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大自然と戦う豪快トラック野郎体験『マッドランナー:アメリカン・ワイルド』酔いしれるパワードライビング

大自然と戦う豪快トラック野郎体験『マッドランナー:アメリカン・ワイルド』酔いしれるパワードライビング

獣道や山中の急斜面、湿地帯に河川など悪路を走破することにフォーカスし、インディーズゲームながらミリオンセールを記録した『スピンタイヤ』というタイトルをご存じだろうか。その『スピンタイヤ』は大幅なボリュームアップを経て、『スピンタイヤ:マッドランナー』(現『マッドランナー』)と名を変えメジャーデビュー。今回、2018年に日本版もリリースされたこのタイトルの完全版『マッドランナー:アメリカン・ワイルド』がNintendo Switch™で発売された。クルマを主役に据えたゲームは数あれど、オフロードを走ることにこだわり抜き、オフロードトラックシミュレーションなるジャンルを確立した(海外では雪原地帯を舞台にした、『スノーランナー』が今春にリリース。日本でも発売予定あり)本作の魅力を紹介したい。

文 / マンモス丸谷


渡河や山登りもお手の物!? オフロードカーを操る喜び

『マッドランナー:アメリカン・ワイルド』でプレイヤーが扮することになるのは、積荷を運ぶトラックドライバー。物語性はなく、マップ上に用意されたクルマを走らせ積荷を回収、黙々と指定されたポイントまで運搬していく……とゲーム中での目的だけを抜き出して書くとかなり味気なく感じるかもしれないが、積荷を運ぶ過程は日本で育った人間が想像するトラックドライバーの仕事と大きく異なる。プレイヤーが扱う積荷はおもに丸太で、丸太が受け取れる“丸太ステーション”は一般的な乗用車やレースゲーム、オープンワールド系ゲームで主役級の扱いのスポーツカーといった軟弱な(?)クルマでは立ち入ることができないようなポイントに点在している。登場するクルマの大半はパワフルな4WD車、丸太を運ぶための荷台や燃料タンクを搭載できる大型トラック、丸太を回収できるクレーンが付いた作業車両に、はては軍用車両といったラインアップ。このような馬力のある車両や重機を操作して、ふつうのクルマでは突破できないような悪路を踏破していく。

マッドランナー:アメリカン・ワイルド WHAT's IN? tokyoレビュー
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▲マップ上に点在する積荷(丸太)を所定のポイントに配達

ステージごとに設定されたポイントぶんの積荷を送り届けることでミッションクリアを目指していくのが、本作の基本的なルール。運搬中に人助けや他車との競争といった“ゲームっぽい”イベントは起こらないものの、積荷の種類、運搬に使う際の車両、走るルートなどは自由に決められるためプレイするたび内容に起伏は生まれる。

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▲起伏に富んだ地形や夜中になるとクルマのライトぐらいしか光がなくなる環境で作業をするには、マップの把握が重要

小回りの利く4WD車やジープでトラックが無理なく通れるルートを調査したり、給油ポイントを探して作業の効率化を図るのがシングルプレイでのセオリーだ。

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▲マップ上に点在する車両に接近すればプレイヤーの持ち物となり、乗車することが可能に

写真のようにクレーンを搭載した重機を入手して乗り込めば、山中に無造作な感じで転がっている丸太を拾うことができ、荷台に丸太を積み込む以外の方法でも積荷ポイントが稼げる。さらにプレイヤーが操作できる各種車両には、オフロードを走り抜くための機能が搭載されているのもポイント。走行中にAボタンを押すと燃料の消費量が増える代わりにパワーが増す全輪駆動が使え、Yボタンを押すとクルマの車輪すべてが均等に回るデフロック状態となりトラクションが向上(ハンドリングは多少難しくなる)。通常の運転だと脱出困難なぬかるみや傾斜を走り切れる。
駆動方式の変更だけでは脱出できない場所に入ってしまった際は、全車両に標準搭載されているウィンチが役立つ。周囲に木や岩といったウィンチを巻きつけられる突起物がないと使用できないものの、タイヤが深くハマりすぎて意味をなしていないような状況であっても、エンジンのパワーで車体を牽引して危険な足場から抜け出せる。運搬能力はないがジープのようなオフロード走行に特化した車両であれば、全輪駆動+ウィンチで山道を走るのではなく山の斜面を登るというアクロバティックな移動も可能となっている。駆動方法、路面の状況によって操縦感覚が変わる点は実車のデータを元にしているだけあってシミュレーター寄りだが、ゲーム内のシステムを活用すれば現実離れしたエクストリームな動きも楽しめるといったバランス。クルマのスピードではなくパワーを感じて気持ちよくなれるのは、本作ならではの魅力といえるだろう。

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▲崖や湿地帯など、人の手が加わっていない場所を走り抜けるのは非常に困難。しかしウィンチを木や岩につなげて車両をセルフ牽引すれば、道なき道であっても踏破できる

歯ごたえ抜群な大自然との戦い

多種多様なパワフル車両が用意されている本作だが、それでもなおゲーム内で実行する積荷の運搬は一筋縄ではいかない難度を備えているのも特徴のひとつ。まずオフロードをまっすぐ走ること自体が難しく、実行するにはいま載っている車両のタイヤの角度をつねに意識しつつ、(ウィンチや全輪駆動を使えば抜けられるとはいえ)泥が溜まった水たまりや草むら(湿地帯)は極力避ける必要がある。そのほかトレーラーを決まった位置に停める駐車、トラック1台がやっと通れる車幅でのUターン、クレーン車を使った丸太のキャッチ&リリースといった基本動作をスムーズに決めるのもなかなかの難度だ。

