Interview

劇場版「SHIROBAKO」公開を終えた今振り返る。主演・木村珠莉インタビュー「宮森あおいは役というよりも“同志”」

劇場版「SHIROBAKO」公開を終えた今振り返る。主演・木村珠莉インタビュー「宮森あおいは役というよりも“同志”」

アニメ制作に関わる人々の奮闘を描いた、オリジナルアニメ『SHIROBAKO』の放送から約6年。完全新作の劇場版「SHIROBAKO」が2020年2月に上映され、7月に現行版としての公開が終了した。TVアニメから4年後が舞台の本作だが、冒頭から描かれる武蔵野アニメーション(以下、ムサニ)の大きな変化や印象的なミュージカルシーン、そしてムサニスタッフが再集結し大仕事に挑む姿に、多くの人が心を揺さぶられたことだろう。

筆者にとって『SHIROBAKO』は大変思い入れのある作品で、TVシリーズにて声優としてチャンスがなかった“ずかちゃん”(坂木しずか)がルーシー役として抜擢された第23話には涙したし、ベテランアニメーター“杉江さん”(杉江 茂)の「才能って言うのは、何よりまずチャンスを掴む握力と、失敗から学べる冷静さだと思う」という言葉(第22話)は、今の仕事上でとても大切にしている言葉だ。

そして今回の劇場版でも、数々の逆境に立ち向かい、人々の心を繋げ、ひとつの作品を作り上げていく主人公・宮森あおいの立ち振る舞いは、非常に魅力的だった。宮森を演じた木村珠莉さんはTVアニメ『SHIROBAKO』でアニメ初主演を務め、戸惑いながらも見事に役を演じきったという。

どこか境遇の似た、キャラクターと声優。今回は劇場版「SHIROBAKO」が上映を終えた今、TVアニメに始まり6年以上の付き合いとなる『SHIROBAKO』への想いを木村さんに伺った。

取材・文 / 長戸 勲


【8月20日追記】2020年8月28日(金)より、劇場版「SHIROBAKO」をグレードアップさせたリマスター上映が決定! 詳しくはインタビュー後の作品情報をチェック。

ミュージカルシーンは『SHIROBAKO』のすべて

2020年2月に公開された劇場版「SHIROBAKO」ですが、公開後のまわりの反響はいかがでしたか?

木村珠莉 観てくださった方はもちろん、こういう状況でまだ観ていないけどすごく楽しみにしてくれている方の熱量もSNSなどを通して感じさせていただけました。みなさん改めてありがとうございます。身近なところでは、声優の友達がアニメ制作関連のお仕事をされている方と鑑賞してくれたらしく、その方が終わってから泣いていたというお話を聞いて、実際にお仕事されている方の心に届いているのがすごくうれしかったです。

ムサニの衰退を突きつけられる序盤の展開は衝撃的でした。木村さんが最初、台本で読んだときの感想はいかがでしたか?

木村 すごくショックでした(笑)。収録の結構前からムサニは落ちてるところからスタートする、というお話は監督に事前に聞いていて、這い上がるのがムサニだものなと思っていたのですが、想像していた落ち方と違っていて……。あんな悲壮感にあふれたさみしい場所になっていると思わないじゃないですか。TVシリーズをこれでもかと踏襲する演出にも、SHIROBAKOのファンとして、より悲しくてたまらないというか。

正直に言うと、初めて台本を読んだときはカレーのシーンまでずっと泣いていました(笑)。でも収録を終えてアニメが完成する前に改めて台本を読んだときに、すごく映画らしいなと感じたんですよね。TVシリーズのポップさとはちょっと違う、悲しいシーンにも素敵なシーンにも切なさがあって、それがすごく映画という媒体に似合うなと個人的には感じました。

ムサニの衰退は悲しかったですが、いっぽうで宮森さんをはじめとする、上山高校アニメーション同好会メンバーの成長には驚かされました。

木村 TVシリーズではみんな一人前を目指して頑張っていたんですけど、今回はそれぞれステップアップして、新しいステージである程度力もついて現状も把握しているなかでの、求められることにこたえることの難しさというのに直面しているのかなと感じました。とくに絵麻はたくさん修羅場を経験したのかなと思わされるセリフを言いますよね(笑)。

