発掘!インディーゲーム総研  vol. 12

Review

謎だらけの異世界体験『Creaks』不安と恐怖のパズルが導く結末とは

謎だらけの異世界体験『Creaks』不安と恐怖のパズルが導く結末とは

少し怖くて、不思議で、違和感があるけれどその正体には気づけない、高熱が出ているときに見る夢のようにミステリアスでホラーなパズルアドベンチャーが登場。『Creaks(クリークス)』は、本を開くと飛び出す仕掛け絵本のような雰囲気の作品で、プレイヤーは丁寧に描き込まれた世界をパズルを解きながら進む。やがて難度の高いパズルが行く手を阻むようになるけれど、悩んで苦労すればするほど解けたときの快感も大きい。この作品のプレイに必要なのは根気とひらめきとタイミング。日常のすぐ横にひっそりと息づいていた不思議な世界で出会うものと、物語の終着点とは……。この世界に充満している謎こそがおもしろい要素なので、これからプレイする人の不安やドキドキを損なわないよう、最小限の情報でこの壮大な物語のおもしろさを最大限紹介していく。

文 / 大部美智子


異世界への扉は日常のすぐ隣に

プレイヤーキャラクターである主人公は、これと言って目立つ特徴のない青年。日課のひとつであると思われる読書をしているとき、部屋に異変が起きた。最初は「気のせいかも」と思っていた青年も次第に「何か変だな」と、奇妙な違和感を覚え始める……。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲突然電灯が点滅し、破裂。ロールカーテンはひとりでに下がり、謎の地響きとともに壁紙の下から現れた小さな扉が青年を誘うのだった

彩度の低さがこの世界のおどろおどろしさや、これから何が起こるかわからない不安と恐怖を駆り立てる。緻密に描き込まれた世界は湿度やホコリのニオイも感じそうなほど。作品全体を通してこの雰囲気で物語は進んでいく。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲壁の扉を抜けて道を進んでいると、またも大きな地響きが。ハシゴが倒れ、手に持っていた懐中電灯を落としてしまう。戻ることもできず、青年は下っていくことを選ぶのだった

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲降り立った先には奇妙な形の建造物が……。壁の奥には理解を超えた世界が広がっていた

ボタン操作の記号は出ても、それ以外の文字がまったく出てこない。さらにキャラクターのセリフや独白、状況説明といったものもないのだ。画面の薄暗さやミステリアスなBGM、明確な説明がないことによる不安も手伝ってどんどん心細くなっていく。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲操作はシンプルで感覚的に扱うことができる

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲老朽化している床は地響きで崩れ落ちることがある

道中では、靴だらけの部屋、凧が一面に飾られた部屋、瓶詰が置かれてハーブのような草が干されている部屋、人形やおもちゃがたくさんある部屋など、さまざまな特徴を持った部屋が続く。いったい“誰が”、“何が”暮らしているのだろう……それとも誰もいない? 誰もいないことも怖いけれど誰かがいても怖い。すべてが怖い。ついつい考え込んでしまう。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲人形の目が動いている……

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲そいつは突然現れた

人気のない建物を進んでいると、初めて生き物と遭遇した。しかし生き物と言ってもいいのか……犬のようであるけれど体は角ばっていてラグの上にジッと座っている(そもそも犬と形容していいものなのか、説明が一切出てこないので表記にも地味に悩む)。犬の目のまえにあるハシゴで下に進みたいけれど……。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲近づくと唸り声をあげて襲い掛かってきた! 犬はこの隙間を飛び越えられないみたいだが、目のまえにいる限り吠え続けるので進めない

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲犬に追いつかれたり触れたりすると食べられてしまう

右端のハシゴを使いたいのに左端に追い詰められてしまった……そう、ここから先へ進むためのパズルが始まるのだ。次章では本作のパズルや登場する生き物たちの特徴について紹介していく。

どこかかわいらしく、残酷でおそろしい生き物たち

犬をよく観察していると行動のパターンが見えてくる。少し近づいただけでは唸るだけだが、それを無視してもっと近づくと目が赤く光って襲い掛かってくる。犬の視界から青年が消えると、やがて諦めて元のラグに戻っていく……つまり2個上の画像のパズルの場合、あの位置に犬を引きつけたままハシゴを昇り、右端から犬のラグの近くに飛び降りてすかさずハシゴを降りるのだ!

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲知恵が回る人間の勝利! パズルを解くとシャランという気持ちのいい音が鳴る

このように、手順やタイミングを見計らいながらつぎつぎとパズルを解いて進んでいくのだ。この建物の生き物は犬のほかにクラゲのような生き物と鳥人間などがいる。クラゲは触れると襲って来るけれど、鳥人間は何かを探しているようだ。敵なのか、味方なのか……。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲ふよふよと空中を漂うクラゲ。このクラゲにも行動パターンがある

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲この建物のあちこちにたくさんの本を所有している鳥人間。どうやら一冊の本を探しているみたい?

