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放送再開が待ち切れなくて…「1話~3話だけ何度も観てしまう」 アニメ『天晴爛漫!』その演出に、テーマに心が躍る理由

放送再開が待ち切れなくて…「1話~3話だけ何度も観てしまう」 アニメ『天晴爛漫!』その演出に、テーマに心が躍る理由

エンタメがくれる自由と刺激が突然奪われてしまった2020年春、“1話~3話だけ”を何度も何度も観てしまった作品がある。P.A.WORKS制作のオリジナルアニメ『天晴爛漫(あっぱれらんまん)!』だ。本作は、4月にTV放送をスタートさせるも、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、第4話以降の放送・配信が延期となっていた。

作品の舞台は19世紀末~20世紀初頭。ある事故で日本からアメリカに漂流してしまった無一文の男ふたりが、日本へ帰る資金を手に入れるべく、過酷な“アメリカ大陸横断レース”に参加するという痛快活劇だ。個性豊かなキャラクター、ワイルドな自動車アクション、音楽から漂うカントリーな雰囲気が、どこか懐かしいコメディ作品となっている『天晴爛漫!』。待ちに待った7月3日からの放送再開(あらためて第1話から放送!)を祝して、本作の魅力をあらためて紹介する。

文 / 実川瑞穂


『天晴爛漫!』であり『小雨爛漫!』 ふたりの主人公による痛快凸凹バディ

『天晴爛漫!』の主人公は、頭脳明晰だが社交性ゼロのメカニック 空乃天晴(そらの あっぱれ/CV:花江夏樹)と、剣の腕は立つのに器用貧乏な下級役人 一色小雨(いっしき こさめ/CV:山下誠一郎)。“破天荒なキャラと、それに振り回されるお人よしな苦労人”という、分かりやすい図式のバディものである。天晴が機械いじりに夢中で周りに何かと迷惑をかけがちなため、お目付け役である小雨は常に苦労が絶えない。

ところがその図式に、不思議と嫌みは感じない。『天晴爛漫!』と言うからには天晴の物語なのだが、同時に『小雨爛漫!』でもあるからだ。小雨は、誰にも尊敬されないけれど、誰よりも共感されるキャラクターとして丁寧に描かれている。そこが、この作品のうまいところ。

我が道を行く天晴ほど、派手でもカッコよくもないかもしれない。けれど、小雨は小雨なりに、自分の選んだものを信じる前向きさがちゃんとある。地味かもしれないけれど、見ている人はちゃんと見ている。そんな小雨の描かれ方が心地いい(あんなに周りの人間には干渉するくせに、自分のことはほとんど語らないところだけが気になるが……)。詳しくは明らかにはなっていないが、侍でありがなら刀を抜けないトラウマを抱えている描写もあったので、今後の展開も楽しみだ。

天晴には、自分の夢以外守るものがない。だからこそ何も恐れず前に進める。一方の小雨には、守るものがたくさんある。家族やまだ見ぬ美人の許嫁、女子どもに衣食住、そして何よりも侍の誇り。守るものがあるからこその弱さと強さが、小雨にはあるのだ。目的のために合理的な方法を選ぶ天晴と、守るためなら土下座だってなんだってする小雨。正反対のバディだが、さりげなくお互いを認める描写にもほっこりする。1話~3話では、そんなふたりがアメリカにたどり着き、自動車レースに出るための下準備や、ライバルとの出会いが描かれた。

何度も見返したくなってしまう意外なポイントが……

どんなことにも動じない天晴と、何事も受け止め表情豊かに反応する小雨。静と動の絶妙なバランスを見事に演じている役者陣の掛け合いがたまらない。何度観ても楽しいのは、これが一番の理由だ。花江の、芯はあるけれど軽やかな“引き”の芝居はお見事。だからこそ、ただの我儘な青年ではなく、夢を追う純粋さと頭の回転の速さの持ち主であることを感じさせてくれる。

同じく魅力的なのが、山下の芝居だ。それは本作のアフレコ現場で、TJ役の杉田智和をして「(小雨は)山下君の中で一番ハマリ役」とさえ言わしめたほど。天晴以外にも濃いキャラクターが多く登場するなかで、小雨はすべてを受け止める役回り。常に全方位に対して様々なリアクションを返していく、山下の瞬発力と表情豊かな芝居、コメディセンスに驚かされた。絵に合わせたアドリブを求められることも多いそうなので、ぜひ画面の隅にいる小雨の芝居も楽しんでほしい。

それから、小雨がなぜか延々とぼやくオープニング直後の提供バックも、毎話の楽しみのひとつ。語りの途中で容赦なくカットされてしまう不憫さも、さすが小雨だ。この提供バックの演出が見たいがために、何度も見返しているといっても過言ではない。

