future×feature  vol. 30

Interview

映画『MOTHER マザー』での存在感が際立つ奥平大兼。日本映画界に現れた超新星のバックグラウンドを探る!

映画『MOTHER マザー』での存在感が際立つ奥平大兼。日本映画界に現れた超新星のバックグラウンドを探る!

『あゝ、荒野』(17)をはじめ、『新聞記者』『宮本から君へ』(ともに19)と話題作を立て続けに世に送り出すスターサンズと河村光庸プロデューサー。企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務めた新作『MOTHER マザー』は、またしても見る者にさまざまな思いを抱かせるであろう“問題作”に仕上がっている。実際に起こった事件をベースに、『さよなら渓谷』(13)や『日日是好日』(19)などの大森立嗣監督が母と息子のいびつな愛のかたちを一篇の映画へと昇華させた。その主人公たる“毒親”を演じる長澤まさみや、相手役の阿部サダヲにも引けを取らない存在感を放っているのが、息子役の奥平大兼だ。演技をするのが初めてとは思えないほどの実在感と、鈍い輝きを放つ彼のたたずまいは、見ればきっと惹きつけられること請け合い。現在、全日制の高校に通いながら衝撃のスクリーンデビューを果たす彼に撮影時のエピソードを聞いたほか、文化面でのルーツやバックグラウンドもリサーチ。ベールに包まれた素顔に迫ってみた。

取材・文 / 平田真人 撮影 / ヨシダヤスシ


長澤まさみさんから平手打ちされるシーンは事前に知らされていなかったので、素で驚いた反応をしています。

MOTHER マザー 奥平大兼 WHAT's IN? tokyoインタビュー

映画『MOTHER マザー』を見ていて、なぜ長澤さん演じるお母さん=秋子は、自ら悪循環のループにハマってしまうのだろうと思ってしまって。奥平さんは息子=周平の視点から、どんなことを思ったのでしょう?

母親としての行動と考えると、ちょっと理解しがたいんですけど、1人の女性として見てみると…そういう選択をしてしまうのかなって。でも、正直なところ考えれば考えるほど、わからなくなります(笑)。どっちにしても、もし自分の私生活の中に秋子さんのような女性が近くにいたら、やっぱり怖くなっちゃうだろうなって思います。だから、この映画に出てくる男の人たちがみんな、秋子に優しくするのを見てすごいなと思いましたし、何でそういうふうにしちゃうんだろうって考えたりもしました。

そういう意味では、何回も見直すことで違うものが見えてくる映画でもありますよね。奥平さんはもう複数回見ていたりするんですか?

僕はまだ初号(試写)の1回しか見ていないくて(※取材日の時点で)。しかも、その1回も自分の演技がどうだったかを中心に見てしまったので、キャラクターそれぞれの思いとかを探れるほどストーリーには集中できていなかったんです。なので、もう一度じっくりと見直してみたいなと思っています。

奥平さん演じる周平が秋子から顔を平手打ちされるシーンは、一度しか見ていなくても忘れがたいほどの強烈さがありました。

あれは、めっちゃ痛かったですね(笑)。しばらくジンジンしていました。しかも、リハーサルではビンタされなかったんです。(本番で叩かれることを)事前に知りたかったという気持ちもあったりしますけど(笑)。でも、引っぱたかれることを知らなかったから、本番では素の反応ができた──と考えると、良かったのかなって思います。

あのシーン、本当に不意打ちを食らったっていう顔をしていますよね。

ワンテイクでOKになったので、ホッとしました(笑)。

長澤さんと大森監督のインタビューを読んだら、実は奥平さんには引っぱたくことを知らさずに本番へ入った、と話されていて、「そうだったんだ!?」って思いました。

敢えて、僕に知らさなかったんだと思います。僕──奥平大兼としては叩かれて本気で驚いたんですけど、周平としては「ああ…そうだよな、叩かれちゃうだろうな」って納得できたんですよね。

周平は頭が良くて周りが見えるぶん、おそらく自分よりも母やまだ幼い異父妹の冬華のことを優先して考えてしまうんだろうな、と思ったところもあります。

僕も冬華の存在はすごく大きかったんじゃないかなと感じました。お母さんのために行動しているところもありますけど、もし冬華がいなかったら、もっと周平は自分自身のために生きようとしたのかもしれないなって。勉強を教えたりするのも、少しでも冬華に楽しくなってほしいという気持ちの表れだったんじゃないかと思います。

周平が絵本『100万回生きたねこ』を読み聞かせるシーンが、個人的には何だかせつなくて…。本のチョイスも含めて、ですけどね。

あの本を選んだのは大森監督なんですけど、こだわったと聞いています。

あの絵本がまたね、泣けるんですよ。大人になってから読んだほうが染みるかもしれないです。

僕はまだ泣けるほどではなかったので、もっと大人になってから、また読んでみようと思います(笑)。

10代から「わかるわ~」って言う人がいたら、逆に人生2周目じゃないかって思っちゃいますよ(笑)。

あはは! どれだけ濃い人生をおくってきたんだっていう(笑)。

それこそ周平は幼少期から濃い人生を送っていますよね。そういえば、幼少時の周平を演じた郡司翔くんの芝居を、奥平さんは現場で見たりしていたんでしょうか?

