発掘!インディーゲーム総研  vol. 24

Review

モンティ・パイソンの世界で遊ぶ!?『ロック・オブ・エイジス:メイク&ブレイク』巨石転がしタワーディフェンスの沼

モンティ・パイソンの世界で遊ぶ!?『ロック・オブ・エイジス:メイク&ブレイク』巨石転がしタワーディフェンスの沼

『ロック・オブ・エイジス』シリーズを開発したのは、イギリスのコメディグループ“モンティ・パイソン”をこよなく愛す、チリのデベロッパーAce Teamの3兄弟です。悪ノリとも見えるコンセプトのゲームですが、根強いファンに支えられ、シリーズを追うごとにスケールは大きくなっていきました。本稿で紹介する3作目『ロック・オブ・エイジス:メイク&ブレイク』では、プレイヤーが自分でステージを作ることができるエディタを搭載。ファン待望の機能にも注目したいところです。まずはトレーラームービーを観てください。短い動画でも個性的な世界の雰囲気を感じられるでしょう。

文 / 内藤ハサミ


ボールダーを操り、景気よく破壊する気持ちよさ!

「モンティパイソンのコメディ番組みたいな雰囲気で描かれた神話の世界で、顔のついた巨大な石を転がしてレースする」なんて言っても、昨日見たヘンな夢の話をしているのかと思われるかもしれません。とにかく本作は、どこまでいってもおふざけ要素が満載です。ゲームを始めるとまずは自分のキャラクターである“軍司令官”を選びますが、そのラインアップがなんだかスゴイのです。ヒンドゥー教の女神カーリー、エリザベス女王、ジュリアス・シーザー、チンギスハーンとそうそうたる顔ぶれです。よく見るとエリアス・ガルシア・マルティネスが描いたフレスコ画の修復失敗バージョン、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教の創造神など、現代のネタまで取り入れられています。選定理由は何なのでしょうか。

ロック・オブ・エイジス:メイク&ブレイク WHAT's IN? tokyoレビュー

▲どれも自分のキャラクターとして選ぶにはクセが強すぎやしませんか……

始まるストーリーは古代ギリシャの叙事詩、“オデュッセイア”のワンシーンです。単眼の巨人サイクロプスによって洞窟に閉じ込められてしまったオデュッセウスは、その勇敢さと知略で見事脱出するという筋書きなのですが、その方法が羊を固めて作った球“ボールダー”を転がし、勢いよくぶつかることで出口を塞いでいる岩を動かすというもの。だいたいはオデュッセイアどおりの展開ですが、知略に長けたオデュッセウスも羊をボールダーにするなんていう変化“球”は使っていません!

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▲「羊をくっつけて巨大な球を作ろう!」って、普通そういう発想にはならないでしょ! ツッコミが止まりません

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▲気の毒にも固められてしまった羊の球を転がします……

障害物や仕掛けがあったり曲がりくねったりしているコースを落ちないように転がしていき、勢いをつけた状態でゴールに立ちふさがる岩めがけてぶつけます。加速をつけて出口をふさぐ岩に一定以上のダメージを与えるとクリアです。一回でダメージを与えきれなければ、最初からコースを転がし、また激突させてダメージを与えることを繰り返します。加速度が増すほど岩に与えるダメージも増加するので、一回の激突でできるだけ大ダメージを与え、少ない手数で素早くクリアすることが望ましいのです。

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▲ぶつかりまくって、大岩をどかす!

実はここまでがチュートリアルの内容です。歴史を皮肉った物語に沿って歴史上の有名人たちと球転がしで対決するストーリーモードは、多彩なルールのステージが用意されています。ボールダーを転がしてゴールまでの時間を競う“タイムトライアル”、配置されたオブジェクトを避けながらゴールする“障害物コース”、ゴールにある的に早く到達し高い点数にボールダーを入れる“スキーホルダー”、手荒に扱うとすぐ壊れてしまう卵のボールダーを操る“ハンプティダンプティ”。タイムトライアルであれば効率のいい動きでゴールまでのスピードを重視する必要がありますし、ハンプティダンプティであれば割れやすい卵の状態に気を遣い、割れない程度の動きをコントロールしつつ進まなければなりません。ボールダーを転がすという基本動作は同じでもルールが違うと攻略のポイントが変わり、また別の楽しみが生まれます。本作にはこれらとは少し変わったルールがほかに2種類あるのですが、それらは次章で触れます。

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▲ボールダーは20種類を超える数が用意されています。重くて扱いにくいけれど攻撃力が高いもの、風船のようにフワフワとバウンドするものなど、個性的なものばかり

プレイ中はシュールな演出が満載です。コース上にはボールダーレースの観戦者がいたり、なぜか道の真ん中に無防備な人間が立っていたりもするのですが、容赦なくボールダーをぶつけると「ギョワー!」などと情けない悲鳴を上げます。その場で潰れて特にゲームプレイに影響を及ぼすことはありませんが、なんとなく申し訳ない気持ちに……。またコースに置かれた仕掛けには、ぶつかった人間が画面にくっついて視界を遮り、ただただ邪魔なだけという脱力するようなものもあります。

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▲視界が遮られるだけでなく、飛ばされた人がしっかりカメラ目線なのもちょっぴり……いや、かなり鬱陶しい

