Interview

体育祭編(第11話)は漫画家を引退してもいいと思えたクオリティ――『かぐや様は告らせたい』原作者・赤坂アカが振り返るTVアニメ第2期

体育祭編(第11話)は漫画家を引退してもいいと思えたクオリティ――『かぐや様は告らせたい』原作者・赤坂アカが振り返るTVアニメ第2期

2020年4月から放送されていた、TVアニメ第2期『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』。全12話の放送が終了し、すでに“かぐや様ロス”に陥っているファンも多いようだ。それほどまでに『かぐや様は告らせたい』にハマる理由とは、一体どこにあるのだろう? そんな疑問を抱えつつ、原作者・赤坂アカにTVアニメ『かぐや様は告らせたい』を振り返ってもらった。

「みんなが“あるある”を感じられるような要素は、TVアニメにおいてもできるだけ残したかった」と語る赤坂アカ。たしかに、金持ちが集まる超エリート校で繰り広げられる、一見“非現実的”な物語だと思いきや、四宮かぐやや白銀御行の本質はつねに我々に寄り添っていることに気付かされる。だからこそ、我々は彼らの思いに共感し、その世界観にハマっていくのだろう。

取材・文 / とみたまい


みんなが“あるある”を感じられるような要素は、アニメでも拾ってほしかった

TVアニメ『かぐや様は告らせたい』待望の第2期が今年4月から放送され、好評のうちに全12話を終えました。最初に、アニメ第2期の制作が決定したときの心境について教えてください。

赤坂アカ やっぱり「2期もやってほしい」という気持ちが強かったので、とても嬉しかったです。第1期が視聴者のみなさまに評価していただけたという現れでもあるので……正直に言うと、『かぐや様は告らせたい』の連載が決まったときよりも嬉しかったかもしれません(笑)。

『かぐや様は告らせたい』がアニメ化されたことで、何かしらの気付きはありましたか?

赤坂 ありましたね。例えば期末テスト回(第1期/8話)の「嘘である、嘘である、嘘である」みたいな、一連のやり取りを何度も繰り返す“天丼”が僕は大好きで、ああいうのをどんどんやりたいっていう気持ちがあるんですが、アニメで爆笑をかっさらうのはそういうシーンじゃなくて……キャラクターがイキイキと掛け合いするようなシーンなんです。ですから、「キャラクター同士の楽しい掛け合いがやっぱり大事なんだな」と僕自身も客観視できましたし、原作にもフィードバックできたらいいなと思うきっかけにもなりました。

ほかにも、アニメを見て「あ、この設定あったな」と思い出すことがありました。良い意味で序盤を思い出せるというか……「この漫画って、最初は頭脳戦をやってたんだ!」って思い出しましたね(笑)。

アニメ化する際、制作陣にオーダーされたことはありましたか?

赤坂 僕が『かぐや様は告らせたい』を描くときに大事にしている、「みんなが“あるある”と思える要素」はできるだけ残してほしいとお伝えしました。例えば教室の描写についても……最初は階段状に席が並ぶ、大学の教室みたいなイメージだったんですね。でも、高校でそういう教室ってほとんどないですよね。“お金持ちが通う高校”のイメージからそういった教室を考えてくださったと思うんですが、それよりも、みんなが触れてきたものを想起させるようなイメージを残してほしいと。

視聴者が共感できるところを残しておく?

赤坂 そうですね。学園もののラブコメって、多少なりとも自分の学生時代と重ねて見ると思うんです。だから、そこであまりにも自分とかけ離れたものが描かれていると悲しいなと……。

白銀たちも、変な学校に通っていて超頭が良くてみたいな、あんまり自分と重ならない設定ではあると思いますが、言っていることややっていることは意外にみんなも経験しているんですよね。そういったものをテーマにしたいと描いている部分もあるので、「“あるある”を感じられるような原作の要素は、できるだけ拾ってほしい」とお伝えしました。存分に汲んでいただけたので、「ありがとうございます!」って思いましたね。

そういった『かぐや様は告らせたい』の根幹を伝えるほかにも、アニメ化に関して先生はどこまで関わっていたのでしょうか?

赤坂 僕は“手を出して良いところには、全部手を出したいタイプ”なんですが……脚本に関しては、そもそも原作通りに進めてくださっていたので、あんまり意見しなかったと思います。

一方で、絵コンテやアフレコに関しては、自分の思いを少しだけ意見させていただきました。例えば絵コンテを拝見している際に「ここはこうしたらもっと面白くなるんじゃないかな?」って、良い画が見えてることもあるんです。そういったときに……本来はあまり踏み込むべきではないと思いますが、「ワンチャンで採用されるかもしれないから、ちょっと言ってみようかな」と意見させていただいた感じですね。

アフレコに関しては、どんな意見を制作サイドに伝えたのでしょうか?

赤坂 僕は普段、頭のなかでキャラクターたちに会話をさせて、そのセリフを口に出したときに気持ち良くなるような感じで漫画を描いているんです。ですから、セリフの言い方に関して僕のなかには一応“正解”があって……「ここで一度セリフが止まって、その後からバーッと喋る」みたいなテンポが頭のなかにあるんです。声優さんたちの演技はもちろん素晴らしいのですが、「僕の脳内で流れている言い方も良いぞ」と思ったときには、ご提案させていただきました。

声優さんのお芝居が入り、キャラクターたちが動く様子を初めてご覧になった際に、どう感じましたか?