見ていました。周平の子ども時代を撮っている時がテスト期間中で勉強しなくちゃいけなかったんですけど、やっぱり自分=周平の過去なので、できるだけ現場を見ておきたかったんです。「子どもの時、こんなことがあったな」みたいなぼんやりした記憶でも、自分の目で見て覚えているかどうかでは全然違ってくるだろうなって。おばあちゃん家のそばの神社での撮影も、僕自身はその現場に初めて立つのに、どことなく懐かしい気持ちになりました。それは郡司くんの現場を見ていたからだろうなと思います。

ちなみに、自発的に幼少期の周平の現場を見ようと思ったんでしょうか?

監督が「現場、見に来たら?」と言ってくださいました。阿部(サダヲ=秋子の内縁の夫・川田遼役)さんに関しても、ちゃんと遼との過去を自分の目で見ていないと、再会した時のシーンでリアルに複雑な気持ちにならないだろうなと思って。「大事なことだな」と思いました。

ということは、ファミレスで遼と秋子が、役所の職員の宇治田さん(皆川猿時)にスゴむシーンも見た、と…?

そのシーンは学校で現場行けなかったんです。でも、試写で観て「阿部さんコワッ!」と思いました(笑)。ほかのドラマや映画だと、結構面白い人やいい人を演じられている印象だったので、僕が言うのも変ですけど…阿部さんの演技はすごいなって感じました。

最近またピアノを弾き始めました。いつかショパンの曲を弾けるようになりたいです。

MOTHER マザー 奥平大兼 WHAT's IN? tokyoインタビュー

では、ここからは奥平さん自身のことを聞いていこうと思います。プロフィールに「趣味:芸術鑑賞」とありまして、これがすごく気になっているんですよ。

元々ピアノを習っていたので、そこを入口にクラシック音楽を聴くようになって、気づいたら絵画もよく観に行くようになっていたんです。自分の中ではクラシック音楽とか美術って、つながっているようなイメージがあるので、そこから芸術全般に触れるようになっていった感じです。

そういった文化面はご両親の影響があったりするのでしょうか?

直接影響を受けたっていうわけではないんですけど、ありがたいことに僕の両親は、僕が興味を持ったものだったり、それが自分のためになりそうなものだったら、協力してくれるんです。たとえば、「今日、美術館に行ってきていい?」って訊くと、入館料を出してくれたり。そういう両親なので、どんどんいろいろな絵を見てみたいなっていう興味が増していった感じです。

そうなんですね! ちなみに、好きな画家はいたりします?

絵の描き方とかタッチみたいなものが最初はわからなかったんですけど…あ、今でも専門的に学んで見ているわけでもないんですけど(笑)、その人の人生や絵を描いた時の環境や状況と照らし合わせて見ていった中で、めちゃめちゃ興味深かったのは(フィンセント・ファン・)ゴッホです。出会う人物や境遇で描き方がどんどん変わるので、年代順に見ていくと生き方にも興味がわいてくるんです。

ピカソあたりもそうですけど、時期によって画風が変わっていきますよね。

それが面白いなと思って、ほかの人の絵も見るようになって。絵の技巧的なことは正直あんまりわかっていないんですけど、その人の生き方と絵をリンクさせて楽しんでいます。

MOTHER マザー 奥平大兼 WHAT's IN? tokyoインタビュー

いやぁ、高校2年生で絵画をそんなふうに見ることができるセンスって…すごいなと思います。ゴッホといえば、ウィレム・デフォーがゴッホを演じた『永遠の門 ゴッホの見た未来』(19)がオススメです。

あ、そういえば、そういう画家の人生が描かれている映画観たことないですね。面白そうなので、今度見て観ます!

ぜひぜひ。となると、大学へ進学して芸術文化を学んでみたいという気持ちもあったりしますか?

今は具体的にまだ進路を考えていないんですけど、職業にするなら自分が本当に興味のあることをしたいと思っていて。さっきお話したように音楽も大好きですし、興味があることはいっぱいあるので、そうですね、大学でいろいろと学ぶというのも選択肢として考えてみようかなと思います。

ちなみに、ピアノはまだ弾いているんですか?

ピアノは小学校の時に習っていたんですけど、中学で辞めちゃったんです。でも、最近になって、自分には趣味がないなと思って、クラシック音楽が好きだからバイオリンかピアノのどっちかしようって絞ったんです。でも、バイオリンだとまったくの最初からになるし、楽器も新しく買わないといけないので…だったら家にピアノもあるし、ある程度は下地もあるからと思って、また弾くようになりました。

ほ〜! どういった曲を弾くんですか?

