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糸川耀士郎が恋する多感な少年を多彩に演じる、演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第5弾

糸川耀士郎が恋する多感な少年を多彩に演じる、演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第5弾

バリエーション豊かな演劇を見せてくれる配信舞台「ひとりしばい」の第5弾には、糸川耀士郎が登場。
これまでに、荒牧慶彦、小澤 廉、北村 諒、橋本祥平が出演し、それぞれ演出家とタッグを組んで、各々がアビリティーを全開に一人芝居に向き合った成果を見せつけてきた。
そんな新たな配信舞台に、糸川が挑む! 今作のタイトルは「LA・LA・LA・LIBRARY」。脚本は、ほさかようが手がけ、演出を松崎史也が担当した。
講談社とOffice ENDLESSが共同プロジェクトとして立ち上げた「ひとりしばい」、第5弾の模様をレポートする。

取材・文 / 竹下力


“一人芝居”のダイナミズムが溢れる作品

終演後、糸川耀士郎は満面の笑みで「絶望にいるときでも、笑ってくれる人がいる。そんな存在のひとりになりたい」と語った。俳優とは、観客を愛し、観客に愛され続ける存在なのだろう。それもまた“恋”だと思う。
“恋愛”は、時代も、人種も、言葉も超越した、すべての人にとっての永久運動だ。そのエネルギーは、“誰かに愛し、愛されたい”という愛おしい願い。役者、脚本家、演出家の知恵とアイデアとセンスが一体となった素晴らしい舞台だった。

「vol.5」で主人公を演じる糸川耀士郎は、劇団番町ボーイズ☆として劇団本公演に出演するほか、舞台『黒子のバスケ』シリーズ(赤司征十郎 役)、舞台「憂国のモリアーティ」(ルイス・ジェームズ・モリアーティ 役)など話題作に出演。スマートフォンゲーム『ディズニー ツイステッドワンダーランド』ではルーク・ハント 役で声優も務めるほか、2020年10月に上演予定の舞台『富豪刑事 Balance:UNLIMITED The STAGE』では主演も決まっており、人気、芝居の実力ともに注目の若手俳優。

そんな彼とタッグを組む脚本を手がけるほさかようは2006年に演劇プロデュース・ユニット「空想組曲」を結成し、主宰を務めるほか、外部公演の脚本も数多く担当。演劇集団「キャラメルボックス」の舞台『太陽の棘 彼はなぜ彼女を残して旅立ったのだろう』(脚本)や浪漫活劇譚『艶漢』(脚本・演出)をはじめ、テレビドラマの脚本や小説執筆など、活動は多岐にわたる。

また、演出を担当する松崎史也は2014年に演劇企画「SP/ACE=project」を発足、主宰を務める。舞台『人狼 ザ・ライブプレイングシアター』シリーズでは演出以外にも医師マドック 役として出演。MANKAI STAGE『A3!』シリーズ、『機動戦士ガンダム 00-破壊による再生-Re:Build』など、手がけた演出は高い評価を得ている。

本作「LA・LA・LA・LIBRARY」は、図書館でアルバイトをしている、本好きで“ベタ(ありきたり)”な展開が嫌いな、イタくて、暗くて、シニカルな17歳の少年の青春物語だ。

いつものように図書館のカウンターで気だるげに働く彼の前にひとりの少女が立つ。「オススメの本を教えてくれませんか?」と話しかけられた彼は、ひとめで彼女に恋心を抱きながら、レファレンス係としていろいろな小説を提案する。恋愛小説、ファンタジー、サスペンス……カウンター越しに少しずつお互いの距離が縮まっていくような、いかないようなもどかしさのなかで、彼は彼女に手渡した物語の主人公に自分を重ね合わせていく。そんな彼と彼女の物語。その結末にハッピーエンドは訪れるのか──。

糸川耀士郎は「孤独や不安に立ち向かいながら、足掻いてもがいて戦う姿を、皆様に観ていただきたいです」と上演前のコメントで語っていたが、恋に奮闘する純粋な少年をタフに演じ切った。
図書館での現実、小説世界を描く劇中劇、主人公の内面と、3つのパートをループさせ展開していくストーリーだが、それぞれの個性を丁寧に演じることでメリハリをきかせる。“一人芝居”は「誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どのように」をしっかりと表現する必要があると思うけれど、糸川はそのすべてを、スピーディーでありながら、知的で情感豊かな芝居でカバーしており、物語がスッと身体に染み込んでくる。初めての“一人芝居”と言っていたけれど、そんなことを感じさせない、パワフルな演技を見せてくれたと思う。