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲道中で感じた地響きの正体は鈎爪の付いた大きな足だった。タイトルの『Creaks』とは“きしみ”という意味だけど、この地響きのことなのか? それともこの地響きの主に関係することなのだろうか……

犬とクラゲの特徴的な性質として、“光を避ける”というものがある。自然光ぐらいなら平気だが、照明の強い光の下には絶対に立ち入らない。犬に関しては光を怖がっている節さえある。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲犬に光を当てるとサイドチェストに変わった! もしかしてこれが本当の姿? サイドチェストの上に乗れば、途切れたハシゴにも手が届く

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲クラゲは地球儀になった。光を避ける性質は、最初にいた部屋の電球が破裂したことにも関係があるのか?

ちなみに犬とクラゲが鉢合わせになったらどういう行動をとるのか。クラゲは壁などの障害物があると進行方向を変えるので、移動する本棚などで犬のいるほうに誘導してやる。すると、さんざん食い散らかされた相手なのに、なんだか憎めない一面を見せてくれるのだ。説明をするのはもったいないので、これは必見。その性質もちゃんとパズルを解くヒントになっている。また、生き物たちの性質のほかにもパズルを解くギミックはたくさんあり、それぞれを適切な順番やタイミングで使う必要がある。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲青年の足元にあるスイッチは、踏んでいると2階右端の照明に灯りが点く。2階の左端にあるハンドルを回すと、中央上部にある照明が左右に移動する

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲スイッチがたくさんでもう、何が何やら……

物語が進むと、とある人物から特定の照明(緑色の飾りがついている)を遠隔で操作できるアイテムをもらえたり、青年と同じ動きをする人型の木などの不思議な生き物が登場したりと、ギミックもますます複雑で難しくなっていく。けれど、それを解くことによって脳がスーッと冴え渡ったりスカッとしたり、日常ではなかなか得られない快感を味わうことができる。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲クラゲに捕まると触手で攻撃され、死んでしまう

犬やクラゲに殺されると、襲われるまえのシーンまで立ち戻る。複雑な手順が必要なパズルだとどこまで進めたのか忘れてしまったり間違えてしまったりすることもあるので、ほどよいシーンまで戻ってくれるのは非常に助かる。
道中の壁に絵画が飾られていることがある。このあと登場するパズルのギミックのヒントとか、物語の行く末を示唆するようなものだと思っていたけれど、どうやら違うらしい。Aボタンで注視すると、音楽が流れるものだったり、日本の“だるまさんがころんだ”のような遊びやタイミングを見計らって防御と攻撃をするミニゲームだったり、描かれている犬の反応を見ながら楽器を演奏するものだったりとさまざまな仕掛けが仕込まれている。鳥人間は紐を引っ張ると音楽が鳴る絵画を気に入っていて、紐を引いては読書のBGMにしているという描写があった。ここに住んでいた人(?)、あるいはいま住んでいる鳥人間の趣味なのかもしれない。頭を酷使するパズルとパズルの合間でほっと息抜きができる貴重な時間だった。

Creaks WHAT's IN? tokyoレビュー

▲額縁の左右に付いた取っ手を操作して、鳥人間が持っている楽器を奏でる。合っていると犬の耳がピコッと立つミニゲーム。あとから知ったことだけど、建物の装飾や絵画、ミニゲームは鳥人間たちの歴史を表しているそうだ

どこまで説明したほうがよくて、どこまでは紹介しないほうがいいのか、非常に悩ましい作品だった……! これまでにプレイしたゲームで、記憶を失くして再プレイしたいゲームトップ10の上位に食い込むほど夢中になった。
パズルを進めていくと少しずつ明らかになる地響きの主の姿。それに対して対策を打ち出す者、逆に阻止しようとする者が登場する。先が読めない物語と難度が高くおもしろいパズルに熱中していると時間があっという間に過ぎていく。言葉による説明がないことによる不安やドキドキも含めて楽しい作品だったので、犬やクラゲ、そのほかの生き物にもたくさん殺されたけれど、また最初からプレイしたい。そして、この記事を読んでくださった皆さんにもプレイしていただき「なるほど、こういうことね」と謎を解明して思ってほしい。ぜひ。

フォトギャラリー

■タイトル:Creaks(クリークス)
■発売元:PLAYISM
■対応ハード:Nintendo Switch™、PlayStation®4
■ジャンル:パズルアドベンチャー
■対象年齢:全年齢
■発売日:発売中(2020年7月22日)
■価格:ダウンロード版 2,200円(税込)


『Creaks』オフィシャルサイト

2020 © Amanita Design, Licensed to and published by Active Gaming Media Inc.

vol.11
vol.12
vol.13