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唯一無二のジャンルが楽しい『ファーミングシミュレーター20』重機のダイナミズムと農作業の緻密さの共存

唯一無二のジャンルが楽しい『ファーミングシミュレーター20』重機のダイナミズムと農作業の緻密さの共存

農作物の収穫や売却、畜産といった農場経営に特化したシミュレーションゲームという独自のコンセプトで注目を集めてシリーズ化、近年は日本でも話題になり始めている『ファーミングシミュレーター』の最新作、『ファーミングシミュレーター20』がNintendo Switch™に登場。全世界でのシリーズ累計売上では1,000万本のセールスを記録し、世界に多くのファンを抱えることになった農場経営の魅力とはどこにあるのか? 今回はその一端に迫ってみたい。

文 / マンモス丸谷


スケールの大きさと地道な作業が同居する農場ライフ

『ファーミングシミュレーター』というゲームを知るうえでまず念頭に置いておきたいのは、“欧米”の農業をシミュレーションゲームとして再現しているということ。日本で長く生活している人間が農業と聞くと米を育てる稲作が頭に浮かぶと思うのだが、『ファーミングシミュレーター』でメインを張るのは小麦、大麦、オーツ麦といった穀物に、大豆、キャノーラ(菜種)といった作物。そして種まきから収穫まですべての工程をトラクターや収穫機といった重機で行なうのも特徴で、本作ではゲームプレイ中に人間のキャラクターが農地に直接立つことすらない。マップの移動、ショップで購入した物資の受け取りなどもつねに何かしらの重機に乗ってこなすため、本作における主役(プレイヤー)は、農場主というより重機そのものといった印象。操作方法やゲーム中の視点に関してもレースゲームに近い仕様になっている。

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▲本作はBlue Lake Valleyと名づけられた北米の農村風のオープンワールドが舞台。ストーリー性はない。ゲームスタート時にプレイヤーが所有している施設は3つの畑だけだが、資金さえあればマップに点在する畑を買い上げ、自分の土地をどんどん拡張することが可能

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▲プレイヤーがゲーム中で大半の時間を過ごす重機は、レースゲームのような運転席からの視点もしくは俯瞰した視点で操縦できる。後者に関しては畑全体が見渡せるような引いたカメラアングルにして、耕作や収穫に漏れがないかも確認できる。またL、Rボタンを押すことで操作する重機を即座に切り替えられる

そんな重機と化した(?)プレイヤーにチュートリアルでレクチャーされるのが、操作する重機を切り替えながら①耕作、②種まき、③収穫、④出荷という農作業のサイクル。まず耕作と種まきだが、この作業ではトラクターを使用する。トラクターの後部に耕運機(カルティベーター)、種まき機を連結したのち接続したマシンを作動した状態で自分の農地の上を移動すると、耕作ないし種まきが進行していく。

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▲農作業に必要な多くの工程は、トラクターに農機具を連結させて実行していく。ゲーム開始時に用意されたトラクターは2台だが、資金が貯まればより性能の高いトラクターや運送に特化したトラックなども購入可能だ

トラクターでの作業が終了し作物が育ちきれば、今度は収穫作業へと移行。この工程では成長した作物を収穫するためトラクターからコンバインに操作を切り替え、カッターを作動した状態で耕作や種まきと同じ要領で農地を移動する。成長した作物が自動的にコンバインに回収されていくので、収穫が終了もしくはコンバインの容量がいっぱいになったら、いよいよ収穫した作物で利益を出すための出荷に移る。

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▲成長しきった作物を刈り取ることができるコンバイン。こちらは全部に刈り取り機を連結できるアタッチメントがあり、他の刈り取り機を購入すれば付け替えられる

出荷で使用することになるのは、収穫物をコンバインから移すためのトレーラー(荷台)を連結したトラクター。耕作機、種まき機をいったん外してトレーラーとドッキングしコンバインに隣接すれば、収穫物はトレーラーに入っていく。これをBlue Lake Valleyに点在する取引所(チュートリアルでは穀物倉庫)のいずれかに卸せば、晴れて収入をゲット。基本的にはこの4つの工程をひたすらくり返し、自身の農場の資産を増やすのが本作の目的となっている。

