LIVE SHUTTLE  vol. 404

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私立恵比寿中学 アルバム『playlist』のコンセプトを体現し無観客の有料配信ライブで魅せた6人の歌力。9月19、20日には野外ステージ公演も開催

私立恵比寿中学 アルバム『playlist』のコンセプトを体現し無観客の有料配信ライブで魅せた6人の歌力。9月19、20日には野外ステージ公演も開催

数多くの新たなクリエイターとの出会い。その度に訪れる高い壁。その壁をメンバー全員で乗り越え、ヴォーカリスト&パフォーマーとして成長していく姿……。昨年8月で結成10周年を迎えた6人組グループ、私立恵比寿中学(以下エビ中)のヒストリーには様々なドラマが詰まっていて、ライブを見るたびにその背景も心に浮かび、アスリートのドキュメントを見たときと似たような涙がこぼれてしまう。

私立恵比寿中学が、8月16日(日)に、単独では初となる無観客の有料配信ライブ「私立恵比寿中学オンライン学芸会〜all of our playlist〜」を行った。ここで少しだけ振り返っておくと、エビ中はアニバーサリーイヤーである昨年、2019年3月に5枚目のアルバム『MUSiC』をリリースし、同年6月には横浜の赤レンガ倉庫で先輩であるももクロや楽曲提供を受けていたゲスの極み乙女。や岡崎体育、吉澤嘉代子などを迎えた初の主宰フェスを開催。夏には毎年恒例の『ファミえん』を開催し、9月からは秋冬ホールツアーがスタートしたが、10月に入り、メンバーの安本彩花が体調不良のために活動を一時休止。12月には1年で2枚目となる通算6枚目のアルバム『playlist』がリリースされたが、しばらくは5人での活動となっていた。そして、2020年3月末に安本の復帰が発表され、4月からはエビ中の“これから”を示したニューアルバム『playlist』を引っさげた全国ホールツアー「私立恵比寿中学 ど真ん中スプリングツアー2020 ~playlistを共有しますか? はい/いいえ~」を開催する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止。同じく、今年の『ファミえん』も開催が見送られたが、この日は春ツアーで披露する予定だった『playlist』のコンセプトを体現したライブとなっていた。

だからこそ、1曲目から涙を誘われてしまったのだ。駅のホームや改札口、街ゆく人々の足元と様々な数字。そして、真っ暗なトンネルを抜けて光を目指すモノクロの映像に続いて披露されたオープニングナンバー「ジャンプ」。安本が大好きな石崎ひゅーいによるエレクトロの高揚感を湛えたフォークソング。6人がアカペラで歌い出した後、真山から星名、柏木から小林、中山と一人ずつ歌い継ぎ、安本のラップへとバトンを渡す。そして、右手を高々と掲げ、全員で“愛を込めて”と熱唱。ライブが始まってまだ数分だが、この瞬間に泣いてしまっていたし、安本の“今だー!”という叫びには圧倒されて鳥肌が立った。そして、後藤まりこが作詞した「響」は、2018年1月4日の日本武道館で、新体制初の新曲として披露した、6人体勢の始まりの曲にして象徴的な曲で、この日のパフォーマンス中には安本と中山が力強く握手を交わしていた。オルタナティヴなポストロックバンド、ハイスイノナサの照井順政による「春の嵐」では、変拍子のピアノロックを真山がバンドのヴォーカルのように力強くまっすぐに歌い、その背後では、2人ずつペアを組んで鏡を挟んだようなダンスを見せ、ポルカドットステイングレイの雫による初披露となる「SHAKE! SHAKE!」では小林が明るくも切ない新機軸を見せつつピースサインを掲げ、星名はドスの効いた声で“命の限り手挙げろ”と画面越しの観客を煽ってみせた。その星名が、フォーメーションに参加していたことも大きなトピックの1つだろう。2018年のクリスマスイブのライブにリハ中に負傷した彼女は一時、ライブ活動を休止。復帰後もしばらくはステージの最後尾のお立ち台の上で歌と手振りに専念していたが、この日の彼女は全編にわたって、お立ち台に上がらずに歌い踊り、カメラに向かって笑顔を見せつつ、軽やかに舞っていた。

