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冬組が大人の皮を脱し、見つけたカラー。MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~開幕

冬組が大人の皮を脱し、見つけたカラー。MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~開幕

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~が、8月16日(日)天王洲 銀河劇場にて初日を迎えた。
4月下旬に上演予定だったが、新型コロナウイルスの影響により一度は中止になったMANKAI STAGE『A3!』(通称“エーステ”)の冬組単独公演の満を辞しての開幕だ。ダウンロード数700万を突破したイケメン役者育成ゲーム『A3!(エースリー)』を原作に、今回は、月岡 紬(荒牧慶彦)、高遠 丞(北園 涼)、御影 密(植田圭輔)、有栖川 誉(田中涼星)、雪白 東(上田堪大)の「冬組」メンバーたちが、第二回、第三回の単独公演を通して変化していく姿が描かれる。
今回は、初日前日に行われたゲネプロの様子をお届けしたい。

取材・文・撮影 / 高城つかさ


一歩を踏み出すこと。冬組が冬組らしさを見つけるために

今、我々には芝居が必要なのだと痛感させられた作品だった。
ここ数ヶ月にわたり世に蔓延しているウイルスの影響により、あらゆる舞台が上演中止へと追い込まれた。こんなときだからこそ生まれた作品もあるけれど、それでも私たち観客にとって、劇場が、生で観られる芝居が、どれほど大切なものか、感じずにはいられない毎日を過ごしていた人も多いだろう。それは役者も同じだったと思う。「早く演劇を届けたい」「芝居をしたい」。今回の公演は、そんなもどかしさを抱えていたであろう役者陣のパワーや込められた想いが作品に重なって見えた。

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~ WHAT's IN? tokyoレポート

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~第一幕は、有栖川 誉(田中涼星)が祖母から譲り受けた懐中時計をなくすシーンから大きく展開する。冬組第二回公演『主人はミステリにご執心』の主演が決まり、順調に本読みが行われると思いきや、なんだか浮かない表情の誉。誉は、演じる鷺島の心情が理解できないと言う。それには、彼のある思い出が影響していた。一方で、準主演の御影 密(植田圭輔)も稽古に集中できていないようで……。

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第一幕では、密の成長を植田圭輔が見事に演じきった。記憶をなくした密は、感情がわからないと嘆きながらも“想像”することで、誉に歩み寄ろうとする。小さな変化かもしれないが、その小さな一歩で、密は大きく変わる。繊細な心の動きを、目の動きや姿勢を含めて演じていた植田の姿が印象的だった。

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そんな植田が開幕前に行われたインタビューで期待を寄せていると語っていた第二回公演。その主演を務める誉は、明るく振る舞いながらも、心のどこかでぽっかり空いた穴を抱えている。それが、密をはじめとした冬組メンバーたちの背中押しにより埋められ、心境が変わっていく様を、田中涼星もまた微細に演じて見せた。胸に広がっていた寂しさと向き合うことで、誉も役者として一歩前に進めたのではないかと思う。

正確に理解できないとしても、相手の立場になって考えることはできる。それは、芝居も同じだ。演じる役(鷺島)の心情を理解しようとする誉と、誉の気持ちを考えようとする密。相手の気持ちを知ろうと動き、それぞれが壁を乗り越え、公演を成功へと導くことはできるだろうか?

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~ WHAT's IN? tokyoレポート

第二幕では、第二回公演を経てより絆の深まった5人が、芝居はもちろん、“大人”という皮を脱して、人として成長していく過程が丁寧に描かれていく。

雪白 東(上田堪大)が自らの生い立ちを振り返るシーンから始まる、第二幕。穏やかで、冬組の中でももっとも“大人”に見える東だが、冬組第三回公演『真夜中の住人』で主演の吸血鬼を演じるにあたり、孤独を恐れていた自分と向き合うこととなる。そんなつらい過去を抱えた東を見守るのが、準主演を務める高遠 丞(北園 涼)だった──。

東が人生を語るシーンでは、追体験しているような気持ちになった。もし、冬組のみんながいなければ、そのまま闇に堕ちていってしまったかもしれないと思うほどに。
丞をはじめ、みな不器用ではあるけれど、それぞれが全力で東と向き合おうとする。伝えること、踏み込むことの怖さを感じながらも、向き合うことをやめない。東を含めた冬組が一歩を踏み出す大切な時間になっただけでなく、GOD座のトップとして活躍していた丞が、この冬組で芝居をする意味を、言葉にせずとも見つけた公演だったようにも思う。

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上田は今回、背中で見せた。静かに構えているようでいて、実は不安を抱えている東のアンバランスな内面が、どんどんさらけ出されていく。決して泣き喚いたり、大声で怒ったりするわけではないけれど、少しずつ囚われていたことから解放され、変化していく過程が、背中から伝わった。

