LIVE SHUTTLE  vol. 407

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赤い公園 原点の場所からの配信ライブ。MCなしの全16曲、約60分。潔くも、“これ以上もこれ以下も考えられない”新たな一歩。

赤い公園 原点の場所からの配信ライブ。MCなしの全16曲、約60分。潔くも、“これ以上もこれ以下も考えられない”新たな一歩。

東京・立川のライブハウス、立川・BABELのホールの真っ赤な床が画面に映った瞬間、「あ、ここが赤い公園という名を持つバンドにとって、気の合う仲間と集って遊ぶ(赤い)公園なんだ」とふに落ちた気がした。勝手な妄想かもしれないが、そこは確かに、赤い公園だったのだ。

高校の軽音楽部の先輩後輩として出会った藤本、歌川、津野は2010年1月にバンドを結成し、地元である立川・BABELを拠点に活動を始めた。翌年1月に制作した2曲入りの自主制作デモ音源「はじめまして」と同年3月に発売した自主制作ミニ・アルバム『ブレーメンとあるく』をレコーディングしたのも立川・BABELであり、前ヴォーカル脱退後の2018年1月に3人体制のお披露目公演『こめさくpresents~もぎもぎカーニバル~特別版「赤い公園ワンマンライブ2018☆はじめまして☆」』を開催したのも立川・BABELだった。そして、2020年。石野理子をボーカルに迎えた新体制初のアルバム『THE PARK』を4月にリリースし、5月からは全国14か所を巡るアルバムツアー『SHOKA TOUR 2020 “THE PARK”』を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大防止に伴い、全公演が中止。『THE PARK』ツアーの“0日目”と題した無観客での有料配信ライブが行われたのも立川・BABELであったのだ。

8月29日(土)の夜9時。画面には立川・BABELの入り口が映し出された。自動ドアを開けて、地下へと続く階段を降りる。ドリンクカウンターでチケットを渡し、メロンソーダを受け取る。フロアに入ると、真っ赤な床に白いテープでソーシャルディスタンスの対策用のバミリが見えた。ライブハウスでは先ほどまでPSやスマホから流れていたSEが流れて、ステージ上のスクリーンにも同じく赤い公園のバックドロップがかかっており、画面を見ているのではなく、ライブハウスに足を運んでいるんだという実感が強くなっていく。幕が上がり、立川・BABELのTシャツを着た4人が赤と黒の格子柄のステージに姿を現し、ミドルテンポのラブソング「ソナチネ」を歌いはじめてもカメラはメンバーに寄ったりはしない。あくまでもライブハウスに来た観客の一人という視点が新鮮で嬉しい。

真っ直ぐに清らかな姿勢で歌っていた石野が躍動感たっぷりに飛び跳ねはじめた「Mutant」からカメラはメンバーの近くへと寄っていった。ステージ上で自由に踊り、歌う石野は開放感たっぷりで、津野もジャンプしながらギターを弾いている。最後の<特別になりかっただけなんだよ>というセリフと表情には楽曲を深く理解した上での静かな怒りと諦めがにじんでいてぞくっときた。100秒間を全速力で駆け抜ける「絶対的な関係」は前体制の楽曲。チャットは「昔の曲もやるのか」とざわついたが、「Mutant」は個性を強要される社会をテーマにした曲であり、「絶対的な関係」は自分の居場所を確保するために腹の探り合いをする女の子同士の表面的な友情を歌った曲である。自分の心の中は自分しかわからないという点で通じており、続く「絶対零度」への“絶対つながり”という意味でも最適だった。その「絶対零度」では観客のダンス欲をかき立てながらも、石野は全ての憂鬱を晴らしてくれるかのような突き抜ける歌声を響かせ、最後は両手を強く結び、彼女が目を瞑った瞬間に歌川がバスドラをドンと鳴らし、暗転した。石野は歌声に感情を乗せるのが上手いだけではなく、表情や身体的な動きからも楽曲を表現していた。ロックバンドのヴォーカリストとしてはもちろん、パフォーマーとしても一瞬たりとも目を離せないと感じるほど、観客の視線を猛烈に惹きつける力を持っている。

