発掘!インディーゲーム総研  vol. 15

Review

えげつない難度に立ち向かう『トビー:ひみつの鉱山』無力な少年の勇気と感動

えげつない難度に立ち向かう『トビー:ひみつの鉱山』無力な少年の勇気と感動

『Toby : The Secret Mine (トビー:ひみつの鉱山)』は、さらわれた仲間たちを助けるために冒険する少年トビーの物語。武器も道具も持たないトビーが、体が大きく武器を持って罠を張り巡らせている相手に立ち向かっていく姿には“勇気”という言葉が思い浮かぶ。美しい色彩の背景に影絵のようなキャラクターとフィールドが浮かび上がる美術も圧巻。知恵を使って段差を登り、罠を克服し、パズルのような鍵を解除して進んでいく本作の魅力をお届け!

文 / 大部美智子


無力な少年の冒険

ある日、26人の仲間がさらわれてしまった。小さな村の平穏な生活は突然壊され、犯人を追い、仲間を探すトビーの冒険が始まる。それは複雑な地形や罠に直面する冒険だった。基本的に罠にかかると即死で、一撃必殺のものばかりなところに敵の本気度が伺える。そこをプレイヤーが操るトビーがトライ&エラーで進んでいくのだ。初見で見抜けない罠は身をもって学ぶスタイルなのだが、足場が崩れたり、雪崩が起こったりするときはコントローラーが振動して直感的に危険を知らせてくれる。それでも死ぬ。トビーは何の力も持たない、ただの少年なのだ。

Toby : The Secret Mine WHAT's IN? tokyoレビュー

▲トビーの倍以上大きな体を持つ敵を追う

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▲対応するボタンでジャンプ、ギミック操作、移動したり物を押したりする以外は何もできないトビー

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▲道中で小さな檻に囚われた仲間を助けていく。仲間にタッチすれば解放できる

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▲足元の杭で囲んである部分は、罠が仕掛けられていた。踏むと串刺しにされる

死んでしまったあとは死ぬ直前まで戻るが、場合によってはそのタイミングよりもう少し戻り、苦労して抜けた罠にもう一度挑まなくてはならなくなるので緊張感は途切れない。途切れさせてはいけない。
進むごとに罠の難度はだんだんと複雑さを増していく。高いアクションスキルが求められ、リアルで暴れ出したいほどむずかしい罠もある。敵としては追っ手と拠点への侵入者を遮りたいのだから、難度の高さも納得するしかない。敵の拠点に近づくほど罠の殺意が高まっていく。ちなみに、タイトル画面に戻るとこれまでの死亡数がカウントされている。

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▲どくろマークの上の数字は死亡回数を表している。クリアした時点で231回の死亡。苦笑するしかない。しかしこの数は諦めずに挑んだ勇気の数でもあるので、誇ってもいいと思う。仲間があとひとり見つからないので、死亡回数はまだまだ増える

罠をかいくぐった先で暗号めいたパズルが行く手を阻むこともしばしば。アクションを要求される罠と頭を使うパズル、それぞれの壁に行く手を阻まれてしまうのだ。パズルは道中にヒントが残されているものもあれば、その場の閃きで解かなければならないものもある。

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▲6種類の謎の模様が描かれているパネル。そういえば道中でおなじ模様を見たような……

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▲25枚の板で構成されたパネル。それぞれを回転させて、繋ぎ目が不自然なところをなくすのだ

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▲画面左から尖った杭が付いた壁が迫ってくる! オレンジ色のツマミを右にスライドすれば解錠できるので、目盛りを回して上下の歯が消える状態を探る

過酷な環境や罠に対してあまりにも無力なトビー。それでもあきらめずにトライし続ければ仲間を助けることができる。同時に、プレイヤーとしてのスキルが上がっていることを実感する。しかしながら、1周目で助けられていなかった仲間をクリア後に探しに行ったとき、また罠にかかって何度も死んだ。現在の死亡カウントは300回を超えている。油断大敵。
トビーが冒険する道のりはとても長い。最初は森をいくつも抜け、そこから坑道や砂地、雪山など……さまざまな土地を踏破して仲間を探していくなかで、影絵のようなキャラクターと地形を浮かび上がらせる自然の美しさには目を奪われてしまうものがある。

