LIVE SHUTTLE  vol. 413

Report

上白石萌音 歌声、表現力はもちろん、顔の表情やちょっとした目線の移動までも惹きつけられた時間。オンラインライヴならではの魅力に溢れたパフォーマンス。

上白石萌音 歌声、表現力はもちろん、顔の表情やちょっとした目線の移動までも惹きつけられた時間。オンラインライヴならではの魅力に溢れたパフォーマンス。

女優、声優、シンガーとして多方面で活躍している上白石萌音が、9月19日(土)に自身初となるオンラインライヴ『i note』を開催した。

上白石萌音は2016年10月にカバーミニアルバム『chouchou』でシンガーデビューを果たし、2017年2月にワンマンライブ「Live THEATRE 〜chouchou〜」、同年11月にワンマンライブツアー「and…」を開催。のちのMCで「成人してから初めてのワンマンライブです」と語っていたように、本公演は2017年以来、3年ぶりのワンマンライブとなっており、ライブタイトルには、その間にリリースされたミニアルバム『i』、初のフルアルバム『note』という2作品の題名が記されていた。

映像は小さなスタジオのような場所から配信されていた。バンドメンバーがそれぞれの楽器を手にしたところに、白いTシャツにブルーのロングスカートを履き、髪を一つに束ねた上白石萌音が、自然体でラフな足取りで歩み寄り、元チャットモンチーの橋本絵莉子が提供したロックナンバー「白い泥」をアカペラで歌い始めた。<あなたに見せたい景色がある>と伸びやかに歌う彼女の目がスポットライトに照らされてキラキラと輝いている。ライブはできれば生で、同じ空間で見たいというのが誰の心にもある本音だとは思うが、彼女はオンラインもいいなと思わせてくれる数少ないシンガーだ。なぜなら、1曲ごとに歌声はもちろん、表情もころころと変わるから。10代の青春を感じさせる「白い泥」では明るい笑顔も見せていたが、ジャジーな「土砂降り」では低く静かな語り口で、終わりを知っている大人の前向きさを表現していた。子供から大人へ。その変化をカメラがしっかりと寄って見せてくれた。ライブハウスの現場では、彼女の顔のアップをここまで見ることはきっと難しいだろう。

最初のMCでは、「あぁ……ライブだぁ〜」と感慨深げに呟き、「本当に嬉しいです、歌えて。こういう形であれ、皆さんと繋がれて嬉しいです。積年の歌いたかった私の思いをどうか受け取ってください」とコメント。自身が作詞した「あくび」では柔らかく穏やかな歌声で幸せなカップルを描き、ミドルテンポのロックバラード「スターチス」ではどうすることでもできない孤独感を抱きしめ、大橋トリオ提供のカントリーナンバー「Little Birds」ではアコースティックギターがトリルを奏でる中で言葉の一つ一つを丁寧に噛みしめるように届け、聴き手の心を少しずつ晴らせてくれた。

「白い泥」「一縷」「From the Seeds」のMVメイキング映像を挟み、「From the Seeds」のMVで使用した白のワンピース姿で登場した萌音は、スタンドマイクを両手で握り締め、<美しいだけじゃ駄目なの/汚れても輝く様>というフレーズを力強くアグレッシヴな歌声で体現。一転して、「永遠はキライ」と荒井由美のカバー「ルージュの伝言」では、挑発的な女の子を演じてみせた。ここで、2021年にカバーアルバムをリリースすることを発表した。「70〜90年代に歌われた邦楽を中心に作りたいと思っています。そこで、皆様からのリクエストを募集します。もともと昭和の曲が大好きなので、若い方が昭和の曲を知るきっかけになったら素敵だなと思うし、親子の会話も増えそうだし、あったかいアルバムにしたいなと思います」と語り、久保田早紀が1979年にリリースしたデビュー曲「異邦人-シルクロードのテーマ-」をカバー。フラメンコギターが奏でるイントロに合わせて一瞬でエキゾチックな色香を醸し出した彼女は、歌い終えた後にいつもの笑顔に戻り、「たくさんのリクエスト、お待ちしておりま〜す」と画面越しに手を振った。

