放送終了でも今から観たい!イッキ見推奨アニメレビュー  vol. 16

Review

怒涛の最終話! TVアニメ&原作完結の今こそ語りたい『かくしごと』の面白さ─“最後まで目が離せなかった”その経緯について

怒涛の最終話! TVアニメ&原作完結の今こそ語りたい『かくしごと』の面白さ─“最後まで目が離せなかった”その経緯について

“いい話”はけっして嫌いじゃないが、“いい話でしょ?”や“泣けます!”を押しつけられるのは気に入らない……『かくしごと』は、そんな筆者のような、ちょいヒネた大人にこそ刺さる“押しつけがましくない感動アニメ”だった。

今回は、2020年春クール放送、久米田康治原作のハートフルコメディ『かくしごと』について、全12話を見終えた今だからこそ語りたいあれこれを(一部ネタバレを含みつつ)振り返り! リアルタイムでの放送を見逃したという方も、ぜひパッケージ版やサブスクリプションサービスでその魅力を味わってください。

文 / 阿部美香


“久米田テイスト”の魅力的キャラたち、それを確実な芝居で彩ったキャスト陣にまずは拍手!

原作は、ヒット作『さよなら絶望先生』で知られる久米田康治の最新コミック。かつて『きんたましまし』という(タイトルからして下品な)漫画がヒットしたベテラン漫画家・後藤可久士(CV:神谷浩史)は、父娘ふたり暮らしをしながら『風のタイツ』というタイトルの下ネタ漫画を連載している。

だが、自分が下ネタ漫画家だと周囲にバレて、溺愛する小学生の娘・姫(CV:高橋李依)が学校でいじめられてはいけないと、家を出るときはわざわざスーツに着替えてサラリーマンのふりをして仕事場に行き、編集者やアシスタントが絶対に自宅を訪れないように画策するなど、あらゆる手を尽くして自分が漫画家であること自体を“隠す”ことに奮闘する……というドタバタコメディだ。

久米田康治作品だけあって、スタイリッシュな絵柄と自虐感丸出しのブラックなパロディネタが縦横無尽に交錯するテイストは本作でもてんこ盛り。久米田本人が経験してきたエピソードや実話とおぼしき“漫画家あるある”――下ネタ漫画を描いていることを世間に隠す、若い男女のアシスタントが夜中まで何人も出入りする様子が不審だと警察がやってくる、編集者が「作家の描きたいものを描かせないのが仕事」だと断言する、優秀すぎるアシスタントはすぐデビューして出世するため辞めるのが早い、締め切りに追い込まれた漫画家は突然部屋の模様替えをしたり凝った料理を始めたりと現実逃避する、などなど――、さもありなん!と思わせる、ついニヤニヤしてしまう自虐ギャグが満載だ(個人的には、Tシャツなどの作品グッズを作る際に作者が「着れるやつ」と意見するものの、結局はキャラ絵が大々的にプリントされたものが出来上がってしまう、というエピソードが好きです)。

登場キャラクターの個性もじつに久米田テイストだ。プライドは高いが自虐的な性格ゆえ極端な行動に走りがちで、姫への愛ゆえに余計な策を弄して暴走し、ギリギリで自滅を回避する可久士は『さよなら絶望先生』の主人公・糸色望(こちらもCVは神谷浩史!)ともシンクロする部分が多い。その上で、仕事中のエキセントリックな可久士の演技と、姫と会話するときの優しい父親としての可久士を演じ分ける、神谷浩史の力量にも感服させられる。

ドスの効いたクールなツッコミ役の筧亜美(CV:佐倉綾音)、穏やかだがしっかり者で可久士と姫の最大の理解者である墨田羅砂(CV:安野希世乃)、失言の多い芥子駆(CV:村瀬歩)、真面目に仕事をこなす志治仰(CV:八代拓)といったアシスタント陣も全員キャラが立っていて、可久士とのやりとりのスピーディーなドタバタ感を確実な芝居で彩っている。

そして誰より印象的なのは、可久士の担当編集・十丸院五月(CV:花江夏樹)だ。自分が良ければそれでいい、いわゆる“イマドキの生意気な若者”で仕事も適当、まったく空気を読まない十丸院は、毎話、可久士を窮地に陥れるのだが、花江夏樹の飄々とした声色と演技は、そんな彼にぴったり。花江の声優としての優れたバランス感覚が、“本当にいたらめっちゃヤなダメ男”を“愛すべきバカ”へと華麗に昇華し、可久士との名コンビぶりを発揮している。

“最後まで目が離せない”という言葉は、『かくしごと』にこそよく似合う

そんな魅力的なキャラクター達が織りなす『かくしごと』の一番の魅力は、ときに暴走する可久士の姫に対する愛情の深さと、ピュアすぎるくらいピュアで可愛い姫との心温まるやりとり。そして、父娘のふたり暮らしに隠された観る者への“かくしごと”を、ミステリー小説よろしく謎解きテイストで明らかにしていく、秀逸なストーリーテリングにある。

この作品では基本的に「姫が10歳のときの可久士との暮らし」が描かれているのだが、第1話のオープニングは、18歳の高校生に成長した姫が、(後に明らかになる)人の住まないある家のカギを開けるところから始まる。そこから一気に時は巻き戻され、10歳の姫と可久士のドタバタな日常本編が始まっていく。アニメの予告編にも使われていたが、「お父さんのかくしごとは……描く仕事でした」という、タイトルに符合するダブルミーニングなセリフ、謎めいたスタートダッシュからグッと心を掴まれる。

