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『Deadly Premonition』シリーズレビュー! 海外ドラマ・映画が大好きな人にほど遊んでほしい不思議な作品

『Deadly Premonition』シリーズレビュー! 海外ドラマ・映画が大好きな人にほど遊んでほしい不思議な作品

初めてこのゲームをプレイしたとき、「なんだろう、この不思議なゲームは……?」と驚いたのを覚えています。快適さとはほど遠い操作性や画面表示。癖のありすぎる登場人物たち。ホラー要素もあるため、全体を通しておどろおどろしい雰囲気かと思っていたら、爆音のサウンドエフェクトや突然口笛をメインにしたのどかなBGM。本筋とは関係ない遊びの部分への作り込み。オープンワールド、アドベンチャー、ホラー、TPS、生活シミュレーション、さまざまなミニゲーム……多くの要素が盛りだくさんなゲーム内容に、最初のうちは自分のテンションをどう着地させて良いのかわからず、まるで振り子のように行き来してしまっていたのを覚えています。しかし、ゲームを進めていくうちに、この作品にいる登場人物たちに愛着がわき始め、この世界をどんどん好きになり、ゲームをクリアするころには彼らと離れてしまうことに寂しさを覚えてしまうほどになっていました。そんな私の心をいまでもつかんで離さないタイトルが『Deadly Premonition』シリーズです。2作目となる『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』が2020年7月10日に発売されましたが、本稿では1作目も交えてレビューしたいと思います。

文 / 伊藤ガブリエル


FBI特別捜査官ヨークとなり、
猟奇殺人事件を解決していく

国内では10年ほど前に『レッドシーズプロファイル』としてPS3とXbox 360で発売されていたこの作品は、当時「世界でもっとも評価が分かれたサバイバルホラーゲーム」として、ギネスブックに載るほどでした。本シリーズには国内外問わずカルト的なファンが多く、一言では説明しづらい不思議なゲームでありながらも、刺さる人には刺さる、気に入った人の心を惹き付けて離さない魅力がたくさん詰まっています。

Deadly Premonition Origins WHAT's IN? tokyoレビュー

▲『Deadly Premonition Origins』

ゲーム内容はというと、プレイヤーはFBI特別捜査官「フランシス・ヨーク・モーガン」となり、アメリカの地方都市で起きた猟奇的な殺人事件解決のために奔走することになります。

Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise WHAT's IN? tokyoレビュー

▲『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』

主人公ヨークは、ザックとよばれる謎の存在と会話をしながら、町の住民たちとの交流をしつつ捜査を進めていきます。頭に指をあてながら、まるで情報を脳にインプットするかのようにザックとの対話を行うのです。

会話の最中であろうとも、周りに誰がいようともいきなり話し出すため、周囲の人間からは「なんだか変なやつ」と言われてしまいがち。 しかし、ヨークは気にもとめず、それが彼にとっての普通だと言い切っていきます。ヨークとザックの会話を聞いていくうちに、まるでプレイヤーとの会話をしているように聞こえてくることでしょう。

ヨークとザックのコンビはもちろん、そのほかキャラクター同士の掛け合いが非常にウィットに富んでおり、真似したくなる人もいるかもしれません(筆者は一時期真似をしていました)。

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▲『Deadly Premonition Origins』

そんなヨークが訪れるのは都会から離れたアメリカの田舎町。本作の特徴のひとつとして挙げたいのは、本シリーズはアメリカの田舎町を舞台にしたオープンワールドという点です。

第一作ではアメリカ北部に存在する「グリーンベイル」。第二作ではアメリカ南部ルイジアナ州「ニューオーリンズ」に存在する「ル・カレ」になります。「グリーンベイル」はその豊富な木材資源から、製材業により財を成した土地で、町の一帯に森や湖が存在するほのぼのとした土地です。「ル・カレ」ではクラークソン一家とよばれる大きなファミリーが町を牛耳っており、町に関係するほぼすべての事業に一家の息がかかっています。どちらの町もなかなかに広く、最初のうちは町を探索するのにもマップとにらめっこしながら動くことになるでしょう。

