世代じゃないけど観てみたい!名作アニメ“初見”レビュー  vol. 1

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往年の超名作アニメ『あしたのジョー2』、平成生まれによる全話初見レビュー 驚きと感動と…「丹下段平、もはや〇〇〇〇じゃん!」

往年の超名作アニメ『あしたのジョー2』、平成生まれによる全話初見レビュー 驚きと感動と…「丹下段平、もはや〇〇〇〇じゃん!」

「世代じゃないアニメ」観てみない? 往年の名作&最新の名作を、これまで触れる機会のなかった“若者世代&おじさん世代”がそれぞれ観た初見の感想をご紹介。今回クローズアップするのは、1980~81年放送のTVアニメ『あしたのジョー2』。高森朝雄・ちばてつや原作による国民的ボクシング漫画を原作とする作品、その結末までを描いたTVシリーズ第2作です。

<おじさん世代→若者世代に向けた『あしたのジョー2』推薦コメント>
・今のアニメの文法から断絶された作品なので、世代じゃない人にとっては新鮮で衝撃を感じられると思います。
・出崎統監督が本作の時期に確立した独特の演出を観てほしい! キーワードは「止め絵」「繰り返し」「入射光」。
・まずは最初の1クールだけでも観て! ストーリーはアニメ第1作を観ていなくても楽しめるはず。
(40代ライター:山下達也さん)

『あしたのジョー』はかつて2度にわたりTVアニメ化された作品。本来なら、物語を始まりから描いた第1作(1970~71年放送)からすべて観るべき、というのが筋かもしれません。しかし、そうなると話数の多さ的に初見のハードルがかなり高くなってしまうことは不可避です。今回は上記のコメントを信頼し、あえて第2作『あしたのジョー2』から、20代ライターの長田雄太さんに観てもらいました。

構成 / WHAT’s IN? tokyo編集部


死してなお存在感ある力石への思いに感動

<『あしたのジョー2』あらすじ>
力石徹の死後、逃げるようにリングを離れ、街から街へ流れ続けた矢吹丈(ジョー)。しかしかつてのライバルたちに出会うことで、再びリングに立つことを決意する。カーロス・リベラ、金竜飛といった数々の世界ランカーと死闘を繰り広げ、遂にチャンピオンに君臨するホセ・メンドーサとのタイトルマッチにまでたどり着く。


筆者は幼少期に『名探偵コナン』(1996年~)『ポケットモンスター』(1997年~)のTVアニメ放送開始を体験した平成生まれで、恥ずかしながら『あしたのジョー』にはほとんど触れたことがありません。事前に知っていたのは、力石徹というボクサーが矢吹丈との試合直後に死んでしまうこと、その葬儀がリアルでも行われたくらいショッキングな出来事だったということ、眼帯をつけた怖いおじさんがセコンドで「立つんだジョー!」と叫んでいること、そしてジョーが最後の試合で「真っ白な灰」になるらしいことぐらいまでです。

今回の『あしたのジョー2』、全47話ある作品のうち「まずは1クールだけでも観てみてほしい」という推薦を受けて、前半12話を観ることから始めました。(2020年6月現在)本作はいくつかの動画見放題サービスで配信されているのを確認しましたが、筆者の場合はNetflixでチェックすることに。

力石が死んだ後から始まるストーリーだとは知らず、序盤ではジョーが敗北を重ねる展開に「ここからどう這い上がっていくんだ……?」と続きが気になってのイッキ見。そこから突入した世界ランク6位のカーロス・リベラ戦では、ロープ際での駆け引きや最終ラウンドでのラッシュといった熱い試合展開に心を鷲掴みにされました。そして、そのままの勢いで第2クール視聴に入ります。

中盤までの感想としては……自分が今まで観てきた“スポ根アニメ”、厳しい監督・コーチのもとで汗だくになってスポーツに打ち込むそのイメージとはかなりの違いがあり、そこに驚かされました。アニメとはいえ、喧嘩屋たちを集めてルール無視のスパーリングをしたり、限界を超えた減量のため医者に血を抜かせるようなことまでするとは! 血だらけのリングで真っ白な灰になるまで燃え上がりたいと、自分で自分を追い込んででも青春をボクシングにささげるがむしゃらなジョーに、もはや「別の世界の人間」だと圧倒されてしまいました。

しかし、力石を死に追い込んでしまったトラウマからリング上で吐いてしまったり、ジョーの「等身大の人間」としての面も見られたのは印象的。東洋太平洋チャンピオン・金竜飛との試合(第24話~)で、減量という地獄を乗り越えた力石のためにも負けられないと、自身も壮絶な減量をおこない満身創痍のなか勝利を掴む姿は、試合終了まで目が離せませんでした。

ちなみに今回『あしたのジョー2』視聴を機に思い出したのですが、実は小学生の頃にアニメ『あしたのジョー』(おそらく第1作の再放送)をほんの一部だけ観たことがありました。唯一記憶に刻まれていたのが、減量のためにゲッソリとやせ細った力石の姿で、当時それがあまりにも恐ろしく視聴継続はできず……。このことから、作品において力石が重要な存在だということはなんとなく知っていましたが、力石亡き後の『2』ではそのことがよくわかるシーンが頻繁に描かれていたので、前作の流れを知らずとも、ジョーの力石への思いをしっかりと汲み取りながら視聴することができました。

