発掘!インディーゲーム総研  vol. 25

Review

中国式子育てSLGの”沼”とは?『チャイニーズペアレンツ』時間が溶けまくる中毒性の理由

中国式子育てSLGの”沼”とは?『チャイニーズペアレンツ』時間が溶けまくる中毒性の理由

日本のお隣の国、中国。物理的な距離は遠くても、中国由来のさまざまな文化が日本に浸透しているという点では近い国と言える。でも私たちはどれだけ中国のことを知っているんだろう?

多角的に、ある意味では集約的に中国を知るのにうってつけのゲームが登場した。その名も『Chinese Parents(チャイニーズペアレンツ)』。直訳すると“中国人の両親”となる、中国を舞台にした育成シミュレーションゲーム。ここまで聞くと真面目なゲームに聞こえるかもしれない。けれどこれは中国的おおらかさとシュールさ、そして理不尽に抗いながら成長していく人生の縮図のゲームなのだ……! どの才能を伸ばしていくかとか、子どもからしたらどうでもいいと感じる親のメンツをかけたバトル、親戚からお年玉を受け取る際の駆け引きのミニゲーム、将来を見据えた交際などハマる人はドハマリし、そうでもない人にはまるで引っ掛からない稀有なゲーム。ステータスを伸ばすことに生きがいを感じる人、シュールなゲームが好きな人はちょっとだけでもプレイしてみて! 1,280円(税込)だから!

文 / 大部美智子


中毒注意! 中国式子育て

最初は中国人の両親に育てられる赤ちゃんが主人公で、47ターンの間にひたすら能力を伸ばし、スキルを学び、特技を会得しながら成長し、大学入試を目指していく。そして、その育った子が親となり今度は次世代を育む。代変わりしながら子育てをしていくのだ。
正直、プレイを開始するとこのゲームのおもしろさがよくわからなかった。能力値のカケラを拾い集め、スキルを学習し、毎ターンの行動によって各能力値を伸ばしていく。言ってしまえばただそれだけなのだ。でも、能力値を伸ばしていくかたわらでちょこちょこと挟み込まれるシュールなイラストや中国文化、そしてこちらから海を渡っていった日本文化を見てフフッと笑っていたら、プレイ開始から4~5時間で1周目をクリアしていた。大学入試の結果は750点中468点で、重慶医科大学に進学。のちに文学家になった。とくに誰とも深いつきあいができなかったので“見知らぬ人と結婚”という結末。

Chinese Parents WHAT's IN? tokyoレビュー

▲さまざまな行動の合間に差し込まれるカット。ラーティアオとは、どうやら中国では定番のピリカラおやつらしい。おつまみにもなるやみつきな味だとか……気になる

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▲お年玉バトルのミニゲーム。中国のお年玉は相手から差し出されても一度は断り、それでも差し出されるのを遠慮しつつちょうどいいタイミングで受け取るのがマナーだとか。このゲームでは制限時間が切れるときに、ニッコリマークがオレンジラインに止まるようAボタンを押していくのだ。失敗するとお年玉は親に没収されてしまう……

ポチポチとボタンを押して流れるように2周目へ。第一世代の能力を少し引き継いだ第二世代の育成の始まりだ。今度はより効率的に行動し、なりたい職業を“大文豪”に定め、それに特化した能力値を磨いていく。それでも750点中457点で河南理工大学に進学したのち、なぜか文系の“ベストセラー作家”という結果だった。結婚相手は見知らぬ人。ふむ……。
そして3周目。第三世代は女の子だった。750点中513点で海南大学に進学後、文学家に。結婚相手は学生時代に仲がよかったジャン・ハンボという知的な青年。これによって、結果に変化が。結婚相手が見知らぬ相手では主人公の能力しか引き継がれなかったが、第四世代には両親ふたりの能力を引き継ぐ子どもが生まれることになった。
その後、あーでもないこーでもないとさまざまなスキル学習を試したり親の期待に応えてみたりして、気がついたら8周目に突入していた。おかしいな、最近ずっとプレイしている。
このゲームの最大の吸引力・沼は、“エンディングの多さ”にあると思う。大学入試の結果、職業の種類、結婚の相手……加えて、成長途中で入手できる特技の数々。「最高学府のひとつ、北京大学に受かってみたい! どんな職業があるの!? 憧れの職業に就きたい! あの子と結婚したい! 特技を全種類制覇したい!」という、未知なものを明かしていきたい気持ちやコンプリート欲が刺激される仕組みになっているのだ。恐ろしい。時間がいくらあっても足りないじゃないか。ということで、ゲームする時間が欲しいのでシステムはサクサクとテンポよく紹介していくよ。

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▲まるまるとした主人公。玉のような子とはまさにこのこと。SO CUTE。このあと名前をつけられる

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▲ツーブロックな父ちゃん。目がきれいだね。左上に表示されている“やみなべ”は子どもの名前。第二世代以降は2世、3世……というわかりやすい名前にした

