LIVE SHUTTLE  vol. 405

Report

サカナクション 初となるライブストリーミング公演。光と映像を駆使し、新たなライブの在り方を提示した一夜をレポートする。

サカナクション 初となるライブストリーミング公演。光と映像を駆使し、新たなライブの在り方を提示した一夜をレポートする。

サカナクションの初のオンラインライブ『SAKANAQUARIUM 光 ONLINE』が8月15日、16日に行われた。山口一郎(Vo/G)がメディアやSNSで語っていた「ライブ映画」というコンセプトを具現化したのは、サカナクションのメンバーをはじめ、総合演出を担当した映像クリエイター・田中裕介氏、ビジュアルエフェクトを担当したRhizomatik Research、さらにステージ設営、照明、音響などのスペシャリストが揃った“チーム・サカナクション”。今回はドイツのKLANG(クラング):technologiesによる3Dサウンドシステムを日本で初めて採用し、映像、音響、演出、カメラワーク、パフォーマンスを含め、オンラインでしか実現できないステージが繰り広げられた。

最初の映像は、自動販売機が並ぶ場所に立つ山口一郎の後ろ姿。彼の手の中にあるスマホには、オンラインライブと同じ映像が映っている。缶コーヒーをゴミ箱に入れ、歩き始める山口をカメラが追い、そのままステージが設置された建物の中へ。
赤く照らされたスモークのなかで山口はアコギを持ち、<探してた答えはない/此処には多分ないな>という言葉を叙情的なメロディとともに紡ぎ出す。最初のナンバーは「グッドバイ」。少しずつオレンジ色に変化していくステージのなかで美しいコーラスワークが響き、早くも大きな感動が押し寄せる。
さらに江島啓一(Dr)のビート、山口が繰り出す電子音からはじまった「マッチとピーナッツ」では、オイルアートを使った演出、マッチを擦り、ピーナッツを手にする女性の映像が挿入され、まさに映画のような雰囲気に。楽曲の世界観、物語性をビジュアル的に表現する、オンラインならではの見せ方だ。

その後も、光と映像を駆使したステージが続く。

東京の街並みを映し出すモノクロの映像と<ここは東京/空を食うようにびっしりビルが湧く街>というラインを重ねた「ユリイカ」の後半では、きらびやかな白いライティングによって高揚感を演出。サカナクションの音楽的な軸である“バンド×エレクトロ”を体現した楽曲「ネイティブダンサー」では、東京の夜景とピンクのレーザーが絡み合い、架空のクラブを出現させる。
さらに岩寺基晴(G)のノイズギターが響いた「ワンダーランド」では映像にも激しいノイズが走り、フォーキーかつサイケデリックな「流線」ではセピアに滲む照明によって楽曲の雰囲気を際立たせる。「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」というタイトル通り、光の使い方が抜群に上手く、刺激的だ。

サカナクションはデビュー当初から、映像、音響、演出を含め、あらゆる角度からライブの在り方を更新し続けてきた。レーザーライトの導入、オイルアートや映像を使った演出、そして、6.1chサラウンドシステムによるアリーナ公演。最新のテクノロジーと既存のフォーマットに縛られないアイデアによる化学反応は、サカナクションのライブを常に進化させ、オーディエンスを驚愕、興奮させてきた。そのなかで培われてきたメソッドと技術は言うまでもなく、今回のオンラインライブにも存分に活かされている。オンラインライブの特性を徹底的に研究し、これまでのリアル・ライブのなかで得た方法論を活用しながら、新しいエンターテインメントに結びつける。「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」は、その最初の成果と言えるだろう。

「『SAKANAQUARIUM 光 ONLINE』、みなさん、楽しんでますでしょうか? 家族で見ている方、友達と見ている方、恋人と見ている方、一人で見ている方。いろんな方がいらっしゃると思いますが、今日は一緒に踊りましょう。夏フェスもなくなっちゃったし、今日くらいね、いろいろ忘れて、一緒に楽しみましょう。踊り倒して、一緒に夜を乗りこなしましょう!」という山口一郎のMCの後は、さらにエンターテインメント性を意識したステージへ。