エビ中は1曲ごとにジャンルやムードを次々と変えていく。自己紹介を経て、中山がメインを務めた「制服“報連相”ファンク」ではファンクのビートに合わせてダックやスワンとなり、再レコーディング企画で募集したリクエスト投票で惜しくも次点に漏れてしまった4thシングル「禁断のカルマ」では、ドラキュラが出てきそうなホラーな雰囲気の中で指の先まで意識した繊細な表現を見せ、6人よる圧倒的に分厚いユニゾンも聴かせた。そして、80’sフレイバーのテクノポップ「藍色のMonday」では、星名が天性のアイドルっぷりを発揮し、川谷絵音(ゲスの極み乙女。)によるメロディラインもリズムの取り方も難解なシティポップ「トレンディガール」では、クールに踊りながら歌い、サビでは見事なハーモニーを響かせた。さらに、6人が向き合って静かに見つめ合うという動かないフリも印象に残った。

早着替えを経て、「オメカシ・フィーバー」では、中山がユニークなソロダンスを展開し、主メロを歌うメンバーに対してガヤも入れ、6人では初となるビッケブランカ作の「ちがうの」は、清凉かつチャーミングなパフォーマンスで、安本と中山は最後のラップで歌に感情を込めすぎずに楽器に徹するという新たな一面も見せてくれた。そして、星名のハイトーンが響き渡る、速いパッセージでテンションも高いハードロック「PANDORA」へ。この曲では女神になった星名があえてお立ち台を使い、メタリックなダンスロック「イート・ザ・大目玉」では、星名&柏木、真山&小林、安本&中山が歌唱バトルのように向き合い、エビ中でしかありえない見事なハモリを聴かせてくれた。

ここで真山は、「画面越しでもいつも支えてくれて、私たちと一緒に歩んでくれてるみんなには本当には感謝しかない」と語り、「私たちはこの後もこの孤独だけと孤独なじゃないハコでパフォーマンスを頑張るしかないね」と続けた。その後、メンバーはメインステージを降りながら「シングルTONEでお願い」で心地よいサマーブリーズを吹かせ、客席フロアに設置されたサイドステージへと移動。初披露となるiriによるオルタナティヴR&B「I’ll be here」では1番は柏木がソロで歌い、5人はダンスとコーラスに専念。吉澤嘉代子提供の「曇天」では画面が6分割になり、手を洗うメンバーもいれば、しなやかなコンテンポラリーダンスをするメンバーもおり、それぞれが自身の個性を発揮。椎名林檎のカバー「自由へ道連れ」では、常に朗らかでピュアネスを感じる小林を筆頭に、一人ずつカメラ目線でアピールしながら歌い継ぎ、柏木は星名と肩を組み、真山は小林を後ろから抱きしめ、再び柏木がカメラの下から登場して視聴者をキュートな笑顔で“道連れ”にし、最後は6人で肩を組んで歌唱。タイトル通り、自由な空気の中で楽しみながら歌っており、メンバーの仲の良さも感じられる楽曲となっていた。

CMJK作のインタールードを挟み、ライブはいよいよ最終ブロックへ。クラシカルな3拍子やジャズの4ビートが交錯するマカロニえんぴつのはっとりによる「愛のレンタル」は、グラフィカルな歌詞が画面上に浮かび上がる中、スタンドマイクで披露。華麗なダンスも繰り出し、アウトロの最後の一音まで目を離せない構成となっていた。そして、メンバーが10周年を機に全員で作詞に挑戦した「HISTORY」では、再び画面が6分割に。真山と星名はお互いの顔を見つめ、安本の“名前を呼んで”というフレーズの際には柏木が声を出さずに“あやかー”と呼び、6人で<出逢ってくれて/見つけてくれて ありがとう>と声を重ねた瞬間は、チャット上にも“ありがとう”という大量のコメントが投下された。続く、「星の数え方」は、聴くたびにレベルが上がっており、この日は、アイドルやダンス&ヴォーカルグループという枠を飛び越え、コーラスグループとしてのパフォーマンスとなっていた。柏木と真山の歌力と言ったらないし、メンバー全員がアイコンタクトをとりながらハーモニーを丁寧に重ねていく歌唱力の高さは、ぜひ多くの音楽好きに見てもらいたいと強く思う。……と、感動に浸っていたのは一瞬で、岡崎体育によるトランスナンバー「サドンデス」では、ビーナスの座を争ってダンスバトルに突入したかと思いきや、小林以外は、いつの間にかステージを降りて楽屋に移動。慌てて楽屋に向かった小林に対し、「あ、歌穂ちゃん、ここコロナ対策で5名までだから」とピシャリと告げられると、「私立恵比寿中学にもソーシャルディスタンスが必要だわ」というミニコントを展開し、2メートルの距離を保ちながらステージに帰還。何事もなかったかのように、柏木がこの日のステージを振り返り、「久々の学芸会。全力で踊って、歌っては楽しいね」と感想を述べ、「今、こういう状況で、これからどうなるかもわからないけど、画面を通して見てくださっている皆さんと繋がって、新たなものを0から1へとつなげていけたらなと思っております」と語り、その言葉通りの思いが詰まった曲「COLOR」へ。何度も笑顔でジャンプし、時にメンバーと肩を組み、フロアやサイドステージまで実際に歩みを進めながら、明るく元気に歌い、多彩なジャンルと表現に富んだ『playlist』の世界観を締めくくった。