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▲母ちゃんはなんだか昭和の香りがする。ビジュアルの緩急が激しいけれど、それがだんだんクセになってくる

クセの強い両親に育てられる主人公。生まれたころの能力値は平凡そのもの。そこからどこまで能力値を伸ばせられるか、そして伸ばす能力によって将来就ける職業の方向性が決まるが、能力値が低いとそもそも大学に進学できないことも……!? でも、それも人生だ。

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▲画面左のパラメーターが現在の能力値。“行動力”を使って能力の“カケラ”を集めると能力値を上げることができ、カケラを得ると周囲の“?”だったカケラが解放されて選択できるようになる。行動力はターンごとに一定数回復していく

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▲ときおり出現する両親の”期待”という名のオーダー。指定ターン数内に要求されている能力値を入手するとオーダークリア

カケラを集めて両親の期待に応えるとボーナスで能力値が増えたり、両親の満足度やメンツが上昇したりする。親の顔色を見て育つ子……いいのやら悪いのやら。ただし、期待に応えられなくてもペナルティはない。ボーナスのために入手しておきたいところではあるけど、要求される能力値が高過ぎるなど、オーダークリアがむずかしい場面も多々ある。1周目だとほぼ不可能に近い……。

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▲“カケラ”にはさまざまな種類がある。毎ターン能力値を入手できる天賦能力を上げてくれるもの、同じ色のカケラを集めてくれるもの、行動力が少し回復するもの、“理解力”を得られるものなどがある

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▲理解力はスキルの学習に必要な数値。学習で得たスキルは“予定”に組み込むことができ、予定はつぎのターン開始まえに行われて各種能力を伸ばすことができる。赤ちゃんのころから将来を見据えて、さまざまな学習やスキルをこなさなければならない。大変だ~

学習に関連する能力値が高いほど、学習に必要な理解力は少なくなる。なので、ひとつのスキルに高い理解力を使用してほかのスキルを学習できなくなるよりは、カケラを集めて能力値を高めてから複数の学習を行ったほうがいい……けれど、効果の高いスキルが早い段階で必要という場合もあって、ジレンマに陥ることが多々ある。なんともいえない絶妙なバランスだ。

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▲”話す”のスキルで得られる能力値は上記のとおり。黄色のニッコリマークの右にある青い顔はストレス値を表している

予定には娯楽スキルも組み込める。能力値を上げたりストレスを下げたりできるが、両親の満足度が下がるものも多く含まれる。能力値が上がるからと娯楽ばかり実行して親の機嫌を損ね続けると、罵倒されたり暴力を振るわれたりして、心のなかのトラウマ領域が拡大していく。とんでもない親だな!

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▲娯楽の“テレビを観る”を実行していたら、満足度が半分を切り恐喝された……親が子に恐喝ってダメでしょう……

トラウマ領域はストレス値が上がり過ぎても拡がり、MAXになるとBAD ENDに突入。そこでゲーム終了となる。ちなみにストレス値が高いとメンタルにも影響が出て、“卑屈”や“冷酷”などマイナスな面が目立つ性格となる。性格がキャラクターの人生にどう影響を及ぼすかはまだ確認できていないけれど、いい影響ではないことはたしかだろう……。
ある程度年齢が上がると、おこづかいを毎ターンもらえるようになる。BAD ENDを回避すべく、親の満足度が上がるプレゼント、ストレス値が下がるアイテム(お菓子やスマホ課金など)をおこづかいで買うようになった。やれやれ。平穏に生きるのも楽じゃない。ちなみにおこづかいの額は親の職業によって決まる。なんてシビアでリアルなんだ。
序盤はカケラ集め、スキルの学習、予定決めという流れで進んでいく。大きくなるにしたがって売店でアイテムが買えたり、同級生と交流を深めたりと行動が増えていく。また、お年玉バトル、同級生との会話、定期テストなどの“イベント”がある場合は、イベントをこなしてからじゃないと予定を立てられない。

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▲満点の科目があっても極端に悪い科目があると、両親に罵られる。満点を取ったら、まずは褒めてよ~!

さまざまなスキルをこなしていると確率で“特技”を習得できる。レア度が高いものからそれなりのものまでさまざまあって、レア度が高い特技は親のメンツをかけたバトル、スキル・オブ・チャイナという特技コンテストで優位に働く。スキルひとつひとつに特技があるらしいので、ここでもコンプリート欲がうずく。まだ見ぬ特技を習得したい……!

突発的に起こるメンツバトルは子どもの特技を自慢してマウントを取り合うバトル。相手は親戚だったり母親の友人だったりとさまざま。中国はメンツがとても重要で、アイデンティティのひとつと言ってもいいくらいだとか。本当に!? でも日本にもいるもんね……ふーむ、興味深い。でも、母親の“口撃”を見ていると笑ってしまうので、ぜひ下の動画で見てほしい。ちょっと盛り過ぎでは……!

