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須賀健太、染谷俊之、黒羽麻璃央らが無観客ライブ配信朗読劇に集結。『僕とあいつの関ヶ原』&『俺とおまえの夏の陣』上演で魅せた臨場感

須賀健太、染谷俊之、黒羽麻璃央らが無観客ライブ配信朗読劇に集結。『僕とあいつの関ヶ原』&『俺とおまえの夏の陣』上演で魅せた臨場感

6月27日(土)、EXシアターオンラインにて無観客ライブ配信による朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』&『俺とおまえの夏の陣』が開催された。
原作は、アニメ「TIGER&BUNNY」やドラマ『男水!』『Heaven? ~ご苦楽レストラン~』の脚本で知られる吉田恵里香による小説。大きな戦の中で渦巻く武将たちの人間模様を描いた作品だ。『僕とあいつの関ヶ原』は2014年から3年連続で上演されており、今回が4度目。『俺とおまえの夏の陣』は2015、2016年に続き3度目の上演となる。
今回のキャスト陣は2016年度版に出演していたメンバー。荒田至法、尾関 陸、黒羽麻璃央、染谷俊之、松田 凌が出演した昼の部『僕とあいつの関ヶ原』、須賀健太、染谷俊之、黒羽麻璃央、猪塚健太が出演した夜の部『俺とおまえの夏の陣』、2つの上演作品をレポートする。

取材・文 / 片桐ユウ


天下分け目の戦“関ヶ原の戦い”。その勝敗の行方

<朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』>

無観客にて生配信される朗読劇、昼の部は『僕とあいつの関ヶ原』が上演された。

豊臣秀吉亡きあとの1600年(慶長5年)、徳川家康の率いる東軍と石田三成の率いる西軍が正面からぶつかった、天下分け目の戦“関ヶ原の戦い”。その戦の中心となった戦国武将たちの関係性から、勝敗の行方を描き出していく。

開演時間になると、アコーディオンの音色が流れ、画面に配役表が映し出された。
アコーディオン奏者は桑山哲也。場面の情緒を掻き立てるようなメロディーが全編を通して奏でられる。

カメラは演奏する桑山の姿からキャストたちが座る場所へと切り替わり、全員を映す。5人はモノトーンを基調とした浴衣に下駄姿である。板は畳風、背景はガラス窓の手前を白いスクリーンで上から下まで覆い、照明で世界観を作っていた。

キャストの5人は、サイコロの5の目型に配置された椅子に腰掛けて朗読を行う。
この配置がうまい。関わりの深い人物同士が前後に配しているため、座った状態で正面を向いて読み上げる朗読劇だと、両者の表情が同時に見られるという良さが引き立つ。
場面によっては画面分割でふたりの読み手を映す箇所もあり、映像配信の利点も強く感じられた。

キャストたちは物語の焦点が当たる戦国武将の役を中心として、ト書きを読み上げるナレーション、家臣や侍女といった様々なポジションを演じ分ける。

ここからは各キャストの配役と合わせて、その演技についてレポートしていく。

ミュージカル作品やTHE CONVOY SHOWでも活躍する荒田至法が演じたのは、石田三成の右腕・猛将の【島 左近】、そして謎の女【染音(そめお)】。

島は実直な受け答えが似合うハキハキとした口ぶり。お互いを心から信頼し、思いやる三成との関係が清々しい。クライマックスを担う武将の勇姿に相応しい清廉さを見せた。
一方で謎めいた存在である染音は底が見えない物腰。しかし終盤、側近く仕えていた小早川秀秋との関係によって揺れ動く心理描写がきめ細やかで涙を誘う。
演出の中屋敷法仁がアフタートークで明かしたことには、荒田の演じた配役は「惚れる男と惚れる女」。どちらも粘つかない、ひたむきな情熱として印象を残した。

ホリプロ50周年企画『身毒丸』オーディションにて特別賞を受賞して以降、硬派な舞台から2.5次元作品まで様々な舞台で存在感を見せる尾関 陸は、【松平忠吉】を演じた。