赤坂 オーディションのときは掛け合いがなく、それぞれの声を聞いていただけだったので、「やっぱり掛け合うと、すごい相乗効果があるんだな」と感動しました。かぐや(CV:古賀 葵)や白銀(CV:古川 慎)、藤原(CV:小原好美)、石上(CV:鈴木崚汰)が掛け合うことによって、「生徒会になった!」と思いましたね。

あと、山本(格)さんが演じた校長先生が、めちゃくちゃ胡散臭くなってて面白かったです(笑)。子安(武人)さんが演じる白銀のお父さんも……あのイケボであのキャラ(※職業不定。7年前に妻に出て行かれてはいるが、籍は入れたまま)って、本当に面白いですから(笑)。おっさん系キャラクターは、みんな面白さが増していました。

みなさんのアドリブも印象的でしたね。

赤坂 みなさんが、積極的に笑わせに行こうとしているのが伺えて嬉しかったですね。かぐやのセリフで「やったー、パンツ見えたー!」や(第2期/7話)、「誰かいませんかー?」って体育倉庫で言っているところ(第2期/8話)は、普段の古賀さん過ぎて笑えました。

少女漫画回(第2期/7話)のナレーションも、かなり面白かったです(笑)。

赤坂 ナレーションの青山(穣)さんがああいう感じでセリフを言うなんて……テストのときに突然やり始めて、みんなで大爆笑になったんです。それに呼応して、かぐや役の古賀さんが即興で「ナレーションまでオカシイ!」って言い始めて(笑)。ほんと、楽しい掛け合いでした。

演出面についてはいかがでしょう? 特に印象に残っている描写などはありましたか?

赤坂 原作の最新話(原作第182話)で、大仏さん(CV:日高里菜)が実は、石上に対して少し感情があるというのが描かれているんですが、アニメのほうではすでにその要素が汲まれていて、演出が強化されていたんです。「あれ? それって制作サイドに言ったっけ? 言ってないよな?」って。言ってないのにやってくださっていたのが、すごく嬉しかったですね。きっと、大仏さんを好きになってくれてよく観察してくれた方がスタッフ陣にいらっしゃるんだろうなって。
※取材は6月下旬

11話の白銀の演技は、僕の脳内を完全に超えていた

第2期の6話や11話では、ミコ(CV:富田美憂)や石上の内面に寄り添う会長の姿が印象的でした。ラブコメディにああいったシリアスな要素を盛り込む際に意識していることは何でしょうか?

赤坂 本当に……めちゃくちゃ怖いんですよ。それまで読んでくださっていた読者の方たちを全部離してしまうことにもなりかねない。僕の読みが間違っていた場合、すべてが台無しになってしまいますから。実際に「シリアス要素はいらない」っていう方たちもいらっしゃるので……なるべくそういった人たちにも納得していただけるカタチで提供したいとは思っています。

シリアスを入れ込むバランスを慎重に考えているということですか?

赤坂 というか、「救いになるところでは、ちゃんと救う」ですかね。シリアスは本気で入れますが、「救いになるところが、ちゃんと救いとして成立するのか」という点に関しては、めちゃくちゃ気をつけます。下手にズレたことをやったら、読者の方もスッキリせずに「イヤな思いだけさせられた」ってなっちゃうと思うので。僕もそれだけはイヤですから、「ここに触れたからには、責任をもった回収が必要なんだろうな」と……プレッシャーが半端ないです。

そういった原作者としての思いや狙いがあったからこその、アニメ第2期・11話。いわゆる「石上回」ですが、反響がすごかったですね。

赤坂 そうですね。11話は本当に良かったです。僕は「誰でも救いは与えられる」みたいな考え方が好きで、そういうものを表現したくて作品を描いているんです。だから凡人みたいな白銀が、あれほどまでに石上の救いとなった。それをあのクオリティで描けたのならば、ぼちぼち漫画家を引退してもいいかなって思いましたね。「もう今後、ここまでできることはないんじゃないかな?」と思うくらいの回でした。

11話のエンディングも印象的でした。10話までのエンディングでは笑っていなかった石上が、笑っているという……。

赤坂 ねえ? ズルい演出ですよねえ(笑)。11話では演出上オープニングはカットされていましたが、エンディングをカットしなかった理由はそこですよね。エンディングで石上の笑顔を残したいという気持ちが、制作サイドでは強かったんだと思います。

あのエンディングに関して、先生は意見していない?

赤坂 していません。そもそも11話の石上回に関しては原作から変化している部分が、反省文を書くところ、消しゴムを多めにかけているところ、最後のイメージカットで映り込む机の3点くらいしかないと思います。

ただやっぱり、声優さんたちの演技ですべてが表現されたんじゃないかなと思いますね。特に会長の「だとしたら、お前が書くべき反省文はこうだろ」というセリフ。あのときの白銀の演技は、僕の脳内を完全に超えていましたから。あのセリフに怒気を含ませてくれた古川さんは「天才すぎるな」と思いました。

先生の脳内ではどんな感じのセリフだったのでしょうか?

赤坂 僕のなかでは怒気は含まず、淡々と事実を突き詰める感じでしたね。でも、古川さんの白銀は怒ってくれた。それを見ながら「あれ? 白銀おまえ、石上にめっちゃ寄り添ってんじゃん」と思って、僕もテスト収録の段階からボロボロ泣いていましたね(笑)。

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