藤本が笑顔で足踏みしながらベースを弾き、石野が普段のライブと同じように観客一人一人を指した「Beautiful」を経て、津野はギターを起き、ピアノへ。”ひとりじゃない”という温かなメッセージを届けた「KILT OF MANTRA」、<もう一度はじめよう/ぼくらのよる>という合言葉が収められた再出発の歌「交信」、歌川のコーラスが心地よいアーバンソウル「Yo-Ho」。と、3曲をピアノトリオで届け、石野がステージとフロアを区切る最前列の柵に足を乗せ、メンバーが飛び跳ねながらプレイした新体制初EPのタイトル曲「消えない」、独特のフリからハイキックも繰り出した「ジャンキー」とアグレッシブなナンバーを放つごとにバンドがどんどん自由になっていく。前体制のラストアルバム『熱唱サマー』収録曲で、ライブではほとんどやることのなかった「最後の花」は音盤ではストリングスのアレンジが際立っていたが、この日は4人が出す音だけのバンドアレンジとなっており、ヘヴィーでソリッドながらもどこか涙を誘うトーンが潜んでいた。

そして、石野が公園にあるブランコに座ってるかのように見えた「夜の公園」を歌い終え、フロアの横に備え付けられている赤いベンチに目を映すと、そこには、赤いTシャツにリュックを背負い、ハチマキを巻いたPecori(ODD Foot Works)の姿が! 津野と歌川はほぼコーラスのみに専念した打ち込みのラブソング「chiffon girl」を石野とPecoriが向かい合って歌い、石野の「新曲やります」とだけ語り、青春の情熱を感じるポップロック「オレンジ」を初披露。この日のMCはほぼこれだけで、曲間もあまりなかった。さらに、4人が向き合って、4人で音を出すことが楽しくて仕方ないという雰囲気で演奏を始め、石野だけではなく、津野も藤本もフロアに降りた「凛々爛々」、床に跪いて頭を振り乱しながら歌ったアルバムのラストナンバー「yumeutsutsu」でライブは終了した。全16曲で約60分。潔くも、これ以上もこれ以下も考えられない、見事な構成となっていた。最後に4人は。<私は行くよ>、<迷ってるんならついておいでよ>と呼びかけ、<行こうぜ>と右手を高々と掲げて締めくくっていた。赤い公園は、バンドのはじまりの場所から再び歩き始めたのだ。<うつくしい圧巻の近未来/絶景の新世界>はきっとすぐそこにあるだろう。今はただ、いつかやってくるであろう、『THE PARK』のツアー初日を楽しみに待ちたいと思う。

取材・文 / 永堀アツオ

SHOKA TOUR 2020 “THE PARK” ~0日目~
2020年8月29日

<SET LIST>

1.ソナチネ
2.Mutant
3.絶対的な関係
4.絶対零度
5.Beautiful
6.KILT OF MANTRA
7.交信
8.Yo-Ho
9.消えない
10.ジャンキー
11.最後の花
12.夜の公園
13.chiffon girl feat.Pecori(ODD Foot Works)
14.オレンジ  ※新曲
15.凛々爛々
16.yumeutsutsu

赤い公園

2010年1月結成。石野理子(Vo)、津野米咲(Gt)、藤本ひかり(B)、歌川菜穂(Dr)の4人組バンド。
高校の軽音楽部で出会い、藤本、歌川、佐藤千明(前Vo)のバンドにサポートとして津野が加入。
東京・立川BABELを拠点に活動し、2012年2月にメジャーデビュー。
ロックバンドとして高い演奏力を誇り、1度聞いたら忘れないキャッチーなメロディの融合が特徴である。
2014年に2nd AL『猛烈リトミック』が第56回 輝く!日本レコード大賞「優秀アルバム賞」を受賞。
主に楽曲の作詞・作曲を行う津野米咲はSMAPのSG「Joy!!」の詞曲を始め、YUKIやモーニング娘。’16に曲提供をするなど、そのライティング力は多方面で高い評価を得ている。
2017年8月に前Vo.の佐藤が脱退。
ボーカリストを探す中、時を同じくして所属グループ「アイドルネッサンス」が解散した石野と運命的な出会いを果たし、即座に加入決定。決め手はまっすぐな歌声だった。
2018年5月「VIVA LA ROCK 2018」にて石野加入をサプライズ発表、Twitterトレンド1位になるほど話題に。「ロックバンド」と「元アイドル」という異色が更なるスパイスとなり、本音をさらけ出して魂を鳴らす4人に乞うご期待。

オフィシャルサイト
https://www.akaiko-en.com

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