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橋本祥平が女子高校生の青春を爆走する。演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第4弾上演!

橋本祥平が女子高校生の青春を爆走する。演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第4弾上演!

講談社とOffice ENDLESSが共同プロジェクトとして立ち上げた「ひとりしばい」は、キャスト1名と演出家のタッグによる完全オリジナルストーリーの“一人芝居”。池袋の新LIVEエンターテインメント複合施設ビル「Mixalive TOKYO」(ミクサライブ東京)の「Hall Mixa」からライブ配信され、これまで第1弾に荒牧慶彦(作・演出:岡本貴也)、第2弾に小澤 廉(作・演出:川本 成)、第3弾に北村 諒(作・演出:西田大輔)が出演。
続く第4弾には、橋本祥平が出演。作・演出を中屋敷法仁が担当する「いまさらキスシーン」が7月26日(日)に生配信された。
本作は2008年に初演された、中屋敷が代表を務める劇団「柿喰う客」の“一人芝居”の傑作。その模様をレポートする。

取材・文 / 竹下力


女子高生の人生の煌めきを、たったひとりで真空パッケージしてみせた

舞台に余計な装置はない。板の上には一筋のスポットライト。その下に、背中を曲げて中腰の女子高生の格好をした橋本祥平がいる。

「せ、す、じ、を」と一音一音を区切って言葉を発したあと、ひと呼吸おいて胸を張り、怒涛の台詞ラッシュが始まる。静から動へ、気圧されるほどの台詞量に、こちらの背筋も一気にピンと伸びる。コミカルで笑えるのに、かっこいいオープニングだ。

「vol.4」で主人公を演じる橋本祥平は、2013年に『陽炎ペイン』で舞台デビュー。舞台「文豪ストレイドッグス」シリーズ(芥川龍之介 役)や舞台『機動戦士ガンダム00』シリーズ(刹那・F・セイエイ 役)、舞台『幽☆遊☆白書』(飛影 役)など数多くの話題作に出演する若手人気俳優だ。

そんな彼とタッグを組む中屋敷法仁は、青山学院大学在学中に「柿喰う客」を旗揚げ、2006年に劇団化。旗揚げ以降、すべての作品の作・演出を手がける。近年では、外部プロデュース作品の演出も数多く務めており、パルコ・プロデュース『露出狂』『サクラパパオー』、舞台「文豪ストレイドッグス」、舞台「黒子のバスケ」、舞台『半神』、『贋作 マクベス』など、現代の演劇界を牽引する劇作・演出家。

「いまさらキスシーン」は、ちょっと自意識高い系のひとりの女子高生、“三御堂島(みみどうしま)ひより”が国道4号線をひた走る、熱血青春物語。頭脳明晰、スポーツ万能、ルックス良しの、自称“スーパー・ハイティーンガール”な彼女の高校生活3年間が描かれる。

高校入学と同時に、憧れの男子と恋愛をしたい野望、勉学で成功をおさめたい野望、部活で大活躍したい野望、様々な夢を胸に抱きながら、青春をどう謳歌すべきかと自らに問う彼女は、“二兎を追う者は一兎をも得ず”という結論を持って、その後の3年間を恋愛に、勉強に、部活に邁進していく。しかし、忙しすぎてドタバタなヒヨリの高校生活は年を追うごとにあらぬ方向へと転んでゆくことに──。

「最初にお話をいただいたとき、一人芝居なんてやったことも考えたこともない未知の世界だったので……正直、すごく不安でした」と終演後に語っていた橋本だけれど、そんな不安はどこ吹く風と、長尺の息もつかせぬ台詞を淀みなく発しながら、パワフルな台詞運びに時に抑揚をつけることで、ストーリーにリズムを生み、観客を彼女の青春の中にグイグイと巻き込んでいく。

さらに、高気圧と低気圧が同居するような女子高生の気分、自らでは制御できない、振り回されてしまう感情の揺れを、両目を見開いてカメラを見据えたり、恍惚とした表情を見せたかと思えば、キレ気味にシャウトして見せたりなど、豊かな表情とコミカルな仕草でも表現。まさに、狂気を孕んだ彼の演技は、これまでの己の殻を捨て去った“俳優・橋本祥平”の本気の姿を垣間見せたと言っていいだろう。

なにより、好きな先輩への熱い想い、将来への焦燥感、青春のやりきれなさ……ひと言では語れない青春の不安定さというもの、女子高生のほんの一瞬の人生の煌めきを、たったひとりで真空パッケージしてみせたのだから、素晴らしいとしか言いようがない。

そんな橋本の凄みの芝居を後押しする演出の中屋敷は「一人芝居は、俳優にとって、自分の限界に挑戦する過酷な体験。しかし一方で、己の力を解放し、存分に暴れされることが出来る楽園でもある」と開幕前にコメントしていたが、橋本祥平の“役者魂”をむき出しにして、舞台で思いっきり暴れさせた演出は、終演後に「穴という穴から水分が出ましたね」と汗だくな橋本の爽やかな表情を見るに、成功したのではないだろうか。

素舞台の特性を活かし、縦横無尽に芝居をさせながら、照明や音楽を自在に操り、女子高生の天真爛漫ぶりをカラフルに表現する。台詞をテロップにして字幕を多用することでひよりの内面に厚みを持たせる。生の芝居とカメラのスイッチングがシンクロし、橋本の表情の変化をしっかり捉える巧みなカメラワークも見事。橋本とひよりの心境が重なり合うようなライティングも秀逸で、芝居に説得力を増していた。

