今、知っておくべき注目声優を解説します!  vol. 7

Column

甲鉄城のカバネリ、ウルトラマンZ…“未成熟だが熱い主役”がとにかく似合う。声優「畠中祐」この声を聴け!

甲鉄城のカバネリ、ウルトラマンZ…“未成熟だが熱い主役”がとにかく似合う。声優「畠中祐」この声を聴け!

この人の声を知っておけばアニメがもっと楽しくなる(はず)! 今、旬を迎えている声優の魅力をクローズアップする連載コラム。今回は、『うしおととら』蒼月潮役、『甲鉄城のカバネリ』生駒役などの熱い演技で知られる畠中祐(はたなかたすく)さんを深掘り。自身のアーティスト活動のほか、現在放送中の『ウルトラマンZ』ウルトラマンゼット役など、アニメ作品以外でも目立つ声の存在感に耳を傾けてみましょう。


熱い芝居、といえばこの人

じつは出典ははっきりしないとも言われるが、福澤諭吉が語ったとされる“芝居”にまつわる名言に「人生は芝居のごとし、上手な役者が乞食になることもあれば、大根役者が殿様になることもある。とかく、あまり人生を重く見ず、捨て身になって何事も一心になすべし」がある。

人生が芝居のごとしならば、その逆もしかり。芝居には演じ手の人生、生き様が現れる。役者(=人)はいくら演技で何かを繕おうとしても自分の人となりは芝居に出る。“芝居は人”だ。それは、声優、俳優にかかわらず、この記事を読んでいる皆さんが、アニメでもドラマでも映画でも、実感していることなのではないかと思う。そして、「捨て身になって何事も一心になす」という言葉を見るたびに、筆者は畠中祐の熱い芝居を思い出す。

畠中祐は、現在25歳、バリバリの若手声優だ。とはいえ、彼の声優としてのキャリアは短くはない。父はミュージカル劇団出身でドラマなどにも多数の出演作がある畠中洋、母も過去ミュージカル劇団に在籍し、舞台の脚本・演出・振り付けなどをこなし、外画の吹き替えやアニメでも声優として活躍する福島桂子という芸能一家に生まれた畠中は、小学5年生でオーディションによりディズニー映画『ナルニア国物語』のエドマンド・ペベンシー役で声優デビュー。

子役として様々な外画で活躍し、高校1年には再びオーディションにより、『遊☆戯☆王ZEXAL』(2011年~)の主人公・九十九遊馬役に抜擢。その後も、声優活動のかたわら大学では演劇を専攻し、話題作への出演を重ねてきた。芸能一家の血を受け継いだ、文字通りのサラブレッドだ。

“未成熟で不器用”ウルトラマンゼットがハマり役となった理由

そんな彼の捨て身の芝居、一心にありったけの力を込めた熱い芝居は、彼が主人公を演じたアニメ作品にもしっかりと現れている。

初の主役を射止めた『遊☆戯☆王ZEXAL』の底抜けに明るく仲間思いの少年・九十九遊馬役は、アニメデビュー作らしい若さが弾ける一心不乱な演技が、少年向けアニメらしさを体現。より広いアニメファン層に若手声優・畠中祐の存在を刻んだ『うしおととら』では、曲がったことが大嫌いで喜怒哀楽を超ストレートに表現。バトルシーンはもちろん、感情を真っ直ぐにぶつける場面では、「喉を潰してしまうのでは?」と見ているほうが心配になるほどの懸命な演技で、迫力ある主人公・蒼月潮を表現した。

どちらの作品も、あふれ出る若さだけでなく、畠中祐本人が今も持ち続けている、真っ直ぐで何事にも全力投球な彼の人柄がそのまま、熱血という言葉が良く似合う“ザ・主人公”らしさとなって、作品にダイナミズムを与えていた。

そんな畠中の“ザ・主人公”感がキャリアを経て熟成したのが、死と隣り合わせの極限下で、人としての強さと弱さを全身全霊で生き抜きながら、希望と絶望の狭間で泥臭くもがき続ける生駒を熱演した『甲鉄城のカバネリ』だろう。生駒が受ける痛みや苦しみ、戸惑いや慟哭を、魂の叫びへと昇華した畠中の演技は、まだまだ荒削りな印象も受けるが、それがキャラクターに魅力的な人間味を与えていく。

そして、その畠中祐らしさが、今最も輝いている作品が、現在放映中の特撮ドラマ『ウルトラマンZ』だ。畠中が演じるのは、主人公のナツカワ ハルキが一体化する、M78星雲・光の国の宇宙警備隊に所属する新人ウルトラマン・ウルトラマンゼットの声だ。

宮野真守が声を担当するウルトラマンゼロを師匠と敬愛するが、当のゼロからは半人前どころか“三分の一人前”と評されるほど、ゼットはまだまだ成長過程。未成熟で不器用ながらも、一人前のヒーローをめざして懸命に努力するウルトラマンゼットも、畠中祐らしい演技とピタリと重なるハマリ役といえる。

畠中祐の“不器用だが一生懸命”は、正統的な少年ドラマの主人公にぴったりの資質かも知れない。『ナカノヒトゲノム【実況中】』の駆堂アンヤも、主人公ではないが、意地っ張りで口が悪いながらもツンデレという、感情豊かな幼いキャラクター性に畠中らしさを感じた。

『星合の空』で覗かせた新たな一面、さらに膨らむ成長への期待

畠中の演技に主人公らしい“熱血感”が湧き出る秘密は、彼の声質にも多くを依っていると思う。これまで演じてきた役どころは10代の少年役が多いのだが、よく聞くと彼の声はけっして高くなく、今や得意技とも言える熱量高い叫び声も、むしろ落ち着いたピッチを保っているのだ。

叫びといえば、ロックに例えるならヘヴィメタル系の突き抜けたハイトーンを連想しがちだが、畠中の叫びはむしろ、地を這うようなエモ/スクリーモのそれに近い気がする。さらに、声そのものものにも少しざらついた掠れがあり、ハスキーな色合いが強い。だからこそ怒りや憤り、絶望の感情が声に乗ったときには力強さと迫力が増し、優しい芝居をするときには無骨だが温かみが増す。真っ直ぐに表現される感情の数々が、畠中の声質によって、より豊かに膨らんでいく。

熱血少年・青年役が目立つ畠中だが、近年はソロアーティスト活動でも実力を発揮し、抜群の歌唱力をいかした女性向けアイドル作品への出演も増えている。『夢色キャスト』の城ヶ崎昴、『KING OF PRISM』の香賀美タイガ、『A3!』の兵頭九門など、女性向け作品でも真っ直ぐさ、元気さが魅力のキャラクターを演じる機会が多いのは、彼の魅力がそこに集約されているからに違いない。

だが、そんな中で筆者がハッとさせられたのは、『星合の空』の主人公のひとり、新城柊真役だった。歪んだ家庭環境が内面にほの暗い影を落とす中学生・柊真は、真面目で律儀な性格だが、ときに直情的で感情のままに行動する繊細な少年。柔らかだがその奥に絶望的なダークさが潜む作品のトーンに合わせ、いつもの明るさ、無邪気さのない抑えた演技は、畠中の演技者としての新しい一面を感じさせてくれた。

そして観る側は、もっと欲が出る。“ザ・主人公”が似合う畠中だからこそ、冷酷さ、底意地の悪さを思い切り発揮した悪役なども観てみたい。8月には誕生日を迎えて26歳となり、大人の男、大人の役者へと成長していく畠中が、より高いハードルを超えていくことを期待したい。

文 / 阿部美香

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