Interview

ほのぼのコミックエッセイが中国でも大人気! 『おかあさんライフ。』たかぎなおこさんのこれまでとこれから

ほのぼのコミックエッセイが中国でも大人気! 『おかあさんライフ。』たかぎなおこさんのこれまでとこれから

たかぎなおこさん。身近な出来事を親しみやすい絵柄でつづった、コミックエッセイを描き続けている作家さんだ。
自身の身長から見えてくる「あるある」をテーマにした『150cmライフ。』で2003年に単行本デビュー。ひとり暮らしやひとり旅をテーマにした作品をコンスタントに発表しつつ、近年は結婚・出産も経験。今年2月には2年ぶりの単行本『おかあさんライフ。』が発売された。
実はたかぎさんの作品、中国語圏で絶大な人気を誇っている。2018年3月発行のJETRO(日本貿易振興機構)の「中国出版市場調査」によると、日本産コミックスの売上トップ10をほぼ独占しているのだ。
「世界に響く日本のポップカルチャー」を伝えることを謳う当メディアにとっては、見逃すわけにもいきますまい! ということで、今回たかぎさんにインタビューを実施。
変わりゆく日々を等身大の視線で見つめ、楽しみながら作品にしてきたたかぎさんの言葉は、「日常」の形が大きく変わりつつある今、あなたの心にも響くはずだ。

取材・文 / WHAT’s IN? tokyo編集部


ホームページの絵日記コーナーからエッセイマンガ家に

もともとはイラストレーターを目指して上京されたということでしたが、なぜ「コミックエッセイ」という形でデビューすることになったのでしょうか。

上京した頃はいまとは違うもっと重いタッチのイラストを描いていたのですが、出版社に売り込んだり、展覧会を開いたりしても全然仕事がこなくて悩んでいました。
その後イラストを紹介するためにホームページを作り、そこに日々思ったことを気ままに書く絵日記コーナーも作ったんです。
それは仕事などを意識せず、ただ自分が楽しいからやっていたのですが、たまたま見た編集者さんから「コミックエッセイを書いてみないか」という話をいただいたんです。
思いがけない話でびっくりしましたが、それがデビューのきっかけです。

デビュー単行本となった『150cmライフ。』(KADOKAWA刊)

初期のひとりぐらしエッセイを読むと、たかぎさんの目を通して「東京という街はこんな感じだったのか~」という想像が膨らみます。当時と比べて、東京という街に対する印象は変わりましたか。

街よりも自分の意識が変わったと思います。上京した頃は知り合いもほぼいないし、仕事もお金もなく生活もギリギリで、東京のことがなかなか好きになれず、自分の居場所はどこにもないような気持ちでした。
でもちょっとずつ知り合いも増え、仕事も大切なものも増え、東京のことも好きになっていって、いまは居心地の良さを感じます。
東京は、いろんな地方からいろんな目的をもってやってきた人が住んでいて、そのごちゃごちゃ感がおもしろい場所だと思います。

作品を描くのは「こんなことがあったよ」と交換日記のように報告する感覚

たかぎさんの作品の一番の魅力は、なんといっても周囲の物事に対する「目の付けどころ」だと感じます。結婚・子育ても経験され、近作ではより「人」にフォーカスすることが増えたようにも感じますが、ご自身でもそうした変化は感じられますか。

ひとり暮らしが長かったので、自分じゃない誰かの日常生活を見ているというのはおもしろくて、つい描きたくなってしまいますね。
反対に「自分のことについてじっくり考える時間やゆとりは減ったなぁ〜」と思います。

最新刊『おかあさんライフ。』(KADOKAWA刊)

日々の生活の中で、作品になるネタをメモなどにストックされているのでしょうか。

娘がなにかおもしろいことをしたときは忘れないようにメモすることもありますが、基本的に昔からあまりネタ帳といったものは作っていません。
でもなるべく日々の写真は撮っておいて、あとから見て思い出しながら描くことはあります。

コミックエッセイを描き始めた頃、どのようにして自分なりのスタイルを見つけていきましたか。

最初の頃は自分で描いていてもおもしろいかどうか自信がなかったので、担当編集さんが「おもしろい!」と言ったものを信じて描いている感じでした。
でもそういう客観的な意見を受け入れるというのは、とてもいいことだったと思います。

初期の作品から順に読んでいくと、絵柄が変わられたタイミングがいくつかあると思いました。ご自身の絵柄について客観的に意識されたきっかけなどはあったのでしょうか。

自分では絵柄を変えていっている意識はあまりないのですが、初期の頃の絵を見てみると、いまとはたしかに変わっていますね。
思い返してみると初期の頃はあまり下書きをせず、ラフな感じで描いていました。
そのうち旅エッセイの連載が始まって、風景や食べ物は下書きをきちんとしないと描くのが難しくなってきて、その頃からちょっとずつ絵が変わっていったかな、と思います。