ジョーを支える姿はもはやヒロイン!? 丹下段平の涙に思わずもらい泣き

© 高森朝雄・ちばてつや/講談社・TMS

今では考えられない、ジョーのボクシングに対する姿勢には最後まで驚きっぱなしでしたが……一方、同じ丹下ジムでボクサーをやっている親友の西、ジムに顔を出しては世話を焼いている八百屋の看板娘・紀ちゃん(林 紀子)といった、ジョーを応援しつつも時に振り回されるキャラクターたちにはとても共感できました。

なかでもジムの会長で、セコンドに体調管理と、公私でジョーを支える丹下段平は、いかつい見た目と「立つんだジョー!」というセリフのイメージから、負けることを絶対に許さない厳格なキャラクターかと思っていたのですが、実際はその真逆。カーロス・リベラ戦で、ボロボロになりながら戦うのを止めない丈を見て涙を流したりと、その外見や印象との大きなギャップに惹かれます。

ジョーが減量に苦しんでいることを告白したシーン(第20話)は特に印象的で、今まで体重の増加を隠していたことに段平が激怒するのかと思いきや、まさかの号泣。身体の成長から、飲まず食わずでもジョーの体重が一向に減らず、「苦悩していることを気付けなかった自分はセコンド失格だ」とむせび泣く姿には、「なんて優しいおっさんなんだ……」と思わずもらい泣きしてしまいました。こんな二人の様子は、まるでひと昔前の夫婦のよう。ほかにも、世界チャンピオンとの試合直前に行った山籠もりなど、まっすぐに突き進むジョーと、それをかいがいしく支える段平のやり取りは、燃えるような熱い試合と同様にお気に入りのシーンです。

光と影の表現が印象的だった出崎演出

『あしたのジョー2』の視聴にあたりアドバイスを受けていた出崎統監督の演出については、「画面を分割して別々のキャラクターを映し出す」などを筆頭に、ひと目でわかる個性的なものが数多く面白かったです。しかも、ただ個性を出しているだけではなく、作中で多用されている止め絵も“ここぞ”というシーンで効果的に使われていて、各話のラストなど、次はどんな止め絵が使われるのか楽しみに視聴していたりもしました(止め絵を“ハーモニー”と呼ぶというのも、今回これをきっかけに調べて知ったことです)。

また、光や影といった明暗の演出技法は印象深く、入射光で表現された試合会場のギラギラと刺すような照明からは手に汗握る試合の臨場感が伝わってきて、「こんな演出もあるんだ」と感動させられます。ジョーがリング上で嘔吐してしまうシーン(編集部注:いわゆる“光るゲロ”)も後のアニメ演出に影響を与えているらしく……またもう一度じっくりと観て、ほかにどんな演出が散りばめられているのか探してみたいです。

誰かと語り合いたくなるラストの衝撃

© 高森朝雄・ちばてつや/講談社・TMS

『あしたのジョー2』全話を通して筆者が一番燃えたのは、やっぱりジョーが世界チャンピオンのホセ・メンドーサと繰り広げた最後の壮絶な試合。試合中に右目が見えなくなる圧倒的不利な状況にもかかわらず、それをチャンスに変え相手の技も盗んでみせたりと、ボロボロになりながら何度も立ち上がるジョーに、観ている側も試合経過とともにどんどん熱くなっていきました。そして何と言っても感動的だったのが、試合を終え「真っ白な灰」になったジョーのシーン。試合に負けたにもかかわらず、燃え尽きるまで戦った後の満足げな姿に、落胆よりも清々しさを感じることができました。

しかし、「真っ白になったジョー」が映し出されたところで、アニメそのものが終わってしまったのはとても衝撃的でした。この展開自体は何となく知っていたものの、まさかそれそのものがラストシーンになっていたとは……。「その後のジョーはどうなったのか?」と考えさせる余地を残した幕引きに、当時のファンの間では激論が繰り広げられていたんだろうなと、うらやましく思います。

全47話と、まとめて観ることはなかなか少ない長期シリーズ作品でしたが、予想以上の面白さに、結果的には約1週間という短期間で最終回までをイッキ見。最後まで同じ熱量で視聴することができました。もし、筆者と同世代で『あしたのジョー2』を観たという人がいれば、ぜひ「ジョーのその後」について語り合いたいです。

(文 / 長田雄太)

TVアニメ『あしたのジョー2』

動画配信サービス各社にて配信中

【原作】
高森朝雄、ちばてつや

【メインスタッフ】
監修:梶原一騎/企画:吉川斌、川野泰彦/プロデューサー:高橋靖二、加藤俊三/文芸担当:飯岡順一/脚本:篠崎好、山崎晴哉、高屋敷英夫、他/演出(監督):出崎統/作画監督:杉野明夫/美術監督:男鹿和雄/音楽:荒木一郎/テクニカルアドバイザー:高山将孝

【声の出演】
矢吹丈:あおい輝彦/丹下段平:藤岡重慶/白木葉子:田中エミ/林紀子:森脇恵/西寛一:だるま二郎/力石徹:仲村秀生/サチ:白石冬美/キノコ:堀絢子/ゴロマキ権藤:渡部猛/青山:小宮山清/カーロス・リベラ:中尾隆聖/ホセ・メンドーサ:宮村義人、他

作品紹介(トムス・エンタテインメント)

©高森朝雄・ちばてつや/講談社・TMS

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