ハンドマイクで歌い始めた山口は、ステージの隣にある“スナックひかり”(昭和っぽさ満載のカラオケスナックのセット)に乱入し、バブリーな雰囲気のお客さんと一緒に「陽炎」を歌い上げる。
さらに舞妓ダンサー二人とともにパフォーマンスされた「夜の踊り子」では緑のレーザーライトが飛び交い、パーカッシブなリズムが強調された「アイデンティティ」ではゴールドのライトが画面全体を包み込む。「多分、風。」は山口が着たコートが風で揺れる演出が施され、「ルーキー」では岩寺、草刈愛美(Ba)がステージ前方でドラムを叩きまくり、さらなる高揚感を演出。定番のステージングと新たな演出のバランスが素晴らしい。
そして、すべての中心にあるのはサカナクションの演奏だ。岩寺、草刈、岡崎英美(Key)江島のプレイはさらに研ぎ澄まされ、生々しいバンド感と先鋭的なエレクトロの融合も大きく進化。山口のボーカルも絶好調で、楽曲のポテンシャルをしっかりと引き出していた。没入感のある映像の効果もあり、これほどまでにサカナクションの曲の良さを堪能できたのは、もしかしたら初めてかもしれない。

メンバー5人が横一列に並び、ラップトップを演奏する恒例のスタイルで披露された「ミュージック」、そして、10名のチアダンサーが参加した「新宝島」でライブの興奮は頂点へ達した。

「まだまだライブが普通に行える状況ではないんですが、こうやって楽しいことをこれからもたくさんやっていきたいと思います。やっぱりワクワクすることがないと、おもしろくないですよね。チャレンジしてチャレンジして、がんばります」
「音楽で遊ぶこと、ライブがないとどんどん忘れていっちゃうんですけど、チーム・サカナクション一丸となって、これからもチャレンジしていきたいと思います」

そんな山口の言葉とともに奏でられたのは、「忘れられないの」。ネオソウル直系のバンド・グルーヴ、<つまらない日々も/長い夜も/いつかは/思い出になるはずさ>というフレーズが響き、心地よく、切ない余韻につながる。最後はスタッフクレジットを流しながら「さよならはエモーション」を演奏し、初のオンラインライブはエンディングを迎えた。

先鋭性と大衆性を兼ね備えた音楽の世界、そして、最新のテクノロジーと際立った発想を融合させた映像によって、新たなライブの在り方を提示した「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」。

アーカイブ配信は 8月23日(日)23:59まで行われているので、この画期的なオンラインライブをぜひ体験してほしい。

文 / 森朋之 
撮影 / 横山マサト(『SAKANAQUARIUM 光 ONLINE』のオフィシャル写真より)

『SAKANAQUARIUM 光 ONLINE』
2020年8月16日

<セットリスト>

1. グッドバイ
2.マッチとピーナッツ
3.「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」
4.ユリイカ
5.ネイティブダンサー
6.ワンダーランド
7.流線
8.茶柱
9.ナイロンの糸
10.ボイル
11.陽炎
12.モス
13.夜の踊り子
14.アイデンティティ
15.多分、風。
16.ルーキー
17.ミュージック
18.新宝島
19.忘れられないの
20.さよならはエモーション


<チケット概要>
サカナクション『SAKANAQUARIUM 光』
アーカイブ配信 2020.08.16(日)22:00 ~ 08.23(日)23:59
視聴券 4,500円(税込)

配信メディア
・Streaming+
https://eplus.jp/sf/web/live/sakanaction-st
・ローチケ LIVE STREAMING
https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=536699
・PIA LIVE STREAM
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2063463
・LINE LIVE-VIEWING
https://viewing.live.line.me/live/25

sakanaction(サカナクション)

2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビュー。
日本の文学性を巧みに内包させる歌詞やフォーキーなメロディ、ロックバンドフォーマットからクラブミュージックアプローチまでこなす変容性。様々な表現方法を持つ5人組のバンド。全国ツアーは常にチケットソールドアウト、出演するほとんどの大型野外フェスではヘッドライナーで登場するなど、現在の音楽シーンを代表するロックバンドである。
2015年、クリエイター・アーティストと共に音楽に関わる音楽以外の新しいカタチを提案するプロジェクト「NF」を発足。また映画『バクマン。』音楽で第39回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。音楽的な評価も受けながら「ミュージシャンの在り方」そのものを先進的にとらえて表現し続けるその姿勢は、新世代のイノベーターとして急速に支持を獲得している。

オフィシャルサイト
https://sakanaction.jp

vol.404
vol.405
vol.406