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私立恵比寿中学 一人ひとりの歌唱力の高さと6人の躍動が際立つ熱いステージ。結成10周年のメモリアル野外コンサート映像作品。

私立恵比寿中学 一人ひとりの歌唱力の高さと6人の躍動が際立つ熱いステージ。結成10周年のメモリアル野外コンサート映像作品。

先日、音楽バラエティ番組「THEカラオケ★バトル」に出演し、「アイドルの歌唱力をなめんなよ」と豪語するも惜しくも敗退し、涙を流した私立恵比寿中学の柏木ひなた。2019年で結成10周年。彼女を含むメンバー全員が歌とどれだけ真剣に向き合い、ライブという生のステージを通して歌唱力を高め、様々なジャンルの歌を全て自分たちらしく歌いこなす表現力を磨いてきたことは、彼女たちのライブ映像を見てもらえばすぐにわかるはずだ。

2019年8月17日に山中湖交流プラザ きらら シアターひびきにて行われた、令和初となる野外ワンマンコンサート『ファミえん』をMCを含めて完全収録したライブBlu-rayが2020年8月5日にリリースされた。同公演シリーズのパッケージ化としては、実に約2年半ぶりとなる。

今年は残念ながら延期となってしまったが、私立恵比寿中学の野外ワンマンコンサート「エビ中 夏のファミリー遠足 略してファミえん」は、2013年から夏の恒例イベントして毎年開催されてきた。通算7回目にして、“令和元年”というサブタイトルがついた昨年の「ファミえん令和元年」は、「FAMIEN令和ver.」にアレンジされた「ebiture」で幕を開けると、いきなりウォーターキャノンから大量の水が噴射された。「おお!」という観客の声が上がる中、背中に「冷し中学」と書かれたハッピを着たメンバーが登場し、グループとしてサマーソングの代名詞として愛されている「ラブリースマイリーベイビー」でライブをスタートさせた。明るいポップソングだが、メンバーは観客に笑顔で手を振り、花道を歩きながら歌っても歌唱がブレることは無い。安本彩花の「チェケラッチョ」から始まる「ほぼブラジル」では、中山莉子、安本、真山りか、小林歌穂と続くラップに被せるように入ってくる柏木のハイトーンに鳥肌が立った。オチサビを歌う小林と安本、ロングトーンを響かせた星名と真山も純粋に歌心だけで聴き手を感動させる表現力を持っている。ボカロ系の難解なメロディラインを軽々と乗りこなす技術とユーモアにあふれた歌詞とのギャップもすごい。続くラガヒップホップ「マブいラガタイフーン」では低音ヴォイスも効いており、ハイキックを放った真山の<負けたくなーい!>という叫びを合図にウォーターキャノンから一斉に水が噴射された前山田健一によるロックンロール「Go!Go!Here We Go!ロック・リー」では中山もパワフルな歌唱をみせた。

大量の水でエビ中も観客もずぶ濡れになった後の最初のMCでは、中山が「ようこそ! ファミえんの聖地へ」と呼びかけ、真山は「お盆明けにみなさんが仕事や学校を頑張れるように、今日はみんなでびしょ濡れになって、エビ中が歌だ、ダンスだ、顔だ、なんだかんだでたくさんの力を分けてあげられたら」とコメント。メンバーはハッピを脱ぎ捨て、巨大ターミナル駅で迷子になるEDMナンバー「あたしきっと無限ルーパー」から「YELL」へ。聴き手の背中を迷いなく真っ直ぐに押してくれる応援ソングで、メンバー一人ひとりの声も表情も清らかで美しく、まだ6曲目だが、涙を誘われる思いがした。たむらぱん提供のロックナンバー「テブラデスキー〜青春リバティ〜」では、8ビートから2ビートにシャッフルビートまでを自由自在に行き来する中で、会場からクラップが湧き起こり、タオルを手にした星名が「もっともっと一緒に騒いでいきましょう」と呼びかけたKEYTALKの首藤義勝提供の「MISSION SURVIVOR」では曲中に大量の水風船が入った巨大バルーンが客席に投入され、メンバーは「みんな濡れる覚悟しとけよー!」と叫びながら、客席に向かって放水銃を発射。中山の「ずぶ濡れだけど元気しかない!」というひと言を挟み、宮藤官九郎が作詞し、KATARU(ニューロティカ)が作曲し、ニューロティカが編曲を手掛けたパンクロック「元気しかない!」ではメンバーが観客に水風船を投げつけ、小林は「左のポケットに」という歌詞に合わせて、セミの抜け殻や藤井校長(マネージャー)のメガネ、そこらへんの石などを取り出し、観客の笑いを誘った。

メンバーが「今日、水ヤバい」「楽しいわ」「これぞファミえんだよね」と口々に話しながらステージに戻ると、小林が「ファミえんでずっと歌い続けてきた曲をゆったりと聴いてください」と語り、ノスタルジックな風景を呼び起こすピアノバラード「いい湯かな?」を情感たっぷりに歌い上げ、優しいファルセットも重ねた。スカビートのFAMIEN’18テーマソング「朝顔」ではメンバー全員で大きな花を咲かせ、Jazzin’ parkによるブギーファンク「EBINOMICS」では小林がディスコティークなディーヴァに扮し、川谷絵音によるアーバンかつ和風でもあるシティポップ「あなたのダンスで騒がしい」では細かいメロディラインも乗りこなし、小林の真っ直ぐな歌声をフィーチャーしたエモロック「感情電車」では一列になって肩を掴んで回りながらも、空高く突き抜けていくような歌声を会場全体に響かせた。