忠吉は徳川家康の四男として生まれ、井伊直政の娘婿として迎えられた武将。登場では直政を純粋に尊敬する無垢な青年である。それ故、家康や直政たちのおどろおどろしい策略に驚き、翻弄される役回りであり、初陣を飾ったあとは周囲に追いつこうと必死になるあまり野心に呑まれていく悲壮感を持つ。
中屋敷曰く「ひとりの武将の二面性」を求められる役どころであったが、その変化をストレートかつ、つぶさに見せてくれた。さらに尾関は“実況”ともいえる戦況を伝えるナレーションがうまい。熱量が暴走しがちな“戦”の場面でも的確に、それでいて熱気を保った読み上げを行い、場の温度を司っていたように思う。

2.5次元の代表タイトルからミュージカル大作まで活躍の場を広げている黒羽麻璃央が演じたのは、【井伊直政】と【大谷吉継】の二役。

徳川家に貢献した知将として名高い直政を冷酷に美しく、病に冒されながらも愚直なまでに三成を支える吉継を渋みを持って演じ分けた。
このふたつの役を中屋敷は「美しい鬼と(外見的には)美しくない男」と評しており、その言葉どおりの印象。どす黒い策略を巡らせながらあやしく微笑む直政は“悪の華”といった色気すら漂う。しかしその内面には忠吉を大切に思う情も秘めており、顔を歪めて荒っぽく読み上げる吉継の泥くささと共に、大人の包容力を感じさせた。

舞台出演を中心に、番組パーソナリティー、声優としても注目を集める染谷俊之は、西軍を率いる【石田三成】と、東軍の大将である【徳川家康】を演じた。

三成は血の気が多いがまっすぐな青年。一方の家康は狂気を感じさせる不気味な男だ。アフタートークで中屋敷が指摘していたが、家康では右手、三成は左手に台本を持ち替えるなど、座り方やクセも合わせて格好からガラリと変えてみせた。
中屋敷が「三成は忠義一本の青竹のよう、家康は蔦のような老いぼれ狸」と例えていたが、その違いを魅力的に表現。さらに三成は島と吉継、家康は直政や小早川と濃い結びつきがあり、対峙する相手によって変化する圧の強さも見どころとなっていた。

様々な人気舞台、映画にドラマ、番組MCと幅広いジャンルでキャリアを積む松田 凌が演じたのは、【小早川秀秋】。

小早川は、関ヶ原の戦いで西軍の敗因となったとも言われる“寝返り”を起こした武将である。家康の脅しに屈して仲間を裏切ってしまうというイメージにより、小心者、気弱、弱虫といった“ダメ武将”の面が強い役どころだが、染音へ向ける愛情の場面が加わることによって、小者ながらも一本筋の通った男気が光るキャラクターとなっている。
小早川のほかにも、様々な役を演じた松田の多彩さも光った。井伊の家臣や福島正則をはじめとする武将たちなど、どの役にも全力で臨む姿勢が滲んでいた。中でも強烈なキャラ付けをしていた【侍女】の場面は周囲が笑いを堪えきれないほど。アフタートークでも話題を集め、夜の部で上演された『俺とおまえの夏の陣』にも影響を及ぼした。

続いて、その『俺とおまえの夏の陣』の模様をレポートする。

伊達政宗の一生、親子二代にわたって政宗に仕えた片倉小十郎の成長

<朗読劇『俺とおまえの夏の陣』>

夜の部で上演された『俺とおまえの夏の陣』は、仙台藩の初代藩主・伊達政宗の一生と“大阪・夏の陣”の戦いを、親子二代にわたって政宗に仕えた片倉小十郎の心情と成長を交えて描く。

本作の出演キャストは4人。全員の正面を捉えられるように斜めの陣形で椅子が配置されており、浴衣は昼の部と変わって青系で統一されている。演出は中屋敷法仁、アコーディオンは桑山哲也が引き続き担当。

物語は伊達政宗と景綱(初代・片倉小十郎)、そしてその息子である幼き重長(二代目・片倉小十郎)が穏やかな会話を交わす光景から始まる。
そして政宗がまだ梵天丸と幼名で呼ばれていた頃の回想に移り、続いて政宗が当主となったあと、先代当主である父・輝宗との別れや母・義姫との確執、弟・政道との関係性など順を追って描いていく。
伊達家の家庭事情と合わせ、政宗が時の権力者である豊臣秀吉や徳川家康とどう渡り合ったのかもスリルとユーモアを持って描かれる。