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▲初めは緑色を基調とした森だったが……

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▲黄色の森、青色の森へと移り変わっていく

同じ“森”であっても、背景色が変わることによって「トビーはどれほど長い距離を歩いたんだろう」と想像させられた。光の加減で屋内と屋外の表現はもちろん、木々の合間を抜けて進んでいく様子も表現されていて、シンプルなのに情報量が多い印象を受ける。

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▲薄暗い洞窟

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▲雪に埋め尽くされた世界

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▲敵の本拠地も間近。背景の奥行から、どれだけ大規模な集団なのかが想像させられる

この美しい世界に落ち着いた音楽と環境音が加わる。鳥の声や雨の音、虫の羽音、激しい雨音などが背景に加わると一瞬一瞬がアートのように美しい。罠を抜けたあとやひと息入れたいとき、そっと耳を傾けて観察してほしい。

えげつない罠&自然生物ベスト3

ここからは、手に持ったNintendo Switch™を投げつけたい衝動に駆られたほど個人的にむずかしかった罠ベスト(ワースト?)3発表。現在、Nintendo Switch™は品薄で手に入れにくいので、かろうじて残った理性が衝動を押しとどめたけれど、これを初見で乗り越えられた人はすごい。自慢していい。

どのタイミングで飛び出してくるかわからなかった矢。岩で防げたと思っても防げていなかったり、第二波が来たり。法則がわからなくて何度も何度も矢の的になった。敵の考えというか作戦というか、そういうものに見事にハマってただただ悔しい。なんとか法則を見出してクリアできたけど、こちらの隙を突いたり動きを読んだりした本当にいやらしい罠だった……。

砂地なので魚と形容していいかどうかわからなかったが、形状的には魚っぽいので魚とさせていただく。埋まっている魚に触れたり上をジャンプしたりすると感知して飛び出してくる。鋭利な頭が突き刺さってトビーは死んでしまうのだ……おそろしすぎる。魚が飛び出す方向が一定ではないのでめちゃくちゃ刺さる。全部開きにしてフライにしてやりたいほど大変だった。偶然通り抜けられたので、もう1回やれと言われてもできる気がしない。ちなみにこの魚はステージ中に何度も出てくる……。

この作品において「こんなの越えられるわけがない」という罠に直面すると、だいたいそこは正規のルートではない。正しい道は隠されていて、そちらを進むと迂回できるようになっている……のだが、ここにはなかった。「絶対正規ルートじゃないって!」と泣きながら飛び越えたけれど、動画を見ていただくとわかるようにブレードの速度と頻度が高過ぎてジャンプが間に合わず、何度もブレードに当たってしまう。影絵調の描写ゆえにステージもブレードも同じ黒色で、予備動作がわからないところも恐怖を煽ってくる。だんだんと目が慣れてきてなんとかクリアしたけれど、いまでも「絶対どこかにほかの道があるはずだ」と探っている。
どれもはらわたが煮えくり返るほど苦悩したけれど、クリアできたときはガッツポーズを決めた。人間は成長できるのだ。ギミックをクリアできそうでできない、できないと思わせておいてクリアできる……このあたりの設定の見事さには、「ゲーム作りってバランスを取るのがむずかしいのだな」とふと冷静に考えてしまった。
本作は文章が表示されないので状況から物語を推察するしかないが、特別な力も道具も武器も何もない無力な少年が、一瞬先は死という苦難の道を乗り越えて自分より大きな敵に挑む姿は涙を禁じ得ない。最後、トビーは大きな決断を迫られることになる。この大冒険のラストにあなたはどちらを選ぶのか……。どうか実際にプレイして決断を下してほしい。
トビーが何度も死んでいく姿は残酷で悲しいものだけれど、美しく勇気に満ちたこの作品は多くの人に見てもらいたい。そして、罠のえげつなさにいっしょに地団太を踏んでほしい……。

フォトギャラリー

■タイトル:Toby : The Secret Mine (トビー:ひみつの鉱山)
■発売元:Beep
■対応ハード:Nintendo Switch™、PlayStation®4
■ジャンル:アクションパズルアドベンチャーRPG
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2020年7月9日)
■価格:ダウンロード版 990円+税


『Toby : The Secret Mine (トビー:ひみつの鉱山)』オフィシャルサイト

Toby : The Secret Mine (トビー:ひみつの鉱山) is published by Beep. Copyright © 2020 Headup Games GmbH & Co. KG, all rights reserved. © Lukas Navratil

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