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SNSで楽しむ「ざつ」な旅!? 新感覚旅行マンガ『ざつ旅-That's Journey-』新刊発売記念インタビュー

SNSで楽しむ「ざつ」な旅!? 新感覚旅行マンガ『ざつ旅-That's Journey-』新刊発売記念インタビュー

『ざつ旅-That’s Journey-』(石坂ケンタ著)は「電撃マオウ」(KADOKAWA)2019年5月号より連載が開始された作品で、2020年7月27日には単行本3巻が発売された。「次にくるマンガ大賞2020」コミックス部門にもノミネートされ、注目の作品となっている。

本作は女子大生マンガ家の鈴ヶ森ちかが気分転換にSNSのアンケート機能を用いて最も投票の多かったところへ旅に出るところから始まる。旅の魅力にハマってしまったちかは、その後頻繁にアンケートで行き先を決めては旅に出るようになる。

実在する土地や名所が精緻に描き込まれた背景は実に魅力的で、特に単行本で描き下ろされるカラーイラストは非常に美麗。また、土地ごとに存在するご当地グルメや地酒なども美味しそうに描かれ、現地に行ってみたいという「旅欲」を大きくそそられる。また、旅先という非日常空間だからこそ滲み出る想いが織りなす人間ドラマも見どころだ。

面白いのは鈴ヶ森ちかのTwitterアカウント(@suzugamori2)が存在し、旅先での呟きから日常の呟きまでなされていること。そして実際に旅の行き先を決めるアンケートが行われ、読者はリアルタイムで企画に参加しながらSNSとマンガの両方で鈴ヶ森ちかの紀行を楽しめるようになっている。観光地に置かれた交流ノートには実際に彼女が書き残したものもあるという。

そんな新鋭マンガ家・鈴ヶ森ちかに、マンガ家としての展望から思い出深い旅先や食べ物、そしてコロナ禍が訪れた現在の想いまでを訊いてみた。

取材・文 / 兎来栄寿


この度はお時間をいただきましてありがとうございます。早速最初の質問なのですが、鈴ヶ森さんはどうしてマンガ家になろうと思ったのでしょうか。

ベタですが、小さいときから上手くはないけど絵を描くのが好きで、なんとなく連続した絵を描いて家族に見せたりしていたらいつの間にマンガを描いていました。なのでこれで誰かを楽しませられたら良いな、と思って目指すことにしました。

マンガ業に加えて最近は旅をすることも増えたかと思いますが、大学の単位取得の進捗は問題ないですか。

満遍なく通ったり、休んだりしているので、大丈夫……なはずです(笑)。

それは何よりです(笑)。今後のマンガ家としての目標を教えてください。

「読んだら元気が出ました!」って言ってもらえるようなものを描けるマンガ家になれたらいいなと思います。私もいろいろなマンガから元気をもらったりしているので。

鈴ヶ森ちかさん

私もマンガからたくさんの元気をもらっているので鈴ヶ森さんの新作が楽しみです。では、ここからは旅に関する質問をさせてください。まずは今まで旅した中で特に印象的な場所を教えていただけますか。

青森県の八甲田山中の谷地温泉は絶対にもう一度行きたいと思う温泉です。本当に周りに何もない、ケータイの電波もない(フロントにWi-Fiスポットはありますが部屋までは届きません)ような山奥で、ぬるめの温泉とあつめの温泉に交互に浸かる……たまらない気持ちよさでした。

温泉で言えば岩手県花巻市の大沢温泉も素晴らしかったです。こちらはなんと言っても建物の雰囲気が「ああ、旅に来たなぁ」という気持ちを高めてくれます。

花巻の大沢温泉は、私も「鈴ヶ森さんの紀行を見て非常に行きたくなった」と呟いたら旅館の公式アカウントからいいねをいただきました(笑)。

なんと!(笑)

それから、やはり福島県会津若松で行った1225段の階段がある羽黒山湯上神社はとても印象的でした。旅は良いなって思わせてくれた最初の場所なので。

実は降りてきたときにこれから登ろうとしているおじいさんが居て少しお話させてもらったんですが、その方は「一年に一回登っておかないとむしろ調子が悪い」とおっしゃっていました。またいつかご挨拶をしに行きたいなと思っています。私は1225段登ると思うと覚悟が要りますが……。

印象的なところは挙げるときりがないですね。ここで挙げていないところももちろんいい場所ばかりだったので、今まで行った県もまたいつか再訪できたらいいなと思っています。

乗れなかった富山県の黒部峡谷鉄道とか、布で覆われていない広島県の厳島神社大鳥居とか……(笑)。

旅の楽しみのひとつといえばご当地グルメですが、今まで食べてきたもので特に好きなものは何ですか。

これは色んな人に言っているのですが、富山県の黒部市にある魚の駅・生地(いくじ)で食べたお刺身です。ちょっとどう表現していいかわからないんですけど、とにかく味が濃いんです、お魚の!

