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物語もバトルも映像もすべてが一流!『Ghost of Tsushima』とてつもない完成度の極致

物語もバトルも映像もすべてが一流!『Ghost of Tsushima』とてつもない完成度の極致

日本が見舞われた元寇が題材のPlayStation®4用ソフトウェア『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』がついに登場。純和風のオープンワールドアクションだが、開発を担当したのは『INFAMOUS』シリーズなどを手がけてきたアメリカのゲーム開発会社サッカーパンチ・プロダクションズだ。ティザームービーなどから期待度が高い作品は、はたして前評判どおりに楽しめる作品として仕上がっているのだろうか。プレイを通じて判明した本作の魅力を伝えていく。

文 / 板東篤


史上最高の映像で描かれる13世紀の日本

まずは、本作の導入と世界設定から紹介していこう。時は13世紀後半の日本、蒙古(モンゴル)軍が日本侵攻を企てた元寇――正確には1回目となる文永の役から物語は幕を開ける。対馬を統治する地頭・志村は武士団を率いて、侵攻してきた蒙古軍を迎え撃つ。高い戦闘力と高火力の火薬兵器を有し、軍事的技術水準が世界最先端の蒙古軍に撃ち倒され、対馬は全土を占領・略奪されてしまう。志村は殺されこそしなかったものの、蒙古軍に捕虜として捕らわれてしまった。

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▲蒙古軍との戦いからゲームはスタート。しかし、あまりの戦力差に一瞬で劣勢になってしまう

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▲主人公である境井 仁の伯父で地頭の志村。仁は彼から剣術や武士としての矜持を学んできた

そんな状況のなか、かろうじて生き残った武士こそが本作の主人公、境井 仁(さかい じん)。境井家の当主にして志村の甥である仁は、蒙古軍から対馬を取り戻すことを目標とする。しかし、たったひとりでは無謀すぎる目標であることも確か。まずは志村の奪還を目指し、対馬の地を探索して新たな技や装備、協力者を増やして力を蓄えていくこととなる。

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▲主人公の境井 仁。境井家の当主である武士で、幼少の頃に父親を亡くしている。モデルは日系アメリカ人の俳優、ダイスケ・ツジ氏

筆者がゲームを始めてまず驚いたのが、その映像の美しさだ。境井 仁をはじめとするキャラクターのモデリングはもちろん、舞台となる対馬の自然豊かな景観がすばらしい。特にススキや竹の新芽といった低木、舞い散る木の葉のクオリティが高く、これまでのゲームから一段階高いレベルにあると感じた。正直、現世代機でここまで表現できるとは思わなかったほどで圧巻と言えた。映像の美しさがゲームの楽しさに直結するとは限らないが、本作では対馬という仮想世界への没入度を高めることに大きく役立っている。
物語の導入も素晴らしい。奪われた故郷を取り返すため、捕らわれた親族の救出に立ち上がるというのは王道でわかりやすく、プレイヤーとしても「絶対にやってやる!」という思いを強く抱きやすい。そのために装備や仲間を集めていくというのは、RPGでも慣れ親しんだ展開で戸惑うことがない。結果、主人公に強く感情移入できるワケだ。

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▲ススキが一面に生い茂り、幻想的な雰囲気を醸し出している対馬の景観。オブジェクトの多さ、作りの丁寧さがすごいのはもちろん、違和感を覚えない陰影のリアリティが映像表現を一段階引き上げている

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▲細かいポイントだがフォントやロゴもしっかり和風に作られており、世界設定への没入感に一役買っている。クエスト開始・終了時に表示される文言が毛筆体でカッコイイ!

