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『2020年代シーンを担う新世代の“歌い手”』

『2020年代シーンを担う新世代の“歌い手”』

そらる、まふまふ、すとぷり、浦島坂田船など、“歌い手”出身のアーティストが大きな注目を集めて久しい。ボカロ曲、J-POP、邦ロックなどの楽曲をカバーし、動画投稿サイトに“歌ってみた”として投稿するところから始まった“歌い手”。その後、オリジナル曲を発表し、ライブ活動も活性化。インターネットとリアルを行き来しながら活動の幅を広げ続ける“歌い手”は、今や日本のエンターテインメントにおけるもっとも重要な存在の一つだと言っていい。
2020年現在も、数多くの才能が登場している“歌い手”シーン。ここでは特に注目すべき新世代のネクストブレイク候補を紹介したい。

文 / 森朋之


Lefty Hand Cream

Lefty Hand Creamは、ギミックや仕掛けに頼らず、純粋に歌声の魅力だけで大きな支持を得ている歌い手だ。

2014年に歌い手としてデビューした彼女は、2016年頃から活動を活性化。西野カナ「Best Friend」(約1680万再生)、SMAP「オレンジ」(約850万回再生)、レミオロメン「3月9日」などのカバーで一気に注目を集めた。ピュアで素朴な雰囲気を感じさせる声質、歌詞を大切に届けようとする意思を感じるボーカルスタイルによって幅広いリスナーを獲得した彼女は、2017年に発売した初のミニアルバム『Lefty Hand Covers』をリリース。ヴィレッジヴァンガード限定にもかかわらず、オリコン初登場8位を記録した。

素顔を明かさないまま活動を続け、YouTubeチャンネル登録者数は50万人を突破。動画総再生回数は3億回を超え、国内だけでなく海外からのアクセスも多いLefty Hand Creamは昨年、ドラマ『悪魔の弁護人・御子柴礼司〜贖罪の奏鳴曲(ソナタ)〜』主題歌「ポーカーフェイス」を歌唱。さらに今年1月に1stアルバム『1LDK』で待望のメジャーデビューを果たした。余計なエゴを削ぎ落し、しっかりと楽曲に寄り添う彼女の歌声はこれから、さらに多くのリスナーに訴求することになるはず。

Lefty Hand Cream【Official】 – YouTube

オフィシャルサイト
http://leftyhandcream.com

あっとくん

現在の歌い手シーンでもっとも“イケボ”ぶりを発揮し、女性リスナーの心を掴んでいるのが、あっとくん。ツイキャスなどで臨場感のあるASMR配信を行い、イケボぶりをアピールしてきた彼は、2017年頃から歌ってみた動画を投稿。「flos」(R Sound Design feat.初音ミク)、「シャルル」(バルーン)などボカロ系楽曲を中心にカバーし、ボーカリストとしての存在感を示した。

2019年8月には、“すとぷり”のリーダー・ななもり。のプロデュースによる1stシングル「CrazyCrash/ラマ」でメジャーデビュー。「ねえ、おいで」という語りではじまるジャズテイストのポップナンバー「CrazyCrash」、そして、グルーヴィーなギターロックチューン「ラマ」によってあっとくんは、“エロかわいい”と称される歌声を強く打ち出し、その魅力を広くアピールした。

さらに昨年12月には「マッドディペンデンス」を発表。エキゾチックな雰囲気のサウンド、スピード感のあるメロディが印象的なこの曲で彼は、初めての作詞とラップにも挑戦。シンガー/クリエイターの両面で進化を続けている。

あっとくんちゃんねる – YouTube

オフィシャルサイト
https://livestreamers.co.jp/creators/2149

缶缶

切れ味のいい高音、厚みのある中低域、そして、楽曲に込められた感情を増幅する表現力。2018年から活動をスタートさせた缶缶は、パワーとテクニックを兼ね備えた稀有な歌い手だ。

米津玄師「Lemon」、女王蜂「HALF」、かいりきベア「アイ情劣等性」など様々なジャンルの楽曲をカバーし、シンガーとしてのポテンシャルの高さを証明して続けている缶缶は、2019年7月に初のオリジナル楽曲「トリッパ—/TRIPPER」を発表。EDM、ファンク、ディスコなどの要素を融合させたサウンド、起伏に富んだドラマティックなメロディ、“トリップ”をテーマにした歌詞が一つになったアッパーチューンは、缶缶の歌唱力と表現力を際立たせ、歌い手としての評価をさらに上げた。

その後もファンキーなロックチューン「ビータ」、ダークな雰囲気のエレクトロチューン「オールフール」と個性的なオリジナル曲を公開。独創性とポップネスを共存させたアーティストとして、今後の飛躍が大いに期待されている。

KANKAN OFFICIAL CHANNEL

缶缶 (@KANKAN_sava) · Twitter

Aqu3ra

歌い手、ボカロPの両軸で活動しているのが、Aqu3ra。2018年6月にAvicii「Lonley Together」のカバーをアップした彼は、その後、ずっと真夜中でいいのに。の「脳裏上のクラッカー」、米津玄師の「Flamingo」、あいみょんの「今夜このまま」などを投稿し、歌い手としての幅を広げてきた。

クリエイターとしてのスタートは、昨年9月に発表した“あぷえら”名義の「チョコレートミルク」。エレクトロ、EDMの尖ったセンスと叙情的な旋律を結び付けたこの曲は、yama、メガテラ・ゼロなどの歌い手にカバーされ、ネットシーンのヒット曲となった。

その他、「ロンリーユニバース」(Aqu3ra feat.flower & 初音ミク)、「メーデー」(Aqu3ra feat.flower)、「Day&Night/Aqu3ra feat.初音ミク」といったボカロ楽曲も発表。ビートメイカー、トップライナー、シンガーとしてのセンスを兼ね備えたクリエイターと言えるだろう。

Aqu3ra – YouTube

@AQU3RA_music