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▲『Deadly Premonition Origins』

現実と常世、ふたつの世界

都会とはまるで違った雰囲気のなか、警察車両やスケートボードを使って捜査のために走り回ることになります。シナリオを進めたい場合は、決められた時間に目的地へと到着することが必要ですが、その時間を過ぎたとしても内容によっては次の日に持ち越せる場合もあります。

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▲『Deadly Premonition Origins』

ヨークには体力とスタミナがあるほか、空腹度や眠気度などが設定されており、時間が経つにつれてどんどん減っていきます。これらは食べ物や飲み物を取ることのほかにも、ホテルのベッドや寝られる場所で休みを取ることで回復します。

ほかにも、同じスーツをずっと着続けていると汚れていったり、髭を剃らないでいるとどんどん無精髭になっていったりと、見た目にも変化が生じます。それぞれ放っておくと、空腹で体力が急激に減っていったり、スーツの汚れのせいでハエが飛び始めたりといったデメリットが発生するので、食事や睡眠、身だしなみには気を遣わなくてはいけません。

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▲『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』

そうした日常生活のなか、ヨークの捜査が進んでいくうちに謎に満ちた世界「常世」へと足を踏み入れることとなります。

常世では、シャドウと呼ばれるあきらかに現実離れした化け物が闊歩し、プレイヤーとヨークに襲いかかってきます。身体を異常な角度に曲げながら近寄ってくる様はとても不気味。場所によっては複数出現することもあるため、常世に赴く際は相応の準備をしなければなりません。第一作では凶悪な殺人鬼「レインコートキラー」に追いかけられるシーンも。なんとかして身を隠しながら、逃げ回るしかありません。

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▲『Deadly Premonition Origins』

現実で住人たちから聞き込みや依頼などをこなしていきながら、シナリオ進行により発生する常世の中で、事件にまつわる証拠品を集めつつプロファイリングをし、捜査を進展させていく。これらが本シリーズにおいてストーリーを進めるための基本的な流れになっています。

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▲『Deadly Premonition Origins』

癖のありすぎるキャラクターと、
いつの間にか惹き込まれているシナリオ

次に本シリーズの特徴として挙げたいのは、一癖二癖どころではない、強烈なキャラクターたちの存在です。

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▲『Deadly Premonition Origins』

鍋を持ったまま何度も迷子になってしまうご婦人「迷子のシガニー」やロック・ミュージックに心酔するコンビニ店主「キース・イングラム」。ブリーフパンツに並々ならぬこだわりを持ち、ブリーフパンツ一丁とハット姿でサックスを吹く「ザビエル・ジョンソン」や亡き夫の思いに応えるべく、ボウリングのレーンから片時も離れずにボウルを投げ続ける妻「ミセス・カーペンター」をはじめとした、一度見ると忘れられないキャラクターばかり。

本シリーズではメインシナリオとなる捜査とは別にサブクエストを受けることができますが、このサブクエストのほとんどは町の住民に関わっているものです。住人への聞き込みや協力、ともに日常を過ごしていくうちに、彼らの生活にすこしずつ触れていくこととなります。

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▲『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』

クエストのなかには住人たちひとりひとりの思いがしっかり描かれているものもあり、一見突拍子もない会話であったとしても、のちにその会話が意外なところで効いてくる……といったことも多くあります。一見不思議な行動や思想をしているキャラクターであっても、彼らの日常や思いを垣間見ることによって、より好きになっていくかもしれません。なかにはメインシナリオを補完するものもあったりするので、彼らの依頼をこなすほど、本シリーズの良さがより引き立つものになっています。

このことから、メインシナリオをどんどん進めていくより、気長にのんびりプレイしていくほうが本シリーズの遊び方としては合っていると私は感じました。住人たちもそれぞれの生活があり、つねに一定の場所にいるわけではないため、意外な場所で意外な人物と出会うこともあるでしょう。その偶然の出会いを経ていく過程で、本当にその町で生活しているような気分になります。

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▲『Deadly Premonition Origins』