タイがすごい、主張のある味がするんです。すごいんです。

それから生のトヤマエビとか白エビとかもすごいです。自信を持っておすすめできます。

それから広島県宮島口駅近くの「あなごめしうえの」さんでいただいたあなごめしも、たまらない美味しさでした。あなごのふっくらな身と、ほのかな香ばしさに優しい甘みのタレ、薄っすらと多分出汁の味がしみたご飯、全てが合わさってもう……あぁ、思い出してまた食べたくなっちゃいます。

あとは栃木の那須烏山の「もり食堂」さんでいただいたお蕎麦、(それまで見た目が苦手だったんですが)宮城県松島で食べられるようになった牡蠣、とか……食べ物もきりがありません(笑)。

聞いているだけでお腹が鳴ってきました(笑)。では、今後行ってみたい場所はありますか。

やはり試される大地、と呼ばれることもある北海道は行ってみたいです。なんと行っても海産物が美味しいというお話と、それから温泉も豊富にあるというお話もありますので。

旅に行くときはだいたい1泊2日くらいの強行旅なんですが、北海道に行くときは可能なら3泊4日くらいで行きたいです。なるべく寒すぎないときに。

それから九州にもまだ足を踏み入れたことがないので行ってみたいです。

海外への旅に興味はありますか。また、行ってみたい場所はありますか。

海外は、興味ありますがやはりハードルは高いですね。英語、苦手ですし。けれどヨーロッパ諸国は行ってみたいです。

できれば食べ物が美味しい所に行きたいですね。

日常的に旅をするようになって以来初めて訪れた“外出自粛”期間、どのような想いでしたか。料理や彫刻など、いろいろなことにアンケートを使ってトライされていたことについてもお聞かせください。

自分は去年旅をする楽しさに目覚めて、そんな新しく見つけた趣味を急に取り上げられたような、やりきれない気持ちでした。行き場のないむかむかとかもありましたし。

それから今まで旅をした観光地も苦境に立たされているのだろうなと考えると、とても悲しい気持ちになりました。

自分なんかでもこんな楽しくない、暗い気持ちになるんだからもっと辛い人も居るだろうなと考えたとき――普段旅をしているとき、旅に出る前のアンケートもそうですが――SNSでその様子を見て楽しんでくれていた人たちのことを思い出したんです。

初めてのアンケート結果を見た時の様子。(コミックス1巻より)

せめてその方たちには何か旅以外の楽しいことを提供できないかなと思って、普段と同じようにアンケートを取って、料理や彫刻をやってみることにしたんです。

うどんを打つ様子、楽しく拝見していました。

ありがとうございます。うどんを打ったり、ロブスターを調理したり、アマビエさんを彫ってみたりといったことをして……正直私が一番楽しかったです(笑)。こういうときだからこそ普段やらないような新しいことにチャレンジできて、ある意味良かったなと思います。

普段あまり旅をしない人にお薦めの場所はありますか。

和歌山県の串本町、本州最南端の潮岬はおすすめです。私は初日の出を見に潮岬へ行ったのですが、ここでは夕日が海に沈んでいき、朝日も海から上がってきます。単純なのでこういうわかりやすい景色に正直感動してしまいます。

あと灯台があったり、観光タワーではチケットが「本州最南端に来ました」という証明書のデザインになっていたりして嬉しいです。

年末に潮岬を訪れた時の様子。(コミックス3巻より)

翌朝の初日の出。

「ざつ旅」をするときにお薦めしたいことやアイテムなどがあれば教えてください。

私は現地でなんとなく歩くことをおすすめします。車とかバス、電車で目的地に向かう、ということももちろん便利で利用もするんですが、知らない土地をぼんやりゆっくり歩くのが好きなんです。それだけで普段と違う非日常が味わえます。

島根に行ったときは出雲大社に向かうときに散歩をして、電車の廃線跡を辿ることになったりしました。その先にあった旧大社駅の建物もまた素敵で、知らないで公共交通機関に乗っていたら通り過ぎていたと思います。こういう出会いが旅で好きな瞬間です。

マンガの「師匠」と廃線跡を辿った時の様子。(コミックス3巻より)

旧大社駅の建物。

それから重要なアイテムは、身もふたもないですが、やはりスマホ、ですね(笑)。これでいろいろ調べられるので、ちょっと無茶な行動も出来るんだと思います。

写真も基本的にスマホで撮っています。なのでモバイルバッテリーも必ず持っていきます。

ずばり、旅の魅力とは。

やはり一番は、非日常の体験だと思います。普段の生活圏内から離れて、知らない土地を散策する。目に入ってくるもの全てが新しいもので、旅をしていときはずっとワクワクしています。「あー最高~」とか「めっちゃいい」とかしか出なくなります(笑)。

最後に一言お願いします。

世間はまだちょっとウイルス騒ぎで慌ただしいですけど、これからもこういう自分なりの旅を続けていけたら幸せだなと思います。もちろんマンガ家としても成長していきたいです。

鈴ヶ森さんの今後ますますのご活躍と旅を楽しみにしております。本日はどうもありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

『ざつ旅-That’s Journey-』 3巻

著者:石坂ケンタ
定価:737円(本体670円+税)
発売日:2020年07月27日
判型:B6判
商品形態:コミック
ページ数:162
ISBN:9784049132991

ざつな旅って、最高だ。
SNSで旅先のアンケートを取るざつな旅にはハプニングも付き物で…?
アンケート結果とその場のノリで決まる旅の中で、新人漫画家の鈴ヶ森ちかはどんな景色に出会うのか――?

今回の旅では、広島の宮島と尾道、青森の八甲田山、和歌山の串本、岩手の花巻、島根の出雲をお届け!

ざつな旅だからこそ癒される、読者参加型の旅コミック第3弾!

試し読み・既刊一覧はこちら(ComicWalker)
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM01200853010000_68/

※東京駅で本書の13面ポスターが、7/27(月)~8/2(日)の期間掲載されます。お近くにお越しの際はぜひ!