Interview

『映像研には手を出すな!』乃木坂46が演じる電撃3人娘を、原作:大童澄瞳はどう見ていた? 実写ドラマ&映画化で「良い作画資料ができた」

『映像研には手を出すな!』乃木坂46が演じる電撃3人娘を、原作:大童澄瞳はどう見ていた? 実写ドラマ&映画化で「良い作画資料ができた」

3人の女子高生が「アニメを作る」という目的の下に結集し、それぞれの能力を活かして夢を現実のものとしていくさまを描いたマンガ『映像研には手を出すな!』(「月刊!スピリッツ」連載中)。この2020年はまさに『映像研には手を出すな!』イヤーという盛り上がりぶりで、それまで知る人ぞ知る名作という扱いだった本作が1月にTVアニメ化、4月からは実写TVドラマ化を果たし、日本中、いや、世界中で多くのファンを獲得することになった。

そして9月25日(金)より待望の映画版も公開。監督は英勉(『あさひなぐ』『ぐらんぶる』など)、主演には、人見知りで設定マニアの浅草みどり役を齋藤飛鳥、カリスマ読モながらアニメーターを志す水崎ツバメ役を山下美月、プロデューサー気質の金森さやか役を梅澤美波……というTVドラマ版の陣容を引き継ぎ、さらにスケールアップした物語が描かれるという。ここでは、原作者である大童澄瞳(おおわらすみと)に直撃インタビューを敢行。乃木坂46メンバーの起用で話題を集めたキャスティングや、実写映画版の魅力について、原作サイドからのストレートな思いを語ってもらった。

取材・文 / 山下達也(ジアスワークス) 構成 / 柳 雄大


謎部活(!?)大量登場の実写版、「野球部が外野部と内野部に分裂するところで笑ってしまった」

大童澄瞳

映画『映像研には手を出すな!』について、まずはご覧になった率直な感想を聞かせてください。

大童澄瞳 すごく面白いエンタメに仕上がっていると感じました。原作にもたくさんあるマニアックな描写が、マニアックさはそのままに誰にでも笑えるような表現になっているのが良かったですね。より多くの人に楽しんでいただけるのではないかと思います。

金森氏の言うところの、「特殊な教養」がなくても楽しめる作品ということですね(笑)。

大童 はい。原作の『映像研には手を出すな!』は、あえてオタク的な表現を突き詰めてやってるようなところがあるんですけど、英勉監督の手掛けた実写版『映像研には手を出すな!』は、エンタメとしてすごく受け入れらやすいものになっています。ゴチャゴチャしたものがたくさん詰まっていて(笑)、想像していなかった描写もたくさんある映画なんですが、それが実によくコントロールされているんですよ。そう言った、ごった煮にしつつもエンタメにもなっているあたりは、原作と少し違っているかもしれません。

「声帯模写部」や「伝令部」、「下水道部」などと言った謎部活がたくさん出てくるところなんかはまさにそんな感じですよね。あれは、英監督のアイデアなんですか?

大童 英監督と、脚本家の高野水登さんが作り上げたものだと聞いています。実はマンガ版の方でもそういうことをしたいなぁと思っていたんですけど、どうしても作画の問題でたくさんの部活を一堂に会してというようなことができなくて……。一応、第1集のラストでやってはみたんですが、実写版はほとんどすべての回でそれをやっているのがすごいですね。

大童先生としては「やられた!」という気持ちもあったりするんでしょうか。

大童 そうですね。TVドラマ版で、野球部が「外野部」と「内野部」に分裂するところは、つい笑ってしまいました。初めて脚本を見せてもらった時には「何を言っているんだ、この人たちは(笑)」って思ったんですが、すごく面白かったです。

マンガとは異なる、ドラマ・映画版ならではの表現で面白いと思ったところはありますか?

大童 たとえば、効果音の使い方がとても巧みだと感心しました。コミカルな、ちょっと安っぽい効果音をとても上手に入れてくるんですよ。ともするとサムいギャグになってしまうところなんですけど、それが絶妙で面白い。英監督がよく使われている手法なんですけど。

これまでも英監督作品には注目されていたんですね。

大童 最近では、『あさひなぐ』(2017年公開)を観ています。もちろん原作の方も読んでいるんですが、あのストーリーをこんなにきれいに映画という形にまとめ上げるのはものすごい技術だなと。もちろん、それは『映像研には手を出すな!』にも生きていると思います。

英監督ってどういう方なんですか?

大童 とても明るい方で、場の雰囲気をすごく和ませてくれる方ですね。『映像研には手を出すな!』の撮影現場もピリピリしているところが全然ありませんでした。そういう楽しい雰囲気が面白い作品作りに繋がっているんでしょうね。

原作者から見た浅草・水崎・金森の再現度

より多くの人に楽しんでもらうという観点では、乃木坂46メンバーの起用も大きいと思うのですが、大童先生としては今回のキャスティング(浅草みどり役:齋藤飛鳥、水崎ツバメ役:山下美月、金森さやか役:梅澤美波)をどのように捉えていますか?