ただ、みんな行き詰まり方や悩み方が意外と変わっていなくて、根は変わっていないんだなと愛おしく思いました。これは成長を感じるというわけではないんですが、美沙の「私ショートスリーパーなんで!」というセリフが大好きなんです。美沙のがむしゃら感と、それ故にちょっとだけズレちゃう彼女らしさがあふれていて、すごく印象に残っています。

ムサニに再び集まったメンバーのうち、特に木村さんの印象に残っている人物は誰でしょうか?

木村 平岡と杉江さんが特に印象に残っています。平岡はTVシリーズの時とは全然違って、元同僚の背中をそっと押せる人になっていて、きっと彼の本当の部分ってこういうところなんだろうなと感じました。人間関係によって荒んだ心もまたその人間関係に救われるんだなと改めて思ったキャラクターです。

杉江さんは本当にどんどん心が若返っていく!と驚きました。先日読んだ本に、年をとっても伸びしろのようなものを感じたとき、昨日より若返るという感覚がある……というようなことが書いてあって、杉江さんもTVシリーズの12話をきっかけにそんな風に変わったのかなと感じました。わたしもそんな生き方がしたいと、あこがれも含めて印象に残っています。

劇場版では宮森さんのミュージカルシーンも印象的でしたが、収録はいかがでしたか?

木村 これはもうロロに尽きます。ロロはキーが上がるとキャラを維持できないので、歌の収録の現場で作曲の浜口史郎さんがハモリ部分を作ってくださって、その場で覚えてすぐ収録!という感じで、すごくむずかしかったんです(笑)。でも本当に3曲とも大好きで、とにかく覚えるのも歌うのも楽しかったですし、未だによく歌ってしまいます(笑)。手前味噌ではありますが、完成版を見たときちゃんと3人で歌っていて感動しました。

監督は劇場が決まったときからずっとミュージカルをやるとおっしゃっていたのですが、ムサニのみんなで制作中に歌うのかなぁと想像していたので、心象風景として挿入されて最初は驚きました。あのシーンは感想を見ていると賛否両論あったのですが、私は見たときにこれが『SHIROBAKO』のすべてなんじゃないかと思うほど、宮森さんの内面に渦巻く言語化できないアニメへのエネルギーが表現されていて、劇場版で一番泣けたシーンでした。自分の中にある説明のつかない仕事に対する愛情というか、積み重ねてきたものを重ねて観たのかもしれません。考えるな、感じろ!というシーンだと私は思いました。

そのほか、木村さん自身の思い入れがあるシーンはありますか?

木村 ミュージカルシーンもですし、それと同じで子どもたちとのアニメ教室のシーンもすごく好きですね。なめなめろうが動き出してあんな映像になるなんて…!これは収録の時にはできていない映像だったので、観てすごく感動しました。アニメーションの力を感じるシーンでした。

そして一番すきなシーンは丸川さんにSIVAのチケットを渡しにいくシーンです。収録の終盤でこのシーンを演じたとき、自分自身も宮森さんと一緒でムサニとそこに関わるみんなが大好きなんだなとかみしめられたセリフでした。それに対する丸川さんの言葉にも愛があって、胸がいっぱいになるシーンです。

宮森さんに恥ずかしくないように自分もがんばりたい

木村さんは『SHIROBAKO』という作品、宮森あおいという人物にどういう思いで向き合っていますか?

