発掘!インディーゲーム総研  vol. 18

Review

モンスターの能力で人間を襲う『CARRION』新機軸の面白さがもたらすゲーム体験

モンスターの能力で人間を襲う『CARRION』新機軸の面白さがもたらすゲーム体験

ゲームではいつも倒される存在のモンスター。そんなモンスターとなって、自分を捕らえていた人間の施設から逃げる斬新なゲームが登場した。通常のゲームとはひと味違った世界設定、バトルを楽しめる本作。その魅力をくわしく紹介していこう。

文 / 板東篤


異形の生物となって脱出

Phobia Game Studio開発による2Dのドット絵アクションゲーム『CARRION』がリリースされた。本作一番の特徴は、“触手を有した異形の生命体”が主人公であること。本作はモンスターとなって、研究所(らしき場所)の人々を襲い、脱出することが目的のゲームだ。

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▲異形の赤い生命体が主人公。名前や生まれた経緯などは謎だ。ゲームをクリアしても語られることはなかった

本作は世界設定についてほとんど解説されず、主人公もサイトなどで“触手を持つ生物”と記載されているのみ。生まれた理由、名前、捕らわれていた場所……こういった情報が直接語られることはなく、ゲーム中の印象や背景画像などから推測するしかない。

研究所から脱出する方法は、各エリアにあるひび割れた壁にバイオマス(分身)を広げていくこと。主人公から切り離されたバイオマスは次のエリアへの扉まで伸びていき、すべての穴からバイオマスを広げると扉を破壊して先に進める、といった仕組みだ。このバイオマスを広げた場所は、セーブおよび回復ポイントにもなる。

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▲壁の穴を調べることで、そこにバイオマスを棲み着かせられる。以降、この場所はセーブと回復ポイントとして活用できる

この研究所らしき場所には職員のような人間が多数詰めており、敵として立ちはだかる。主人公は触手で人間をつかんで食べることで、ライフを回復することが可能だ。もちろん人間たちがおとなしく食べられるのを待っているわけがない。銃を撃ってくる、さらにマシンガンで反撃してくる特殊部隊のような存在など脅威となる人間も存在している。特殊部隊は着衣が硬いのか、捕まえても食べることはできず体力回復には利用できない。後半になると火炎放射器を装備した特殊部隊も登場し、より戦いは激しくなる。主人公は炎に当たると燃えてしまい、継続ダメージでジリジリと体力を奪われていく。燃やされた場合は、近くにある水場に入ることで消火することが可能だ。ただ敵のバリエーションが増えても戦いかたは変わらない。見つかるとほぼ一方的に負けてしまうため、敵に気づかれないよう背後から素速く攻撃するのが必勝パターンだ。
さらに銃を撃ってくる自立型のドローン、ガトリングガンを装備した搭乗兵器などメカ系の敵も出現するようになる。正面から挑むと一瞬で体力を奪われることは変わらないため、相手に気づかれずに攻撃するという戦いかたになる。バトルに関しては、意外とステルスゲームだといえる。

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▲触手で人間を捕まえてボリボリと食べることで体力を回復できる。ドット絵ながら人間が真っ二つになってしまうので、ゴア表現が苦手な人は注意

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▲特殊部隊のような人間はトゲトゲの盾を備えており、前方からの攻撃を無効化する。相手に気づかれないよう頭上や背後からコッソリ襲うのだ

映画やゲームなどで通風孔から忍び寄るモンスターに仲間が捕らえられ、殺されてしまうシーンを見ることがあるだろう。あのモンスター側の立場となって人間を倒すのが、本作の大きな特徴のひとつ。通風孔に隠れ、人間のスキを突いてコッソリ倒すステルスプレイこそ爽快感を味わえる瞬間だ。もし失敗して見つかった場合は大急ぎで通風孔に戻り、相手がこちらを見失うまで息を潜める。こうしないと、武器を持った人間にはまったく勝てないのだ。なぜ映画やゲームのモンスターが通風孔や排水溝を好んで利用するのかが、ちょっとわかった気がする。

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▲マップには通風孔らしき細い通路が多数存在。これを活用することで人間と有利に戦える

DNAを吸収してパワーアップ!

主人公は施設に保管されているDNAを吸収するとパワーアップし、新たな能力を得られる。たとえばクモの巣(という名称だが、見た目はクモの糸)を投げて遠くのスイッチを操作したり、一定時間透明になったりなどバリエーションは多彩。一部のDNAを吸収するとHPの最大値が上昇し、倒されにくくなる。HPの最大値は2段階まで強化可能だ。

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▲施設で見つかる大きなガラスの容器にDNAが保管されている。触手で壊して吸収すると、新たな能力が付与される

これらの能力はバトルで使えるものもあるが、多くはギミックを解くために使用する。たとえば通路にレーザーが設置されており、触れるとその奥にあるドアが閉じてしまうギミックがあるとしよう。通常は通れないギミックだが透明になることでレーザーに感知されず、そのドアを通り抜けることが可能になるのだ。こうした謎解きはちょっと頭を使うが、パズルのような楽しさを味わえる。新しい能力を手に入れたら「この能力であの場所から進めるようになるかも!」とワクワク感も大きい。ちなみに入手できる新能力は8種類ある。

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▲触手では届かないスイッチ。クモの巣を投げる特殊能力で操作することができるようになる

