発掘!インディーゲーム総研  vol. 7

Review

壮絶な運命を辿る謎解きアドベンチャー『TETRA』不幸と幸せの追体験

壮絶な運命を辿る謎解きアドベンチャー『TETRA』不幸と幸せの追体験

今回紹介するインディーゲーム作品は、スマートフォンアプリ『テトラ ワールドアドベンチャー』(iOS/Android)に新しい謎が追加されたNintendo Switch™ 版『TETRA for Nintendo Switch』。これは4つの世界の謎を解きながら旅をする謎解きアドベンチャーゲームで、謎に包まれた物語がだんだんと明らかになっていく謎解きと実際に謎を解いてギミックを解除していく謎解き、2種類の“謎解き”が味わえる。
梅雨時にぴったりな落ち着いた雰囲気で進む物語と、謎解きのギミックで最高のカタルシスを得ることができる本作をぜひたくさんの人に体験してほしいので、これからプレイする人たちの楽しみを損なわないギリギリの範囲まで紹介! 1ミリたりともヒントになるようなことやネタバレを踏みたくないという方はいますぐにプレイだ! 脱出ゲームが好きな人、徐々に謎が明かされていく小説が好きな人、あと鳥やハムスターなどの小動物が好きな人にもおすすめ!

文 / 大部美智子


苦悩する時間を楽しむ

何と言っても本作の魅力にして醍醐味である謎解きのギミックについて語ろう。何の説明もなく物語が始まって戸惑うけれど、根気と観察力と少しの閃きがあればギミックを解き、物語を進めることができる。その“少しの閃き”がむずかしいけれど、そこに辿り着くまでが楽しいのだ。

TETRA for Nintendo Switch WHAT's IN? tokyoレビュー

▲4つの世界に通じる扉。最初は左の扉しか開けられない

扉を開けて、プレイヤーが初めに訪れたのは大きな水辺に面した場所だった。海か湖だと思うけれど、遠くに見える大きな建造物や風車は少し朽ちていて、過去に“何か”が起こり、そこから手入れがされていないのだろう……と想像させてくれる。たったひとつの場面からでも風情や情緒を感じられるビジュアルで物語は始まる。

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▲1番目の世界。タイトル画面にもなっている象徴的なビジュアル

前述のとおり説明は一切なく、この時点からすべて謎に包まれている。Aボタンを押したり指で画面をタッチするとズームして見られたり、アイテムを入手できたり、つぎの場所や部屋に移動できる。虫の場合は飛んでいってしまうこともあるけれど、場所を移動すれば戻ってきているので安心。手順を間違えたら取り返しがつかなくなるということはないので、気になったものはAボタンで触りまくるのだ。
風車が回る塔をタッチすると塔のまえに移動できる。入り口をタッチして内部に入るとヘルメットをかぶった鳥がスープを作っていたので、この時点でファンタジー世界が舞台なのだと思ってしまった。

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▲塔の入り口に到着。ハシゴを下げることができれば昇ることができそうだけど、いまは内部に入るしかないようだ

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▲オブジェクトはタッチすると拡大できる。ネジ留めされた扉の中身は何だろう?

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▲入り口の右にある取っ手の付いた扉のなかには回し車のような装置が……

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▲大きな魚の骨が印象的だけど、飾り気のない室内。カウンターの右には模様が刻まれたダイヤル錠が付いた引き出し、魚の絵が描かれた錠前で塞がれた両開きの戸棚がある

塔の入り口にも鳥がいる室内にも“何か”をすれば解けそうなギミックがあった。この時点ではどこをタッチしても何も起こらない。けれどこれらのギミックを解除していけば物語が進む、あるいは何かしらの進展が見られると想定して動いてみる。

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▲調理しているのはどことなく軍服を思わせる装いの鳥。魚が欲しいのかな?

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▲カウンターにあるチーズを触ったら物語が進みそうな会話になった。よし、魚を捕りにいこう

魚と言えば、塔の周囲は水に囲まれていたことを思い出して移動する。思ったとおり水中に魚がいたけれど、いくらタッチしても捕まえることができない。うむむ、どうやら道具が必要なようだ。

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▲道具を探す。カウンターの横にカギが付いていない引き出しがあり、ドライバーが入っていたけど……これでは魚を捕まえられない

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▲魚の絵と目盛りの錠前。この目盛りをどうにかすれば解錠できるんだろうけど……そういえばすぐ近くに魚がモチーフの物があったなぁ

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▲ギミックを解くと、カチリという小気味いい音が鳴って錠前と扉が開いた。なかには釣竿が!

入手した釣竿を方向キーで選択。その状態で魚をタッチすると釣ることができた。アイテムは使用しても効果がない対象のときは無反応だけれど、使用対象が合っているときには開いたり動いたり、対象の動きや材質に合ったSEが鳴るといった変化が見られるのが最高に気持ちがいい。ということで、スープを作っている鳥に渡す。
……このように、先に進むために必要そうなチーズをもらうには魚が必要で、魚を捕まえるには道具が必要で、道具を入手するにはギミックの解除が必要で……と、すべての行動が連鎖していることがわかる。そうしてすべてのギミックを解き明かすとその世界はクリアとなる。
ものによっては、ダイヤルと目盛りとスライダーが同時に付いているという複合的なギミックもあって頭を抱えることも。どうしても解けないときは、画面右下にある“HINT”から謎を解くきっかけを得ることができる。この文章のすぐ下に最初のHINTの画像を置くので、見たくない人は薄目で画面をスクロールしてね!