木村 第一話冒頭で、カーラジオから「あいむそーりー EXODUS」が流れカーチェイスするあのOPを台本で読んだその時から、『SHIROBAKO』はもう100%最高な作品になる!!とすごく興奮したのを覚えているんです。関わっているから、というのを超えた「好き」という気持ちを『SHIROBAKO』にもっていると思います。一言でいえば『SHIROBAKO』オタクなのかもしれません。

宮森さんは、道は違うけれどお互い新人のときから時間を重ねてきていて、演じている役というよりも「同志」という感じがします。『SHIROBAKO』ってキャラクターたちがこの世界のどこかで生きている感じがする作品で、彼女が働く社会人として頑張っている姿を、尊敬したり応援したりする気持ちが強いです。そんな宮森さんに恥ずかしくないように自分もがんばりたい、そんな風に思える大切なキャラクターです。

もし続編があるとしたら、どんなポジションの宮森さんを演じてみたいですか?

木村 いろんなタイプのプロデューサーさんがいるとは思うんですが、宮森さんが作品を立ち上げるのを見てみたいですね。オリジナルでも原作物でも、彼女がこの作品をアニメ化したい!と強く思うものってどんな作品なのかなと気になります。TVシリーズから劇場版で大きく変わったことって、宮森さんがただ巻き込まれるだけの主人公ではなく、自分の意志で選択するようになったところなのかなと思っていて、物語に動かされる人から、物語を動かす人になったと思ったんです。だから次は物語のきっかけを生み出す主人公としての宮森さんが見てみたいなと思っています。

作品を通して語られる「やってみないと何も始まらない」「何があっても前に進むしかない」という言葉は、働く方すべてに響くと思います。木村さんは自身の経験を通して、この言葉についてどうお考えでしょうか。

木村 TVシリーズをやっているとき、どうしてもうまくいかない現場があって、考えすぎて袋小路だったとき、先輩から「それでもいって、とにかくやる。駄目でも良くても、スタジオに行けば終わるのが我々の仕事」と言われ救われたことがあります。結果が出せないと次はないという、すごく重みある怖い言葉でもあるんですけど、とにかく悩んでも仕事にいってその場で全力を尽くそうと吹っ切ることができたアドバイスでした。未だに前日に胃が痛くなるくらい緊張するときもありますが、そんな時もこの言葉を胸にスタジオに頑張って向かっています。

劇場上映は終了しましたが「現行版」とのことですので、今後への期待もかねて映画をまだ見ていない方、もう一度見ようと考えている方へメッセージをお願いいたします。

木村 今回劇場版を観て、仕事もだけどそれだけじゃない、『SHIROBAKO』って人生が詰まった作品だなと私は感じました。観終わったとき前を向いてみようかなと思ってもらえる、そっと背中をおしてくれるような作品です。今を、明日をがんばるために。ぜひ劇場版を観て、ムサニの今を感じていただけたら嬉しいです。

最後に、木村さんにとってアニメ制作とは?

木村 本当に制作のみなさんには頭が上がらないです。わたしたちが役を演じられるのもみなさんが頑張って作品を形にしてくれているおかげだなと思います。そんな皆さんをとても尊敬しています。頑張りながらも頑張りすぎず、体調にだけは気を付けて、お互いお仕事に励んでいきましょう!

リリース情報

「SHIROBAKO」TVシリーズBlu-ray/DVD<スタンダードエディション> Vol.1&2好評発売中

劇場版「SHIROBAKO」

2020年8月28日(金)よりリマスター版(初回公開版から映像クオリティーをグレードアップ)の上映決定
本編上映後に、出演キャストによる特別映像(全2種)も上映

【上映劇場】
新宿バルト9 8月28日(金)~
梅田ブルク7 8月28日(金)~
109シネマズ名古屋 8月28日(金)~
T・ジョイ博多 8月28日(金)~
札幌シネマフロンティア 8月28日(金)~
川崎チネチッタ 8月28日(金)~
立川シネマシティ 9月25日(金)~
※上映期間等詳細は作品オフィシャルサイトにてご確認ください。

【映像特典上映期間】
・新宿バルト9、梅田ブルク7、109シネマズ名古屋、T・ジョイ博多、札幌シネマフロンティ
ア、川崎チネチッタ
8月28日(金)~9月3日(木) 劇場版SHIROBAKO特別映像 第1弾
9月4日(金)~ 劇場版SHIROBAKO特別映像 第2弾
・立川シネマシティ
9月25日(金)~10月1日(木) 劇場版SHIROBAKO特別映像 第1弾
10月2日(金)~ 劇場版SHIROBAKO特別映像 第2弾