『僕とあいつの関ヶ原』は“僕”と“あいつ”が入り乱れる群像劇の趣きがあるが、『俺とおまえの夏の陣』の“俺”は伊達政宗、“おまえ”は片倉小十郎というブレない軸がある。
その“片倉小十郎”が父と子、二世代にわたることで時間の流れも感じられ、政宗が愛した仙台が栄えていく様と武将たちの生涯が重なる、見応えある“時代劇”に仕上がっていた。

ここからは各配役と合わせて役者の演技について触れていく。

物語の主軸となる【伊達政宗】を演じたのは須賀健太。

2016年に上演された際にも同役を演じているが、本人がアフタートークでも語っていたとおり、当時は21歳。その頃にも落ち着いた主君の貫禄はあったが、4年の歳月を経て見せる政宗は強さと弱さが両立しており、人物としての深みが増したように思う。
疱瘡を患い、片眼を失った梵天丸の孤独感。そこから小十郎という絶対の味方を得て、リーダーとしての資質に目覚めていく変化が無理なく感じられた。

昼の部にも出演していた染谷俊之は、【初代・片倉小十郎である景綱】の生涯を演じた。

「自分は政宗様の器」だと言い切る潔さが心地よく、息子に対しての心配性ぶりが微笑ましい。少年期の拙さ、年老いてからの重みなど、年齢の変化も見事で、昼の部に引き続き芸達者ぶりを見せつけた。

染谷と同じく昼の部に出演していた黒羽麻璃央が演じたのは、【二代目・片倉小十郎の重長】。

天真爛漫で好奇心旺盛、“現代っ子”とも見える軽快な味付けを施しつつ、政宗に寄り添う忠臣としての眼差しが備わっていく様をイキイキと表現。
また、とあるシーンでは【侍女】を務め、昼の部で松田 凌が演じた侍女のキャラクターを受け継ぐアドリブも。中屋敷からのリクエストだったとアフタートークで明かされたが、飄々と請け負う柔軟性という長所も見えた。

政宗とふたりの片倉小十郎に【様々な登場人物】として絡み、またナレーションも多く務め上げたのが、猪塚健太。

序盤の回想シーンで見せた、ナレーションからの前当主・伊達輝宗、政宗の母・義姫、小十郎の姉で政宗の乳母・喜多と三役を自在に操る場面には目を見張った。
途中で演じる真田信繁(幸村)の「歌のお兄さんかな?」と思うようなハツラツぶりや、戦場を駆け巡る兵士たちの仕草もサービス精神たっぷり。アフタートークでは中屋敷に「猪塚健太くんに対してはテーマがないのがテーマ」だと言われていたが、猪塚は「(豊臣秀吉や真田幸村といった)有名人もモブにするっていうのがテーマでした」と笑って答えていた。“政宗と小十郎の物語”というストーリーの軸を守り、己の役割を自覚してこそ輝く芝居の力が溢れていたように思う。

これまで2作品が上演された場所は天王洲 銀河劇場。高低差を作るセットと篝火がステージ上に設置され、武将たちがそれぞれの“義”に燃える“戦国時代”を演出していた。
今回はEXシアター六本木を会場に、皆が座ったまま、立ち上がる演出はいっさいないシンプルな朗読劇である。しかし声量や緊迫感、掛け合いの妙。成長著しい役者陣の気迫によって、より臨場感が感じられる作品となっていた。

2作品とも期間限定でアーカイブ配信中。生配信を見逃した人にも、ぜひ体感して欲しい。

EXシアターオンライン
朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』/朗読劇『俺とおまえの夏の陣』

朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』:2020年6月27日(土)14:00〜 生配信実施
朗読劇『俺とおまえの夏の陣』:2020年6月27日(土)19:00〜 生配信実施

<アーカイブ視聴>
2020年7月26日(日)23:59まで
配信チケット購入はこちら
※チケット購入は7月25日(土)23:59まで

原作・脚本:吉田恵里香(東京書籍刊)
演出:中屋敷法仁

出演:
朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』
荒田至法、 尾関 陸、 黒羽麻璃央、 染谷俊之、 松田 凌(50音順)

朗読劇『俺とおまえの夏の陣』
須賀健太、 染谷俊之、 黒羽麻璃央、 猪塚健太

オフィシャルサイト