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増田貴久が「小さい頃からの夢だった」と語る海外ミュージカルに初主演。“努力しないで出世”するフィンチを好演。『ハウ・トゥー・サクシード』開幕!!

増田貴久が「小さい頃からの夢だった」と語る海外ミュージカルに初主演。“努力しないで出世”するフィンチを好演。『ハウ・トゥー・サクシード』開幕!!

増田貴久 主演ミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』が9月4日(金)に東急シアターオーブにて初日を迎えた。
本作は、1961年にブロードウェイで初演され、ロングランヒットを記録。翌年のトニー賞では7冠を達成。その後、何度もリバイバル上演され、2011年にはダニエル・ラドクリフ主演でトニー賞8部門にノミネートされるなど、時代を超えて愛されてきた名作だ。
開幕に先駆け行われた取材会、フォトコールの模様をお届けする。

取材・文 / 西村由美 写真 / 田中亜紀


娯楽=エンターテイメントの喜びを与えてくれる

『ハウ・トゥー・サクシード』は、ビルの窓ふき清掃員のフィンチ(増田貴久)が「努力しないで出世する方法」という本に感化され、その教えに沿って、「ワールドワイド・ウィケット社」にてトントン拍子に出世していくというサクセスストーリーが描かれる。

ハウ・トゥー・サクシード WHAT's IN? tokyoレポート

最初に行われたフォトコールでは2シーンが披露された。

まずは一幕冒頭のオープニング。
軽快な音楽とともに幕が上がる。黄色のつなぎ服を着たフィンチが窓拭きのゴンドラに乗って「努力しないで出世する方法」を読んでいる。すると「本の声」が聞こえてきて「君が本気で成功したいなら、君はできる」と語りかけられる。フィンチはその声に応えるかのように満面の笑顔でこういう──「僕はできる!」と。

その後、つなぎを脱ぎ捨てたフィンチが本に書いてあることに従い、ウィケット社の社員たちの様子を伺い始めていると、偶然、社長のビグリーに遭遇。就職のお願いを一刀両断されたにも関わらず、これを逆手にとる形で人事部長から入社の確約をとることに成功する。

この場面でフィンチが歌う「努力しないで出世する方法」では、増田が快活で伸びやかな歌声を響かせる。一見するとフィンチには出世欲、いわゆる強欲さを持っているように思うのに、増田は飄々とした佇まいの中にそれを忍ばせているのか、嫌味のない愛嬌のあるキャラクターに仕上げていた。のちの取材会で増田が「フィンチは出世するために誰かを蹴落とそうとか悪いことをしているわけではなくて、自分に降りかかる悪いことを上手に弾き飛ばしていくだけで、彼自身は悪い人間ではない」と演出のクリス・ベイリーから細かなアドバイスをもらったと明かしていたが、あの飄々とした感じはフィンチの朴訥とした人柄を表していたのかと合点がいった。

また、フィンチに一目惚れする秘書・ローズマリーを演じる笹本玲奈が聞かせた「幸せな奥様」では、ローズマリーという人間のまっすぐさや可愛らしさが乗せられていたし、同僚で友人のスミティ(林 愛夏)とのやりとりは、会社の隅でよく見る女子トークの光景でもあり、微笑ましいものだった。そして、フィンチが配属された職場でいきなりマウントを取るバドを演じた松下優也は、歩き方、微細な眉の動きなど、社長の甥という鼻持ちならない男の空気を細やかに醸し出し、数分の登場でもそのキャラクター像を印象的に伝えてきた。

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もう1シーンは二幕終盤、クライマックス直前のシーンだ。フィンチの出世にアクシデントが発生したあとの役員会議。会長のウォンパーなどウィケット社の面々が勢ぞろいしたなかで、フィンチが社員が一丸となることを歌う「世界は一つ」。この場面では、フィンチの言葉に社員が動かされていく様がダンスでうまく表現されていた。

本作の上演にあたっては、演出・振付を手がけるクリス・ベイリーの来日は叶わず、稽古もリモートでのやりとりになるなどコロナ禍の影響を大きく受けている。けれど、閉塞感漂う今、フィンチの成り上がっていく様をコミカルに描くこの作品は、純粋に観る者に楽しみを生み、娯楽=エンターテイメントの喜びを与えてくれるはずだ。