ゲーム本編は、対馬の地を自由に行動できるオープンワールド系の作りになっている。特定のポイントに行くと、仁之道(メインストーリー)、浮世草(サイドクエスト)などが発生し物語が進行していく。

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▲地図は実際に訪れた場所が描かれていくスタイル。集落や建物、メインストーリーやクエストの場所はアイコンで表示される

探索は楽しいポイントのひとつ。村や集落ではなんとか生き延びた人々の姿を見かけることがあり、その人々との会話から、どこそこに蒙古兵がいた、森に怨霊が出て襲われる、伝説の弓がある……など、さまざまな噂話やゲームのヒントが得られる。なかにはその会話から浮世草や伝承クエストなどが発生することもあり、新たな装備の入手や仁を強化する取っかかりとなる。
こうした小さな物語が絡むもの以外にも、まだまだ探すべき要素はたくさんある。たとえば温泉に入ると体力の最大値を増やすことができ、稽古台では気力の最大値を上げることができる。メインストーリーやクエストの戦闘に勝てない場合はこうした探索を通じて仁を強化し、再チャレンジするという戦法もありだ。こうした探索要素はとても多く、次回で改めて紹介したい。

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▲各地にある稽古台では、竹を切るミニゲームを楽しめる。仁が構えてから竹を斬るまでに、表示されたボタンを正確に押せると成功。気力の最大値を上昇させられる

奥深い駆け引きを楽しめる剣戟アクション

探索やメインストーリーとは切っても切り離せない要素として、戦闘がある。仁は武士であり、刀を用いた戦いが基本となる。操作はシンプルで、防御、回避、速打(弱攻撃)、強打(強攻撃)が最初から使用できる基本的なアクションだ。特殊なアクションとしては、敵の攻撃がヒットする直前にタイミングよく防御して相手の体勢を崩す受け流し(いわゆるパリィ)、強打ボタン長押しによる特殊攻撃がある。また体力に加えて気力ゲージが存在し、気力を消費して体力の回復や特殊な技を繰り出すことが可能だ。気力ゲージは、敵を倒したり受け流しに成功することで回復していく。

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▲刀を中心とした、ダイナミックなバトルを楽しめるのが大きな魅力。武士になりきって剣戟を堪能できる

行えることはシンプルながら、敵の種別によって対処法が異なることでかなり熱いバトルが展開する。こちらの攻撃にそのまま当たってくれる敵兵は当然ながらまれで、大抵は防御で攻撃を防いでくる。盾を装備している敵もおり、こちらはより強固な防御で身を守っている。この敵の防御をどう崩すかというと、ズバリ強打をすればいい。相手は防御をするが、何度もくり返し攻撃を当てると防御を崩せて相手にスキが発生する。このチャンスに攻撃をたたき込む。

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▲防御している敵に何度も強打をたたき込むと、防御を崩して無防備な状態にできる

槍を装備した敵はリーチが長く、ガード不能の攻撃を繰り出してくる強敵。こちらが攻撃してもすぐに反撃してくるためダメージを受けやすい。一見強敵に思えるが、この槍兵など一部の敵は、攻撃の直前に赤く光る十字が出現するという特性がある。このとき左右に回避すると敵にスキが生じて、安全に攻撃をたたき込めるという仕組みになっている。

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▲槍兵など一部の敵は、赤い光で攻撃の予兆が表示される。このような攻撃には、防御ではなく回避することで相手にスキを作り出すことが可能

もちろん敵の種類はこれだけではない。こちらの攻撃が成功しても怯まずに反撃してくるスーパーアーマーを持つ敵、遠くから矢を撃ってくる弓兵、さらには蒙古兵が飼育している犬などバリエーション豊かな敵が待ち受けている。探索中は蒙古兵ばかりか、野生の熊や猪といった動物に襲われることもある。また敵地にひとりで乗り込むというシチュエーション上、一対多の戦闘となるケースがほとんど。そのため最適な行動は戦闘中にめまぐるしく切り替わり、それに素速く対応していくという、瞬時の判断が大きく問われるバトルを楽しめるのだ。盾兵のガードを崩そうと戦っていたら背後から攻撃してくる槍兵に気づき、すんでの所で攻撃を回避して槍兵に反撃をたたき込むなんて時代劇の殺陣よろしく、ダイナミックな剣戟を序盤からたっぷり楽しめる。
ちなみに闇討(いわゆるステルスキル)というアクションも用意されており、相手に気づかれずに背後や頭上を取ると一撃で倒すことができる。ただし闇討行為自体は音を発するため近くの敵に気づかれやすく、すべての敵を闇討で倒すのは相当に難度が高いだろう。クエストによっては、最後まで闇討で進行するものも存在している。

