなのです。中盤以降もセミヤとフランは、自分の成すべきことと本心の狭間で揺れ動きます。物語のラストにどう行動するかでエンディングは2種類に分岐するので、自分の気持ちに近いほうをじっくりと選んでください。筆者にとってはどちらのエンディングも苦渋の選択の結果だったので、スッキリと割り切れない気持ちはあれど納得のできるものでした。エンディングを迎えてしまうとセーブデータにラスボスはいなくなりますから、すぐに再戦はできません。初めからのプレイは大変ですが、もうひとつのエンディングを見るには2周目のプレイが必要ということですね。

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▲2周目の敵はHPがアップしていますが、極端に攻略が苦しくなることはないはずです

1周目のエンディングを迎えるまでの総プレイ時間は2時間弱でした。短い時間ですが、それを感じさせない大冒険をすることができました。敵の可愛らしさやエリアの美しい背景は楽しめる点ですが、ややバリエーションが乏しいこと、まったく何もない通路のような部屋もいくつかあり間延びした印象になってしまったことが気になりました。敵の配置や仕掛けなど、もう少し充実していると嬉しかったですね。

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▲いずれも図書室から始めることができます

クリア後は、次々に現れる敵と連戦しながら進み最下層のボスを倒す“苦悶の塔”が登場します。また先ほども少し述べましたが、セミヤのレベルと一部を除く装備・アイテムが引き継がれ、取得経験値と敵から受けるダメージ量が増加する周回プレイの要素も追加されます。苦悶の塔の最下層では、『Momodora』のプレイヤーであれば嬉しくなるキャラクターが待ち構えているので、ぜひそこまでプレイを進めてみてください。
シスターたちが剣と魔法で戦う探索型アクションゲーム『Minoria(ミノリア)』。アクションの爽快感、可愛らしいキャラクター、本作ならではのゴシックな世界設定は一見ミスマッチながら、プレイを進めるほど調和を感じて入り込める魅力に溢れていました。もし次回作の開発を計画しているのならば、さらに進化した面白さが期待できるでしょう。今後の動向もチェックしていきたいですね。

フォトギャラリー

■タイトル:Minoria(ミノリア)
■発売元:DANGEN Entertainment
■対応ハード:PlayStation®4、Nintendo Switch™、Xbox One
■ジャンル:アクション
■対象年齢:17歳以上
■発売日:発売中(2020年9月10日)
■価格:ダウンロード版 各2,000円+税


『Minoria(ミノリア)』オフィシャルサイト

Copyright © 2019 Bombservice. All rights reserved.
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