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▲もちろん、私はHINTのお世話になった。HINTの文章は誰かの手記のようになっていて、じつはこれも物語に関わってくるのだ

あくまでもHINTであって答えをそのまま教えてくれるのではなく、謎解きの難度を下げてくれるけれどギミック解除の楽しさは損なわない絶妙なバランスになっている。粋な計らいと作者様のセンスに感謝と脱帽。苦悶するほど難しくて、でも決して解けないわけではないという、クリアしたあとだからわかるこの絶妙なバランス! ぜひじっくりと向き合って悩む時間を楽しんでほしい。

謎だらけの物語

続いて本作の物語について。風車の塔から始まった1番目の扉の旅をクリアすると、2番目の扉が開けられるようになる。この世界も時代を感じさせる石垣のある森のなかから始まるけれど、3番目の世界は路地裏から始まり、遠くには高層ビルが見えた。4番目の世界は年代はわからないけれどシンプルな木造作りの家のなかから始まる。

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▲2番目の世界。牛とケモノの少女がキュート。ギミックの解除には彼女らの助けが必要となる

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▲3番目の世界。動物ではなくロボットが登場して、ロボット語(?)を喋ってくる。意味不明だが、ギミックを解くカギとなっているのだ

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▲4番目の世界。さきほどの世界とは違い、ロボットが人間の言葉を喋ってくれる。部屋のなかのギミックをすべて解くと周囲の様子が徐々に変化していく……

寂寥感を感じる建造物や装いに反して、登場するキャラクターたちの外見の愛くるしさやほのぼのとした受け答えからノスタルジックな印象を受ける。1番目の世界でファンタジーな世界が舞台かと思っていたけれどそういうわけでもなく、かと言ってすべてが完全に独立しているわけでもない。それぞれの舞台で感じるもの悲しい空気感と、ギミックをすべて解除したあとに辿り着く場所に同じ少女がいるという点は4つのすべての世界で共通していた。

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▲1番目の世界の最後に出会った、頭に鳥を乗せた少女

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▲2番目の世界でも頭に鳥を乗せている。定位置なのかもしれない

この少女は3番目と4番目の世界の最後にも登場して、話しかけるとそれぞれの世界や物語の謎が解ける……と思いきや、意味はあるのかないのか謎が謎を呼ぶ内容を話し始めるのだ。少女のセリフのあとに画面が乱れ、そこでどの世界もクリアとなる。
ちなみに4つの世界をクリアしてもそこで終わりではない。クリア後にシャッターが閉まっていたはずのドアがもう一度入れるようになっていて、新たな謎とギミックが待っている。

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▲画面下のメモ帳のようなアイコンをタッチすると……物語の核心とも言える、これまでの疑問から生じた推測を裏づけてくれる手記が読める

この少女が誰なのか、少女が語っていた言葉は何なのか、その後語られる文章はいったい誰によるものなのか、プレイヤーは何のためにこの世界を旅しているのか……。4つの世界すべてを旅したあとにふり返って考えてみると「なるほど」となる。この構成力、すばらしい……。クリア後は上質な小説を読んだあとのような何とも言えない余韻も味わえるので、ぜひ最後までプレイしてほしい……!
すべての世界を周って、手記を読んでもまだ終わりじゃないのがこの作品の憎いところで、すべての謎を解いたあとだからこそ、今度はHINTを読みながら進めてほしい……ほら、HINTも手記だったでしょう? つまり……もうちょっとしっかりと説明したいところだけど、これが精一杯! 
クリア後に設定資料を見ることができるようになる。作中に登場した人物や登場予定だったと思われる未登場キャラクター、背景のスケッチなどがてんこ盛り。設定資料好きとしてこんなにうれしいご褒美はない……! 舞台の裏側が見られるだけではなく、『TETRA』の世界がさらに広がっていく。

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▲なにもかもが可愛すぎて私のハートにどストライク

濃密で繊細で構成力の塊のような本作は、 “謎は解けるようにできている”ということをさりげなく教えてくれるし、物語や世界の雰囲気の後押しもあって、謎解きが苦手な私でも最後まで楽しくプレイすることができた。プレイヤーがどうして4つの世界を旅していたのか、少女の正体とそれぞれの世界の秘密……すべてがわかったあと、物語の最初から漂っていたあの雰囲気に納得しつつしょんぼりするけれど、暖かさを感じさせるエッセンスも与えてくれて気持ちよくクリアすることができた。
ギミックは、あまりにも解けないときには休憩を挟んだり、気分転換を図ったりしたほうがすんなり答えに辿り着けることもしばしば。できることなら記憶を失くして、もう一度この謎とゆっくり向き合いたい……!

フォトギャラリー

■タイトル:TETRA for Nintendo Switch
■発売元:レジスタ
■対応ハード:Nintendo Switch™
■ジャンル:アドベンチャー
■対象年齢:全年齢
■発売日:発売中(2020年6月18日)
■価格:ダウンロード版 990円(税込)


『TETRA for Nintendo Switch』オフィシャルサイト

©Bloom Mushroom/Regista

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