周りの人との出会いとかで、今自分がここにいる

フォトコール後に行われた取材会には、主演を務める増田貴久、笹本玲奈、松下優也、雛形あきこ、鈴木壮麻、林 愛夏、ブラザートム、春野寿美礼、今井清隆ら9名が登壇した。

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最初に、初めての海外ミュージカルに挑む増田が「長く愛されてきた伝統のある作品で、楽曲も素晴らしく、そういった作品をやらせてもらえることにはプレッシャーもありましたけど、小さい頃からミュージカルをやることが夢だったので、この作品に出会えたことは嬉しいです。もちろんプレッシャーも100ありますけど、楽しさ、嬉しさも同じくらいの量持っています」と話し始め、2011年版を踏襲した本作の振付については「ダンスを踊るだけで、気持ちがナチュラルに楽しく、ワクワクしてしまうような振付で。今まで様々な楽曲で踊ってきましたけど、それとはまた違う、振付が持っているパワーをすごく感じながら、楽しみながら踊らせてもらっています」と感想を述べた。

そんな増田の印象を、秘書ローズマリー役の笹本玲奈は「フィンチそのものだなと。本のとおりに淡々と出世していくだけだと、ちょっと嫌な男で終わってしまうと思うんですけど、増田さんのもともとの人柄ですとか、人を引き込む力、カリスマ性みたいなものがフィンチというキャラクターを豊かにしているなと感じています。私もそばで見ていて心から応援したくなる存在です」と語り、フィンチのライバルとなるバド役の松下優也も「涼しそうな顔でずっと稽古をされていて、すごいなと思いました。実際の増田くんのイメージとフィンチのキャラクターが合っているので、自分もやりやすくやらせてもらっています」と続けた。

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4年ぶりの舞台でミュージカル初出演となる、秘書で社長の愛人 ヘディ・ラルー役の雛形あきこが「初めてがこのカンパニーで良かったなって思います」と座組みへの信頼をみせると、人事部長ブラット役の鈴木壮麻も「素晴らしいチームワークです。増田さんがポジティブにいろんなことを捉えてくださるので、その波及効果でより頑張ろうと思えたり。このチームならではの結束力がこの作品の結晶になっている」と増田が牽引するカンパニーの良さを口にした。

また、二幕終盤のシーンで歌唱しながらアクロバティックな演技を見せた社長秘書のミス・ジョーンズ役の春野寿美礼も「安心して身を委ねられる頼りになるメンバーです」と重ね、ローズマリーの友人で秘書のスミティ役の林 愛夏は「あっという間に初日になってしまったんですけど、毎日が充実していました」と積み上げてきた稽古を振り返る。

フィンチの最初の上司トゥインブル、会長のウォンパー、2役を演じるブラザートムは「(共演している)皆さんのファンがたくさんいらっしゃって、その方々のおかげで私はこうやってステージに立たせていただいているというのが本当なので、こういう生き方こそが、“ハゥ・トゥー・サクシード”です(笑)」と笑いをとって、キャスト陣にも笑顔を広げ、ムードメイカー的な存在をアピール。

さらに、社長ビグリー役の今井清隆が「振付の稽古もマスクしながらやっていたので苦しくてだったのですが、マスクをはずしたら少しは楽になるかなと思ったら、全然楽ではなかったですね(笑)」と稽古の状況を振り返ると、増田の「スタッフもキャストもマスクをつけたままずっとやっていたので、通し稽古で急にマスクを取ったら、“こんな口をしていたんですね!?”ってなって。顔の下半身を知らなかったので、ちょっとお尻見ちゃったくらいの衝撃がありました(笑)」という発言にはキャスト全員も大笑い。

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また、増田が1年前の最初の顔合わせのときに演出家のクリスからの「歌と振付を見せて欲しい」というリクエストに「山下達郎さんの曲を歌いました。“なんか歌って”と言われたときに、ちょうど達郎さんが僕に降りてきたんで」と告白。その際に「英語だったのでポジティブに捉えて、なんとなくですけど、すごく褒めてくれました」とクリスの反応までも明かしてくれた。役づくりについてもクリスから「君がジャニーズに入ったときから今に至るまでにいろんな階段を上ってきて、そのステージごとに、周りの状況も自分の状況も変わってきたはず。そういうふうに自分がステージを上がってきたことを思い出してフィンチを作っていったらいいんじゃないか」とアドバイスをもらい、「普段自分が経験したことと役を重ねてというのをあまり考えないようにしていたんですけど、今回は改めて自分の道を見つめてみたりもしました」と話した。