ピアノ曲だと圧倒的に(フレデリック・)ショパンが好きです。でも、弾くとなるとめちゃくちゃ難しいので、とりあえずショパンの簡単な曲から弾き始めて、のちのち有名な曲を弾けるようになっていければいいなって思います(笑)。好きな曲を弾けるようになると、自分でニュアンスを変えてみたり、二重の楽しみがあることに気づいて。そういう楽しみ方を、最近は家でしている感じですね。家ではだいたい音楽に触れています。

高2でショパンか、かっこいいなぁ…。空手も続けてる?

空手はもうやっていないです。部活は中学でバスケ部でしたけど、中3で引退して。高校に入ってからすぐ、『MOTHER マザー』の撮影が始まってしまったので、部活に入っても参加できないなと思って、どこにも入らずにいました。そのまま最近まで何もしていなかったので、ピアノをまた弾き始めた感じです。

MOTHER マザー 奥平大兼 WHAT's IN? tokyoインタビュー

ピアニストの役とかも合いそうですね。

あ、めっちゃ演じてみたいです! 映画とかテレビを見ている時も好きな曲や知っている曲が流れると、それだけでグッと引き込まれるので、自分が音楽を奏でる人を演じるとなったら、どんな感じになるのか楽しみです。

奥平さんの演じるピアニストをいつか見てみたいです。それにしても、多才だなぁ。

いや、全部できるっていうわけではなくて、興味だけはいろいろあるっていうレベルです(笑)。

でも、興味の対象の間口が広いというのは、素敵なことですよね。好奇心旺盛というか。

確かに同年代でクラシック音楽が好きな人は僕の周りにはいないですね(笑)。僕も流行りの邦楽は聞きますが、メインで聴くのは、やっぱりクラシックとか洋楽になっちゃいます。

ちなみに、洋楽はどういったアーティストが好きなんですか?

小さい頃から家でよくかかっていたのが、マイケル・ジャクソンとクイーンとかレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)なんですよ。両親世代の洋楽を浴びるように聴いていました。

なるほど、そういうカルチャーのバックグラウンドがあるんですね!だんだん奥平大兼という人がつかめてきました(笑)。

洋楽が原点というか、すごくインスピレーションを受けてきたので、音楽の聴き方も洋楽がベースになっていて。「あ、この曲はあの曲がルーツにあったりするのかな」みたいなことを思っちゃったりすることもあります(笑)。

日本と海外の俳優さんのいいところを足していけば、面白い存在になれるのかなっていう気がしています。

映画の見方も、『MOTHER マザー』でご自身が演技をして以降は見方が変わったそうですね。俳優がどんな芝居をするか見ているという…。

いろいろな映画を見てきて思ったのは、海外の俳優さんと日本の俳優さんの芝居の仕方って違うんだなっていうことです。海外の俳優さんのお芝居って、意外と共通しているイメージがあるんですけど、日本はもっと個々の感性が演技に出ているような感じがします。あくまで僕の感じ方なんですけど…。

海外は演技を学ぶシステムが確立されていたりもしますよね。メソッド演技についても通っていたりして。

そうなんですね。日本は自然体というか、リアルさを演技に求めているような印象があります。実際、『MOTHER マザー』で僕もそういう演技をしようと心がけていましたし。でも、海外の俳優さんたちの芝居も見ていて参考になることがすごく多いので、僕自身は日本の俳優ならではの芝居をベースに、海外の俳優さんたちのニュアンスを足していったら、ちょっとほかにはいない、面白い存在になれるのかなっていう気がしています。まだ、自分がどうなっていくのかはわからないですけど(笑)。

そう、だから早く奥平大兼の次回出演作が見たいんです。

ありがとうございます! 僕自身はどんな役でも、自分に求められるのであれば演じてみたいですけど、今日、ピアニスト役をやってみたいという目標ができました(笑)。

楽しみにしています!


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7月2日(木)~7月9日(木)23:59


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奥平大兼

2003年、東京都生まれ。初めて受けたオーディションで映画『MOTHER マザー』で長澤まさみ演じる母・秋子の息子・周平役に大抜擢。本作が俳優デビュー作となる。

オフィシャルサイト
https://www.stardust.co.jp/section2/profile/okudairadaiken.html

フォトギャラリー

映画『MOTHER マザー』

7月3日(金)TOHO シネマズ日比谷ほか全国公開

出演:長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、木野 花
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣/港岳彦
音楽:岩代太郎
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
配給:スターサンズ/KADOKAWA

【STORY】
シングルマザーの秋子(長澤まさみ)は、息子・周平(郡司翔)を連れて、実家を訪れていた。その日暮らしの生活に困り、両親に金を借りに来たのだ。これまでも散々家族からの借金をくり返してきた秋子は、愛想を尽かされ追い返されてしまう。金策のあてが外れ、昼間からゲームセンターで飲んだくれていた秋子は、そこでホストの遼(阿部サダヲ)と出会う。・・・

オフィシャルサイト
http://mother2020.jp

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