その後も随所に、父親の“かくしごと”を知った姫18歳編が挿入されながら物語は進行するのだが……18歳の姫の周りには、なぜか可久士の姿はなく、なぜ母親がいない可久士とのふたり暮らしが続いていたのかの理由も、ずっと語られることがない。父と幼い姫との笑えるエピソードにほっこりさせられつつも、謎めいた展開から目が離せなくなる。子ども時代の無邪気で可愛い姫、少女時代のどこかもの悲しい姫、ふたつの世代の姫を見事に演じ分けた高橋李依の演技も素晴らしい。

しかも、姫10歳編が終始コメディタッチであるにも関わらず、姫18歳編のほうはとてもシリアス。アニメーションをよく観ると、リアリズムに寄った姫18歳編とコミカルな姫10歳編では、人物や背景の描き方も音響も異なるという凝った作りになっている。そんなミスマッチ感と、ストーリー的なミステリーが用意周到にシームレスに表現されているのが、アニメ版『かくしごと』の大きな魅力だ。観進めるごとに、いろいろな「なぜ?」の答えは徐々に匂わされていくのだが、きっちりと明らかにされるのは、怒濤のような最終第12話だということだけは、未見の方にお伝えしておきたい。“最後まで目が離せない”という言葉は、『かくしごと』にこそよく似合う。筆者も最終回を観ながら、不覚にも目頭が熱くなった。久米田康治作品なのに(かなり失礼ですが!)!

原作・アニメの補完関係、メディアミックスにまで宿った面白さ

ちなみに、原作マンガは『月刊少年マガジン』にて約4年間連載され、2020年4月~6月まで放映されたアニメ版全12話が終了するのとほぼ同じ時期に最終回を迎えた。そして先日、コミックス全12巻も無事完結。姫18歳編も(コミックスでは先行掲載されていたが)雑誌連載はアニメの放送直前から始まり、原作連載の構成自体も変えていったというこだわりぶりだ。

アニメ終了と時を同じくして原作マンガを終えるのは、久米田本人のアイディアだと聞くが、アニメで人気が上がって原作購読につなげる手もあるのに、そうしなかったところもじつに潔い。だが、現実的にアニメと原作を連動させるには、作者とアニメ制作側が丁寧に策を練らなければ全うできなかったはずだ。そんなエピソードからも図り知れるように、『かくしごと』は、非常にアイディアフルなメディアミックス作品でもある。なお、最終回の終わり方や、そこに登場する細かなエピソードは、アニメと原作では若干異なっているのもポイントだ。

原作コミックスのラストは、すべての事件(?)が大団円を迎えた後の、“現在の”姫18歳の日常で終わるのだが、そこはフルカラーで描かれている。(原作では姫10歳編本編がモノクロ、姫18歳編はカラーで描かれてきた) アニメのエンディングテーマが大滝詠一の「君は天然色」だった理由にも繋がるのだろうが、『かくしごと』は原作とアニメが、素晴らしい補完関係を築いている。

また、メディアミックスという点で、未見の方にもぜひチェックしてもらいたいのが、YouTubeのavex picturesチャンネル、dアニメストア、dTVで配信中のWEBラジオ「カクシゴトーク」(全2回)だ。

可久士役の神谷浩史をメインパーソナリティに、「vol.1」には筧亜美役・佐倉綾音、「vol.2」には姫役の高橋李依が出演。高橋ゲスト回は、アニメ最終話後ということで、視聴者の感想なども交えて作品を振り返っている真面目な回だが、『さよなら絶望先生』アニメ化当時に配信されたWEBラジオ「さよなら絶望放送」が大好きだった筆者にとっては、神谷浩史がぼやきまくり、佐倉綾音が怒りまくる「vol.1」が、強烈に面白かった(スタッフも「絶望放送」と同じなのだとか!)。また、dアニメストアとdTVではアニメ本編、WEBラジオに加えて、アニメ未収録エピソードありで、原作カットに声優陣が声を当てている『マンガアニメ「かくしごと」』も配信中。関連コンテンツからも、まだ隠れている(!?)『かくしごと』の魅力を追いかけてみてほしい。

TVアニメ『かくしごと』

dアニメストア、dTVほかで全話配信中

【スタッフ】
原作:久米田康治(講談社「月刊少年マガジン」連載)
監督:村野佑太
シリーズ構成・脚本:あおしまたかし
キャラクターデザイン:山本周平
総作画監督:西岡夕樹/遠藤江美子/山本周平
プロップデザイン:ヒラタリョウ
美術監督:本田光平
美術設定:岩澤美翠
美術:草薙
色彩設計:のぼりはるこ
撮影監督:佐藤哲平
撮影:旭プロダクション白石スタジオ
編集:白石あかね
音楽:橋本由香利
音響監督:納谷僚介
音響制作:スタジオマウス
音楽制作:エイベックス・ピクチャーズ
アニメーション制作:亜細亜堂
製作:かくしごと製作委員会

【キャスト】
後藤可久士:神谷浩史
後藤 姫:高橋李依
十丸院五月:花江夏樹
志治 仰:八代 拓
墨田羅砂:安野希世乃
筧 亜美:佐倉綾音
芥子 駆:村瀬 歩
六條一子:内田真礼
ナディラ:加藤英美里
マリオ:浪川大輔
古武シルビア:小澤亜李
東御ひな:本渡 楓
橘地莉子:和氣あず未
千田奈留:逢田梨香子
汐越 羊:古城門志帆
城路久美:原 由実
大和力郎:小山力也
内木理佐:沼倉愛美

©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

オフィシャルサイト

原作コミックス情報

久米田康治 『かくしごと』

講談社〈KC デラックス〉全12巻発売中!

vol.15
vol.16