発掘!インディーゲーム総研  vol. 4

Review

無料公開のシュールな脱出ゲーム『Samsara Room』はラスティレイクの謎に繋がっていく

無料公開のシュールな脱出ゲーム『Samsara Room』はラスティレイクの謎に繋がっていく

インディーゲームスタジオ・Rusty Lake(ラスティレイク)の人気シリーズ『Rusty Lake』と『Cube Escape』は、少し不気味でシュールな世界設定が特徴の脱出ゲームです。10作以上もあるふたつのシリーズ作品は、“ラスティレイク”という謎の湖を中心にしたひとつの大きな話の流れを切り取ってゲームにしたもので(一部例外あり)、考察しがいのある内容の面白さには根強いファンが存在します。そんなふたつのシリーズの前身となったのが、今回紹介する『Samsara Room(サンサーラルーム)』。“ラスティレイク”シリーズ5周年を記念して公開された無料のリメイク版である本作は新しいパズル、ストーリー、音楽を追加し再編されたもので、シリーズの雰囲気を掴むための第一歩としても最適でしょう。本稿では、その独特な世界の魅力を探ります。まずはトレーラームービーを見て、幻想世界のなかにある少し不気味な空気を体験してください。

文 / 内藤ハサミ


自分自身を“変えていく”ことで進むストーリー

「うっかりとメルヘンの世界に入り込んだ人が、そこから脱出するようなゲームなのかも」と第一印象で勘違いしてしまったくらい、可愛らしい色づかいのグラフィックです。特に美しい壁紙のパターンを楽しんでいたのですが、壁に掛けられた鏡を見たとき、一瞬息が止まりました。

Samsara Room WHAT's IN? tokyoレビュー

▲ひえっ! 謎の人影が映っています。ポッカリ開いた目がなんだかコワイ……

プレイヤーである主人公は鏡に映った影が自分自身なのかどうか、はっきりとわからない様子。タイトルの“samsara(サンサーラ)”は、サンスクリット語で輪廻転生という意味です。サンサーラルームというタイトルは、訳すと“輪廻転生の部屋”というところでしょうか。この美しい部屋がその象徴だと言うことなのかもしれません。とにかく、部屋の調査を続けてみましょう。

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▲鏡のある壁と別方向を向くと、湖の見える大きい窓がありました。この風景になんとなく感じる違和感の正体とは……?

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▲別の方向に置いてあるタンスを開けたら、いきなり魚が出てきました。初めてのプレイでは驚きましたが、シリーズ作を遊んだ今は「このシュールさこそが、“ラスティレイク”シリーズらしさのひとつなのだ」と納得できます

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▲最後は中央に時計のある方向。トカゲが壁に張り付いていて、いかにも秘密がありそうです

部屋の壁4面にあるオブジェクトからヒントやアイテムを得て、それらを使って謎を解いていくというゲームの進めかたは、脱出ゲームとしてはスタンダードなタイプです。どう展開していくかを詳しく語ることは攻略法そのものになってしまうので控えますが、白と黒のキューブが大きなキーアイテムとなり、黒い影である自分をさまざまなものに変化させることでストーリーが進んでいきます。自身が変化するということは、『Samsara Room』というタイトルのとおり、輪廻転生のメタファーのようにも思えます。

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▲夜空のような空間に浮かぶ、黒いキューブ

ある条件を満たすと、キューブから別の場所に移動し、鏡のなかの人影を変化させることができます。もしかしたらそう見えるだけで、もっと概念的なものの表現なのかもしれません。そもそも作中で空間を移動したなどというのも、筆者の勝手な解釈の可能性もあります。重要なアイテムであるにも関わらず、具体的にどういうものなのかはなんと最後まではっきりしないのです。何をしているのかがわからないまま仕掛けを解いて進む感覚は心細く、恐怖を煽られます。しかしその怖さよりもこの不思議な世界への探求心が少しだけ勝るのが、本作の優れたところです。つい先を見てみたくなる世界設定、そしてクリアしがいのある謎解きのデザインは絶妙なバランスだと感じます。謎解きとホラーの要素は親和性が高いですし、この独特な世界を表現するには“脱出ゲーム”である必然性も感じます。おそらくプレイヤーはこの世界の理に導かれて、いや操られて謎解きをしている……。そう思わずにいられません。