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▲収穫した作物は取引所まで持っていき、特定のポイントに流し込むことで納品。相場に応じて報酬が支払われる。相場に納得がいかない場合は、いったん農場の倉庫に貯蔵しておくこともできる

本作では自然災害や事故で作物がダメになるようなイベントは存在せず(作物が消えるのは、収穫まえの農地に耕運機を突っ込ませてしまうプレイミスぐらい)、しかもゲームスタート時から作物の種の備蓄は十分。そのため農作業のサイクルを守って続けていけば、確実に資金は貯まっていく。しかし農場が潤ってくる“スピード”に関しては、プレイング(操作テクニックではなくゲームへの理解度)で変わってくる。
最も気をつけたいポイントは、極力稼働していない重機や農地を作らないこと。本作の農作物は現実とはかけ離れたスピードで生育するものの(広めの農地だと、端から端まで種まきを終えるころには最初に種をまいたエリアでは作物が育ち始めている)、すべての工程を自分で行なおうとすると、最初から使える重機&農機具の組み合わせだと収穫までに数十分から1時間を超える時間が必要。1台はプレイヤー自身で動かすとしても、残った重機に関しては少し経費がかかるものの農作業を肩代わりしてくれるヘルパーを雇い、手持ちの農地でなにかしらの作業が行なわれている状態を維持したい。幸いヘルパーの能力はかなり高く、重機を正確に動かす腕に関しては人間より丁寧で十二分に信頼できるレベル。ヘルパーに任せておけばプレイヤーだと集中力が欠けた際にやりがちなミスの類い、重機を真っすぐ走らせなかった際に頻発する耕し忘れや種の植え忘れがほとんど起こらない。見た目がキレイな農地作りにもひと役買ってくれるし、すべてをヘルパーに任せてしまえばゲームを起動しているだけで出荷以外の作業は進められる。筆者の場合はちょっとしたメールでのやり取りやビデオチャットでの打ち合わせの際には、本作を起動させたのちに農作業は全てヘルパーに委任。ダブルワーク(?)で作業の効率化を図っていた。ライターほど労働体系がアバウトな仕事は少ないだろうが、ここ最近は自宅で働く人も増えたはず。リモートワークのおともとして、本作を活用するのも悪くないのではないだろうか。

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▲資金が心もとない序盤であってもプレイヤーひとりで農地を回すよりは、お金が続く限りいつでも雇えるヘルパーを使って収穫の回転率を上げたほうが儲けにつながる。ただし収穫した作物を売りにいく工程だけは、プレイヤー自身の手で行なう必要がある

1回の農作業サイクルで、より多くの収入を得られる工夫も農場主としては押さえておきたい。耕作と種まきの間に肥料をまく工程を入れて収穫量を増やしたり、+ボタンを押して取引所の作物の価格変動を見つつどこに収穫物を持っていくか、空いた農地でなんの種をまくか考えてゲームを進行させるのも経営者としての腕のみせどころ。相場が1,000$/1,000L以上のときにトレーラーの容量を満タンにして持っていけば、一度に10,000$ほどの収入になる。そのあたりの相場で売り続けられれば、資金潤沢な経営者として余裕を持って農作業のサイクルを回せるはずだ。

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▲耕作と種まきの間に散布機で肥料をまくと、収穫量がおよそ50%アップする。なるべく早めに購入しておきたい農機具だ

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▲作物の相場は時間経過やプレイヤーが売った量によって変動していく。価格が上がり続けている際は、いったん取引所までトレーラーを運んでおき、別の重機で耕作や種まきを進めておくのも悪くない

新規事業のスタートには経営センスが問われる!?

本作では農場にいきなりハリケーンが直撃したり、イナゴが大量発生するようなイベントが発生するようなことはないと冒頭で述べた。そのためゲームスタート時から収穫できる作物(麦、キャノーラ、大豆)だけに特化した農場として続けていれば、ほぼ確実に右肩上がりの成長曲線が描ける農場経営が約束されている。しかしできることはまだまだ用意されており、どの新規事業に着手するかでプレイヤーそれぞれが違った農場の色を出すことができる。農作物のバリエーションとしてはヒマワリのような利益率の高いもの(ついでに作物が成長しきったときの農地の見栄えもいい)、トウモロコシ、ジャガイモ、テンサイといった野菜系の作物も扱うことができ、牛、馬、羊(ウール)、豚を購入して畜産業を始めることも可能になっている。