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▲大勢の敵を相手にする乱戦となりやすい。誰と戦いやすいか、誰に狙われているのかを瞬時に判断して最適な攻撃や防御行動を行う必要があリ、全般的にバトルの難度が高い

敵の攻撃力は高めに設定されており、1回のミスで体力が大きく削られてしまう。なるべく攻撃を受けないよう戦いたいが、何度か窮地に立たされてしまう。こんなときこそ受け流しを狙って気力を回復させるハイリスク・ハイリターンな戦法を狙っていけば、終始緊張感に溢れるバトルを楽しめる。さらに受け流しが成功して窮地から脱出できたときの安堵感と達成感は非常に大きい。結果、とても楽しいバトルに仕上がっているというワケだ。

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▲高台から弓矢で奇襲を仕掛けるなど、近接戦闘以外のバトルも。さまざまなバリエーションの戦いを楽しめるのも嬉しいポイント

主人公の強化でバトルはさらに深みを増す

仁が使える武器は、ゲームスタート時は刀のみ。探索やクエストなどをこなしてゲームを進行させることで、弓や闇討などの新たな兵術、“くない”や煙玉といった暗具が徐々に使えるようになってくる。いずれも戦闘のバリエーションが広がり、バトルがさらに楽しくなっていく要素といえる。こういった兵術の追加だけでなく、剣術は強化することが可能だ。メインストーリーやミッションをクリアすると“冥人(くろうど)の噂”ゲージが増えていき、一定量溜まるごとに技量ポイントを獲得できる。この技量を使って、さまざまなパワーアップが行える。

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▲暗具の“くない”。中距離の敵に当てると、相手を一定時間よろめき状態にさせることが可能

仁の強化はメニュー画面で行える。地図、兵具(装備)などがタブごとに分けられており、強化は“技”タブから行うことができる。技はさらに、武士、型、冥人の3カテゴリに分けられており、武士は守り、攻め、探索などの能力を強化可能。たとえば守りは、受け流しで気力に加えて体力も回復するようになったり、ガード不能だった矢や槍の攻撃を受け流せるようになる。攻めではダッシュ中の攻撃や体当たりといった新たな攻撃アクションが使用可能になる。
型の強化だが、まず型とは何かということから解説しよう。型は構えのようなもので、最初は敵の剣兵に有効な石の型のみ使用できる。技量を使えば突きの連続攻撃回数を増やせたり、剣兵に対するダメージを増やせたりする。

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▲技タブの武士カテゴリ。技量を使って攻めや守りなどの能力を習得することで、攻撃力の強化や新たなアクションを覚えられる

施設などを占領している蒙古軍の隊長を一定数撃破するごとに、新たな型を習得できる。型は順番に習得し、石の型の次は盾兵に有効な“水の型”、その次は槍兵に有効な“風の型”……といった具合。習得した型は戦闘中に瞬時に切り替えられ、バトルを有利に進める要素となっている。そのぶんプレイヤーの操作や判断材料が増加していくので、バトルはどんどん複雑かつ奥深いものへと進化していく。
冥人は、先ほど述べた兵術や暗具といったサブウェポン系のカテゴリ。これらの能力を強化することもできる。

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▲こちらは型のカテゴリ。蒙古軍の隊長を倒していくことで、新たな型を習得。型自体は、技量を使って強化することができる