そして、本作における一番のおすすめポイントとして挙げたいのは、こうして生活していくなかでいつの間にか惹き込まれていくシナリオの出来です。痛ましい猟奇殺人事件をきっかけに、人の怖さ、そして弱さと強さを描いています。そのすべてが少しずつではあるものの、確実につながっていく過程でプレイヤーは興奮を覚えることでしょう。

本シリーズは初作が2010年、二作目が2020年とほぼ10年越しで発売されているものの、内容としてはドラマのシーズン1シーズン2のような形式になっており、どちらか片方だけのプレイは筆者としては推奨したくありません。物足りなく感じてしまうことや、ストーリーの要所をちゃんと把握することがとても難しくなると感じたからです。加えて第二作では2005年と2019年という過去と現在2つの時間を行き来する内容になっており、ヨークが過去に担当していた事件が複雑に絡んでくるため、2作目をプレイするなら1作目のプレイはほぼ必須と言えるでしょう。

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▲『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』

映画・ドラマネタを絡めた会話に
思わず笑みがこぼれてしまう

海外映画やドラマ作品が好きな人にとって、このゲームが聞かせてくれるキャラクター同士の会話や知識、トリビアはきっと気に入るものばかりのはずです。

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▲『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』

主人公ヨークは映画が大好きで、住人たちとの会話や運転中にザックと話す際に、映画の引用をしつつ、何年に上映されたか、誰が監督して出演していたか、その映画の内容や良いポイントを事細かに解説してくれることがあります。この語りが、海外の映画やドラマ好きな筆者にとってすごく刺さる内容になっていました。『インディ・ジョーンズ』と『スター・ウォーズ』の作曲家が同じ人物であることからはじまるくすっと笑えるお話や、『ジョーズ パート19』にまつわるトリビア、アーノルド・シュワルツェネッガー氏の呼び方を指摘し合う会話など、本シリーズのクリエイターであり映画やドラマを愛してやまないSWERY氏だからこそ描ける会話になっています。

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▲『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』

『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』ではこの映画語りの要素がより濃くなっているうえに、とある別のキャラクターから海外ドラマ語りもセットで行われるため、どちらも好きな私は終始笑みが絶えませんでした。

そうした海外映画・ドラマへのリスペクトからか、第一作では一定チャプターおきに「前回のDeadly Premonitionsは?」といったダイジェストムービーもいくつか存在しています。シナリオの展開の仕方も、どの部分を切り取ってみても奇妙で不思議な内容ではあるものの、それらの要素がいつしかひとつの事象にちゃんとつながっていく。脚本とキャラクター設定がしっかり練られているからこそ可能なシナリオ運びになっているのです。

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▲『Deadly Premonition Origins』

本シリーズを遊ぶ上で見ておくとおおっ!となる海外ドラマとして挙げたいのが『ツイン・ピークス』です。本シリーズのクリエイターであるSWERY氏がこのドラマを愛してやまないこともあってか、『Deadly Premonition』シリーズの至るところに『ツイン・ピークス』へのリスペクトとオマージュが詰まっています。また、『メンタリスト』や『クリミナル・マインド』シリーズ、『クローザー』シリーズをはじめとした、本来の捜査とは違った視点の相手の表情や行動を読み取る能力や交渉術、捜査官のひらめきに重きをおいた作品を合わせて見ることによって、よりヨークや登場人物たちの深みが増すことでしょう。ホラー要素としては、カルト集団やブードゥー信仰といった要素からアメリカにおける伝承や人間の本質的な怖さを描いている『アメリカン・ホラー・ストーリー』シリーズを観ておくと良いかもしれません。

ゲームプレイとしては荒削りな部分もあるが、
光るものもたくさん詰まっている

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▲『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』

ゲームプレイの出来としては、現行機種で発売されているゲームタイトルと比べてしまうと正直見劣りしてしまう部分はあります。シリーズを経て改善される点も多いですが、操作性や画面表示に難ありな点もあります。車をはじめとした乗り物の操作は難しく、つねに滑るような挙動をするので快適に操作するためには少々コツがいります。出現する敵に照準する際にも、いまいち視点を合わせづらいうえに、雑魚敵を倒す爽快感はほとんどありません。