そして、自身が主演した映画『L♡DKひとつ屋根の下、「スキがふたつ」。』の主題歌「ハッピーエンド」では<夢はハッピーエンド/あなたとお揃いのストーリーがいいの>と柔らく軽やかに歌いあげると、今度は“僕”視点で描かれた「ストーリーボード」を<君と僕のハッピーエンドにしよう/ストーリーは僕が書き換えるよ>と返答。中学生の頃から彼女を知る内澤崇仁(androp)による2曲を続けて披露した彼女は、暖炉の火が灯る大広間へと移動。「まだまだ不安な今の時間にも寄り添ってくれるような、私にとっても大切な曲です」と語り、水野良樹(いきものがかり)が提供した「夜明けを口ずさめたら」をグランドピアノの弾き語りで、椅子に座ったまま優しく語りかけるように歌い、画面越しのオーディエンスに歌を通した“希望”と“光”を贈った。

歌い終えた彼女は椅子にマイクを置き、「ありがとうございました」と一礼して画面から消えたが、ものすごい勢いで流れていくチャット欄の「アンコール」の声に応えて再登場。HYのトリビュート盤に収録されていたカバー曲「HAPPY」ではクラップを煽りながら熱唱。“good feeling”と“bad timing”というフレーズだけでも異なる表情を見せることに再び驚きながらも、<あなたにとって今日も良い日でありますように>という願いのようなフレーズには今の時代だからこそ、グッと胸に迫りくるものがあった。

そして、「今日は大切な時間をありがとうございました」と挨拶した彼女は、「楽しかった」と3度繰り返し、「やっぱり歌うのが大好きなんだなって思いましたし、音楽があると心も軽くなるなって思う日々です。みなさんにとって、そんな曲がこの中に1曲でもあれば、すごく幸せだなと思います。また、次は、フェイス・トゥ・フェイスで、直接盛り上がって、歌を共有できる日が早くくればいいなと思っています。それまでどうかみなさん、お元気でお過ごしください」語りかけ、最後に野田洋次郎(RADWIMPS)による「一縷」へ。地に足をつけ、真っ直ぐに前を見つめて歌った彼女は最後の一音まで丁寧に思いを込め切ると、真剣な面持ちの表情を崩し、「またお会いしましょう。おやすみなさい」と笑顔で手を振って帰っていった。凄腕ミュージシャンによる豊かな音楽や歌声の素晴らしさや表現力はもちろん、顔の表情やちょっとした目線の移動までも惹きつけられ、心の揺れうごきを感じることができた。一瞬たりとも画面から目が離せなかったこの1時間30分。配信ならではの魅力を十分に感じさせてくれるライブとなっていた。

文 / 永堀アツオ

上白石萌音 オンラインライヴ『i note』
2020年9月19日

<Set List>

1. 白い泥
2. 土砂降り
3. あくび
4. スターチス
5. Little Birds
6. From The Seeds
7. 永遠はきらい
8. ルージュの伝言
9. 異邦人-シルクロードのテーマ-
10. ハッピーエンド
11. ストーリーボード
12. 夜明けをくちずさめたら
〈アンコール〉
EC1. HAPPY
EC2. 一縷

リリース情報

2021年にカバーアルバムのリリースが決定!
リリースへ向け、楽曲リクエスト募集!
70年代、80年代、90年代にリリースされた楽曲の中からリクエスト下さい。
【リクエスト募集期間】
9月19日(土)19:00〜9月30日(水)23:59まで
▼こちらのフォームよりリクエスト下さい。
https://questant.jp/q/2F7HO5HM
※その他の詳細はオフィシャルサイトで

上白石萌音

1998年1月27日生まれ。鹿児島県出身。
11年に第7回「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞を受賞し、デビュー。
14年、『舞妓はレディ』にて映画初主演を飾り、第38回日本アカデミー賞新人俳優賞など数々受賞。
その他の主な出演作品として、映画『君の名は。』『溺れるナイフ』『ちはやふる』シリーズ『羊と鋼の森』『L♡DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』や、ドラマ『記憶捜査~新宿東署事件ファイル~』、舞台『ナイツ・テイル– 騎士物語–』『組曲虐殺』などがある。
2020年は、TBS1月期火曜22時ドラマ『恋はつづくよどこまでも』で主演を務め、NHKみんなのうた4~5月放送「夜明けをくちずさめたら」の歌唱を担当。8月26日に初のオリジナルフルアルバム『note』をリリース。9月19日には 初のオンラインライヴ『i note』を開催した。

オフィシャルサイト
https://kamishiraishimone.com

vol.412
vol.413
vol.414