Interview

ファンを裏切らない王道エンドへ! アニメ『デカダンス』監督&プロデューサーに聞く視聴者を驚かせる世界観、展開の見せ方とは

ファンを裏切らない王道エンドへ! アニメ『デカダンス』監督&プロデューサーに聞く視聴者を驚かせる世界観、展開の見せ方とは

2020年夏クールの注目オリジナル作品として、多くのファンを惹きつけているTVアニメ『デカダンス』。興廃した未来世界を舞台にしたサバイバルアクション作品かと思いきや、第1話エピローグから第2話冒頭にかけて明かされた「世界の真実」に多くの視聴者が度肝を抜かれ、目下、今まで抜かれっぱなしだ。そこでここでは、この驚くべき物語を生み出した立川 譲監督(『劇場版名探偵コナン ゼロの執行人』『デス・パレード』など)と、その制作を担当するスタジオ・NUT(『幼女戦記』など)の角木卓哉プロデューサーへのインタビューを敢行。クライマックスに向けた見どころを語ってもらった!

なお、「WHAT‘s IN? tokyo」では物語序盤の魅力も紹介している。本作の奥深い世界観や、第1話からの驚愕の展開を詳しく知りたい方は、こちらにもぜひ目を通してほしい。

第1話の世界観が第2話でぶち壊される! TVアニメ『デカダンス』で描かれる“ディストピアの中のディストピア”で師弟コンビはどう生きる

第1話の世界観が第2話でぶち壊される! TVアニメ『デカダンス』で描かれる“ディストピアの中のディストピア”で師弟コンビはどう生きる

2020.07.29

取材・文 / 山下達也(ジアスワークス)


『デカダンス』は世界観を誤解したままでも楽しめる?

テレビ放送はそろそろクライマックスを迎えますが、まずはここまでの感想や、視聴者の反応で印象に残っていることをお聴かせいただけますか?

立川監督 本編は第5話が大きな転機になっていて、わーっと盛り上がる感じで後半戦に続いていくんですけど、そのだいぶ前の第2話の時点で世界に隠された謎を明かしてしまうので、第5話の盛り上がりに至る前に視聴を止めてしまう方が多いんじゃないかなっていう不安が実はありました。

「あ、こういう話なのね。じゃあ観ないでもいいか」っていう視聴者が一定数いるだろうと思われたんですね。

立川 そうですね。ところが蓋を開けてみると、その世界観をすんなり受け入れてくれる方々と、世界観を勘違いしたまま楽しんでくれている方々の二手に分かれる感じになって……。それがなんだかすごく新鮮でした。

ゲームが仮想現実の世界で行われているという誤解をしている方はいまだにけっこういるみたいですね。

立川 誤解された場合、物語的につじつまの合わない、おかしなことがたくさん起こるはずなんですけど、それでも意外に楽しんでもらえるんだなっていうのが興味深かったですね。今どきは皆さん、SNSをやりながらとか、何かの片手間にアニメを観ることが多いので、少なからず見落とされる描写や設定があるとは分かっていたんですが、それでも楽しんでいただけるものなんだな、と。

でもさすがにもう終盤ですから、誤解は解いておきたいですよね?

立川 そうですね(笑)。映画の『ジュラシックパーク』みたいなテーマパークを企業が運営していて、中で暮らしている人間たちはそのことに気がついていないと説明すれば分かりやすいですかね? ちなみに、アニメの制作に先駆けて、作画スタッフを全員集めて世界観の説明をしているんですが、それでもゲームが仮想世界で行われていると勘違いしているスタッフがいました(笑)。

やっぱり、ちょっと分かりにくいところがあるのかもしれませんね。

立川 もちろん、我々もちゃんと世界観を提示しないとダメだという話はずっとしてて、個人的にもその分かりづらさを自覚はしていたんですが、放送が始まって観た方々からの声が届き始めると、勘違いしたまま楽しんでくださっている方の感想もすごく面白くて、これはこれで良いんじゃないかな、なんて思い始めています。

監督のこの達観ぶり、プロデューサー的にはいかがですか?(笑)

