Interview

『デジモンアドベンチャー:』再び日曜朝に届ける意味、オメガモン登場、OP演出…制作陣が語る“20年の重み”と新作への志

『デジモンアドベンチャー:』再び日曜朝に届ける意味、オメガモン登場、OP演出…制作陣が語る“20年の重み”と新作への志

未知のデジタル生命体=デジモンが棲む世界、デジタルワールド。ここに迷い込んだ少年・八神太一と、パートナーデジモン・アグモンとの出会いから始まる冒険譚──1999年放送の『デジモンアドベンチャー』から20年という節目を経て、新たに始動したTVアニメ『デジモンアドベンチャー:』。本作は、八神太一、アグモンを始めとした『デジモン』のキャラクターや世界観を継承しつつも、2020年夏の東京を舞台とした新たな物語としてリブートが果たされている。

かつての『デジモン』へのリスペクト、そして2020年のいま子供たちに発信する新たなTVアニメとしての矜持とは? 今回は、これまでの『デジモン』シリーズを熟知する作品プロデューサーの櫻田博之、そして若い世代の監督としてシリーズディレクターに抜擢された三塚雅人というふたりに話を聞いた。

取材 / 柳 雄大 文 / 実川瑞穂


「フジテレビの日曜朝9時枠に届けたい」という思い入れは強かった

まずは、『デジモンアドベンチャー:』の制作に至った経緯を教えてください。

櫻田博之 20年前から続いている『デジモンアドベンチャー』シリーズが、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』(2020年2月21日公開の劇場作品)で一段落を迎えました。そこで改めて、“かつての子供たち”ではなく、今の子供たちに向けた『デジモン』をしっかり作りたいと思ったのがきっかけです。

20周年を経て、『デジモンアドベンチャー』が過去のものになっていくのは寂しいなと思っていたのもありますが、今の子供たちにも、『デジモン』を知ってもらいたいという思いは前々からあって。そして知ってもらうのであれば、デジタルワールドをデジモンと一緒に冒険する少年少女の物語、『デジモンアドベンチャー』を、新しい子供たちにも楽しんでもらいたいというのが発端で制作に至りました。

『デジモンアドベンチャー:』としての企画はいつ頃から動き出したのでしょうか。

櫻田 いつ、とはっきり言うのは難しくて……。というのも、『デジモンアドベンチャー tri.』、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』など、新たな展開の作品を制作していたときも、「今の子供に届けるものを作りたい」という考えはずっとあったんです。ただ、当時のタイミングではなかなか難しかった。なので、ようやくお届けできたのが、今だったという形です。

かつて『デジモンアドベンチャー』が放送されていたのと同じ、フジテレビの日曜朝9時に放送されることになったのも、子供をターゲットとした作品ならではですよね。

櫻田 そうです。だからこそ、「またあの枠でやりたいよね」っていう意見や思い入れが、制作陣のなかにもありました。逆に言うと、それが叶わないために制作が成立しなかった部分もあります。放送枠や作品が成立するためには、様々なタイミングや要素が重なる必要があるんです。TVアニメはそういっためぐり合わせがないと、なかなか実現しません。

ちなみに本作で、タイトルの末尾に“:”の記号が付いているのがずっと気になっているんですが……。

櫻田 タイトルロゴを見ていただくとわかるのですが、『デジモンアドベンチャー:』の最後についているデジヴァイスのマークまでがひとつのロゴであり、タイトルになっていて。ただ、一般的なテキスト上ではこのマークは出せないので、“:”までがタイトルのように見えてしまうだけ。しいて言えば……“:”は『=(イコール)』のような役割でしょうか。今回の『デジモンアドベンチャー』を象徴するものがあのマークなので、“:”は両者をつなぐ役割になっています。

序盤から“オメガモン”登場も。大胆なシリーズ構成とバトルアクションに込めたこだわり

作品の監督となるシリーズディレクターに三塚雅人さんを起用した決め手はどのあたりでしょうか。

櫻田 三塚さんがアクションシーンに強いことと、アクションとドラマの両方がうまい人だからですね。もともと『デジモンクロスウォーズ』(2010年)や『ドラゴンボール超』(2015~2018年)でご一緒していましたし、『プリキュア』シリーズもやられている方ですから、間違いないだろうと。それと、年齢的にも若い三塚さんに、東映アニメーションのこれからを背負っていってもらいたいという思いも込めて、お願いしました。他のスタッフをまとめられている人という意味でも適任かなと。