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そんな上田を支えたのは、丞を演じる北園だ。開幕前のインタビューで「主演を大きく見せるために枝や葉になったり、肥料になったりすることが大事」と話していたが、まさにその言葉を体現していたように思う。丞は準主演として東を支える大きな役割を担うが、北園自身もまた、そっと上田を支えている印象を受けた。強く背中を押すわけでも、引っ張るのでもない。ただ隣りに寄り添い、ともに歩んでいく。北園の、たくましく、芯のある芝居に胸を打たれた。

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同時に、春組、夏組、秋組、それぞれの公演を見届けてきた月岡 紬(荒牧慶彦)が、秋組の伏見 臣(稲垣成弥)が撮影した写真を見て、冬組の距離感について疑問を抱き始める。“大人”だと言われているが、実際はどうなのか、このままで良いのか、と思い悩む。春組は“家族”、夏組は“友達”、秋組は“仲間”。では、冬組は?……冬組らしさを模索し始める紬は、三好一成(赤澤)のひと言に背中を押される。シトロン(古谷大和)や皆木 綴(前川優希)らが見守るなか、冬組は冬組らしさを見つけられるのか──。

思っていることを、ありのまま、そのままの温度で伝えられたら。誰もが考えたことのひとつだろう。とりわけ、言葉は難しい。言い方ひとつで糸がもつれたり、距離が開いてしまったりする。何度も傷つき、傷つけた結果、私たちは歳を重ねるうちに、踏み込まないように、踏み込まれないように、心地よい距離感を測るようになってしまった。そうすることが自分を守るためにも必要なのだと言い聞かせながら。

一歩を踏み出すこと。“大人”な冬組が抱えている課題だ。常識を守ること、輪を乱さないこと……それが大人になるための条件なのだと思っていた。踏み込みもしなければ、悲しむこともないその距離感は心地よいのかもしれないが、みんなで新たな一歩を進むには邪魔なもの。傷つくことが怖いなんて、知っている。できれば傷つきたくないし、傷つけたくない。それでも、このままでは何も変わらないと、彼らは彼らなりに互いを知ろうとし、伝えようとする。ひとりで抱えていたこと、あのとき言えなかったこと……。さらけ出し、歩み寄った結果、5人の距離は縮み、冬組は無事に次の季節へとバトンを渡す。

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~ WHAT's IN? tokyoレポート

今回の公演では、春組から綴(前川)、シトロン(古谷)、夏組から一成(赤澤)、秋組から臣(稲垣)、そして支配人・松川伊助(田口 涼)も登場。シトロンと一成は「ソーシャルディスタンス!」と、今に通ずるネタを披露しながら、観客との距離を詰めていく。悩む冬組にかける言葉や、些細な気遣いが、彼らも絆を深めるために必要な仲間であることを感じさせた。

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~ WHAT's IN? tokyoレポート

特筆すべきは、冬組旗揚げ公演で主演を経て、より周囲に目を配れるようになった紬(荒牧)が自ら動き出す姿だろう。劇中ではどちらも助演としてカンパニーを支えた紬。芝居を楽しんでいる様子がまっすぐ伝わってきた。紬が観客に投げかける言葉には、胸が熱くなった。舞台の上で伸び伸びと呼吸をしている彼らを見て、少し張り詰めていた心が緩み、ゆったりと呼吸できたような気がする。

演劇は、伝えること・受け取ることで成り立つ。きっと、ふたつ揃わなければ成立しない。役者同士はもちろん、役者と観客もそうだろう。板の上で呼吸をする。芝居を届ける。正面から受け取る。拍手で返す。役者と観客、コール&レスポンスもなければ、直接言葉を交わすことはないけれど、そこには確実に、しっかりとしたコミュニケーションがあり、会場全体の絆を強く感じられた。演劇の灯火は、消えない。どうか、無事に千秋楽まで彼らがMANKAIなステージを届けられますように。そう願わずにはいられない。

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~は、天王洲 銀河劇場にて8月22日(土)まで上演。千秋楽は全国の映画館にてライブビューイングが行われるほか、全公演ライブ配信も決定している。

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~ WHAT's IN? tokyoレポート

初日を迎えた冬組キャストから届いたコメントはこちら。

●月岡 紬 役:荒牧慶彦
一度は中止になり、もう冬組単独公演はできないのかなと思っていたところに再度公演のチャンスが舞い込んできました。MANKAIカンパニーのバトンを冬組も受け取ることができて本当に嬉しいです。このバトンをさらに受け渡すべく、やれるべきことをやり、注意をしながら千秋楽にみんな笑顔で終われるよう全力を尽くしたいと思います。