角木プロデューサー 監督が言った『ジュラシックパーク』みたいなって説明は、僕らのような企画段階から関わっている、世界観をきちんと分かっている人にしか通じない可能性が高くて……。ゲーム=仮想現実って先入観ができあがっちゃっている人たちにはその言い方じゃ通じないと思うんですよ。ですから、まず「この世界は仮想現実ではありません」って言うのが正しい説明の仕方なんじゃないのかと考えています。ただ、この作品でキャラクターにそれを言わせるとちょっとおかしなことになっちゃうんですよね。

たしかに、ゲームに参加しているサイボーグたちは全員、ゲームが現実世界で行われていることを理解しているわけですから、そこで「この世界は仮想現実ではない」なんて言い出すヤツがでてくるわけがないですもんね。

角木 そうなんです。一応、また違う形で説明させるようにはしているんですけど、なかなか難しいところではありました

視聴者の感想についてはいかがでしたか?

角木 今回、実はかなり積極的にエゴサをしておりまして……(笑)。オリジナル作品ということで、今後の展開を多くのファンの皆さんが考察・予測してくださっていて、中には今後の展開を言い当てている方もいらっしゃったんですが、そうではないものも、こうなる(こうする)可能性はあったかもしれないと思えて、自然と自分の中に吸収されていっています。そこから培われていったものから、次の作品に活かされていくものもあるかもしれません。もちろん、そうした経験はこれまでの作品でもあったのですが、特に『デカダンス』はファンの皆さんの反応が良くて書き込みも多かったのがうれしかったですね。

『デカダンス』は世界の真相暴いていく謎解きSFがメインではない

視聴者の世界観に対する「誤解」を招いた理由のひとつに、サイボーグの登場シーンで絵柄がカートゥーン風に変わるというものがあると思います。同じ現実世界でありながら、どうしてこのように明確な描き分けを行ったのでしょうか?

立川 『デカダンス』の世界では、生きている人間が絶滅危惧種という扱いで、サイボーグの運営する企業の所有物になっているんですね。その企業を運営しているサイボーグの描写がリアルだとすると、ちょっと映像的にキツいんじゃないないかと言うのが、そもそもの理由です。

角木 悲壮感というか、リアリティが強すぎて観ていられないんじゃないかという不安がありました。

立川 それで、もしそういう世界観にするのであれば、見た目を大きく変えようというのがベースにあって、結果、カートゥーン風のデザインになりました。この世界では「国」という概念が滅びていて、世界的な大企業が地球をコントロールしているんですが、今、世界的な大企業と言えば、AmazonやGoogleなど欧米のIT企業ですよね。そうした存在をカートゥーン風に描くことがメタ的な構造でちょっと皮肉が効いていて面白いと思いませんか? そして何より、私自身、カートゥーン風のデザインが好きで、いつかそういう作品をやってみたいと考えていたということもあります。

悲壮感を強調したくないというお話がありましたが、つまり『デカダンス』では、そうしたハードSF的な重い未来世界を描きたかったわけではないということなんですね。

立川 そうですね。そもそも、もし世界の真相を暴いていくという話にするのであれば、第2話でネタばらしをするべきではなく、もっと引っ張って後半に持っていくのが定石です。でも私が『デカダンス』で描きたかったのは、こういう世界観の中で、違う世界に住んでいる2人がどうなっていくか。ですから、私としては世界観については、事前宣伝の時点で出しちゃってもいいとすら思っていました。

謎解きSF作品ではないということですね。

立川 もちろんそういう要素もありますが、それがメインではありませんね。

角木 実はこの作品、オリジナル作品ということで、あらかたシナリオができあがった後にもう一度書き直したりしているのですが、当初、世界の謎が明かされるのはもう少し後だったんですよ。

立川 当初は第4話でしたね。

角木 『デカダンス』には私のほかにもう一人、田中 翔さんというチーフプロデューサーがいるのですが、彼が「開示するならもっと早い方がいい」と。田中さんはKADOKAWAの人間で、かなり細かくアニメファンの志向を分析しているんですが、そんな彼曰く「中途半端な話数で出すくらいだったら最初から出してしまった方がいい。その方がインパクトがあって、ファンをつかめる」って言うんです。

立川 第4話はカブラギとナツメが衝突するドラマがメインで、世界観の開示という大ネタを描きにくいということもあり、まず私の方から第2話にしようと言い出したのですが、田中さんは「だったら第1話で出そう」って言い出して(笑)。