最後に星名が「私たちはやっぱりね、みんなの声が直接聞きたい!」と本音を漏らした。「ライブって楽しいなと思ったし、画面越しでも一緒に時間を共有できて本当によかったなと思いました。本当に楽しかったです。今日はありがとうございました。皆さんと早くお会いできる日を楽しみにしていますので、ぜひ会いに来てください」と挨拶し、メンバーそれぞれが「めっちゃ楽しかった」「早く会いたい」と画面に向かって呼びかけながらステージを後にした。

また、この日の視聴チケットは8月24日(月)11:59まで購入可能で、8月18日(火)19:00〜8月24日(月)18:59までアーカイブ視聴ができる。そして、ステージで発表されたように、9月19日、20日の二日間にわたり、秩父ミューズパーク野外ステージにて、『エビ中 秋麗と轡虫と音楽のこだま 題して「ちゅうおん」2020』を開催することも決定した。

文 / 永堀アツオ

「私立恵比寿中学オンライン学芸会〜all of our playlist〜」
2020年8月16日

<セットリスト>

SE. ebiture (empty2020 ver.)
M1. ジャンプ
M2. 響
M3. 春の嵐
M4. SHAKE! SHAKE!
M5. 制服“報連相”ファンク
M6. 禁断のカルマ
M7. 藍色のMonday
M8. トレンディガール
M9. オメカシ・フィーバー
M10. ちがうの
M11. PANDORA
M12. イート・ザ・大目玉
M13. シングルTONEでお願い
M14. I’ll be here
M15. 曇天
M16. 自由へ道連れ
M17. 愛のレンタル
M18. HISTORY
M19. 星の数え方
M20. サドンデス
M21. COLOR


GYAO!「私立恵比寿中学オンライン学芸会〜all of our playlist〜」

【生配信日】8月16日 19:00~
※2020年8月18日(火)19:00〜2020年8月24日(月)18:59の期間で見逃し配信を実施いたします。
【視聴料金】3,500円(税込)
※生配信購入者のみ見逃し配信もご覧いただけます。
【販売期間】
〜2020年8月24日(月)11:59まで
販売ページ・視聴URLはこちら
https://yahoo.jp/cJklQH

ライブ情報

『エビ中 秋麗と轡虫と音楽のこだま 題して「ちゅうおん」2020』
【日時】2020年9月19日(土)、20日(日)
1部 open 12:00 / start 13:00
2部 open 16:00 / start 17:00
【会場】秩父ミューズパーク 野外ステージ

私立恵比寿中学

真山りか、安本彩花、星名美怜、柏木ひなた、小林歌穂、中山莉子。
現役中学生が1人もいない「永遠に中学生」6人組グループ。通称「エビ中」。
アリーナコンサート・主催フェス・ドラマ・舞台など縦横無尽に活躍。
結成10周年イヤーとなる2019年には2枚のオリジナルアルバムを発売、6th full Album『playlist』はビルボード週間アルバムチャートで1位を獲得。
今夏8月5日に、結成10周年のメモリアル野外コンサート『エビ中 夏のファミリー遠足 略してファミえん 令和元年 in 山中湖』(BD)、さらに、今年のFAMIEN’20は延期となってしまったが、エビ中が届けるノスタルジーも感じられる最新サマーソング「23回目のサマーナイト」を今年の同公演テーマソングとして、他3曲含む全4曲収録の配信限定EP「FAMIEN’20  e.p.」で8月21日(金)に発売する。

オフィシャルサイト
https://www.shiritsuebichu.jp/

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