大童 最初に配役の連絡を受けたところで、お一人ずつ名前を検索して、どんな方なのかを調べていったんですが、金森役の梅澤美波さんはグループ内で一番身長が高いとか、それぞれ特徴がすごく僕の描いたキャラクターにちゃんと似ていて「なるほどね!」と感心しました。

皆、イメージ通りだった?

大童 実は原作では「金森氏は四角」、「水崎氏は三角」、「浅草氏は丸」っていう印象で描いているんですけど、そうした図形的な特徴が今回の配役にも見て取れて、すごくきれいな選択になっているな、と。

主演のお三方とは現場でお話しされたりしましたか?

大童 はい。もう、なんか緊張してしまって、毎回、あまり記憶がないんですけども(笑)。ただ、そんな中でものすごく印象に残っているのが、お三方がものすごくスタッフに気を遣っていたこと。撮影現場では、最高のコンディションで本番に臨むべく、スタッフの方々が本当に細かいところまでしっかり目を配らせているのですが、彼女たち役者の側もそうしたスタッフに対して配慮、気遣いをしているんですよ。もちろん、僕のようなイレギュラーな人間にもいろいろフレンドリーに接してくださって……。さっきも話しましたが、すごく雰囲気の良い現場を作りあげていました。そのチームワーク感みたいなものにすごく感心しましたね。

それぞれのキャラクターについても、コメントをいただけますか?

大童 まず、浅草氏に関しては、原作のマンガ版では気の弱いところと、仲間うちで調子に乗っている活発なところの二面性を分けて描いているのですが、アニメ版では活発な面、モノ作りへの情熱みたいなところががわりと強調されていましたよね。対して齋藤飛鳥さん演じる実写版では、気の弱い要素がより強化されていて(笑)、そこがすごく気に入っています。原作者からみても、ものすごくよく特徴を再現できているなって思っていますよ。

『映像研には手を出すな!』は、マンガ、アニメ、実写と3つの媒体を横断しているんですが、そうするとこういうことが起こるんだなぁって感心しました。

先ほども少しお話が出ましたが、梅澤美波さん演じる金森氏についてはいかがでしょう?

大童 梅澤さんの見た目が、僕の考えていた金森氏のイメージにものすごくマッチしていて、もうその時点で文句なし。ドスの効いた低い声で怒鳴りつけるとか、『乃木坂工事中』のようなバラエティ番組に出ている時の彼女からは全く想像もできないものが見られます(笑)。もちろん、その上で彼女の女優としての表現もしっかり活かされていて……実写版の金森氏は「ハッハッハ!」ってよく笑うんです。そういうところにも注目して、梅澤さんによる新しい金森のキャラクターを楽しんでもらいたいですね。

水崎氏についても聞かせてください。カリスマ読モという設定は、『CanCam』の専属モデルもつとめる山下美月さんとかなり近いですよね?

大童 そのまんまと言っても過言ではないですね(笑)。彼女元来の明るい性格もあって、すごくマッチしていると思います。齋藤さんも梅澤さんも全く違和感なく演じてくださっているんですが、山下さんに関しては、本当にマンガの中から出てきたんじゃないかと思わされるくらいでした。

以前、英監督が「画面の中に、本当に実在する人間が映っているということが何より強いインパクトを生み出す」とおっしゃっていたのですが、まさにそれを体現しているのが山下さん演じる水崎ツバメ。見た目だけでなく、感情を吐露するシーンの演技にも、役者としての魂を感じました。

大絶賛ですね! ちなみに、主演3名以外の登場人物で大童先生が印象に残ったキャストはいますか?

大童 特定のキャラクターというより、ロボ研のメンバーたちに注目してみてほしいですね。あまり語りすぎると楽しみを奪ってしまうので多くは語りませんが、彼らと映像研のやりとりにご期待ください。

ところで、大童先生はアニメ版ではエンディング映像の制作に参加していらっしゃいましたが、今回の映画版では何かやられたりしていないんですか?

大童 実は僕自身がちょっとだけ本編に出ています。クライマックスの方の、割と重要なシーンでチラッとですが、それなりに長い秒数映っているので、ぜひ探してみてください(笑)。

スケールアップした『映像研』を、『ドラえもん』で例えるとするならば……

映画版は、先行して放送されたTVドラマ版と繋がりのある内容になっていますが、TVドラマ版と比べて何かアップデートされていることはあるのでしょうか?

大童 TVドラマ版の時点で、CGが映画並みのクオリティで使われていましたが、それがより一層パワーアップされているというのが1つ。もちろん、キャストはより豪華に、シナリオもよりダイナミックになっています。「TVドラマ版の何割増し」みたいなものが始まると思っていただいて間違いないですよ。

やっぱりお話のスケールは大きくなるんですか?