角木 たしかに第4話までカブラギがサイボーグであることを隠し続けて話を展開させるのは難しいし、なんだかストーリー展開の都合で物語が動いているような感じになってしまいそうじゃないですか? 何かを隠すためにこうしているんだなって透けて見えるのもストレス溜まりそうですから、私としても前倒しは賛成だったんですが、さすがに第1話は早すぎるだろうということで、折衷案として第2話にしたという経緯があります。第1話のラストにサイボーグたちがでてくるのはその影響なんですよ。

いよいよ邂逅するサイボーグと人間、2つの世界

さて、『デカダンス』もいよいよクライマックスですが、これからどのように盛り上がっていくのかを教えてください。

立川 ここまで(第10話時点)で、出そうと思っていた情報は一通り出し尽くしました。これ以降は大きな舞台の移動もなく、物語がどういうかたちに帰結していくかに集中できるよう、新しい情報はあまり入れずに進めていきます。

ここから先は物語、ドラマを楽しんでほしいということですね。その見どころについても可能な範囲でお話しいただけませんか?

立川 もちろん、カブラギとナツメのドラマが最大の見どころなんですが、個人的に注目して欲しいのがサイボーグのジル。物語後半で突然出てきたキャラクターではあるんですが、『デカダンス』的に重要なセクションを担っている存在で、マッドなようでかなり本質的な、的を射たことを言ったりするので、ぜひ注目してあげてください。

角木プロデューサーはいかがですか?

角木 これまで映像的にも完全に隔離されていたサイボーグたちの世界と人間たちの世界が、ラストに向けて繋がっていくところを観ていただきたいですね。先ほど、作品世界が仮想現実なのか、そうじゃないのかという話をしましたけど、さすがにここまでくるとはっきりわかります(笑)。世界がしっちゃかめっちゃかになって、垣根がなくなっていくところを楽しんでいただければ。

カートゥーン調のカブラギと現代アニメ調のナツメが一堂に会する様子がちょっと想像できないんですが……。

角木 そうですよね(笑)。でも、すでにここまでの話数で何度かそういうシーンがあったんですよ。工場内で働いているギアたちと、そこをパトロールしているフギンの手下のサイボーグたちが1つの画面に収まっているとか。ごく短いシーンということもあって、個人的にはさほど違和感なかったんですが、今後、そういうシーンが増えていく中で視聴者の皆さんがどう感じるのかは少し気になりますね。技術的にもサイボーグと人間で映像処理を変えていますし、線の太さもだいぶ違っているので、それを寄せていったときにどうなるのかはかなり未知数ではあります。

立川 実のところ、そのシーンは自分としても手探りなんですよね。最終的な絵面をみてどのように感じてもらえるか楽しみでもありますね。むしろ、ファンの皆さんが描いてくださった、ナツメがサイボーグのカブラギをぬいぐるみのように抱っこしている絵とかを見ながら、こんな感じなのかな、と(笑)。

なるほど。その点ではファンアートの方が一歩先を行っているんですね! たしかにちょっとぬいぐるみっぽいかも……。

立川 そうそう、企画の初期段階では、サイボーグたちのテクノロジーが進みすぎて、実際に会ってみたら手のひらサイズにまでコンパクト化されていた……なんてことも考えていました。さすがにギャグにしか見えないのでやめましたが(笑)。

ちょっと見てみたかったですね(笑)。

立川 一応、アクション的な見どころについてもお話しておくと、ガドルとのバトルシーンもこれまでとだいぶ違った印象になっていきます。それまでのバトルは、サイボーグのための娯楽として描いていたので、ガドルの存在が本当の意味では脅威になっていませんでした。対して、クライマックスはその予定調和から外れた戦いになっていくので、その違い、緊張感みたいなものを感じていただきたいですね。

角木 カブラギとナツメの関係性が最終話に向けてどうなっていくかも見守ってほしいです。監督の言う映像的なアクションも見どころなんですが、2人の関係性がめまぐるしく変わっていく、展開のアクションにもご期待いただきたいですね。特に最終話の24分は釘付けになっていただけると思っています。