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▲「私の姿を変えてください」と書かれた紙が、封筒に入っていました

本作のテキストはすべて英語です。文をクリックすると日本語に訳されたものが表示されるので、意味がわからずに困ることはないでしょう。ですが、前段でも例に出した黒と白のキューブをはじめ、出てくるモチーフの意味することを知るのはかなり難しい……というか、正確に理解することはたとえ英語に堪能なプレイヤーであっても不可能に近いでしょう。

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▲ワームに変わった主人公。この変身にはきっと意味があるはずなのですが……

このように本作の表現はかなり難解です。筆者は1周目のクリアをしたあとも、具体的に何がどうなって終わったのかはっきり理解することができませんでした。ただし誤解をしないでほしいのですが、「わからなくてつまらなかった」というわけではなく、むしろこの不思議で恐ろしい世界にいつのまにか惹かれていたのです。

壮大なシリーズへと繋がっていく……

いくつもの違った生き物の姿に変化しながらエンディングまで到達すると、リメイク版で追加されたシークレットレベルの存在がアナウンスされます。一度クリアして謎を解いてしまえば、2周目のプレイは難なく進められるはずですが、シークレットレベルへの分岐条件ははっきり言ってかなり……いや相当難しいです。そんなプレイヤーのため、文末で紹介している公式Twitterではヒントとなるツイートを見ることができます。同アカウントではファンアートの紹介やプレゼント企画なども行っているので、要チェックです。

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▲筆者もヒントを見て、やっとシークレットレベルをクリアできました。難しかった……

同じく文末にあるオフィシャルサイトでは、“ラスティレイク”シリーズの作品紹介を見ることができます。そこで『Samsara Room』に登場するのとよく似た柱時計を見つけたのをきっかけに、『Cube Escape』から順を追って遊んでみました。ひとつひとつの作品は短いものが多く、数作は番外編のような作品だったりもしますが、それぞれ違った趣向が凝らされた謎解きは新鮮に楽しめます。キューブ、エビ、魚、柱時計など繰り返し登場する共通モチーフや登場人物の存在、シリーズの根幹にある“とある事件”のことなどをはじめ、考察の面白さを存分に味わえることは見逃せません。ぜひ本作を足掛かりとして、シリーズ作品も味わってみることをおすすめします。

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▲男性の遺体を発見。他シリーズを遊んだあと「もしかしたらあの人かも……」、「あの人だということは、このシーンはこういうことなのかも」と想像できるようになるのが面白い

本作の難度は脱出ゲームをプレイしたことがあれば序盤は肩慣らしできるくらいで、さほど難しく感じません。後半になるにつれ歯ごたえを感じるようになり、終盤になるといくつかの仕掛けを解くのに苦労しました。オフィシャルで配信している以下のような攻略動画があるので、どうしてもわからないときは利用できます。

ストーリーを読み解くのが非常に難しく、『Samsara Room』を遊んだあとはいくつもの謎がプレイヤーの心に残ったままとなるでしょう。本作だけをプレイしたのであれば、「とてもシュールで、物語の全貌がわかりにくい脱出ゲームだった」と感じるかもしれません。ですがゲーム内に込められたギミックとは違った意味での“シリーズに秘められた大きな謎”が根底にあるという、他の脱出ゲームとは一線を画す興味深い特徴こそ最も味わうべき面白さで、多くのファンを魅了する大きな理由なのです。
“ラスティレイク”で描かれていたのはどういうことだったのか。キューブはいったい何なのか。それらを見届ける長い旅は、きっとプレイヤーに大きな驚きと感傷を与えてくれるでしょう。

フォトギャラリー

■タイトル:Samsara Room(サンサーラルーム)
■発売元:Rusty Lake
■対応ハード:iOS、Android、Steam®
■ジャンル:アドベンチャー
■発売日:発売中(2020年4月29日)
■価格:ダウンロード版 無料


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© Rusty Lake B.V.

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