最後に。プレイを進めてきた筆者だが、終始圧倒されっぱなしだった、というのが正直な感想だ。クオリティの高い映像で綴られる敵の襲来というショッキングな出来事、刀を主体とした緊張感と爽快さを味わえる剣戟アクションなど、どの要素を取っても一級品。完成度は非常に高く、2020年はもとより、近年を代表するゲーム作品であることは間違いない。
個人的に衝撃を受けたのは、序盤で闇討を習得するシーン。仁は武士として育てられてきたため、背後から敵を襲うことは卑怯であり、敵をまえにして背を向けてはならないと志村より教えられてきた。人を斬ることは誉れを胸に抱き、命を奪うときは相手を見据えて、と。そのため敵陣に正面から乗り込み、正々堂々と勝負を挑む戦いかたを好む。しかし、敵陣に捕らわれた捕虜を救出する場合はどうだろうか。正面から乗り込むのは不利であるうえに、最悪捕虜が殺されてしまう危険すらある。そこで闇夜に敵陣へ侵入して闇討で敵の数を減らし、捕虜を救出することになる。目標達成のためには、不本意ながら武士の教えに反する戦いかたも行う。ゲーム的にはステルスキルを習得するというだけのシーンなのだが、ここでは武士としての矜持と教えに反する行動を取らなければならない仁の葛藤が描かれていて感じ入った。ちなみに伯父以外にも百姓などが捕らわれているシーンに多々遭遇し、彼らの奪還が目標になっていることもある。この場合は捕虜が殺されたらゲームオーバーになってしまう。また志村の奪還に失敗して物語が分岐するような要素はなく、ストーリーは一本道で進行するようだ。

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▲メインストーリーを進めると、敵の背後から闇討(ステルスキル)が可能になる。よくあるゲームシステムだが、本作ではそれに伴う武士としての葛藤も描かれている

ストーリーに関しては、志村を助けるために各地にいる人々に助力を請うという形で進行していくのだが、これが一筋縄にはいかない。たとえば女武者として名高い安達家の政子という人物に協力してもらうため会いに行くと、一族が滅ぼされて生き残りは自分だけだと語る。蒙古軍による被害かと思えば、じつは対馬の人間に裏切られたとのこと。かねてから安達の領地を狙っていた人物が、元寇のゴタゴタに乗じて襲ってきたようだ。このように、単純に蒙古軍を倒したい人々が仁の元に集まってくるというだけではなく、対馬の地に住む人々のドラマも描かれていく。対馬を救う目的よりも個人の問題解決を優先させるような一癖も二癖もあるような人物ばかりが登場し、数波乱もありそうな先の展開が気になる感じだ。蒙古軍から対馬を取り戻せるのか、そして仁は武士らしからぬ戦いかたとどう折り合いをつけていくのだろうか。次回はこのようなストーリーの続きと探索要素などについて紹介していく予定だ。
第一回の原稿を執筆し終えたところで、本作のアップデート1.05が配信された。“戦闘負荷の軽減”という項目が追加され、通常では防御できない敵の攻撃が防げるようになったり、敵の連続攻撃が途切れるようになるなど、タイミング関連を中心に戦闘の負荷が軽減するような設定も可能になったようだ。多少は簡単になったのかと思いきや、新難度“万死”も追加された。こちらは敵、仁ともに一撃の威力が大きくなるほか、敵がさらに攻撃的になる、敵に気づかれやすくなる、受け流しや回避のタイミングがさらに厳しくなるなど、さらに手応えを感じられる調整となっている。まだクリアも見えていない筆者にとって体験するのは当分先となりそうだが、すでに本作を遊び尽くした人はこちらの新難度にチャレンジしてみるのもいいだろう。


■タイトル:Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)
■発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
■対応ハード:PlayStation®4
■ジャンル:オープンワールド時代劇アクションアドベンチャー
■対象年齢:18歳以上のみ
■発売日:発売中(2020年7月17日)
■価格:パッケージ版 6,900円+税、ダウンロード版 7,590円(税込)


『Ghost of Tsushima』オフィシャルサイト

©2020 Sony Interactive Entertainment LLC.