ここまで観てくれたファンを裏切らない王道的エンディングにご期待ください

最後に読者に向けてメッセージをお願いできますか? まずは角木プロデューサーから、まだ『デカダンス』を観ていない人へメッセージをいただければ。

角木 オリジナル作品と言うことで、リアルタイムで観てもらえるとすごく新鮮に楽しんでいただけると思っているのですが、じゃあ今、世界観のネタばらしなどがネットなどで出回っている状況で観始めたらつまらないかというと、そういうふうには作っていないつもりでいます。皆さんそれぞれの愛用しているプラットフォームで、好きなタイミングに観ていただけたらうれしいなと。もちろん、これからサブスク系サービスで追いかけて、最終回に合流していただけたりするとよりうれしいですね。

なお、ここまでいろいろお話した世界観についても、明かされているのはごく一部で、実際には尺の関係で最終話まで説明しきれていないことがけっこうあります。ソリッド・クエイクの回りにある球体はなんなのかとか、あの世界は社会的に一枚岩なのかとか……そういったあまり語られていない部分を完結後に2度、3度と見直して考察していただくのも楽しいと思いますよ。もちろん、公式で考えている設定は一通りあるので、今後、なんらかの形でそれらをお見せできたらいいなとも思っています。

作品が盛り上げれば、その「なんらかの形」が具現化するかも?

角木 そうですね。盛り上がれば、また別の形でなにかあるかもしれません。そういう要素はたくさん残しているので。

期待しています!! 続いて、監督からは、ここまでリアルタイムで『デカダンス』を追いかけ続けてきたファンに向けたメッセージをお願いします。

立川 ここまで観てくださったファンの皆さんには分かっていただけると思うのですが、この作品、けっこうテンポが良くてポンポンとお話が進んでいきます。ノリみたいなものもすごく大事にしていて、それが最終回に向けて最高潮に盛り上がって行きます。

『デカダンス』を作るにあたって私がベースに据えていたのが「エンタメをしよう」ということ。個人的には、ちょっとお高くとまった穿った終わり方も好きなんですが(笑)、今回は世界観が複雑ということもあって、終わり方は王道的でシンプルな、分かりやすいものにしたいと思っています。着地点として、ファンを裏切らない、良いエンディングにしたいと思っているので、どうぞご期待ください。

TVアニメ『デカダンス』

2020年7月8日(水)より放送中

【放送情報】
AT-X 7月8日より毎週水曜日23:30~
(リピート放送:毎週金曜15:30~/毎週日曜21:30~/毎週火曜7:30~)
TOKYO MX 7月8日より毎週水曜日25:05~
テレビ愛知 7月8日より毎週水曜日26:35~
KBS京都 7月8日より毎週水曜日25:05~
サンテレビ 7月8日より毎週水曜日25:30~
BS11 7月9日より毎週木曜日23:00~

【配信情報】
ABEMA 7月8日より毎週水曜日24:00~
dアニメストア 7月11日より毎週土曜日 24:30~
※配信日時は変更になる場合あり。

【STAFF】
原作:DECA-DENCE PROJECT
監督:立川 譲
構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン・総作画監督:栗田新一
キャラクターコンセプトデザイン:pomodorosa
サイボーグデザイン:押山清高(スタジオドリアン)
デカダンスデザイン:シュウ浩嵩
ガドルデザイン:松浦 聖
サブキャラクターデザイン:谷口宏美、緒方歩惟
プロップデザイン:月田文律 、秋篠Denforword日和(Aki Production)
ビジュアルコンセプト:村上 泉、増田哲弥
美術監督:市倉 敬
色彩設計:中村千穂
撮影監督:魚山真志
3DCGIディレクター:高橋将人
編集:神宮司由美
音楽:得田真裕
音響監督:郷 文裕貴
アニメーション制作:NUT
製作:DECA-DENCE PROJECT

【CAST】
カブラギ:小西克幸
ナツメ:楠木ともり
ミナト:鳥海浩輔
クレナイ:喜多村英梨
ドナテロ:小山力也
フギン:子安武人
ムニン:三石琴乃
ターキー:青山 穣
マイキー:坂 泰斗
フェイ:柴田芽衣
リンメイ:青山吉能
フェンネル:竹内栄治
パイプ:喜多村英梨
ジル:村瀬迪与
サルコジ:うえだゆうじ

©DECA-DENCE PROJECT

『デカダンス』オフィシャルサイト
http://decadence-anime.com/
『デカダンス』オフィシャルTwitter
https://twitter.com/decadence_anime