【来場者特典】
「来場者特典セット」:初回公開時に配布した1~6週目特典を詰め合わせにいたしました。
・関口可奈味描き下ろしミニ色紙 全5種ランダム
・ぽんかん⑧描き下ろしミニ色紙 全6種ランダム
・空中強襲揚陸艦SIVA&武蔵野アニメーションロゴマグネットシート2枚入り
・劇場版SHIROBAKO複製原画 全5セットランダム(1セットにつき5枚入り)
・「空中強襲揚陸艦SIVA」お疲れ様本
・生コマフィルム(ランダム)
※お一人様、1回のご鑑賞につき1セットの配布となります。
※数量限定のため、配布期間中であっても無くなり次第終了となります。
※ランダム配布の特典に関しては、それぞれ1種類の封入となります。種類をお選びいただくことはできません。

【STORY】
いつか必ず何としてでもアニメーション作品を一緒に作ろうと、ひょうたん屋のドーナツで誓いを立てた上山高校アニメーション同好会の5人。卒業後それぞれがそれぞれの場所でアニメーション制作に携わっていく。宮森あおいは「えくそだすっ!」「第三飛行少女隊」の制作を経て、少しずつ夢へ近づきつつ、徐々に自分の本当にやりたいことを考え始めていた。

あれから、4年。日々の仕事に葛藤しながら過ごしていたあおいは朝礼後、渡辺に呼ばれ新企画の劇場用アニメーションを任されることになる。しかし、この企画には思わぬ落とし穴があった。今の会社の状況で劇場用アニメーションを進行できるのか? 不安がよぎるあおい…新たな仲間・宮井 楓やムサニメンバーと協力し、完成に向けて動き出す。果たして、劇場版の納品は間に合うのか――!?

【STAFF】
原作:武蔵野アニメーション
監督:水島 努
シリーズ構成:横手美智子
キャラクター原案:ぽんかん⑧
キャラクターデザイン・総作画監督:関口可奈味
美術監督:竹田悠介・垣堺司
色彩設計:井上佳津枝
3D監督:市川元成
撮影監督:梶原幸代
特殊効果:加藤千恵
編集:髙橋 歩
音楽:浜口史郎
音楽制作:イマジン
主題歌:fhána「星をあつめて」(ランティス)
プロデュース:インフィニット
アニメーション制作:P.A.WORKS

【CAST】
宮森あおい:木村珠莉
安原絵麻:佳村はるか
坂木しずか:千菅春香
藤堂美沙:髙野麻美
今井みどり:大和田仁美
宮井 楓:佐倉綾音
矢野エリカ:山岡ゆり
安藤つばき:葉山いくみ
佐藤沙羅:米澤 円
久乃木 愛:井澤詩織
高橋球児:田丸篤志
渡辺 隼:松風雅也
興津由佳:中原麻衣
高梨太郎:吉野裕行
平岡大輔:小林裕介
木下誠一:檜山修之
葛城剛太郎:こぶしのぶゆき
山田昌志:浜田賢二
円 宏則:斎藤寛仁
遠藤亮介:松本 忍
下柳雄一郎:間島淳司
佐倉良樹:高梨謙吾
堂本知恵美:伊藤 静
新川奈緒:日野まり
小笠原綸子:茅野愛衣
井口祐未:沼倉愛美
瀬川美里:山川琴美
杉江 茂:小柳 基
本田豊:西地修哉
舞茸しめじ:興津和幸
渥美裕治:濱野大輝
丸川正人:高木 渉
三崎芳雄:鈴村健一

©2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

劇場版「SHIROBAKO」オフィシャルサイト
http://shirobako-movie.com/
『SHIROBAKO』オフィシャルTwitter
@shirobako_anime