SNS&ストリーミング発・超新世代アーティスト特集  vol. 2

Review

yama 何度でもリピートしたくなる中毒性。個性的な声で描くリアル

yama 何度でもリピートしたくなる中毒性。個性的な声で描くリアル

Billboard JAPAN HOT 100を構成するデータ要素のなかで、ダウンロード、Twitter、週間動画再生数のみを集計した「ホット・バズ・ソング」は、SNS、ネットにおける注目度を測る指標の一つ。6/20付けの同チャートで9位を記録し、初めてTOP10入りを果たしたのが、yamaの「春を告げる」だ。

2018年の春から“歌い手”として活動をスタートさせたyama。「春を告げる」は、今年4月にリリースされた初のオリジナル楽曲だ。曲を再生し、最初に聴こえてくるのは<深夜東京の6畳半夢を見てた>というライン。さらに心地よく跳ねながら美しい旋律を描き出す鍵盤、ファンク的なグルーヴを含んだリズムセクションが加わり、楽曲はドライブしはじめる。シンプルな4つ打ちを軸にした――初めて聴いたときから身体が自然に動き出すような――ビート、耳なじみの良さとハッとするような仕掛けを共存させたメロディの絡みがとにかく気持ちよく、何度でもリピートしたくなる中毒性があるのだ。

<灯りの灯らない蛍光灯 明日には消えてる電脳城に>というフレーズに象徴される、実生活とインターネットの世界を対比させたリリックも心に残る。これは筆者の解釈だが、「春を告げる」を聴いていると、自分をどれだけ偽っても構わないSNS、そして、どうしても自分と向き合わざるを得ないリアルを行き来する現代人の姿がどうしても浮かんできてしまう。いまの社会の在り方、そのなかで誰もが感じていることを個性的なフレーズで反映させる歌詞のセンスもまた、この曲が多くのリスナーに共有されている理由だろう。

そして言うまでもなく、「春を告げる」という2020年前半を象徴する楽曲の最大の魅力は、yamaのボーカルだ。スピード感のあるメロディを自然に乗りこなし、シリアスな内容を含んだ歌詞、ストレートに伝える歌声。そこには一度聞けば忘れない個性と幅広い層のリスナーの心に浸透する親近感が共存している。

前述した通り、2年ほど前から“歌い手”としてカバー楽曲を動画サイトにアップしはじめたyama。180万回以上再生されている「優しい人」(原曲/コメダワラ(猫アレルギー))ではジャズ風味のバンドサウンドとともに“上品な情念”と称すべきボーカルを披露。また、「アイアルの勘違い」(原曲/煮ル果実)では官能的なグルーヴと<愛ある勘違いをしたかっただけなのよ>というラインを響かせ、シンガーとしての独創性と表現力を示してきた。その他にも、軽快なギターカッティングと自身の頼りない存在感を綴った歌詞が一つになった「幽霊東京」(原曲/Ayase)、エレクトロ系のトラックと繊細な夜の感情が絡み合う「チョコレートミルク」(原曲/あぷえら(apu3ra))などからも、ボーカリスト・yamaの多彩な魅力を感じてもらえるはずだ。

2019年3月には、ボカロPの猫アレルギー、絵師のWOOMAとともに音楽ユニット「BIN」を結成。最初の楽曲「チルドレン」は560万回を超える再生数を記録。さらに「悪食」「インスタント」も250万回再生を突破。憂いを帯びたサウンドとメロディ、“大人達”と“僕等”を対比させた歌詞など、一貫した世界観を体現するBINの音楽は瞬く間に支持を集め、YouTubeチャンネル登録者数14万人を超える人気ユニットとなった。歌い手、そして、BINのボーカリストとして存在感を発揮してきたyamaが、そのイメージを継承しつつ、アーティストとしての個性をさらに強く打ち出したのが、「春を告げる」だったというわけだ。

2020年5月27日には、2作目のオリジナル曲「クリーム」を発表。AOR的なテイストを感じさせる洗練されたサウンドのなかで描かれるのは、<夢みたいな日常がいつしかありました>というフレーズ。「春を告げる」が上京したばかりの日々を綴った楽曲だとすれば、「クリーム」は、その数年後、いろいろな経験を経て、諦めや憂いを感じはじめる時期を反映した楽曲と言えるだろう。MVに映し出される、マンションのベランダでタバコを口にくわえ、夕陽を眺めている女性のイラストも印象的だ。

さらに7月1日にはオリジナル曲第3弾となる「Downtown」をリリース。ファンクをベースにしたトラック、ゆったりと揺れるメロディ、恋愛中のやるせなさが絡み合ったこの曲からは、大人のリスナーにも訴求できる成熟が感じられる。作詞・作曲は、「春を告げる」「クリーム」と同じく、くじら。“yama × くじら”のコラボレーションは、曲を発表するごとに深みを増し、その背後にあるストーリーも広がり続けている。

「春を告げる」はYouTube、ストリーミングだけではなく、TikTokなどのSNSでも支持を拡大。ここから始まるyamaの音楽の物語は、さらに幅広いリスナーに共有され、拡散し続けることになるだろう。

文 / 森朋之

オフィシャルTwitter
@douhwe

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