そして、作品タイトルに引っ掛けた“ハゥ・トゥー・サクシード”を問われた際には、ブラザートムが「努力とか素質とかではなくて、金とコネだと思います!(笑)」と言い切ると、増田も「僕も人付き合いというか、周りの人との出会いとかで、今自分がここにいる。応援してくれる人がいて、スタッフがいて、メンバーがいて、家族がいて、すごく恵まれてきたなと思うので、この作品もそうですけど、今一緒にステージに立てる出会いというのも、僕にとっては大きいことです」と、役づくり同様に自身のキャリアを見つめて語る場面も。

さらに「出世したなと思う瞬間」を聞かれた増田は回答を閃かなかったのか「ありますか?」と横にいた松下に向かって話を振るも、松下から「僕はまだないですよね。“ここやなぁ、きたなぁ”って瞬間でしょ? いや、アリそうじゃないですか?」と逆ツッコミを入れられる。ほかのキャストからも「(増田なら)ありそう」という言葉がもれるも、増田が悩んでいると、笹本から「初めてハイブランドをここからここまでと買い物したこととか?」とのフォロー質問が飛び、「お気に入りの靴を白・黒で買ったときですかね」とはにかみながら答え、笑いを生む。しかし、背後からブラザートムに「僕らの世界は、死ぬまでずっと出世を目指している世界なので」と好回答でまとめられ、「それ、僕が言ったことになりませんか?」と増田は苦笑い。こんなやりとりにもこのカンパニーの良さ、皆が楽しんで作品に臨んでいることが滲んで見えた。

最後に増田から「今、大変な状況のなかで、大きな会場でステージに立たせてもらえることを嬉しく、責任重大だなと思っています。しっかりとエンターテインメントを作るこの場を大切に、無事に千秋楽を迎えられるように頑張っていきます。少しでも多くの方を元気に笑顔にできるよう頑張っていきます」メッセージが送られ、取材会は終了した。

本作は東急シアターオーブにて9月20日(日)まで上演。その後、10月3日(土)より9日(金)までオリックス劇場にて大阪公演を予定している。

ミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』

東京公演:2020年9月4日(金)~9月20日(日)東急シアターオーブ
大阪公演:2020年10月3日(土)~10月9日(金)オリックス劇場

STORY:
ビルの窓ふき清掃員フィンチ(増田貴久)は、ある日「努力しないで出世する方法」という本を読んで感化され、出世を強く意識するようになる。“入るべきは大企業”という本の教えに沿って、ワールドワイド・ウィケット社に飛び込んだフィンチは、偶然出会った社長のビグリー(今井清隆)に直談判。そんな彼を一目で気に入った秘書のローズマリー(笹本玲奈)は友人である秘書のスミティ(林 愛夏)とともに何かと世話を焼く。人事部長のブラット(鈴木壮麻)に社長の関係者だと勘違いされたフィンチは首尾よく入社、トゥインブル(ブラザートム)が郵便室長を務める郵便室に配属される。そこには社長の甥で出世を狙うバド(松下優也)がいた。本の教えに沿って行動するフィンチは、社長秘書のミス・ジョーンズ(春野寿美礼)にも気に入られ、ヘディ・ラ・ルー(雛形あきこ)という専属秘書も付き、出世はトントン拍子。ローズマリーとの恋も上手く運んで、全てが順調……だったある日、重大なアクシデントが発生。果たして、フィンチの幸運もこれまでなのか……!?

作詞・作曲:フランク・レッサー
脚本:エイブ・バローズ  ジャック・ウェインストック  ウィリー・ギルバート
原作:シェパード・ミード

演出・振付:クリス・ベイリー
翻訳・訳詞:高橋亜子
音楽監督:荻野清子
演出補:荻田浩一

出演:
フィンチ 役:増田貴久
ローズマリー 役:笹本玲奈
バド 役:松下優也
ヘディ・ラ・ルー 役:雛形あきこ
ブラット 役:鈴木壮麻
スミティ 役:林 愛夏
トゥインブル/ウォンパー 役:ブラザートム

ミス・ジョーンズ 役:春野寿美礼
ビグリー 役:今井清隆

ほか

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