脚本のほさかようは、恋に落ちた17歳の少年の心を緻密な筆致で描いていく。劇中劇と現実世界での少年の仕草や話しぶりのギャップには思わず笑ってしまう場面もあったり、図書館員として働く少年の台詞に本好きが思わずニヤリとさせらる仕掛けも施され、妄想たくましい、どこにもいそうな17歳の少年を舞台上にリアルに屹立させていた。なにより、伏線を張り巡らせながら、最後にぴったりと収める手腕が凄まじい。
彼の脚本からは、人間を描くことが好きでたまらないといった、人間への飽くなき探究心を感じることができる。

演出の松崎史也は上演前のコメントに「普遍的な話が見たい。作りたい。恋についての演劇」と寄せていたが、現実とファンタジーの世界を行ったり来たりしながら、誰にでも訪れる、“恋”の喜び、哀しみといった人間の心模様を、ファンタジックで幻想的な演出でカラフルに見せていた。舞台中央に差し込むスポットライトの色合いで少女の存在と主人公の心理描写を同時に表す演出もユニークであり、映像と舞台との切り替えのテンポがリズミカルなところに少年の心の躍動を感じさせてくれた。
さらに、舞台の中央にスクリーンを設置し、カメラをできるだけ真ん中に固定し、映像と舞台をリンクさせながら物語を展開していく手法は、“ここで今、演劇を観ている”という気にさせてくれる“演劇愛”に溢れていた。

今作は、恋に翻弄されたときの歯痒い気持ちを17歳の少年に託し、“本”をモチーフに、誰もが自分の人生の主人公であり、誰かの人生の登場人物になり得るということを示してくれる。物語の結末を書き換えられるのは、続編を描けるのは、主人公である、登場人物である自分なのかもしれない。人が生きるうえでどうにもならない切なさと同時に希望をも感じさせた、スイートなフィーリングに満ちた作品。糸川耀士郎、ほさかよう、松崎史也のケミストリーを堪能できる“一人芝居”のダイナミズムが溢れる一作だった。

これからも皆さんと力を合わせて“演劇界”を盛り上げたい

「ひとりしばい Vol.5 糸川耀士郎」が配信されたのち、糸川耀士郎と松崎史也が登壇し、アフタートークが行われたので少しだけ触れておきたい。

まず、松崎は「本番の(糸川)耀士郎くんは、今までで一番良い表情をしていて、さすが役者だと思いました」と称えると、糸川は「ゲネプロまでは自分との戦いで、“一人芝居”は難しいと思っていましたが、本番は楽しく演じることができました。これからの役者人生の糧になる経験ができました」と感想を述べた。

その後、客席で観劇していた脚本家のほさかように糸川が「素敵な脚本でした」と声をかけ、観客からチャットで受けた「演じていて大変だったキャラ」などの質問や、松崎からの「演出を受けて腹の立ったことは?」との問いかけに糸川が笑顔で答えたり、「配信で演劇をやる意味を考えた」と語っていた松崎が今回の演出について明かす場面もあった。

最後に松崎が「昨日と今日さえ違う世界の状況だからこそ、お客様には、人間の愛おしさや、目の前にある個人の幸せを感じながら生活していただきたいと思います」と観客に語りかけ、糸川からは「役者として豊かで幸せな体験ができました。お客様には今作を観て、少しでも頑張ろう、演劇は素敵だと思っていただけたら。これからも皆さんと力を合わせて“演劇界”を盛り上げていきたいです」と熱を込めたコメントが送られた。

本公演「ひとりしばい Vol.5 糸川耀士郎」は、8月3日(月)〜8月10日(月)までアーカイブ配信される。
また、8月30日(土)には「ひとりしばい vol.6 大平峻也」の上演も行われる。

舞台「ひとりしばい」

「ひとりしばい vol.5 糸川耀士郎」

2020年8月1日(土)18:00〜 生配信実施

<アーカイブ配信>
2020年8月3日(月)12:00〜8月10日(月)23:59

※アーカイブ配信チケットは販売中
チケットはこちらから

演出:松崎史也
脚本:ほさかよう
出演:糸川耀士郎

企画・制作:講談社/Office ENDLESS
主催:舞台「ひとりしばい」製作委員会

©舞台「ひとりしばい」製作委員会


「ひとりしばい vol.6 大平峻也」

2020年8月30日(土)18:00~ 生配信実施(予定)

※8月30日(土)の公演チケットは販売中
チケットはこちらから

作・演出:川本 成
出演:大平峻也


「ひとりしばい」vol.1~vol.3 Blu-ray
発売日:2020年秋(予定)
価格:7,500円(税込)
収録内容:
「ひとりしばいvol.1 荒牧慶彦」本編+アフタートーク
「ひとりしばいvol.2 小澤 廉」本編+アフタートーク
「ひとりしばいvol.3 北村 諒」本編+アフタートーク
※Blu-rayをご購入いただいた方を対象に、生配信イベント(有料)を実施予定。
イベントの詳細は後日オフィシャルサイト及びオフィシャルTwitterで告知。

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オフィシャルTwitter(@hitoshiba2020)

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