三塚雅人 ありがとうございます(笑)。

それでは今度は三塚さんにお伺いします。本作では、第2話から“究極体デジモン”のオメガモンが登場するなど、序盤からまさに怒涛の展開でしたが、この展開にはどんな狙いがあったのでしょうか。

三塚 自分の中でオメガモンは、劇場版アニメ『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000年)以降、派生や上位が多数存在する今においてもデジモンの印象深い“象徴”のひとつです。登場とタイミング自体は実は自分の参加前から方針として決まっていたのですが、まず自分としては、しっかりと「大いなる存在」として描こうと心掛けました。結果、大きな困難を乗り越えたうえでの、ひとつの奇跡としてのオメガモンの登場、という形に至りました。

特別ゆえにオメガモンのアクション自体ががっつり描かれる機会は少なく、もちろん、『ぼくらのウォーゲーム!』や『デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』(2001)以降もちょいちょい出てはいましたけど、それでもやはり貴重な瞬間だと思ってます。なので、今回TVアニメとして新たに制作するのであれば、序盤のひとつのサプライズとして、「あのオメガモンがTVアニメでそれなりの尺を使ってアクションをする」かつ、「強い敵と戦い、強さを示し、世界の危機を救う」という描写で、オメガモンのすごさを表現したい。そんな理由もあって、オメガモンがかっこよく戦う姿を描くために、TVアニメにしては少々無理をして、作画枚数も多めに、序盤のバトルからちょっとした贅沢をさせてもらいました。

素人目にも、かなり驚きでした。オメガモンもそうですが、その前に登場したグレイモンのバトルシーンから、「劇場アニメ級では?」と感じるぐらいで。

三塚 やはり、『デジモンアドベンチャー』というタイトルを改めて制作するということは、そこに20年分の重みがあります。20年前から愛してくれる方もいれば、今回初めてご覧いただく方もいる。オメガモンやグレイモンが、初めて作品に触れた方にとっても、強く記憶に残るキャラクターになって欲しい、と気持ちを込めました。

印象に残るシーンにするために、具体的にはどんなこだわりを込められたのでしょうか。

三塚 序盤は、いかに成熟期デジモンであるところのグレイモンを魅力的に「主人公のデジモン」として描くかにこだわりました。20年前よりも発達した……であろう“見せ方”で、よりかっこよく描くというのは、1クール目の明確な課題です。当然ですが、デジモンたちはモンスターなので、自分がこれまでの作品でやってきた人間のアクション表現のやり方がストレートには通用しない。なので、デジモンたちの体格で、どうやってかっこいいアクションを見せるかは苦労しました。

例えば『ドラゴンボール』の孫悟空だったら「かめはめ波」や「元気玉」など、いろんな種類の必殺技があります。でもグレイモンの必殺技は「メガフレイム」ひとつ……それでもいかに臨機応変に見せるか、です。ときには尻尾で戦ったり、ときには角やツメで戦ったり。炎の威力も、抑えめ~全力全開まで、変化をつけています。しかもデジモンたちはいずれ究極体になってしまうので、長い目で見るとグレイモンの属するレベルである成熟期の活躍期間はあっという間……。だとしても、成熟期のプライドを見せてやるぞ、という意気込みがありました。

1話目からさっそく山場がやってくる構成には、どのような意図が?

櫻田 新しく『デジモン』を作るうえで強化した、新鮮味やアクションをまずは見てもらおう、というのが一番にありました。4話目以降はデジタルワールドでの冒険が始まるのですが、もし1話からその冒険で初めてしまうと、変化が伝わりにくいと思うんです。「いつも通りだね」という安心感は伝えられたかもしれませんが。

それから、今回は「現実世界の危機を背負いながらの冒険である」ということも描きたかったんです。それを分かりやすくするためにも、1~3話まではいきなりクライマックスのような構成にしました。子供にも驚いてほしかったですし、大人世代の方々にも「新しい」、「今度の『デジモン』はどうなっていくんだろう?」と興味を持っていただきたかったんです。なので、4話以降のデジタルワールドに入ってからも、仲間が一気にそろうのではなく、一人ずつ出会って合流していくかたちにしました。

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