本作を面白くする仕掛けとして、主人公の大きさ(便宜上、主人公の体の大きさを小、中、大と表す)に応じて使える能力が異なるという設定が挙げられる。たとえば対応するボタン。体が小のときはクモの巣を投げられ、中のときは体全体で体当たり攻撃、大では強力な引っ張りアクションといった具合。体が大のときに遠くのスイッチを操作したくても、クモの巣を投げられないのだ。

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▲体の大きさで使える特殊能力が変化する。大きな状態では、体当たりやクモの巣を投げるアクションは使用できない

上記のようにスイッチを操作するためには、(体力が減ってしまうが)一時的に体を小さくする必要がある。こうしたギミックを求められる近くには特殊な池があり、ここにバイオマスを切り離して保存し、体を一段階小さくすることができる。切り離したバイオマスは操作することができず、そのまま池に残り続ける。これをあとで回収することでHPを回復し、体の大きさを元に戻すことが可能。ほかにも前述のセーブポイントを調べても体力を回復できる。体を小さくすると体力が減ってしまう設定だが、倒されやすいというゲーム序盤の緊張感をゲーム中盤以降でもまれに味わうことができるわけだ。

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▲このような池に体の一部を切り離して、体を小さくすることが可能

新能力は基本的にクリアに必須で、ゲーム中は順番に取得していくことになる。ゲームの進行も一本道で、「先にあの能力を取ってから、このトラップを早めに解いて……」みたいな攻略の自由度はない。そのため、探索が主となるメトロイドヴァニアというジャンルには近いけれど、ちょっと違うといった印象だ。
なお完全に一本道かというとそうでもなく、じつはクリアに必須ではないDNAが隠された格納ユニットが9個存在する。こちらは序盤の場所にあるにも関わらずゲーム後半の能力がないと入れない、といった感じで隠されているため、これらのコンプリートを狙うならばもう少し長い時間本作を楽しめるだろう。これらを入手すると得られる能力はエネルギーの最大値が少し増える、といった感じで主人公がややパワーアップするというもの。入手せずとも問題なくクリアできるため、目的が違う人はスルーしてもいい。

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▲隠しDNAを探すのは探索要素と言えるかもしれない。怪しい場所は覚えておいて、新たな能力を入手したら再び訪れてみよう

主人公の移動速度は結構速く、重力を無視しているかのように自由自在に移動できるため動かしていて楽しい。ただし見た目がグロテスクで苦手な人もいるだろう。触手を伸ばしてドアを引っこ抜いたり、人間を引き寄せるのは単純に爽快感がある。この触手が思ったほど長くないのもポイント。敵を攻撃するためにはどうしてもある程度接近せねばならず、バトルは(無抵抗の人間は別として)緊張感あるものに仕上がっている。

こんな感じで本作をプレイしてきたが、主人公がモンスターという設定は珍しくて単純に楽しい。少しずつパワーアップしていけることも成長を実感でき、行えることが増えていくためプレイのモチベーションをけん引する。クリアまでの時間は約4時間半とそこまでボリュームはないが、サクッと遊べるのは好印象だ。
気になった点はいくつかある。まず全体マップが存在しないこと。エリア間の移動はワープのような感じになるため、各エリアがどの方向にあるのかまったく把握できず、以前のエリアに戻るのが大変になる。クリアだけなら新しいエリアに向かってズンズン進んでいくだけだが、隠しDNAを探すのは少々面倒になり集める意欲は低下する。クリア後の引き継ぎ要素、解禁要素などもなく、クリアして終了というのは最近のゲームだと珍しく少々寂しさを感じた。

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▲残念ながら情報を直接与えてくれない仕様になっている。各エリアの名称などは、背景に描かれた電光掲示板などから把握する感じだ

個人的に面白いと思ったのは、主人公の成長具合(体の大きさ)によって使える能力が異なること。基本的に大は小を兼ねるゲームが大半であり、後半に入手した能力が以前の能力の完全上位というのがセオリーだろう。本作ではそれを逆手に取り、体を小さくしないと進めない場所をギミックに落とし込んでいるのが新鮮で楽しかった。体が大きくなるほど体力も増えて倒されにくくなるのだが、逆に操作性は低下してしまうのもいい。主人公の体は球体ではなく横方向に成長していく。つまり長くなっていくわけだが、このとき触手を上に伸ばすとどこから触手が伸びてどこでつかむのか一瞬では把握しにくい。移動も同様でどこが中心(操作しているポイント)なのかがわかりにくいため、通路から細い通風孔に入るときなどで大きく戸惑ってしまう。そこまで大きな問題には思えないかもしれないが、敵をサッと触手でつかみたい場合では0.5秒ほど戸惑いが生じ、敵に気づかれてしまうということも多々ある。これが若干のストレスを感じる仕様になっている。

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▲体が大きくなるほど強くて戦いやすいというワケではない。大きいなりのデメリットが存在する

つらつら欠点を述べてしまったが、基本的には小ボリュームながらも斬新でまとまっているアクションゲームといえる。グロテスクな描写は多いが、モンスターになりきれる独自要素、パズルを解きながら進むアクションゲームが好きな人におすすめだ。エンディングでモンスターは最後の能力を使う。この結果がなかなかにショッキングで、世界の運命を考えざるを得ない。気になる人はプレイしてみよう。

フォトギャラリー

■タイトル:CARRION
■発売元:Devolver Digital
■対応ハード:Nintendo Switch™、Xbox One、Steam®
■ジャンル:アクションアドベンチャー
■対象年齢:17歳以上
■発売日:発売中(2020年7月23日)
■価格:ダウンロード版 2,050円(税込)


『CARRION』オフィシャルサイト

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