LIVE SHUTTLE  vol. 409

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King Gnu アルバム『CEREMONY』リリース後初のワンマン。スリリングでドラマチックな、Streaming Liveの圧倒的パフォーマンスを振り返る。

King Gnu アルバム『CEREMONY』リリース後初のワンマン。スリリングでドラマチックな、Streaming Liveの圧倒的パフォーマンスを振り返る。

King Gnuにとって、今年初めてのワンマンライブだ。

昨年1月にアルバム『Sympa』をリリースし、2度にわたる全国ツアーを敢行。いつでも武道館公演を実現できるポテンシャルを持ちながら、新木場STUDIO COASTやZepp Tokyoなどでライブを展開し、King Gnuは底の知れない実力で音楽シーンを震撼させた。それだけに今年1月に発表した『CEREMONY』を掲げてのアリーナ・ツアーは、満を持してのライブだっただけに圧倒的な注目を集めた。しかしまさかのパンデミックのためにツアーは延期となり、さらには振替公演も中止になってしまった。

バンドは生き物であり、その良さはライブでこそ発揮される。“この時期のKing Gnu”のライブを観たいオーディエンスたちは、チャンスを待ち焦がれていた。もちろんKing Gnuのメンバーたちも、“この時期のライブ”を楽しみたがっていた。なので今回の“King Gnu Streaming Live”は、みんなにとって待望のパフォーマンスとなる。ほぼ無観客という異例のセッティングであっても、アイデアあふれるKing Gnuなら、それを逆手にとって、今までに観たことのないライブをやってくれるのではないかという期待がファンの間に広がっていた。

そうした待望のライブのスタートを、自宅のPCの前で待つというのは不思議な気分だ。配信時間が来て画面を開くと、メンバーが現われた。ステージは金属製のトラスで囲まれ、その中に置かれたKing Gnuのロゴマークを中心に、4人が向かい合って演奏するスタイルだ。会場の広さはあまり強調されず、かといってライブハウスとも違う。メンバーは何も告げずに演奏を開始。1曲目は「Flash!!!」だ。

常田大希(G,Vo)は例によってトラメガで歌っている。眼がギラリとしていて、精悍な表情だ。よく見ると眼の周囲を黒く塗っている。映画『ブレードランナー』に出てくるレプリカント(合成人間)がしていたメイクをイメージさせる。常田はこの異例のライブに何か期するものがあるようだ。それは勢喜遊(Dr,Sampler)も新井和輝(B)も井口理(Vo,Key)も同じで、緊張感の高いオープニングとなった。

続いては「Sorrows」。「Flash!!!」と同じくアルバム『Sympa』からのナンバーだ。常田のスピード感たっぷりのギターのコード・カッティングから始まる曲で、勢喜の生々しいドラムのサウンドがライブであることを強く感じさせる。新井は早くもベースを弾きながら身体を揺らし、グルーヴを強調する。この曲での常田のギター・ソロは超アグレッシヴなものとなった。歌い終わると、井口が「Thank you!」と短く挨拶。すぐに「Vinyl」のリフが始まる。

冒頭のたった3曲で、King Gnuはライブバンドとしての健在ぶりを示す。クールな井口のボーカルと、常田のアジテーションする熱血ボーカルの対比がスリリングだ。その二人がユニゾン(同じメロディを1オクターブ違いで重なって歌う)で歌うときの効果も抜群だ。また勢喜と新井のリズムセクションは、安定している一方で、気持ちのこもったプレイを随所で聴かせる。特に「Vinyl」での勢喜の超高速フィルインは見事だった。

歯切れのよいシンコペーションが快感の「傘」では、エフェクターを操作する常田の足元がアップで写される。通常のライブのサービス映像とはひと味違う演出がストリーミング・ライブらしい。また「It’s a small world」では、床に置かれたKing Gnuのロゴマークを俯瞰で見せる映像が良いアクセントを加える。勢喜のドラム・ソロから始まる「Overflow」では、このバンド独特のへヴィネスが顔を覗かせた。

手探りで始まったライブは、高い緊張感をたたえたまま進んで行く。さすがのKing Gnuも、ペースを完全に掌握するのは難しそうだ。だが、ライブはバラードの「白日」で最初のピークを迎えることになった。