大童 はい。ドラえもんで例えるなら、『ドラえもん のび太の恐竜』(1980年公開)って映画があるじゃないですか。あれは原作に元となった短編ストーリー(1975年『増刊少年サンデー』掲載)があるんですよ。映画版『映像研には手を出すな!』もそれと近い関係です。原作のロボ研のお話をベースに、TVドラマ版のあのハチャメチャな雰囲気をさらに強化したものと思っていただければ。

そんなスケールアップした映画版『映像研には手を出すな!』の制作に際して、原作者から英監督にリクエストしたことはありますか?

大童 以前、アニメ版のインタビューの時にもお話ししたことがありますが、原作者があまり口出しすると現場の動きが止まると思っているので、実写版においてもなるべくこちらからは何も言わないようにしています。英監督を始めとしたクリエイターの皆さんが、自由に自分たちが面白いと思うものを作れるようにしようということですね。

なるほど。

大童 ただ、髪型についてはちょっとだけ……浅草氏のM字バングな髪型などをそのまま再現すると、あまりにコスプレ感が強くなりすぎてしまうので、そこはナチュラルな感じでお願いしますとだけお伝えしました(笑)。もちろん向こうも分かっていたので、心配する必要もなかったんですけどね。

逆に実写版の制作現場や映像を見ていく中で、原作にフィードバックされていったものはありますか?

大童 単純に、良い作画資料ができたなって思いました(笑)。でも内容についてはどうかな……僕は、作品については編集者くらいにしか口を出させないというタイプの人間なんですよ。自分の描きたいものは自分で作るし、自分の中から生み出されるものがこのマンガに描かれるべきだと思っているので、さほど影響は受けていない……はず。ただ、水崎氏に関しては少しだけ影響があるかも? 水崎氏は作者との性格の違いが大きくて、他の2人と比べて少し描きづらいところのあるキャラクターなんですが、実際に彼女を山下さんがテンション高く、明るく演じてくださっているのを見て、ためになるなとは思いました。

そういえば、マンガ版『映像研には手を出すな!』の最新話(『月刊!スピリッツ』2020年9月号掲載)が水崎氏回でしたね。

大童 そうですね。あの話に出てくるスタジオの風景なんかは、わりと映画版『映像研には手を出すな!』の現場に近いですよ。撮影当時、僕は作画資料にするべく写真を撮りまくりましたから(笑)。

最後に、映画『映像研には手を出すな!』の楽しみ方をメッセージとしていただけますか?

大童 あまり細かくは言えないんですが、オマージュ的要素が盛りだくさんで、個人的にはそこもすごく気に入っています。ちょっとだけ言ってしまうと、たとえば黒澤明監督の映画のオマージュがあるんですよ。ですので、皆さんにはぜひ、劇場に行く前に『羅生門』や『七人の侍』を履修しておいてほしい(笑)。

ちゃんと、「特殊な教養」が必要とされるシーンもあるんですね(笑)。

大童 乃木坂46のファンでありながら、黒澤明のファンでもある人がいったいどれくらいいるのか……(笑)。

そう言えば、今作で重要な役割を果たす“アレ”も、国民的アニメ作品のオマージュですよね。

大童 そうなんですよ! ですので、まずは1回、普通に観ていただいた後、Twitterなどで有志の方から元ネタを教わって、それを学習してからあらためてまた観に行っていただくのが良いかもしれません。このご時世、映画館に行くのもなかなか大変ですが、劇場のスクリーンでしか伝わらないものもあると思うので、ぜひ!

映画『映像研には手を出すな!』

2020年9月25日(金)より全国公開!

キャスト:齋藤飛鳥 山下美月 梅澤美波 小西桜子 グレイス・エマ 福本莉子 松﨑亮 桜田ひより 板垣瑞生 赤楚衛二 鈴之助 出合正幸 松本若菜 山中聡 浜辺美波/髙嶋政宏
原作:大童澄瞳「映像研には手を出すな!」(小学館「月刊!スピリッツ」連載中)
脚本・監督:英勉
主題歌:「ファンタスティック三色パン」乃木坂46
配給:東宝映像事業部

TVドラマ『映像研には手を出すな!』

2020年9月16日(水)Blu-ray&DVD BOXリリース!

Blu-ray BOX(Blu-ray3枚組) 価格:10,800円+税 品番:TBR30177D
DVD BOX(DVD3枚組) 価格:9,800円+税 品番:TDV30178D

収録内容:本編全6話/ビジュアルコメンタリー(全6話分)/VFX BREAKDOWN/SCENE BREAKDOWN/TVCM 封入物:ブックレット

©2020 「映像研」実写映画化作戦会議 ©2016 大童澄瞳/小学館
©2020 「映像研」実写ドラマ化作戦会議 ©2016 大童澄瞳/小学館

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