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▲オフロードでのトラック運転やクレーンを使った丸太の積み込みといった本作ならではの操作は、チャレンジモードでシチュエーション別に練習が可能

ゲーム内で必要なテクニックをいち早く覚えたい人、苦手な作業を克服してからマルチプレイに臨みたいような人は、まずはこのチャレンジモードからプレイするのがおすすめ。クルマは急な傾斜を登ったり渡河を試みるといったゲームならではのパワープレイは可能なのだが、車体の頑強さはイマイチというか、かなり現実のクルマに近いイメージ。当たり前ではあるのだが、岩や木にクルマをぶつけてしまうとダメージが蓄積されていき、車両に設定された耐久値を超えると走行不能に陥る。こうなってしまった車両を再び走らせるためには修理パーツを使用(あらかじめガレージで積んでおく必要あり)、もしくはガレージに送って耐久値を回復させるしかなくなる。

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▲ガレージでの耐久値回復に回数制限はないが、車両を戻した時点で積荷は消えてしまう。イチから運搬作業のやり直しになるため、安全運転を心がけたいところ

車両のダメージに関しては、オフロードでの作業中よりも舗装された道路を走っているときが危険だったりするのが妙にリアルで面白いところでもある。アスファルト上を走行している際はオフロードよりもはるかにスピードが出て、操作感覚も変化するため(アスファルト上でのコーナリングはクルマが滑るように感じる)ガードレールや電柱にぶつかりやすい。スピードに乗った状態での接触は、他のゲームだと「ちょっとこすった」程度の感覚でもけっこうなダメージが車体に入り、数値として可視化もされてプレッシャーにもなる。運転中に気を抜けるポイントはかなり少ない。レースゲーム、オープンワールド系ゲーム内でのクルマの操作に慣れ親しんでいるような人でも、クルマを走らせること自体に緊張感を持って遊べるはずだ。

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▲道路での運搬中はガードレール、オフロードでは岩場に注意。万全を期すならギアチェンジをマニュアルに切り替え、1、2速で運転するのがいいだろう

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▲メインモードで選べるマップを最大4人で遊ぶマルチプレイ。フレンドどうしなら、マップの探索や丸太の収集、運搬などを分担したロールプレイを行なうこともできる

マルチプレイではチャット等の連絡手段がない。ある程度運搬作業に慣れた“マッドランナー”たちが集結する野良パーティのプレイだと全員が別々に行動して素早くポイントを回収し、その手際のよさに感心しているうちに終了……という内容になることがほとんど。とはいえシングルプレイでは味わえない体験ができるという意味では貴重な場だった。

オフロードに特化した車両をゲームらしい豪快なアクション、あるいは繊細な走りで操って大自然の脅威と向き合う『マッドランナー:アメリカン・ワイルド』。本作が『マッドランナー』シリーズデビューだった自分は、最初こそ一般的なレースゲーム、オープンワールド系ゲームとは異なるクルマの挙動や運転時に注意すべきポイントに戸惑いを感じたが(タイヤの角度を調整してからバックすることを覚えるまでは、Uターン中によく崖から落ちてクルマが大破したり積荷を失ったりと悲しい目に遭っていた)、『マッドランナー』ワールドの常識に慣れてくると違和感こそがこのゲームでしか体験できない味と気づいた。最後は時間を忘れて丸太の運搬に勤しむようになり、気づけば中~高難度のステージもアンロックして遊べるようになっていた。オンラインマルチプレイはプレイヤー間で意思疎通を図る手段が乏しいためあっさり風味という感じだったが、変に群れて丸太を集めるよりは参加者全員が散らばり、それぞれがスピーディーな運搬を目指すのがベストな協力プレイになる……と実感。これはこれでプロフェッショナルな職人っぽくもあり、十分に楽しませてもらった。既存のクルマを題材にしたタイトルとはひと味違ったゲームを楽しみたい人には高確率で刺さる一本だと思うので、興味を持った人はぜひ手に取ってみてほしい。

フォトギャラリー

■タイトル:マッドランナー:アメリカン・ワイルド
■発売元:オーイズミ・アミュージオ
■対応ハード:Nintendo Switch™
■ジャンル:オフロードトラックシミュレーション
■対象年齢:全年齢
■発売日:発売中(2020年6月18日)
■価格:パッケージ版 5,980円+税、ダウンロード版 5,980円(税込)


『マッドランナー:アメリカン・ワイルド』オフィシャルサイト

©2020 MudRunner – American Wilds. Developed by Saber Interactive and published by Focus Home Interactive. MudRunner is a trademark of Saber Interactive Inc. Havok software is © 2018 Microsoft. Hummer H1, Chevrolet, K5 Blazer and Bison are trademarks of General Motors LLC. Freightliner FLD120 and Western Star 6900X are trademarks of Daimler Trucks North America LLC. F150, the LTL9000 are registered trademarks of Ford. All trademarks belong to their respective owners and are used by Focus Home Interactive under license. All rights reserved. Licensed to and published in Japan by Oizumi Amuzio Inc.