このように終始ファニーな雰囲気のなかでプレイは進みます。万人向けとは言いがたい世界ではありますが、好きな人はかなりハマるのではないでしょうか。激しい戦闘の果てにも込みいった展開はありません。ストーリーは個性的でありながら、ゲームにはあくまでもライトに関わります。巨石転がしのためにあるエッセンスのひとつなのです。演出はおふざけ要素ばかりでもボールダーの操作感はしっかり設計されており、動きに不自然さや理不尽さは感じませんでした。この点が奇抜なだけのゲームではなく、長くファンに愛されてきた理由なのでしょう。

さらに進んだゲームの楽しみかた

前項で述べた4つのモードのほかに、本作にはもっと変わったゲームモードがあります。防御ユニットの配置と球転がしを交互に行い、相手の城門を最初に破壊したほうが勝ちという“戦争”、次々と攻めてくるいくつものボールダーから自陣を守る“雪崩”のふたつはタワーディフェンス要素が入っていて、まさに本作独自といえるものです。指揮官であるプレイヤーは、敵がボールダーを転がすコース上に防御・妨害ユニットを仕掛け、併せて武器を強化します。

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▲自分の転がすボールダーの準備ができるまでの時間で、各ユニットを配置します

置くことができる妨害ユニットは、投石機、石壁、爆弾、踏むと跳ね返ってしまうばね板などのほか、ボールダーにくっついてスムーズな動きを阻害する牛、バルーンに繋がれカリカリとボールダーを引っ掻きスピードを下げてしまうライオンなど、他のタワーディフェンスゲームでは見ないような変わったものまでさまざまです。コースを走る敵の動きを読み、制限時間内に素早く罠を設置しなければならないので短時間で集中する必要があります。

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▲二股に分かれた道の手前に罠を設置。いかにも相手が引っかかりそうな場所を選びます。対戦を繰り返すうち、効果的な組み合わせや設置場所がわかってくるだけでなく、相手の裏をかくような駆け引きも楽しめるようになるでしょう

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▲相手が置いた壁をドーンと破壊して進みます

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▲同じくコースに置かれた牛がボールダーにくっついて、球の軌道がブレます!

球転がしとタワーディフェンスのふたつの行動を効率的に進めるという風変わりなプレイは、アクションの正確さと戦略性が同時に求められるので、想像以上にエキサイティングでした。操作自体は非常にシンプルなので、どんな人でもプレイを重ねるほど上手になるでしょう。シングルプレイ専用のタイムトライアル以外のモードは、他のプレイヤーと戦うことができます。マルチプレイは最大4人まで。対人戦をするにあたり筆者が一番推したいのは、本作のゲームシステムをフルに楽しめる“戦争”モードです。

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▲ゲーム開始時のVS画面は、本当に訳がわからなくて好きです……

記事冒頭でも触れたように、今作からファン待望のマップエディタが追加されました。自分で作ったステージを世界中のプレイヤーとシェアでき、他プレイヤーが作ったステージも遊ぶことができます。エディットの操作方法は簡単で、初心者でも気軽に作ることができます。作ったステージをテストプレイするときの切り替えはボタンひとつで済みます。ストレスを感じない仕様でいいですね。

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▲直感的な操作で夢のコースを作る!

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▲テストプレイのときのボールダーは、車の衝撃実験などに使われるダミー人形のマークが付いていてカワイイ

ただしエディタを搭載した多くのゲームがそうであるように、プレイしていて絶妙な設計だと感じるようなコースを作るのはなかなか難しいです。参考にオンラインで遊べる他プレイヤーが作ったコースを見てみると、緻密に設計された長距離コースあり、10数秒でクリアできてしまうような一発ネタのラフなコースありとさまざま。開発チームが作ったクレイジーマップの動画が公開中なので、参考までに見てみましょう。

公開されているコースのクオリティには差があり、玉石混合であることは否めません。それでもどの作品もこのユニークな世界でボールダーを転がせば、それなりに楽しく遊べてしまいます。クレイジーが極まった世界設定に思わぬ包容力を感じた瞬間です。

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▲ボールダーのジャンプの限界や癖などを考慮すれば、さすがと唸るような面白いコースが作れるのでしょう。でも雷を落とす雲などを闇雲に置いためちゃくちゃなコースもあり、それはそれで笑えるのです

ひとつだけ残念なのは、オンラインプレイの盛り上がりが今ひとつなところでしょうか。コースが充実してくれば、プレイヤー同士が切磋琢磨してエディットのレベルをさらに上げていける可能性を秘めていると思うので、ストーリーをプレイするだけに留まらずエディターとなるプレイヤーがさらに増加することを願っています。
神話の時代から現代のネタまで採用、皮肉を効かせて独自解釈をしたちょっとアクの強いストーリー、巨石を転がすレース、タワーディフェンス……と、一見全くリンクしないような要素が盛り込まれた『ロック・オブ・エイジス: メイク&ブレイク』。主張の強い個々の要素はまったく混然一体となっておらず、それぞれに際立つ存在感を放っています。しかしそれは本作の唯一無二である、変で憎めない味わいになっているのです。難しいことは考えず転がる巨石に身をまかせ、まずは存分にこのカオス空間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

フォトギャラリー

■タイトル:ロック・オブ・エイジス:メイク&ブレイク
■発売元:3goo
■対応ハード:PlayStation®4、Nintendo Switch™
■ジャンル:新機軸タワーディフェンス+アクション
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2020年8月20日)
■価格:PlayStation®4パッケージ版 3,800円+税
PlayStation®4/Nintendo Switch™ ダウンロード版 各3,400円+税


『ロック・オブ・エイジス:メイク&ブレイク』オフィシャルサイト

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