メンツバトルで勝ってもとくに何も起こらないというところがじつにリアル。まだ負けたことがないのでその場合のことはわからないけれど、どっこいどっこいな勝負のほうがメンツは少しプラスされる……。

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▲特技図鑑では、一族がこれまでに取得してきた特技が見られる

スキル・オブ・チャイナという特技のコンテストでは、受賞すると理解力とメンツがゲットできる。受賞条件はレア度の高さとそのときのコンテストのテーマに因るらしいが、テーマは提示されないので運を天に任せるしかない。

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▲メンツの高さに応じて、両親に“要求”としてさまざまなご褒美(娯楽)をねだることができる。ここで得られる娯楽は通常のスキルから得られる能力値よりも高い効果のものがあるが、要求が成功するまでどんな内容かはわからない

そうこうしているうちに子どもは段々と成長していく。赤ちゃんから幼稚園生、小学生、中学生、そして高校生へ。子どもの成長はあっという間と言うけれど、長いような短いような。ちょっとまえまでは赤ちゃんだったのにな、と思うと目頭が熱くなる。

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▲男の子。まるまるとした赤ちゃんだったのにシュッと成長! ダウナーな若者に

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▲女の子。小学生時代は猫耳を装着。そういう時代は誰にでも訪れるよね。中学に入ったら一気に垢抜けた……!

中学生になると“社交”が解放され、同級生と友情を育むことができる。だが男女で難度が違いすぎて、これはもう笑うしかない。女の子の場合は行動力を20~35消費して相手からの“お誘い”を受けることができるし、一緒に帰る相手を設定できる。会話の選択肢によって好感度は上下するが、なんとなく正解がわかりやすい印象。一緒に帰るよう設定された相手の好感度は少しずつだけど毎ターン上昇し、相手によって能力値もわずかに上昇する。

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▲主人公に「●●君と一緒にいたよね……」と詰め寄るシュ・ユウミンに、「あなたには関係ない」みたいな返事をしたら好感度がビックリするほど下がった

一方男の子の場合は行動力を消費するのは同じだけれど、一緒に帰る相手などは設定できない。さらに話しかけた際の選択肢がむちゃくちゃむずかしい。行動力を20消費して女の子に話すが、褒めても「つまんないわ」とそっけなかったり、興味のありそうな話題を振っても好感度がダウンしたり……。成功しても2しか好感度が上がらないこともある。これが中国のリアルな恋愛模様なのかー!? それとも単に私が女の子の感情に疎いだけなのか……。
男女どちらにせよ行動力を消費しないといけないので、その分能力値を上げるためのカケラをゲットできる量は減ってしまう。学業と恋愛の両立はむずかしいのだ。

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▲女の子に話しかけてばかりいたら親に止められて、つぎのターンまで話しかけられなくなった……

男は嫁をもらってナンボとか、女は家庭に入るんだから学はいらないという考えとか、子どもに期待しすぎてヒステリックになる親とか……日本でも“あるある”なゲッソリする現象が、中国でもあるんだなぁとグンニャリとした親近感を覚える。それでも子どもはしっかり反抗したり、ともだちと「うちの親がさー」、「うちもうちも」みたいな話をしているのを見て少し安心する。前述の親は中国でもあたりまえにいるけれど、それを是とはしていないのだ。しかしクリアして次世代の子どもが主人公になり、これまで主人公だったキャラクターが親となったとき、自分がされて嫌だと思っていたことを自分の子どもにするようになって何も言えなくなってしまう。歴史はくり返すってやつですかー!?
『Chinese Parents』の魅力をひと言で表すのはむずかしい。日本とそんなに変わらない文化に共感することもあれば、中国ならではの考えになるほどと思うこともある。さらに自分の子ども時代に思いを馳せたり、今後自分の子育ての教訓としたいことも出てきたり。さまざまな能力を取得することで人間の感応性が広がり、人生の選択肢も広がるんだなぁとしみじみと思った。

成長を導くゲームは面白い。たかが育成シミュレーション、されど育成シミュレーション。すごくエネルギーを使いながら、何周もぐるぐるプレイしてしまう恐ろしいゲームだった。プレイの止めどきもむずかしい。いちばんいい区切りはやっぱりクリアしたときなんだけれど、すぐさま赤ちゃんが登場するので「ちょっとだけ進めるか……」と考えているとまたぐるぐるしている。危険。中国式子育ては危険。沼。「ちょっと息抜き」と思ってプレイを始めると数時間経っているので、受験生はプレイしちゃダメ、絶対。
今回8周ほどプレイした。どれもより上を目指すプレイスタイルだったけれど、「逆に親に反発し怠惰を極めたらどうなるのかな?」と遅めの反抗期が私のなかに芽生えた。よし、いまこそ反旗を翻すときだ。

フォトギャラリー

■タイトル:Chinese Parents(チャイニーズペアレンツ)
■発売元:PLAYISM
■対応ハード:Nintendo Switch™
■ジャンル:育成シミュレーション
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2020年8月20日)
■価格:ダウンロード版 1,280円(税込)


『Chinese Parents(チャイニーズペアレンツ)』オフィシャルサイト

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