さらに高校生の青春のありさまを、丁寧に1学期ずつスナップして収集し、卒業アルバム的に編み上げていくアイデアに溢れた脚本も秀逸だった。
多感な女の子を主人公にしながらも、人間の哀しくて切ない、それなのに生きることを肯定するポジティブなバイブスを感じさせる描写力に圧倒された。

舞台装置や道具もなく、頼るものは己の身体のみという制約の中で、がむしゃらに“三御堂島ひより”を生き抜く情感豊かな橋本の表現力、それを支えるスタッフワーク、橋本の俳優としてのすべてを引き出した中屋敷のスピード感溢れる演出が、三位一体となって冴え渡っていた。

彼らの力によって、“三御堂島ひよりの無敵な青春”ではなく、最後には、どこにでもいる“みんなの青春”として普遍的な物語に仕上がっていたところに、本作の矜恃があるだろう。

“一人芝居”でしか味わえない、“舞台の上にはたったひとりなのに、世界のすべてが見える”感覚が如実に伝わってくる、何度でも観たくなる舞台だ。

自粛期間中に溜まった“芝居欲”をすべて出したい

「ひとりしばい vol.4 橋本祥平」が配信されたのち、橋本祥平と中屋敷法仁が登壇し、アフタートークが行われたので少しだけ触れておきたい。

アフタートークが始まると開口一番、橋本祥平は「終わったー! 幽体離脱して、別の人が立っている感覚になりました(笑)。久々に板の上でお芝居できるので、自粛期間中に溜まった“芝居欲”をすべて出したいと思っていました」と感想を口にし、本番を見守っていた中屋敷法仁は「途中で倒れてしまうんじゃないかと心配になった(笑)」とそんな彼をねぎらった。

また、中屋敷は「祥平くんはすべてを超えてきた」「僕の大好きな祥平くんの姿を観ることができて喜びでいっぱいです」と話しつつ、橋本に高校時代の様子を質問する場面もあった。

そして橋本が今回の挑戦に「いろんなものを引き出してもらった」と充足感をにじませながら最後に「この作品と出会って、無事に皆さんにお届けすることができて良かったです」と締め括った。

本公演「ひとりしばい vol.4 橋本祥平」は、7月28日(火)〜8月4日(火)までアーカイブ配信されるので、見逃してしまった場合にはぜひ観劇して欲しい。
また、8月1日(土)には「ひとりしばい vol.5 糸川耀士郎」の上演も行われる。

舞台「ひとりしばい」

「ひとりしばい Vol.4 橋本祥平」

2020年7月26日(日)18:00〜 生配信実施

<アーカイブ配信>
2020年7月28日(火)12:00〜8月4日(火)23:59

※アーカイブ配信チケットは販売中
チケットはこちらから

作・演出:中屋敷法仁
出演:橋本祥平

企画・制作:講談社/Office ENDLESS
主催:舞台「ひとりしばい」製作委員会

©舞台「ひとりしばい」製作委員会


「ひとりしばい Vol.5 糸川耀士郎」

2020年8月1日(土)18:00〜 生配信実施予定

※8月1日(土)の公演チケットは販売中
チケットはこちらから

演出:松崎史也
脚本:ほさかよう
出演:糸川耀士郎

企画・制作:講談社/Office ENDLESS
主催:舞台「ひとりしばい」製作委員会


「ひとりしばい」vol.1~vol.3 Blu-ray
発売日:2020年秋(予定)
価格:7,500円(税込)
収録内容:
「ひとりしばいvol.1 荒牧慶彦」本編+アフタートーク
「ひとりしばいvol.2 小澤 廉」本編+アフタートーク
「ひとりしばいvol.3 北村 諒」本編+アフタートーク
※Blu-rayをご購入いただいた方を対象に、生配信イベント(有料)を実施予定。
イベントの詳細は後日オフィシャルサイト及びオフィシャルTwitterで告知。

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オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@hitoshiba2020)

©舞台「ひとりしばい」製作委員会


過去の公演レポート

「ひとりしばい vol.1 荒牧慶彦」
2020年6月27日(土)17:00〜 生配信実施
作・演出:岡本貴也
出演:荒牧慶彦

「断 -Dan-」
荒牧慶彦が己の正義に邁進するテロリスト役で魅せた圧巻の存在感。演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第1弾

荒牧慶彦が己の正義に邁進するテロリスト役で魅せた圧巻の存在感。演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第1弾

2020.06.29


「ひとりしばい vol.2 小澤 廉」
2020年6月28日(日)17:00〜 生配信実施
作・演出:川本 成
出演:小澤 廉

「好きな場所」」
イッツ・ショー・タイム! 僕が俳優・小澤 廉である理由。演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第2弾

イッツ・ショー・タイム! 僕が俳優・小澤 廉である理由。演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第2弾

2020.06.29


「ひとりしばい vol.3 北村 諒」
2020年7月4日(土)17:00〜 生配信実施
作・演出:西田大輔
出演:北村 諒

「ひとりシャドウストライカー、またはセカンドトップ、または、ラインブレイカー」
「これが僕たちの描きたい舞台」。北村 諒が“一人芝居”で俳優の本質を射抜く。演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第3弾

「これが僕たちの描きたい舞台」。北村 諒が“一人芝居”で俳優の本質を射抜く。演劇配信プロジェクト「ひとりしばい」第3弾

2020.07.06