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▲家畜は牛ならミルク、羊ならウールといったようにその動物そのものが持つ価値のほかに、排せつするスラリー(ふん)を肥料としても活用できるのだが……

ここでネックになってくるのは、上で挙げた作物の収穫や畜産を始めるにあたっては、ジャンルによって細分化された重機と機具を買う必要があるという点。たとえば何かしらの家畜を購入して畜産業に手を出したい場合、家畜そのものは比較的安価で迎え入れることができるが、家畜を運ぶためのトレーラー(すべての家畜を飼いたい場合は牛豚、馬、羊それぞれを運ぶ専用のトレーラー3種が必要)や水を運ぶためのタンクの購入、エサとして使える作物の種まき(これも家畜によって食べられる作物が異なる)、収穫する機械(エサに使える牧草やトウモロコシ、ジャガイモを収穫するには専用の刈り取り機が必須)の購入など、諸々の初期投資がハンパでないレベルで必要。下手に取り扱う商品を増やすと経営破綻……になるわけではないが、複数人のヘルパーの雇用をためらってしまうレベルにまで落ちぶれ、心に余裕が持てないつらい農場経営に陥ってしまう可能性はある(体験談)。

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▲実在メーカーの重機を多数収録しているがゆえか、マニアックに細分化されている農機具の数々。ゲームスタート時~十数時間ほどプレイしたぐらいでは、やみくもに購入するのは資金的に不可能なので、必要なものを適切なタイミングで購入したい

そのため本作に興味を持ってプレイしたいと思った人は、新要素があればなるべく早くアンロックしたいというゲーマーの性、農作物よりキャッチ―な見た目の動物たちに魅かれる気持ちにひとまずブレーキをかけ、『ファーミングシミュレーター』らしくまずは農作物の収穫に勤しんでほしいところ。個人的には初期状態の重機、農機具に肥料散布機を加えて収穫の効率を高めつつ、新しい農地を購入して同時に作れる農作物のバリエーションを増やして家畜を迎えられる環境を確保。そこから自宅(農場の中心)の近くで育てられる牛などを購入する……といった感じの地に足のついた経営拡張を推奨したい。

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▲お金が貯まってレベルの高い農機具が買えるようになると、車幅より広い範囲に種まきやベーラー(わらや干し草の収集)を行なえるようになる。こういった“作業の効率化”にも小さな喜びを見いだしつつ、地道に経営拡大を目指していきたい

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▲農場の中心から遠く離れた放牧場で家畜を飼うと、ヘルパーに委任できない移動の手間がかかるのもネック。トラクターより移動能力が高いトラックを用意したうえで、放牧場の近くの農地も買い上げて移動の効率化とエサの確保を考える必要がある

おおらかな農場ライフの提供をメインストリームとしつつ、遊びかたによっては資金難を知恵と効率化で乗り越えていくゲームにも変化する『ファーミングシミュレーター20』。題材が題材なだけに、作業感の強いゲームが苦手な人にはまったく合わない可能性はあるが、経営や運営系のシミュレーションゲームが好きな人にとっては、本作は止めどきの見つからないベストマッチな一本になりえる可能性があるように感じた。
個人的には前作『ファーミングシミュレーター19』には採用されていて、一部対戦ゲーマー界隈をざわつかせた複数人でのマルチプレイ、そこから派生したタイムアタックでのチーム戦(Farming Simulator League)が本作に搭載されていなかったのは残念だったが、シリーズの本筋の魅力である重機に特化した耕作や種まき、広い農地に作物が生い茂る景観を眺めつつ収穫するアメリカンな農場経営に関しては十分に楽しませてもらった。シンプルに作られているぶん、要領をつかめば運営を軌道に乗せやすいシミュレーションゲームなので(チュートリアルや用語に関しては若干説明不足ではあるが……)、興味を持った人は手に取ってみてはどうだろうか。

フォトギャラリー 

■タイトル:ファーミングシミュレーター20
■発売元:オーイズミ・アミュージオ
■対応ハード: Nintendo Switch™
■ジャンル:農業シミュレーション
■対象年齢:全年齢
■発売日:発売中(2020年5月28日)
■価格:パッケージ版 6,200円+税、ダウンロード版 6,200円(税込)


『ファーミングシミュレーター20』オフィシャルサイト

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