最初の旅エッセイ本『ひとりたび1年生』(KADOKAWA刊)

ご自身の作風の核や、作品を描く上で大切にされていることを教えてください。

中学・高校時代に、「絵が好き」という共通点があった友人とずっと交換日記をしていました。家や学校であった出来事を絵を交えながらおもしろおかしく報告し合うような内容だったのですが、いまの作風もその延長線上な気がします。
「こんなことがあったよ〜」と、いつも読者さんに報告するような感覚です。

後悔している自分の姿を想像することで、新しい物事への勇気を出す

今年は新型コロナウイルスの影響で、「Stay Home」な時間が増えました。特に外出が難しかった時期には、どのように過ごされていましたか。

なかなか外に遊びに行けなかったので、おいしいものを取り寄せて食べるのを楽しみにしていました。
旅先で食べて感動したおいしいものも調べてみたら取り寄せ可能だったりして、餃子、チーズケーキ、もつ鍋……など取り寄せて旅行気分を味わっていました。

在宅ワークをする人が増えたのも大きな変化です。たかぎさんなりの、在宅での仕事と日々の生活を両立させるコツがあれば教えてください。

私もコツがあったら教えていただきたいくらいです。
特に子どもの世話をしながら仕事に集中するのはとても難しく、娘が赤ちゃんの頃から夫の母に見てもらって、その間に仕事したりしています。
なので私の場合は「たよれる人にはどんどんたよる」でしょうか。

作品を読んでいると、常にとても自然に新しい生活のステージへと踏み出されている印象を受けます。不安を「新しい経験ができる」という考えに変えるコツ、またそうした考え方を持つきっかけになったエピソードがあれば教えてください。

上京をするとき、怖い気持ちもいっぱいあって勇気がいりました。
でも将来「あのとき上京してたらもっと違う人生があったかも」と後悔したら嫌だな~と思って、思い切って上京を決めたんです。
そういう感じでよく「あのとき〇〇しとけばよかった~」とうじうじ後悔している自分の姿を想像して、それを行動力に変換することがあります。

ひとり暮らしエッセイ本『ひとりぐらしも5年め』(KADOKAWA刊)

誰でも経験するようなことを描いているからこそ、国境を越えて受け入れられる

翻訳出版が決まった当時の気持ちを教えていただけますか。

日本での地味な日常生活の話なんて、海外の人が読んでおもしろいと思ってもらえるのか、理解できるのか、さっぱりわかりませんでした。
正直、「売れないんじゃないかなぁ〜」と思っていました。

結果、たかぎさんの作品は中国語圏をはじめ各国で大人気です。どういったところが国境を越えて受け入れられているとご自身では思われますか。

誰でも経験するような普通の日常生活を描くことが多いので、そのあたりが受け入れられやすいのかな、と。

はじめに海外の読者さんからの反応をいただいた際、どのように思われましたか。また、実際に反応を受けて印象に残ったことがあれば教えてください。

海外の読者さんからもときどきファンレターをいただくのですが、「自分の国でも同じです」「その気持ちわかります」と共感してくださる方が多いです。国が違っても気持ちが通じ合えるというのは、驚きであり、うれしくもありました。
たとえば中国でも地方から都市部に上京してきたという方がたくさんいるそうで、上京後の孤独な気持ちへの共感も多いんです。ただ中国大陸は日本よりずっと広いので、本当に遠くの地方から大移動してきたという方もいて。「中国の上京物語は日本よりサバイバルそうだなぁ〜」と思ったのが印象的です。
ファンレターは現地の言葉で書かれていて読むのが難しいものもあるのですが、いままでに読んだ私の本を並べた写真を同封してきてくださる方もよくいて、「大切に読んでくれているんだなぁ〜」と感動したりもします。

最後に、読者に向けたメッセージをぜひお願いします。

コミックエッセイを描き始めて18年たち、20代ひとり暮らしだった私も40代子持ちになり、本に描く内容も少しずつ変化していっています。
今後はまたどんな変化をしていくのか自分にもわかりませんが、そのときそのときの素直な気持ちを描いていけたらと思います。
いつか素敵な「おばあちゃんライフ。」を描くのが夢です。
今後もどうぞよろしくお願いいたします。

たかぎなおこ

1974年、三重県生まれ。イラストレーター。おもな著書に『150cmライフ。』『ひとりぐらしも5年め』『愛しのローカルごはん旅』『マラソン1年生』『海外マラソンRunRun旅』(KADOKAWA/メディアファクトリー)、『浮草デイズ』『はらぺこ万歳! 』(文藝春秋)、『ひとり暮らしな日々』(主婦と生活社)、『へなちょこ手作り生活』(白泉社)など多数。

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