天晴と小雨だけでなく、ふたりのもとに身を寄せるアメリカ先住民族の少年・ホトト(CV:悠木碧)との小気味いい会話を聴いているだけでも、気分が明るくなる。今後、アウトローや賞金稼ぎ、ゴロツキといった一筋縄ではいかないキャラクターを演じる櫻井孝宏、杉田智和、津田健次郎、稲田徹、小野大輔、興津和幸らの芝居がそこに加わると思うと、楽しくならないわけがない。

P.A.WORKS作品ならではの完成度

本作の制作を手がけているのはP.A.WORKS。同社といえば、『TARI TARI』のような青春物、『Angel Beats!』『Charlotte』などのSF学園物、『花咲くいろは』『SHIROBAKO』といったお仕事物など、数々の名作を生み出してきた。今作も、安心してアニメを楽しめる絵のクオリティと、キャラクターたちの細やかな芝居が楽しめる。

監督・シリーズ構成・ストーリー原案は、『TARI TARI』の橋本昌和。大陸横断レースというだけあって、ひとたび荒野に出ればアウトローや大自然が天晴たちの脅威となる。OPで描かれている蒸気自動車のスチームパンク要素と、西部劇のようなこの時代ならではアクションは、ド派手で無茶苦茶で爽快だ。この先どんなロードムービーに仕上がっていくのか、後半の展開にも大いに期待したい。

主題歌も、世界観にばっちりハマったMia REGINAによるOPテーマ「I got it!」と、森久保祥太郎によるEDテーマ「I’m Nobody」を聴くだけで、荒野の土ぼこりと果てしなく広がる大陸のスケール感に心が躍る。

今まさに響く、「荒野を行けば、道は繋がる」というテーマ

“心が躍る”。そう、『天晴爛漫!』を観ると心が躍るのだ。それは第1話での天晴の言葉が大きい。「海は知らない国に繋がってる。空は月に繋がってる。月は星に繋がってる」。彼がこうまでして果てしない場所を目指すのは、幼い頃、広い海が見たこともない世界と確かに繋がっていることを知ったからだった。

道なき道を行く理由は、それだけで十分なのだ。ロマンや夢をそのままで終わらせず、合理的かつ頭脳を駆使した戦い方で現実と地続きのものにしていく天晴に、“心が躍る”。繋がっているなら、自分で引き寄せればいい。今置かれた状況がどんなに不利でも、目の前の荒野がどんなに険しくても、「不可能なことと、不可能と思われることは違う」と言う天晴。できる・できないではなく、やるか・やらないかしかない天晴に、少しずつ影響されていく仲間たち。彼らと同じように、視聴者の心も未開拓の荒野へと連れ出してくれるのだ。荒野には自由がある。今一番、私たちが欲しい、自由が。

TVアニメ『天晴爛漫!』

2020年7月より放送再開!
※いずれも第1話からスタート

AT-X 7月3日より 毎週金曜日21時~
TOKYO MX 7月3日より 毎週金曜日22時~
北日本放送 7月10日より 毎週金曜日深夜1時59分~
テレビ愛知 7月7日より 毎週火曜日深夜3時5分~
KBS京都 7月3日より 毎週金曜日深夜0時30分~(第1話のみ深夜1時~)
サンテレビ 7月3日より 毎週金曜日深夜0時30分~(第1話のみ深夜0時~)
BS11 7月3日より 毎週金曜日深夜1時~

各サイトにて第1話~第3話配信中/第4話以降は下記日程にて配信予定!
dアニメストア 7月24日より 毎週金曜 21時30分~
※7月31日以降、各サイトにて順次配信

【スタッフ】
原作:APPERRACING(アッパーレーシング)
企画:菊池剛・工藤大丈
監督・シリーズ構成・ストーリー原案:橋本昌和
キャラクター原案:アントンシク
キャラクターデザイン・総作画監督:大東百合恵
メカニックデザイン:竹内志保
美術監督:杉浦美穂
撮影監督:並木智
色彩設定:中野尚美
3D監督:市川元成
編集:髙橋歩
音響監督:飯田里樹
音楽:Evan Call
音楽制作:ランティス
ロゴ執筆:涼 風花
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:天晴製作委員会

【キャスト】
空乃天晴:花江夏樹
一色小雨:山下誠一郎
ホトト:悠木碧
ジン・シャーレン:雨宮天
アル・リオン:斉藤壮馬
ソフィア・テイラー 折笠富美子
ディラン・G・オルディン:櫻井孝宏
TJ:杉田智和
リチャード・リースマン:津田健次郎
チェイス・ザ・バッド:稲田徹
ギル・T・シガー:小野大輔
セス・リッチ・カーター:興津和幸

オフィシャルサイト

©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会