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▲『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』

『Deadly Premonition』では、武器の種類が豊富で、とある武器商人から購入できるほか、サブクエストをこなすことでより強力な武器が手に入ることもあります。なかにはバランスが崩壊しかねないレベルのものもありますが、戦闘が苦手でストーリーを中心に追いかけたい人にとっては非常にありがたいものになっています。

『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』では、武器性能や身体能力、運転やミニゲームにおける能力などをアクセサリーでカスタマイズできる機能が追加されており、ある種の素材集め・ハクスラやビルド要素が導入されています。自分の好みなヨークを作り出すために現実世界に落ちている素材を拾い集めて、常世に出現する化け物を倒していく面白さがあるのです。そのほか1作目からプレイヤーが気になるであろう仕様が改善されている部分が多くありました。

また、この『~2』においてはプレイ中カクつく場面も見受けられたのですが、二度のアップデートによりかなり改善されました。今後も追加機能含めてパッチを発行していく予定とのことなので、このあたりは期待してもいいでしょう。

Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise WHAT's IN? tokyoレビュー

▲『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』

冒頭でも述べたように、本シリーズは遊んだ人によって評価が非常に分かれます。私自身遊び始めた当初は「なんなんだこれは……?」と頭をかしげていましたが、少しずつ進めていくうちに「これは面白いゲームなのでは?」とどんどんのめり込んでいきました。

ゲームを始めたあとは、プレイするその日その日の気分が赴くまま、アメリカの田舎町で好きなことをしながら過ごしていました。起きたあとはシャワーを浴びたり髭をそったり。朝食とコーヒーを食べてから捜査に臨み、一区切りがついたらバーでお酒を嗜んだり、夜釣りやボウリングを楽しんだり、住民たちの悩みを聞いたり……そうして遊べば遊んでいくほど、この作品たちのなかで過ごした時間をとても愛おしく感じることができると思います。

Deadly Premonition Origins WHAT's IN? tokyoレビュー

▲『Deadly Premonition Origins』

数々の不便な仕様や操作性の劣悪さ、非常にカクつきがちな画面動作。見過ごせない部分は多々あるものの、それでも私がこのシリーズが大好きになったのは、キャラクターたちの生き方やシナリオの素晴らしさ、捜査官ヨークとして生活することが出来たからだと思います。オープンワールドというジャンルのなかでもとびきり癖の強いものではありますが、刺さる人にはしっかり刺さる内容であるのは間違いありません。「Deadly Premonition」シリーズは第一作『Deadly Premonition Origins』、第二作『Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise』ともにNintendo Switchで遊ぶことができます。本稿をここまで読んでくれた読者の皆様にこそ、ぜひ手にとって遊んでみてほしいです。

「ザック、この記事を読めばみんな遊んでくれると思うんだけど、君はどう思う?」


■タイトル:Deadly Premonition Origins(デッドリー・プリモニション・オリジンズ)
■発売元:トイボックス
■対応ハード:Nintendo Switch
■ジャンル:オープンワールド・ミステリーアドベンチャー
■対象年齢:17歳以上
■発売日:発売中(2019年9月5日)
■価格:ダウンロード版 3,480円(税込)

『Deadly Premonition Origins』オフィシャルサイト

© Marvelous Inc.
Developed by and published by TOYBOX Inc.


■タイトル:Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise(デッドリー・プリモニション2: ア・ブレッシング・イン・ディスガイズ)
■発売元:トイボックス
■対応ハード:Nintendo Switch
■ジャンル:オープンワールド・ミステリーアドベンチャー
■対象年齢:17歳以上
■発売日:発売中(2020年7月10日)
■価格:ダウンロード版 7,480円(税込)

『Deadly Premonition 2』オフィシャルサイト

©Marvelous Inc. / Rising Star Games Ltd.
Pubslihed and developled by TOYBOX Inc.