●高遠 丞 役:北園 涼
稽古や当初予定していた本番初日から、長い時間が経ちました。その間にたまったものをようやく発散できるなという思いです。きっとそれはみんな同じだと思うので、そのたまったものたちを大事に上乗せし、かつ冷静に、1公演1公演大切に演じていきたいです。丞としては、冬組劇団員との距離感も変わってきましたし、AUTUMN & WINTER 2019公演では紬との関係性が主に描かれていましたが、今回は別のメンバーとのコミュニケーションなどが描かれています。丞の精神面が成長していく姿も観ていただきたいです。

●御影 密 役:植田圭輔
AUTUMN & WINTER 2019公演ではマシュマロジャンプしかできなかったのですが、本作では動き回るシーンも多く、密の運動神経の良さをようやくお見せできるかなと思います。密が誰かを想って動くシーンもあり、そういったすごく人間らしい部分もお見せしたいです。冬組の絆が格段に上がっていく物語ですので、そういったところにもご注目ください!

●有栖川 誉 役:田中涼星
本作では一幕の主演なのでその重圧もありますが、誉というキャラクターがとても素敵なので誉に乗っかって楽しめればと思っております。一幕劇中劇『主人はミステリにご執心』は、原作の冬組の中でも人気の公演ですし、劇中劇でまた違った世界観をお見せできるのがエーステの魅力だと思うのでしっかりやっていきたいです! ずっと待っていてくださったお客様が多いと思います。日常の嫌なことを吹き飛ばせるくらいの楽しさを届けられるように、僕らも楽しみながら頑張りたいです!

●雪白 東 役:上田堪大
冬組は緊急事態宣言期間中も毎日連絡を取り合っていて、普段の稽古や本番で積み重ねてきた仲の深まり以上のものが築けました。みんなで、とにかく演劇って素晴らしいんだ!という気持ちを届けられたら嬉しいです。こんな時こそ、楽しさや笑いなど、エーステの中には様々な感情がちりばめられているので、僕らはその1つ1つを皆さんに受け取っていただけるように演じるのみです。二幕の劇中劇『真夜中の住人』も、原作でも人気のストーリーなので、丁寧に、僕にしかできない東さんを届けたいと思います。

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~

2020年8月16日(日)~8月22日(土)天王洲 銀河劇場


<千秋楽ライブビューイング>
実施日時:2020年8月22日(土)18:00〜
詳細はこちら

<DMM.com 全公演ライブ配信>
配信公演&形式:
●2020年8月16日(日)~8月22日(土)各公演=ライブ配信のみ
●2020年8月22日(土)18:00公演(本公演+カーテンコール)=ライブ配信+見逃しパック(再ライブ配信+ディレイ配信)
販売期間:各ライブ配信終了まで
詳細はこちら


原作:イケメン役者育成ゲーム『A3!(エースリー)』
演出:松崎史也
脚本:亀田真二郎
音楽:Yu(vague)
振付:梅棒

出演:
【冬組】
月岡 紬 役:荒牧慶彦
高遠 丞 役:北園 涼
御影 密 役:植田圭輔
有栖川 誉 役:田中涼星
雪白 東 役:上田堪大

【春組】
皆木 綴 役:前川優希
シトロン 役:古谷大和
【夏組】
三好一成 役:赤澤 燈
【秋組】
伏見 臣 役:稲垣成弥

松川伊助:田口 涼

主催:MANKAI STAGE『A3!』製作委員会
(ネルケプランニング、ポニーキャニオン、リベル・エンタテインメント)

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@mankai_stage)

©Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved. ©MANKAI STAGE『A3!』製作委員会2020

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~ Blu-ray&DVD 発売

発売日:2021年2月3日(水)
価格:Blu-ray(2枚組) 9,800円(税別) DVD(2枚組) 8,800円(税別)
収録内容:
[Disc 1]2020年8月22日 東京公演千秋楽
[Disc 2]特典映像〈バックステージ、稽古場DIARY、目指せ 最強カンパニー! ウィンターチャレンジ!、冬組PV(Full Ver.)〉予定
発売元:ポニーキャニオン

「MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~」MUSIC Collection 発売

発売日:2020年9月23日(水)
価格:3,000円(税別)
収録楽曲:ボーカル楽曲12曲+BGM楽曲
発売元:ポニーキャニオン

MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~ 戯曲本発売

発売日:2020年11月19日(木)
価格:1,800円(税別)
仕様:並製・B6判
内容:上演台本、ライナーノーツ(音楽 Yu(vague)によるテーマ曲「エンジェルスノー」解説)、巻末付録(舞台写真・舞台図面・小道具資料)予定
※MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN 2020~と2冊組のコンプリートボックスセットも数量限定販売される。