中山の「エビ中の曲を全身に浴びていってください」という言葉を合図に、後半戦に突入。元JUDY AND MARYのTAKUYAによる柏木をフィーチャーしたピアノロック「紅の詩」ではスカートを軽やかに翻しながらも切なさを歌い上げ、「明日もきっと70点」では横になった柏木が小林と中山に運ばれ、渋さ知らズのホーンが鳴り響く「買い物しようと町田へ」では、メインステージに戻ってくるタイミングが遅れてしまった安本を見た柏木が笑いながら歌うシーンもあった。魔法少女になり隊による「ちちんぷい」はコールあり、ジャンプありのロックチューンで、柏木は巻き舌を披露し、小林は白目になり、真山の開脚ジャンプ、ラインダンスとてんこ盛り。会場の熱気が最高潮へと達する中、FAMIEN’17テーマソング「HOT UP!!!」では再びウォーターキャノンが大量の水を発射。水飛沫の中で、真山と星名、柏木と安本は見事なハモリを聴かせ、星名が「最高の夏をありがとう!」と叫ぶとまたもや水が放たれ、小林と手を握ってハモっていた安本のフェイクが絶叫になった瞬間に大きな音と共に火花が炸裂した。この曲におけるコーラスワークは何度か見返してもらいたいと思う。

そして、大沢伸一によるエレクトロポップで、FAMIEN’16テーマソング「summer dejavu」、スティールギターと柏木と安本の伸びやかなロングトーンが印象的なFAMIEN’15テーマソング「ナチュメロらんでぶー」、右手を高く掲げて未来への希望を歌ったFAMIEN’19テーマソング「青い青い星の名前」と歴代のテーマソングを4曲続けて披露。観客と一緒に打ち上げ花火を見上げた後、星名が「エビ中ファミリーの皆さんとちょっと遠くまで行って、みんなで野外の気持ちのいいステージで楽しい空間を過ごすのがエビ中の夏だと思っています。皆さんと楽しくファミえんが終われたことにとても安心しています。帰るまでが遠足です。今日1日の思い出を胸に、みなさん、気をつけて帰っていただけたらと思います」と挨拶し、本編の幕は閉じた。

アンコールはメンバーのソロによるメドレーで始まったが、小林の「あるあるフランダンス」で使うスケッチブックがリハのものだと判明。スケッチブックをめくる柏木と中山が大笑いする中、小林は「ちょっとどーいうこと……ズコー!」とうろたえたままずっこけで終了。そんな消化不良だった直前の出来事がなかったかのように、13年にリリースされた3rdシングル「梅」では真剣な面持ちで歌い出しを務め、FAMIEN’18テーマソング「イート・ザ・大目玉」では星名と柏木、真山と小林、安本と中山がツインヴォーカルとして対面し、バトルのように熱を帯びた声を重ねた。EDMのような高揚感をもたらす前半と一人ひとりの声の個性に焦点を当てた後半で全く違うように感じる岡崎体育提供の「Family Complex」から、真山が「最後の最後まで一緒に楽しんでくださり、本当にありがとうございました。今日のこの光景がいつまでも皆さんの心に残りますように」という呼びかけを経て、エビ中の歌唱力の限界を目指したというバラード「星の数え方」へ。この曲は一人ひとりの歌唱力の高さが必要なことはもちろん、ハモリだけでなく、<ラララ〜>というコーラスも多用。3声ずつのコーラスが最後に6声になり、安本が指揮者のように右手をあげて締めた。「梅」から「イート・ザ・大目玉」、「Family Complex」、そして、「星の数え方」へ。最後の曲を聴くだけでも彼女たちがどれだけ歌唱力の上達に心身を注いでいるかが伝わるだろうし、彼女たちの限界はまだまだ先にあると、その可能性のさらなる広がりを感じてもらえるのではないかと思う。

文 / 永堀アツオ 撮影 / 中島たくみ

『エビ中 夏のファミリー遠足 略してファミえん 令和元年 in 山中湖』特設サイト
https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/ebichu/famien2019/

私立恵比寿中学

真山りか、安本彩花、星名美怜、柏木ひなた、小林歌穂、中山莉子。
現役中学生が1人もいない「永遠に中学生」6人組グループ。通称「エビ中」。
アリーナコンサート・主催フェス・ドラマ・舞台など縦横無尽に活躍。
結成10周年イヤーとなる2019年には2枚のオリジナルアルバムを発売、6th full Album『playlist』はビルボード週間アルバムチャートで1位を獲得。
今夏8月5日に、結成10周年のメモリアル野外コンサート『エビ中 夏のファミリー遠足 略してファミえん 令和元年 in 山中湖』(BD)、さらに、今年のFAMIEN’20は延期となってしまったが、エビ中が届けるノスタルジーも感じられる最新サマーソング「23回目のサマーナイト」を今年の同公演テーマソングとして、他3曲含む全4曲収録の配信限定EP「FAMIEN’20  e.p.」で8月21日(金)に発売する。

オフィシャルサイト
https://www.shiritsuebichu.jp/