井口がピアノを弾きながら歌い出す。切ないメロディとリリックが心にすっと入ってくる。それに沿うように新井が美しいパッセージを弾き、常田のギター・ソロもこの上なくメロディアスで、バンド全体でこの曲を表現しようという確固とした意志が感じられる。この「白日」をやり切ったあたりで、ようやくリラックスした雰囲気が漂い始めたのだった。

井口が「このライブ、めちゃめちゃ大変だね」と言うと、常田が冗談めかして「大丈夫? 少し休む?」と井口に尋ねる。そんなやり取りに、観ているこちらの方も緊張から解放される。後半のライブは、ここからぐんぐん盛り上がっていった。

「Prayer X」で、常田のギターのバース(曲に入る前に別のテーマを弾いて雰囲気を整える)が繊細に鳴らされると、メンバーの緊張が集中に変わる。常田が“Singin’”と声を上げる。King Gnuの中でも飛び切りの美メロ曲が、見えない観客に向かって響き渡っていく。続く「Hitman」では井口のファルセット(裏声)のインプロビゼーションに、常田のギターが自在に絡んで、演奏の熱量がぐんぐん上がっていく。

聴き応えも見応えも充分だったのは「The hole」だった。常田の弾くピアノが、井口の歌に勇気を与える。井口はボーカリストとして、さらに高みに入っていく。エモーショナルな歌と演奏がしっかり噛み合い、ドラマティックなパフォーマンスとなった。

アルバム『Sympa』完成直後のインタビューで、新井が「The hole」の赤裸々な歌詞についてこんなことを言っていた。「俺らのサウンドで、歌詞までオシャレで何を言ってるかわからないということになると、何も伝わらない。だからストレートな歌詞を取っ掛かりにしてというバランスになってる。この曲は、ある種のカウンターにはなっていると思います」。井口も「この歌詞を歌うのは、怖かった」と正直に語ってくれた。それが、どうだ。今、井口は思い切り感情を込め、「The hole」を見事にライブの名曲として表現している。モニターの前で泣きながら聴いているオーディエンスが、きっといることだろう。歌い終わった井口はいつもの「Thank you!」ではなく、「ありがとう!」と叫んだのだった。

ライブは終盤に入っていく。『Sympa』のリードトラック「Slumberland」は、すでに貫禄充分。トラメガを手に常田はあちこち動き回り、新井の首に腕を回し、井口の横に立って気合いを入れ、全力でドラムを叩く勢喜の背中に♪所詮ロックンローラーは愛と人生しか歌えないんだ♪と鋭いメッセージを浴びせる。こうなったら怖いものなし。King Gnuのパワーが全開だ。

♪命揺らせ♪とリスナーを鼓舞する「飛行艇」では、もし満員のオーディエンスがいたらフロアが揺れることが容易に想像できた。井口と常田のユニゾンが快感の「どろん」では、4人の額から汗が飛び散る。

「楽しくなってきたところで、ライブの感覚を思い出したところで、最後の曲になります」と井口。実際、4人は“この時期のライブ”の楽しみ方を見つけたようだ。全員が笑顔を浮かべている。

ラストはライブのアンセム「Teenager Forever」。King Gnuをロックバンドたらしめているストレートなナンバーで終わるのが潔い。メンバーそれぞれが好きなように動き、声や楽器を通して♪明日を信じてみたいの♪とメッセージする。King Gnuはこの曲を、力まかせに駆け抜けた。

70分のライブを終えた彼らの表情は、実に爽やかだった。異例のライブではあったが、ライブの間にどんどん変わっていくその様は、King Gnuがまだまだ進化を続けることを約束していた。次はぜひリアルのライブで出会いたいと強く思った。

文 / 平山雄一 撮影 / Kosuke Ito

フォトギャラリー

King Gnu Streaming Live
2020年8月30日

<SET LIST>

1. Flash!!!
2. Sorrows
3. Vinyl
4. 傘
5. It’s a small world
6. Overflow
7. 白日
8. Prayer X
9. Hitman
10. The hole
11. Slumberland
12. 飛行艇
13. どろん
14. Teenager Forever

King Gnu

東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。
その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(G,Vo)、勢喜遊(Dr,Sampler)、新井和輝(B)、井口理(Vo,Key)の4名体制へ。
SXSW2017、Japan Nite US Tour 2017出演。
2017年4月26日、バンド名をKing Gnuに改名し新たなスタートをきった。

オフィシャルサイト
https://kinggnu.jp

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